臨海学校~海の家、チラリと殺意

    作者:陵かなめ

     浜辺近くの海の家は、遊泳に一区切りつけた人々で賑わっていた。
     少し遅い昼食を取る家族連れ。博多ラーメンの替え玉をお願いする学生達。トロピカルジュースを一つ注文し、二人で仲良く飲み合うカップル。
     海の家のすぐ近く、平坦な砂浜ではビーチバレーをする学生達も居る。
     青い空、白い雲、輝く浜辺。
     楽しい夏の日の出来事だった。
     一人の男が厨房から出てきた。真っ直ぐに賑わう客席に向かっていく。
     ICカードケース入れを首に下げており、その中には海の家の従業員証が入っていた。
     名を、古賀・則夫(こが・のりお)と言う。
    「ったく、どいつもこいつも、平和にくつろぎやがって……!!」
     則夫は、懐から出刃包丁を取り出した。
    「そんなに、食い物が、好きなら、俺がっ。この選ばれた俺様が、食い物にしてやるぜぇー」
     そして、目についた客席へ走り、一気に包丁を振り下ろす。
    「毎日毎日、忙しすぎるんだよっ」
     則夫は海の家の厨房で働いている。来る日も来る日も、客の要望に答え料理を作ってきた。その料理はなかなかの評判で、特にこの夏は休む暇もなく働き続けていた。だが、心の何処かで、自分も遊びたいと思っていたのかもしれない。客が減れば、遊ぶ時間が出来るかもと。
    「ははははっ。それなら、殺せば良いんじゃねぇかよ。そうだぜ、俺は、そのために選ばれたんだ……!」
     則夫が呻く客から包丁を引きぬき、再び振り上げる。
     その時、ひらりとICカード入れが裏返った。従業員証の裏に、黒いカードが見えた。
     
    ●依頼
     空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が教室にやってきた。
    「やっほー。ついに臨海学校だね。楽しみで楽しみでさー。海の家には、博多ラーメンやもつ鍋までメニューに有るらしいよ♪」
     やたら食べ物を強調しているが、とにかく臨海学校なのだ。
    「でもね、九州で大きな事件が発生するんだって」
     一つトーンを落として、紺子が説明を始めた。
    「今回はエクスブレインの代わりに私が説明するけど、間違いはないから安心してね。ちゃんと、聞いて来たからね」
     というわけで、紺子から事件と依頼の内容が説明された。
     この事件を起こすのは、普通の一般人だ。そのため、灼滅者であれば事件の解決は難しくない。だが、事件の裏には組織的なダークネスの陰謀があると思われる。
    「目的はわからないけど、無差別連続大量殺人が起きるの、見過ごせないよね」
     紺子は更に説明を重ねた。
     殺人を起こす一般人は、何かカードのようなものを所持しており、それに操られて事件を起こす。事件解決後、原因と思われるカードを取り上げれば、直前までの記憶を失い気絶する。その後は、休憩所などに運べば大丈夫だろうと。
    「で、海の家で殺人を起こすのは、古賀・則夫さんって言う店員さんだよ」
     則夫は厨房から出刃包丁を持ち出し、客に切りかかるというのだ。
    「ただ、一般人だからね。素早い動きをするわけじゃないし、勿論、サイキックは使わないよ」
     則夫が厨房から出てきて、出刃包丁を構えた時が接触するチャンスだ。
    「まず、則夫さんが狙ったお客さんを守ることだよね。それから、こちらのESPはバッチリ効くから、眠らせるとか、説得するとか、とにかく則夫さんが人を殺すのを防いで、カードを取り上げちゃえば良いんだって。あ、カードは、則夫さんが首から下げてるICカード入れにあるはず」
     また、昼を過ぎピークは去ったといえど、客席は一般の客で賑わっている。
     一般人の客へのフォローも、気をつけたほうがいいだろう。
    「でね、敵組織の狙いとか、カードの分析とかは、戻ってきてからすることになるって。その場所ですぐに調べられるものでも無いよね」
     ここまで真面目な表情で説明をしていた紺子が、うぉほんとわざとらしく咳払いをした。
    「で、話は臨海学校に戻るんだけどさ。今回の事件解決は、臨海学校と同時に行われることになっているんだよ。だから、事件発生前とか解決後は、臨海学校を楽しんで良いって♪」
     紺子が明るい口調で話す。
    「私も、皆と臨海学校に行けるの、楽しみなんだよー。事件を解決したら、海の家で一休みとかしたいよね。いろんなメニューが有るみたいだし。あ、海の家だから、基本水着ねっ。事件を解決したら、平和に色々味わえると思うの」
     楽しい臨海学校になりますように。紺子が最後に笑顔で皆を見た。


    参加者
    結城・時継(限られた時に運命を賭す者・d00492)
    織神・かごめ(此岸ノ華・d02423)
    四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)
    野崎・唯(ご当地愛・d03971)
    白波瀬・雅(光の戦士ピュアライト・d11197)
    高原・まや(まいぺーすでまいりましょう・d11298)
    白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)
    日野・唯人(浪漫飛行・d11540)

    ■リプレイ

    ●事件前
     海の家は賑やかだった。
     厨房付近の席に織神・かごめ(此岸ノ華・d02423)と日野・唯人(浪漫飛行・d11540)、そして野崎・唯(ご当地愛・d03971)と結城・時継(限られた時に運命を賭す者・d00492)が座っている。
     店内が見渡せる場所だ。
    「まぁ、流石にこんなに忙しすぎると精神的に参るよね……」
     かごめが言う。
    「この暑い中、仕事するのも大変だよね。鬱憤貯まるね確実に」
     唯人も頷いた。
    「と、言う俺たちも仕事だけどね。ちゃっちゃと片付けて遊ぼっ」
    「せっかくの海なんだから、殺人事件で台無しにはしたくないよね」
     抹茶のかき氷をすくうかごめを、若干羨ましそうに唯人が見た。作戦に支障をきたすかもしれないので、唯人はかき氷を我慢している。
     その隣では、唯が宇治金時練乳掛けのかき氷を食べていた。
    「美味しいっ」
     思わず頬が緩む。
    「賑わうだけのことはあるようだね」
     その様子を見て時継が微笑む。
     学生達の隣には高原・まや(まいぺーすでまいりましょう・d11298)と白金・ジュン(魔法少女少年・d11361)がいる。
    「はふぅ……真夏といえばかき氷ですよね~……」
     まやは目を細めいちごのかき氷を堪能した。
     ところが相席しているジュンは落ち着かない様子だ。
    「うう~、依頼中に変身しないで素の状態でいるって何気に初めてだ」
     目立つ格好がダメなのは分かる。けれどなんとなく不安だ。
     白波瀬・雅(光の戦士ピュアライト・d11197)と紺子の姿もあった。
    「折角の楽しい雰囲気を壊したくは無いっすね。手早く終わらせて、自分達も海の家で美味しいものを食べるっす!」
    「ねー!」
     二人はメニュー表を開き色々とチェックをしている。
     海の家入口近くには四月一日・いろは(剣豪将軍・d03805)が待機していた。
    「何となく普段の六六六人衆とは芸風が違うんだよね」
     良からぬ事の前触れでなければいいけれど。
     考えていると、厨房の入口付近で動きがあった。思考を切り替えすぐに動けるよう準備した。

    ●速攻で
     男が厨房から姿を現した。
     時継が自然な感じで立ち上がる。店内を歩きながら、出てきた男の様子を探った。
     男がなにかぼやく。一般の客は男に気づいていないが、灼滅者達は理解した。
     あれは古賀・則夫だ。
     則夫が懐から包丁を取り出す。瞬間、仲間達が一斉に動いた。
     いろはが『ただ今休憩中』の張り紙を看板に貼り付けた。興味本位で覗き込もうとする一般客を制する。
    「お気になさらずにだよ。ちょっと食器を落としただけだから」
     穏やかにそう言って、身体から殺気を立ち上らせた。
     看板を覗いていた客達が立ち去り、海の家周辺に人の影が無くなる。
     辺りを確認しいろはは店内に戻った。
     則夫が包丁を振り上げた。狙いは厨房付近にいたカップルだ。
    「ああ、かき氷美味しいなぁ」
     言いながらかごめがカップルの視界を遮るように体を動かす。結果、カップルは則夫に気づきもしなかった。
    「毎日毎日、忙しすぎるんだよっ」
     突き出した包丁は、唯人がその身で受け止めた。
    「バベルの鎖があっても痛いものは痛いね……」
     とは言え、唯人は包丁を握る則夫の手をガッチリと掴む。
     そこへ雅がひらりと飛び込んできた。
    「あなたの相手はこっちっすよ!」
     極力力を抑え、あっさりと則夫を投げ伏せた。
     ここに来て騒動に学生が気づいたようだ。すぐにジュンが視界を遮るように前に出た。
    「熱中症で倒れたみたいだぜ?」
     自然な感じで誤魔化す。
    「暑さにやられてしまったのかな?」
     時継も騒動を見つめる客に聴かせるよう呟き、仲間に目配せした。
    「皆様に安らかな眠りを……」
     合図を受け、まやが周囲の一般人を眠らせる。
     皆その場で眠りについた。則夫も同様に目を閉じる。
     海の家が一瞬静まり返った。
     唯人の服に少しだけ血が滲んでいる。いろはがすぐに傷を癒した。
    「今だよ。手早く済ませてしまおう」
    「うんっ」
     時継の言葉に慌てて唯が頷く。念のため、ハンカチで掴むように黒いカードを抜き取った。
     一体どんな物だろうか。雅が確認するように覗きこんだ。
     黒いカードの詳しい分析は学園に帰ってからになるだろう。
     ジュンと雅が眠る則夫を休憩室まで運んでいった。
     周囲の客が目を覚まし始める。一人の客がぼんやりとこちらを見た。
    「熱中症みたいだったよ。意識が朦朧としていたかもしれないね」
     時継がそう説明すると、客は納得したように頷いた。
     他の客はさして興味を示さなかった。
     いろはが殺界形成を解除する。人払いの時間は短かったので、売上に影響はないだろう。
     休憩室で則夫がようやく目を覚ました。何をしていたのか覚えていない様子だった。
    「少し休んだらまたおいしい料理を作ってください」
     ジュンが声をかけると則夫は恥ずかしそうに頷いた。
    「俺、もしかして倒れたか。すまない」
     ジュンと雅に礼を言い、則夫は厨房に戻った。その態度は常識的で、あんなカード1枚でおかしくなっていたとは、と思うと複雑だった。
    「一件落着、かな?」
     皆が揃った所で時継が言う。他の客もしっかりとフォローした。
     お互い顔を見合わせ、頷きあった。

    ●そして臨海学校
     雅と待ち合わせをしていた縁は、うきうきしながら焼きラーメンを注文する。
     海の家は来たことがないし、メニュー表を見るのも楽しい。
     まずはかき氷だ。雅はイチゴで縁はみぞれ。
    「あら、美味しいです。ふわふわで、食感も良いですし」
    「そうっすね! シロップも甘酸っぱくていい感じっす」
     そうしているうちに、焼きラーメンも到着した。
    「具材がみんな大きくて、ボリュームが有りますね。ん、美味しいっ。この濃厚なスープが何とも絶妙です」
     興奮気味に縁が言う。
     熱々の焼きラーメンは、あっという間に二人の胃袋に入っていった。
    「白金! みんな来たよ~!」
     フリルいっぱいのワンピース水着を身に纏った断がジュンに甘えるように飛びついた。菫もその後ろから姿を見せた。
    「フフフフ……白金先輩や断さんと一緒なのは初めてで楽しみなのです!」
     まずは、皆でかき氷だ。
    「それ美味しそう……食べさせっこする? ……はいあーん」
     断がそっと差し出した宇治金時のかき氷を菫がパクリと味見する。
    「ん~、冷たくっておいしいですね……」
    「あ、そっちのもちょっと頂戴?」
     ジュンが菫のメロン味に手を伸ばした。
    「くぅ~、キーンと来た! でもうまいね」
     言いながら、今度は自分のかき氷を断に差し出す。
    「甘い♪ ……またこれて良かったね……食べる?」
     お互い味見し合いながら、楽しんだ。
     柚羽は店員にアイスを注文していた。
    「おススメのアイスください」
     とりあえずアイスだ。日の下で長く遊んだので、冷たいアイスが凄く食べたい。
     出されたのは、オーソドックスなバニラアイス。これが海の家のアイスならば、受け入れて食べるのみ。
     柚羽はもきゅもきゅと食べ始めた。
    「海の家は初めてですけれど。海の家で食べるアイスは格別なのです」
     ほろり口の中でアイスが溶けていった。
    「やっとゆっくりできるー」
     かごめは溶けた残りのかき氷を食べながら、深く椅子に腰掛けた。
     砂浜に近い席を避け、涼しい店内の奥に座り込む。黒の普通の水着の上に、パーカーという格好だ。
     フードをかぶったまま、砂浜を眺めた。
    「みんな元気だな……はー……暑い」
     パタパタと、片手で扇いでみる。
     それにしてもHKT六六六とは。自分の知るモノと随分印象が異なる。ただのカードがこのような事件を引き起こすなど、信じがたい。
    「まあ、うん。例のフライングメイド服の件があるからなぁ」
     どこか遠い目をしてかごめは呟いた。
     唯人と雨音は海水浴を楽しんだ後、海の家へ戻ってきた。
    「いい天気……気持ち良いけど、焼けちゃいそうね」
     雨音が空を見上げる。
    「俺、日焼けで背中ヤバイかも?」
     背中がヒリヒリとする。雨音がくすくすと笑った。
    「唯人さんのおかげでわたしは大丈夫そう。だから言ったのに……遠慮なんてするから」
     遊泳前に、唯人が雨音の背中に日焼け止めを塗ったのだ。だが、気恥ずかしさからお返し塗りを辞退した。
     改めて雨音を見る。白い肌と水着姿に、お返し塗りを辞退した事、ちょっと後悔した。
     目のやり場に困り、誤魔化すように唯人がかき氷を一気にかきこむ。
    「うぅ……キーンて……」
     悶絶する唯人を見て、雨音がふふっと笑った。
    「大丈夫? 一気に食べるから……」
     事件が終われば穏やかな時間。
    「ふふ。たまには、こういうのもいいわね」
     雨音は笑い、また空を見上げた。
     浜辺では『ラトリ屋』の面々がビーチバレーを始めていた。
     雅も加わり気づけば2対2の試合形式になっている。
    「面白そうっす。いくっすよー!」
     雅とジュンの組からサーブだ。ゆるやかに弧を描いたビーチボールが、菫と断の組の陣地に入ってきた。
     断が腰を落とし、綺麗なトスを上げる。手抜きなど一切ない。ガチで本気だ。
    「とりゃああああぁぁぁ!!!」
     勢い良く菫が飛び上がる。全身をバネにしたようなジャンプからの、強力なレシーブが鮮やかに炸裂した。
     のほほんとした自分の陣地と温度差を感じたジュンだったが、時すでに遅し。
    「ちょ、ちょっとタンマ! ぎゃふんっ」
    「ああ、大丈夫っすか?! い、生きるっす!!」
     雅の声が遠く響く。まだまだ日差しの暑い砂浜で、ジュンが見事に吹き飛ばされた。
    「うわあ!? ご、ごめんなさい!! 治療しないと……!」
     慌てて菫が救急箱を取りに走った。
     海の家では打ち上げが始まっていた。
    「紺子、それ一口貰っても良いかな? いろはのブルーハワイを分けてあげるから」
     これ以上色黒になるのもあれだから、と、いろはは隅のほうでメニューとにらめっこをしていた紺子の隣りに座った。
    「いいよ。私の、スイカもどぞー」
    「スイカ?」
     何故こんなマイナーなものを……? 『切腹』と書かれたTシャツが揺れた。
     とは言え、せっかくなので一口食べてみる。
    「これは、……スイカ味だね」
    「でしょー。あ、ブルーハワイ美味しい。ありがとー」
     何とも形容しがたいが、間違いなくスイカ味のかき氷だった。
     そこへラーメンが運ばれてくる。
    「あっ私が配膳いたしますね」
     まやがさっと手を伸ばす。いつもの着物から変わり、今日は水着姿だ。
    「しかし博多ラーメン、替え玉出来るなんて本格的だよね!」
     唯が目の前のラーメンを眺めた。
    「替え玉すると他のが食べれなくなるかもしれない……でも、限界に挑戦したい気も……!」
     その肩を紺子がそっと叩く。
    「同士よ。替え玉を頼もうぞ!」
    「そうだね! 一玉でも替え玉するかな!」
     瞳に炎を灯し、二人箸を持つ。
    「ふふふ。あ、モツ鍋も来ましたよ。皆で分けましょうか」
     まやは微笑んで二人を見、手際良く小皿を配る。モツの他ニラやキャベツも小皿に取り、一口食べた。
    「真夏に食べるモツ鍋というのもとてもいいものですね……すごくおいしいです」
     時継はレモンのかき氷を食べながら、皆の楽しげな様子を見ていた。
    「けっこうたくさん食べるんだね」
     紺子に声をかける。
    「うん。でもまだお腹の方から苦情は来てないから大丈夫」
     ぐっと親指を上げる紺子に、苦笑いが漏れる。
    「食べ過ぎてお腹を壊さないように、だよ」
     すると紺子はぱたたと手を振った。
    「まさかまさか。子供じゃあるまいし」
    「ああ、ごめんごめん。別に子供扱いをするつもりはないんだ」
     けれど、どうも年下の子に対しては、そうしてしまうところがあるのも事実かもしれない。
     そこに、唯がメニュー表を差し出してきた。
    「まだ美味しそうなのあるかな? もう少し頼まない?」
    「焼きそばとフランクがまだないです。頼んだほうがいいと思います」
     すぐさま紺子が手を挙げた。完全に、欲望を制御できない子供である。
     まあしかし。時継はまた笑顔で皆を眺めた。
    「……せっかくの臨海学校、最後まで楽しまないとね」
     結局のところ、それだ。
    「フランク来ましたよ。いろはちゃん、いかがです?」
    「うん。もらおうかな」
     まやの差し出したフランクにいろはが手を伸ばす。まだまだ打ち上げは続くようだ。
     天文台通りキャンパス高校3年9組のメンバーは、水着姿で浜辺に集合した。
     潜水服を着た八九三は、レンタル水着(ビキニしか無かった)に着替えさせられる。
     こうなったら、と。八九三は胸と足を隠しつつ、高速カニ歩きで海に向かった。
     このまま一気に水中へ! と思った矢先に、がしりと両腕が掴まれる。
    「極道が恥ずかしがって水中に逃げるなんて想像の範囲内だからな」
     淼がニヤリと笑う。
    「海まで来た時点で諦めろ。折角なんだ、可愛く撮ってもらえよ?」
    「俺は海に入るんだっ。か、かき氷も、水中で食べるっ」
     顔を真赤にする八九三。
     その両側では、
    「旅の記念はやっぱり写真ですよ! 八九三さんやミキさんの水着かわいい!」
    「やくみさんとリーファさんはスタイルいいですねー。見ていて幸せになれます。男性陣も中々に引き締まった体をしていて眼福ですね」
     リーファとミキが八九三の腕をガッチリと抑えている。
     そこへ辰人がやってきた。
    「八九三はビキニ似合っているじゃないか。リーファの流れ星プリントの水着も素敵だよ。ミキのシンプルなスクール水着、可愛さが際立つね。それじゃあ写真を撮ろうか」
    「そんなお褒め頂くほどの容姿でもありませんって」
     すらすらと感想を述べる辰人といえいえと手を振るミキ。二人の会話に流され、八九三をセンターに楽しい記念撮影をした。その後八九三は海へ走っていった。
     ひとしきり浜辺で遊び、海の家にむかう。
    「かき氷の早食い大会やろうぜ! もちろんビリのおごりで」
    「早食い? はははご冗談を」
     淼の提案をミキがかわした所で、かき氷が運ばれてきた。
    「やるなら受けてたつけど、それじゃ、まぁ頑張るよ」
     ブルーハワイを前に辰人が言うと、スマホを構えていたリーファが顔を上げた。
    「そうでした。早食い対決を忘れてはいけません」
    「用意すたーと」
     ミキの合図で三人はスプーンを取った。なお号令を出したミキはと言うと。
    「あ、店員さんオレンジジュースください」
     と、追加で注文など。
    「ぐはっ、あ、あたまがぁ」
     最初の勢い虚しく、頭痛で淼が悶絶する。
    「……っ」
     辰人は頭痛に襲われながら、必死に耐えている。
     一定の速度を維持したリーファが一着。耐えぬいた辰人が二着で決着が着いた。
     そろそろ小腹もすいてきたと色々注文する。
    「海の家といえばヤキソバやたこ焼きになるんだよね。汁物は持ち運びがしづらいし、カレーとかは重量があるから使い捨ての器だと保持できないからなんだろうけど……」
     辰人のうんちくを聞きながら、リーファがふと振り返る。八九三が海から高速で出てくるのが見えた。
     こうして、皆、海の家を楽しんだ。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 11
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