臨海学校~ドキッ! 水着少女の殺戮スイカ割り大会

     季節は夏。
     夏のレジャーと言えば真っ先に思いつくのが海か山で、ここ博多湾に面したとある海水浴場も、海水浴を楽しむ家族連れや若者達で賑わっていた。
     彼らは海で泳いだり、砂遊びやビーチバレーで楽しんだり、または疲れて海の家で食事をしたり体を休めるなどして思い思いに夏の海を楽しむのだった。
     
     そんな海水浴場に現れた、5人の少女達。
     年の頃は10代後半から20代と言った所で、いずれも見事なプロポーションの体に大胆なデザインのビキニを身につけ、そのグラビアのような姿に自然と周りの視線が集まる。
    「フフッ、思った通りいっぱい人がいるわね」
     黒いビキニを着た少女が、周りを見回しながら呟く。
    「ねえ、早く始めよう」
     青いビキニを着た別の少女が言うと、
    「そうね、じゃあスイカ割り大会を始めましょう」
     続く赤いビキニの少女の言葉に、彼女達の胸の間に挟まっているカードのような物を何だろうと凝視していた男が首を傾げる。何故なら少女達はスイカを1個も持っていないからだ。これからスイカを調達するのだろうかと男が思っていると、赤いビキニの少女がいきなり男に近づいてくる。
     一体何の用だろうと男が訝しむと、少女はいつの間にか手に持っていたバットを振りかぶり、男の頭へ無造作に振り下ろす。男の頭はスイカのように派手に割れ、血と脳漿が砂の上や、少女の肌やビキニに飛び散る。
    「あーっ、スタートの合図もなしでずるーい!」
    「私達も急いでやるわよ!」
    「一番たくさん割った人が優勝だからね!」
     他の少女達が口々に言いながらバットを持つと、突然の惨状による放心状態から回復してパニックになる海水浴客に向かい、胸を揺らしながら駆け出すのだった──。
     
    「集まったようだな」
     夏休みの最中だが、相変わらず事件となれば灼滅者達が集まる教室で、鳴瀬・慎一郎(中学生殺人鬼・dn0061)は灼滅者達を見回して、
    「さてと、この学校では夏休みに臨海学校があるみたいだが、その候補の一つだった九州で大規模な無差別連続大量殺人事件が起こるそうだ」
     相変わらず愛想に乏しい表情と口調で慎一郎は話す。
    「大規模とは言ったが、事件を起こすのはダークネスでもなければ眷属や強化一般人でもなく、普通の一般人だそうだから、俺達灼滅者なら簡単に阻止できるだろう。ただ事件の裏に、組織的なダークネスの陰謀があるようで、現時点でその目的はまだ分からないそうだ」
     とは言え無差別連続大量殺人が起こるのを見過ごすわけにはいくまい。
    「殺人事件を起こす一般人は、何かカードのような物を持っていて、それに操られて事件を起こすらしい。で、事件を阻止した後でそのカードを取り上げれば、直前までの記憶をなくして気絶するそうだ」
     後は気絶したその相手を休息所などに運べば大丈夫だろう。担当者などに上手く説明する必要はあるだろうが。
    「で、俺達が担当するのは、博多湾沿いの海水浴場の1つにやって来る女子5人組だ。そいつらはスイカ割りと称して海水浴客をバットで襲うそうだが、所詮一般人だからサイキック一発でKOできるかも知れん。だからと言って油断はするなよ」
     教室に集まる灼滅者達を睨み付けて慎一郎が言うと、一部の灼滅者がウッと声を詰まらせる。
    「ああそうだ、その海水浴場には一般人の海水浴客が大勢いるから巻き込まれないようにする事も必要だ。ただし、事前に人払いなどをしたら相手が怪しんで去ってしまうから、避難などは向こうが事件を起こしてからになる」
     夏休み中は海水浴客も相当な数になるだろう。既に考え始めているのか数人の灼滅者達が難しい顔で唸り声を上げる。
    「敵の狙いやカードの分析などは、現場ですぐ調べられるものじゃないから、皆が戻ってきてからやることになるだろう。あと最初も触れたが、今回の事件の解決は臨海学校と同時にやることになるから、事件を阻止した後は、存分に楽しむといいだろう」
     海水浴場なら泳ぎや砂遊びなど、楽しみ方は色々あるだろう。話の内容や普段の言動などから察するに、慎一郎本人は積極的に遊びに関わる気はなさそうだが、その辺りを読んでいるらしい一部の灼滅者達は、何か一案ありそうに慎一郎の方を見るのだった──。


    参加者
    アプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)
    夜空・大破(白き破壊者・d03552)
    神坂・稜(叫びたいほどカッコイイ・d06934)
    黒崎・紫桜(日常を守護する葬焔の死神・d08262)
    イルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)
    神園・和真(カゲホウシ・d11174)
    轟磨・煉糸(吟遊糸人・d13483)
    久鷲見・珠郎(マッジョーレ・d15514)

    ■リプレイ

    ●夏の海は幻惑?
    「んあ~、暑いっすね~……」
     季節は夏、夏と言えば海水浴と言う事で、博多湾に面したとある海水浴場で、家族連れや若者達の間を歩きながら、アプリコーゼ・トルテ(中学生魔法使い・d00684)がぼやく。
     灼滅者達はここで無差別連続大量殺人を起こすという5人組の少女を探すに当たって、相手は操られているが強化されていない一般人という事なので、効率よく探すため1人もしくは2人に分かれて海水浴場を回っていたが、今の所それらしい相手は見つかっていなかった。
     スイカを抱えながら隣を歩く夜空・大破(白き破壊者・d03552)も、
    「本当ですね。今回の依頼は、相手にしても、状況にしても気が乗りませんし、操られている5人組に興味がまったく湧きませんし、早く終わらせて雪音さんたちと遊びたいです」
     そう言って溜め息を吐く。聞く人が聞いたら激怒するかも知れない発言だったが、幸いと言うべきか、波の音と周囲の海水浴客のざわめきに掻き消されるのだった。

    「んー。こういう所で食べるとナゼか美味しいよね!」
     少し離れた場所で、かき氷片手にご機嫌で言う神坂・稜(叫びたいほどカッコイイ・d06934)に、
    「何呑気にかき氷食ってるんだ」
     いささか刺々しい口調で黒崎・紫桜(日常を守護する葬焔の死神・d08262)が睨んでくる。
    「分かってるって。ナイスボディーでカード持ったビキニ姿の5人組探しゃいいんだろ?」
     忘れてませんよというように稜は返す。
    「あと、スイカ割りとか言ってるそうだから棒状の物も持ってると。どうにも蝿叩きのアイツを思い出すんだが……」
    「蠅叩き?」
     紫桜の言葉の中に気になる単語を見つけて稜は聞き返すが、紫桜は「今回とは関係ない、多分な」と答えてそれ以上話そうとしない。何か踏み込まれたくない事だろうかと稜は思うが、その時答えてくれる者は誰もいなかった。

    「む、そっちにはおらんかー?」
     時代がかった口調でイルル・タワナアンナ(勇壮たる竜騎姫・d09812)は携帯電話の通話を切ると、相手側の探索の成果も芳しくないらしく、「む~」と眉を寄せる。そんな不機嫌な仕草も、すらりとした手足と腰、そして巨乳というボディーラインにビキニ姿だと魅力的に映るのか、周りの男達の視線は最低でも数秒間は彼女に止まる。
    「10代から20代、プロポーションの良い水着姿の5人組、か……」
     事件を起こす5人組の特徴を呟きながら、イルルと組んだ神園・和真(カゲホウシ・d11174)は辺りを見回すと、水着姿の5人組の少女達が目に入る。
    「どれどれ、と……」
     和真は身構えもせず少女達に近づき、
    「あ、すみません、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、もしかして、何かの写真集に載ってたりした人じゃないかな?」
     そう軽い調子で声を掛ける。少女達は無邪気に喜ぶが、彼女達の全身を見回してもカードらしき物は見つからなかった。
    「ごめん、人違いだった」
     あっさり背を向けて和真は少女達の元から立ち去ると、疲れた表情で額に手を当て、
    「はぁ……好きでもない人にナンパっぽく声を掛けるなんて、苦痛だ……」
     そう重い溜め息を吐くのだった。

    ●夏の海は危険?
    「お姉さんと同じようなスタイルのいい5人組見かけてねーか?」
     目的の5人組でなくても、同じように水着姿の若い女性を見つけると積極的に声を掛け、そう尋ねるのは轟磨・煉糸(吟遊糸人・d13483)。知らないと返されても、
    「そっか、さんきゅーな」
     そう笑顔で煉糸は爽やかに離れ、また探し続ける。
     一方彼と組む久鷲見・珠郎(マッジョーレ・d15514)も同じ方法で探すのだが──、
    「あ、あの、すみません……」
     ガチガチに緊張した様子で、ぎこちなく声を掛けるものだから、流石に相手も哀れと思うのか、
    「ごめんなさい、友達を待たせてて……」
    「すみません、本当にすみません!」
     などと、人によっては頭を下げられる有様だった。
    「くっ、一般人を殺戮に利用してくるとは……」
     早くも疲労困憊の様子で歯噛みする珠郎。
    「明るい夏の日差しにダークネスは似合わないが、惨劇も御免被る。早く、終わらせよう……」
    「いや、何かさ、珠郎の方が惨劇って感じじゃね?」
     そう煉糸が突っ込みを入れ、直視するのも辛くて他所に目を遣ると、視線の先に5人組の少女達が歩いているのを見つける。年の頃は10代後半から20代と言った所で、いずれも見事なプロポーションの体に大胆なデザインのビキニを身に付け、まるで雑誌のグラビアを見ているようだった。
    「おい、例の5人組かも知れないぞ」
     煉糸は砂の上に崩れ落ちている珠郎の肩を叩いて立ち上がらせると、それぞれ違う方向から5人組との距離を慎重に縮めていく。そして胸の辺りが見える距離まで近づき、胸の間にカードのような物が挟まっているのを見つけると、煉糸は珠郎の方を見て、彼も同様にカードを確認したらしく、煉糸に向かって頷き、携帯電話を出してくる。事前に交換しておいた他の灼滅者達の番号を呼び出しているらしかった。
     煉糸は連絡を珠郎に任せる事にして、5人組に向き直る。流石に彼女達ほどのレベルになると、男達も気後れするのか、周囲は誰も寄ってこないエアポケット状態になっていたが、煉糸は臆する事なく中へ突入し、5人組に向かって歩み寄る。
    「ねえ、お姉さん達、俺達と一緒に遊ばない?」
     何の捻りもない、ストレートな誘い文句。周りの男達も「あれは撃沈するだろう」と言う目で煉糸を見る。しかし、
    「ねえ、どうする?」
    「そうね、どうせスイカ割りする予定なんだし」
    「今ここで始めちゃう?」
    「そうしよっか」
     予想に反して少女達はまんざらでもない様子で話をする。下手に凝るより敢えて正面から挑んで彼女達の注意を惹こうという煉糸の狙いは見事に当たった。
    「じゃあ最初はこの人で──」
     そう言って5人組の1人、赤いビキニの少女が胸を見せつけるように煉糸の前に出る。胸の間に挟まっているカードを、近くで見たら他に何か分かるだろうかと見ていた煉糸に、少女はいつの間にか手に持っていたバットを頭めがけて振り下ろす。普通の人間ならこれで倒れるか、傷が浅くてもよろけるかする所だが、
    「痛てーじゃねぇか。俺の頭はスイカじゃねーぞ!」
     予想していた攻撃だったが、敢えて避けずに額で受けた煉糸が、少女達を睨み付ける。
    (「てめぇの思考読ませてもらうぜ!」)
     煉糸はテレパスを発動して、少女達からカードに関する情報を探ろうと試みるが、感じ取れたのは煉糸に対する困惑や苛立ちといった、表面的な感情だけで、煉糸は心の中で舌打ちする。
    「えー、何で割れないの!?」
     そうとも知らず困惑する赤いビキニの少女に、黒いビキニの少女が「ちゃんと本気で殴ったの?」と訝しむ。
    「私達、このスイカ割り大会で人間を卒業するのよ!」
     青いビキニの少女が続けて言うと、
    「他を割りましょう!」
     黄色のビキニの少女が他の海水浴客を標的にしようと違う方向を振り向くが、
    「スイカならこちらにありますよ。余っているのでよければ」
     珠郎からの連絡を受けて駆けつけた大破が、スイカを差し出して来て進路を塞ぐ。
     ピンクのビキニの少女が流石におかしいと思ったか、反対方向へ駆け出そうとするが、いきなり足元の砂が、何かが落ちてきたように巻き上げられ、思わず少女は足を止める。
    「お姉さんたち、モデルみたいな体型っすねー」
     マジックミサイルを足止めに使ったアプリコーゼが、そう言いながらやって来る。他の灼滅者達も続々と駆けつけてきて、
    「どうだ、何か分かったか?」
     鳴瀬・慎一郎(中学生殺人鬼・dn0061)に尋ねられ、煉糸が首を横に振ると、慎一郎は「そうか」と短く答えて身構える。
    「美人なら巨乳と言うけどな、手前の面構えじゃ脂肪の塊って呼ぶんだよ!」
     稜が啖呵を切り、紫桜も不快そうに、
    「……アイツがちらついてイラつくからな。さっさと片を付けるぞ」
    「承知じゃ、そぉいっ!」
     イルルが答えながら飛び出し、勢いの乗った当て身を赤いビキニの少女に叩き込む。一般人向けに手加減しているとは言え、彼女を気絶させるには十分だった。
    「それじゃ、早々に片を付けようか」
     和真がそう言って王者の風で威圧すると、ダークネスに操られているとは言えやはり一般人だからか、少女達は「ヒッ──」と放心して砂の上にへたり込む。
    「はい、これでお終いですね」
     大破がピンクのビキニの少女に近づいて、胸の間からカードを抜き取ると、少女は糸が切れた人形のように気を失って倒れる。続いて慎一郎も事務的に淡々とカードを取り上げていくのを見て、
    「お前ら、よくそんな平然と女の胸に手を出せるな?」
     半ば呆れた口調で煉糸が尋ねると、
    「雪音さんの胸だったら迷いますけど、他は別に」
     当たり前の事のように大破が答え、
    「女だろうが何だろうが、敵は敵だ」
     続いて慎一郎も答えると、
    「ああそうかい……」
     もはや煉糸は投げやりに答えるしかなかった。

    ●夏の海は灼熱?
     その後、倒れた少女達を「熱中症か貧血で倒れたみたいだ」と言って救護所へ運び込むと、ここでは良くある事らしく、係員は何も疑いもせず彼女達を奥へ運んでいった。
     と言うわけで──、

    「あ~、暑い時にはきもちいいっすね~」
     アプリコーゼは早速海に入って、太陽で火照った体を冷ましていた。
     それから思うままに泳ぎ、疲れて砂浜に上がると、他の海水浴客の姿が目に入る。
     アプリコーゼは若い女性の海水浴客の体型、特に胸をひとしきり見た後、自分の胸に目を遣ると、
    「私はまだ中2なんだ、これから成長するんだ、こんな事で闇墜ちなんてしない……」
     自分に言い聞かせるようにブツブツと呟く。
    「そうだ、あの子はまだ小2で、ESPで作った偽物のナイスボディーなんだ……」
     そう半眼で睨む視線の先には、事件を防いだ後もエイティーンを解除せず、『光画部』の仲間達とビーチボールで遊んでいるイルルの姿があった。

    「ほら、あーる、アタック!!」
     セーラーワンピース姿で『光画部』の部長・保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)が繰り出したビーチボールが或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)の顔面を直撃する。
    「愛の試練が痛いですよーまぐろさんー」
     仲次郎が抗議しつつ、「こっちからも、エイ!」と返すと、
    「え、ちょ、ちょっと待って!?」
     このタイミングで返してくるとは予想外だったらしく、まぐろは足がもつれてベターン! と転び、そこへ波がザバーン! とやって来る。
    「あ、まぐろさん、大丈夫ですか!?」
     すぐさま仲次郎が駆けつけて、砂まみれのずぶ濡れになったまぐろを助け起こす。それは世に言うお姫様だっこという体勢で、格好のシャッターチャンスに巽・空(白き龍・d00219)ら『光画部』の面々が持参したカメラで我先にと撮影する。
    「何すんのよ、みんな!」
     抗議するまぐろに、
    「シャッターチャンスは逃さぬ、それが光画部じゃ」
     イルルが言い返すと、
    「もう、みんなひどいじゃない!」
     などと言いながらもしっかり笑顔なまぐろだった。

     そこから少し離れた場所では、『武蔵野ゲームセンター』の面々が水鉄砲合戦を繰り広げており、最初は無邪気に水を掛け合っていたが、徐々にヒートアップしていき、
    「ファイアはいついかなる時も全力全『壊』なの!」
    「目がぁ目がぁ!」
    「九十九テメェやりやがったな!」
     かなり殺気立った様子の撃ち合いに発展しているようだが、水鉄砲だから死人は出るまいと、周囲はそっとしておく、と言うか巻き込まれるのが嫌だから避ける事にしたようだった──。

    ●夏の海は惨劇?
    「なあ、どうして俺がこんな事になってんだコラ!?」
     首から上だけ残して砂の下にに埋められている状態で凄む紫桜。その周りには『蒼桜』の面々が取り囲んでいて、
    「埋めるのはただのお約束です」
     笑顔で大破が答える。
    「あと、鳴瀬を呼ぶための作戦な」
     木嶋・央(黄昏守護せし執行人・d11342)が続けて言う。
    「と言うわけだから、逃げられないようにもっと砂を乗っけようねー!」
     シュネー・リッチモンド(孤毒・d11234)が呼びかけると、他の面々が砂を持って紫桜に寄ってくる。
    「ぶわっ、口まで塞ぐな! 窒息死するだろうが!」
     そんな紫桜の叫び声を背に、シュネーと影崎・雪音(白焔の神姫・d12376)が慎一郎のいる海の家へ向かうのだった。

     海の家では慎一郎、珠郎、ソロス・スナシロ(翅亡し鳥・d16534)が、軽食やかき氷を食べつつ外を眺めていたが、
    「紫桜が埋まって出れなくなったから助けるの手伝って?」
     いきなりシュネーがやって来て、そう慎一郎に手を合わせて頼んでくる。
    「お前達、他にもたくさん仲間と一緒に来てるだろう。そもそも何で出られなくなるほど埋まるんだ?」
     流石に場所や設定に無理があったか、あからさまに怪しい物を見る目で慎一郎が言ってくるが、
    「とにかく、早く来て!」
     ボロが出る前に連れ出そうと、シュネーと雪音が慎一郎の手を強引に引っ張り、
    「まあまあ、折角助けを求めて来たんだから、行っておいで」
     ソロスも慎一郎の背中を押す形で手伝う。
    「ほら、久鷲見さんも」
     珠郎もソロスからいきなり声を掛けられ、
    「えっ、俺も!?」
     何でという表情の珠郎だが、それでも周りに流される形で付いていく羽目になるのだった。

    「──で、どうなったらこんな埋まり方をするんだ?」
     首から下が埋まっているだけでなく、上も顔だけ残して砂でオブジェが出来ている紫桜を見てから、慎一郎は険しい表情で『蒼桜』の面々プラスアルファを見回す。
    「嘘ついてゴメンナサイ、ですが、楽しく遊びたかったのですよ。これ、兄さんが計画したんですよ?」
     あっさり自白(?)する雪音。
    「……えっと、騙してごめんね? 一緒に遊びたかったんだ……スイカ割り、しよ?」
     シュネーも迫力に押され、スイカを掲げて言うと、
    「そうか、スイカ割りか」
     頷く慎一郎に、周りが安堵の息を吐く。
    「で、スイカは幾つあるんだ? 1、2、3……」
     そう数え出す慎一郎。その指は何故かスイカでなく、周りの面々に向けられていて、何かに気付いたらしい大破が雪音を連れて脱兎の如くその場を逃げ出す。他の面々も数秒遅れて気付いた、と言うか現状を認めて──、

    「ふふ、皆楽しそうにしてるなぁ、また、思い出が一つ増えたね」
     離れた場所から友人達の様子を眺めながら、和真がペンを片手に風景をスケッチする。
    「皆様、楽しそうで良かったのです。鳴瀬様も楽しまれているといいのですけど」
     霧野・充(月夜の子猫・d11585)が言いながら、海の家で買ってきたかき氷を和真に差し出すと、彼の後ろにしゃがんでスケッチとその向こうで繰り広げられている光景を眺めるのだった──。

    作者:たかいわ勇樹 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 0
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