夏。
海。
照りつける太陽。
その下で、――。
「いっくよー!」「来ぉい!」
バゥン!
華やかな声と共に、空気の詰まったボールが弾かれる音がする。
海を前に砂浜にコートを張り、砂まみれになり、時に海に落ちながらする競技。
ふわふわとしてどこか予想が付かないボール。何より、当たっても痛くない。
そんなビーチボールを用いるビーチバレーで正確にはビーチボールバレ-。略して、ビーチボールである。
しかしその中で、突然黒い海パン集団が、黒いビーチボール片手に砂浜のある一角に集結した。その数6人。
その誰もが手に黒いカードを掲げている。そのカードに記された文字は、『HKT六六六』。
ざわつく周囲を余所に、その中のリーダー格らしき男がメガホンを握った。
「えー諸君! 今から俺達は人間を止めるぞォォォ!」
『オォ――ッ!』
「具体的に言えば、無差別殺人!」
『オォ――ッ!』
「俺達の武器はこの――殺人ビーチボォォル!!」
『ヒャッハァァァァ――――!』
取り出したのは真っ黒のビーチボール。
各々一人一個持っているそのボールはよく見れば刃物がくっついていた。
手製らしく、折れた包丁の先やらをガムテープで留めているというチープさが哀愁を誘うが、その莫迦げた発言を実現すると思わせるには十分の凶器。
その彼らがぐるんと辺りを遊ぶ一般客へと振り向いた。
皆、にやにやと笑いサーブの構えを取る。
「ゲーム……スタァ――ト!」
●
「皆さん、ついに夏休みです。臨海学校です!」
集まった灼滅者達を見るも早々、花咲・冬日(中学生エクスブレイン・dn0117)は興奮気味にぎゅっと拳を握って見せた。
その横には防水バッグ。
どうやら冬日も行く気満々らしい。
タオルに麦わら帽子がはみ出ているのを見るに、どうやら舞台は海のようだ。が。
――ビシィっと冬日は唐突に灼滅者達を指差した。
「しかし! その先で事件が起きるのがわかってしまったんです。皆さん、遊ぶのは事件を解決してから――さっそく説明に入りますね!」
しかし冬日の説明によると、今回事件を起こすのは、ダークネスや眷属、強化一般人ではなく、普通の一般人。
そのため、灼滅者であれば、事件の解決は難しく無いだろう。
しかし、この事件の裏には組織的なダークネスの陰謀があると思われ、目的はわからずとも無差別連続大量殺人が起こるのを見過ごすことはできない――ということである。
場所は博多湾周辺地域。
相手はHKT六六六人衆により黒いカードを配られた一般人達。
まるでカードに操られたように事件を起こすという。
「でも、逆に言えば、このカードされ取り上げてしまえば彼らは直前までの記憶を失って気絶します。集まった彼らはあくまで一般人――だから、うまくすれば戦わなくても解決することが出来るでしょう」
相手は殺人ビーチボールなる手製の凶器を持ち、無差別殺人を企てている集団。
だが、リーダー格の男も一人居るが強いという訳では無く、単にまとめ役になっているだけなので実力は変わらない。――あくまで、一般人である。
案外さくっと事件を終わらせそうな雰囲気に、冬日は小さく笑う。
「それに、敵組織の狙いやカードの分析などは、皆さんが戻ってきてから行うことになります。現場ですぐ調べられるものでもありませんし。だから――そう、終われば後は臨海学校です。場所はそのまま、ビーチボールしちゃいましょう!」
冬日も参加するとは、言わずもがな。
そして楽しそうに話し出す。
先ず、水着は着用のこと。――ただし、上からシャツを来ても構わない。
本来ビーチボールは4人一組と言われるが、後から合流する人達も居るだろうし、人数制限は解除する。
つまり、大人数になっても2グループにのみ分かれるのだ。
紅組と白組だと平凡すぎるので、犬組と猫組。
あまりに人数に差がある時は柔軟に対応して欲しいというが、――圧倒的な人数差バレーも面白いかも知れないと、冬日はぽつりと呟いた。
それともう一つ。
「ボールももちろん1個ではありません。どんどん増やしちゃいましょう。問答無用の無制限ビーチボールです!」
勝負ですっ――と、冬日は灼滅者達に宣戦布告。
なんてと笑いながら、冬日はビーチボールの束を防水バッグに詰め込むのだった。
参加者 | |
---|---|
ヴォルフガング・シュナイザー(Ewigkeit・d02890) |
天羽・冬希(ふゆくらげ・d03260) |
九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795) |
ストレリチア・ミセリコルデ(銀華麗狼・d04238) |
ミミエ・カザリ(機術士・d09474) |
嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475) |
鳴神・神流(白翼閃雷・d15240) |
秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451) |
●黒いボールのあの人達
カッ――と、太陽が砂浜を照りつけていた。
暑い。
しかし、もっと暑い集団がそこにいた。
「我々はー! するぞぉー!」
『オォーッ!』
「無差別殺人ー!」
『オォーッ!』
「夏ですね……いろいろな意味で暑い夏に。こんなのも沸く季節なんですねシュヴール」
ボルゾイ型の霊犬、シュヴールを連れたヴォルフガング・シュナイザー(Ewigkeit・d02890)は半目に近い感じでそれを見ていた。
呆れているようにも、嫌気が差しているようにも見えなくも無い。
――まあ、普通はこんな集団に近付きたくないだろう。
それは九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)も同じらしく、サングラスをくいっと上げる。
「HKT六六六……バカなの?」
じり、と近づきかけたその時、獅央を呼ぶ愛らしい声が聞こえて振り向いた。
「しおーくん、どうかな!」
リボンとフリル多めのピンクビキニでパレオ巻き。髪の毛はツインテ。
超可愛い仕草で獅央へと笑顔を向ける――彼女持ちの18歳鳴神・神流(白翼閃雷・d15240)は男の子。
そう、男の子。
獅央は男だろおまえというツッコミを我慢して、「凄く似合ってる、可愛い」と告げるが――、
「ちょ、カップルじゃないから!? ほら、向こうで冬日がすっげぇキラキラ見てるから!」
頬を染める神流の向こうでは、ボールを膨らます為に待機した花咲・冬日(中学生エクスブレイン・dn0117)が恋に恋するように、物凄く暖かく両手を重ねて見守っていた。
「みなさん!」
しかし一向に纏まらない一行に、秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)がぱんぱんと手を叩く。
「そろそろ行きましょう。……さっさと終わらせて、ビーチボールもしたいですしね」
にっこり笑えば、先ず清美はプリンセスモードを発動した。
煌びやかな姿でHTK六六六集に近付いて行く。
刃物ボールを手に殺る気満々だった彼らがそれに気付き、びくっとその視線を釘付けにする。
「なっ、なんだお前等! お前等も仲間に入りたいのか!?」
「そうじゃないの。聞きたいことがあるのよぉ~」
「うわ!?」
黒海パン集団の一人の腕は、いつの間にか嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)に抱き留められていた。今まで味わった事の無いドキドキ感を覚える程、一瞬でめろめろになっている。
「ちょちょちょお前等ァァァ! さては邪魔しに来たんだな! せっかく盛り上がってんだぞ、無差別殺人!」
一応取り纏め役を買っているらしい、リーダー格の男が黒いビーチボール片手にようやく気付いた。
絹代にしなだれられた1人は既に顔を真っ赤に昇天し掛けているので、彼は放置され、プリンセスのような風格の清美にすら気圧されるが、それでも残りの5人はそれぞれに刃物ボールを手に取る。
「お前等から――血祭りに上げてやる!」
●詰め寄られた黒い人達
「望む所ですわ」
対峙するストレリチア・ミセリコルデ(銀華麗狼・d04238)の表情からは余裕に溢れている。そして、ビシッとポーズを決めた。
「このストレリチア、容赦しませんわ!」
「そうですわ。こっちも……『叩くと怖いビーチボール』の用意は出来てますからね!」
ミミエ・カザリ(機術士・d09474)の手にも様々なビーチボールがあった。
見た目にはわからないが、ある仕込みのされたカオスボールである。
いや、しかしそれ以前に。
「……暑くねぇの?」
「こ、これが私の水着ですわ!」
HTK六六六集団に言われてしまったミミエが水着と言い張るそれは、どう見ても金属パーツの超暑苦しい機術魔導装甲132式。
「ちゃんと水着しているでしょう、アンダーとか……」
必死になるミミエに、海パン男の1人が笑った。
「なら……お前から受けろよ、秘技! 殺人ボォォ――――ル!」
空気の籠ったビーチボールが、男の手によりガッとサーブされた。一般人にしては――結構キツイサーブ。
そこにさっと掲げられたもの――それは、魔道書だった。
もう一度言う。魔道書である。
「魔道書ガード、ばりあー!」
「何ぃ!?」
魔道書という本に刃物がぐっさり刺さって少々心配ではあるが、所詮はビーチボール。ぽよんと跳ね返って落ちたのを、すかさずシュヴールが咥えてヴォルフガングへと回収終了。
「君達、そんなボールを使うつもりかい?」
天羽・冬希(ふゆくらげ・d03260)は緩く、穏やかに漂う青年。
だというのに今日の彼はひと味違う。スタイリッシュであった。
掛けてたゴーグル外し、じっと見据えれば思わずじりっと気圧されてしまう。
「ビーチボールはわいわい楽しむもの。刃物デコレーションなんて言語道断、お天道様に謝るんだね」
「うっ、く、」
「ねえ、それ欲しいなぁ~?」
「それに……ビーチボールよりももっと楽しい事をしませんか?」
絹代も清美も畳み掛ける。艶めかしくその脇腹をさすり、出所を探り、カードを狙う。
けれど返ってきた答えは老人に貰ったような――女の子だったっけ――男だったかもと曖昧で答えにならない。よく覚えていないようだった。
しかしそれでもカードを手渡そうとしない1人に清美はついに実力行使。
灼滅者がぶん殴ればカードを持っただけの一般人など一発KOしてしまったのである。
酷い。
「お願い、聞いてくれますよね」
にっこりと笑う清美だが――、
「ままま負けるものかぁぁ! 唸れ俺のビーチボール!」
1人がぐあっと腕を振り上げたがしかし、ボールは投げられる前に跳ね飛ばされた。
見れば、ストレリチアの神薙刃が舞い体勢を崩す。すかさず、影業付きのオーバーヘッドキックが華麗なるクリティカルヒット。
「はぶぅ!」
「こんな危険物は、どっか行っちゃえですのよー!」
なんて言葉もきっともう聞こえていない。
シュヴールは健気にまたボールを回収していた。
「おおおおのれえええ!」
リーダー格の男がわなわな震え、最後の意地とばかりにサーブを飛ばす。
しかしそれも正面からばんとボールと何かがぶつかる音。
狙いを定めた獅央のオーラキャノンが弾いたと思えばその姿は既に空で二段のジャンプ。その手に持っていたカードを奪っていた。
「はい、いただき!」
「さあ、最後はこれやっちゃいましょう!」
「任せてくださいなのです♪」
ずらっと並べたミミエのボールとスパイクの構え。
振り上げる神流のロケットハンマー。
「や、やめっ……」
「夏の楽しい青い海を真っ赤に染めようなんて言語道断なのです――!」
頭上で割れるビーチボールから降り注がれる白粉に胡椒。
其処は所詮一般人。
ふぎゃー! と叫ぶ彼らからカードを奪うのは、昆虫採集でセミを捕まえるよりも断然簡単だったという。
ただ――。
「この手の輩は頭に来ます。本来なら頚椎が砕ける音を聞かせてやりたいのですが、楽しい臨海にはなりませんので矛は収めます」
それでもヴォルフガングの苛立ちは収まらない。カードを奪う前にその血を捕食しようと手を伸ばしかけたその手を、冬日が重ねた。
「……カードを奪えば、終わります。こんな衝動も、記憶も、全部無くなります。『元々』こうだったのか決めるのは、カードを調べてからでも……良いと思いますよ」
彼らはただの一般人。
カードに操られて事件を起こした彼らは、カードを奪えば記憶を無くして気絶する。
後で調べましょうと告げた冬日は、「鞄に仕舞うよー」と手を振っていた冬希にカードを手渡した。
それ以上は止めず、ヴォルフガングがそのまま牙を立てたかは――誰も見なかった。
●対決! 猫組vs犬組
「さて、それじゃあそろそろ始めましょうか!」
全員ぐったり動かない迷惑な人達をひとまず日陰に置いたり砂浜に埋めて、冬日はどーんと宣言をする。
足下には散々膨らまし続けたボールが無尽蔵。
「そうですね。では私は犬組に入りますよ。シュヴール、貴方もこちらです」
尻尾をぴんと立てる凜々しいシュヴールに続き、冬希の手にも秘策があった。
コーギーの顔輝くボールである。
「ふ! 甘いな、可愛いわんこボールなら俺も用意してるから! 頑張ろうな神流!」
こちらは猫組の獅央と神流。
赤いフチのサングラスをカチューシャ代わりの獅央に、神流はにっこり愛らしく微笑みかける。
「僕達二人のゆーじょーパワーを見せてあげるんだからね」
「やだっ、……素敵です」
「恋人じゃねーから!?」
同じ猫組の冬日はあやっぱりきらきらしていた。
神流が彼女持ちの男の子だなんて綺麗さっぱり忘れてる。
「花咲さん! 私も猫組に入りますよ、それに――」
「オレもな!」
振り向いて、わっと顔を綻ばせたそこには吉祥寺キャンパス中学1年G組の清美と登。
「学園祭の時に話しかけてきてくれたのに、気付かなくてゴメン! 良かったらまた声を掛けてね」
「もちろん。だって私達、クラスメイトですから」
きゅっと手を3人重ねてやる気は満々。
「ナオちゃん! わたしも来たよ!」
「雛さん! 狼好きな私はもちろん犬組ですの!」
ストレリチアと雛子も嬉しそうにぎゅっと手を握る。
「喉元過ぎればなんとやら、命短しなんとやら……ま、遊べるうちに遊んでおけということだな。行こう、一。僕達も犬組だ」
一の手を引くのは律。
「自分は実況しても良いッスよ! 女性陣のプロポーションとか、プロポーションとか!」
鼻息を荒くする一へ、水着の種類がなければ性別がわからない程度のスレンダー体型の律の瞳の温度が低く低く凍えていったのを、一はまだ気付いていない。
「ニンニン、拙者も楽しませていただくにござるよ♪」
イガ栗のマークが入った赤の越中褌一丁。そんな忍者ことハリーが犬組に混じれば猫組ピンチ。
「ふふ、花咲様、覚悟!」
ミミエの宣戦布告にぐぬぬっと拳を握る冬日だが、その後ろに智寛。
「あまり上手ではないので、おそらく他の皆さんの足を引っ張ってしまうでしょうけどねぇ……」
と、流希。
「『猫組』なんて聞いちゃったら参加せずにはいられなかった」
猫大好き猫一筋芥汰――は、水着を着るキャラでは無いと言う事で、いつもの黒ジャージ。多少不安だが、海水に砂にまみれなければ多分問題無いだろう。
これで犬組と猫組は、8人と9人。
冬日はすうと息を吸った。
「ボール無制限、何でもあり。私達のビーチボール……いざ、開幕です!」
●バレーって、なんだっけ
「さぁ、真剣勝負ですわ! 空中戦とまいりましょうか!」
ミミエがいきなりダブルジャンプに空に跳ねた。
「甘いっすね! これでもくらうっす!」
「ええええっ!?」
飛び上がったミミエの身体を漆黒の弾丸が貫いた――今のって、絹代の制約の弾丸。ビーチボールですら無い。
「とんでもない戦いになったりしそうな予感。というか、もうそんな感じ。冬日は結構やる気な御様子?」
「え、えっ? はい! これでも私一通りの教育は受け――」
芥汰に話しかけられながらもレシーブの構えで待ち構えている冬日だが、そこに飛んで来たのは、
「わおーん!」
「ん? 今のシュヴール?」
獅央が二度見しても現実は変わらない。ボールにシュヴールがしがみついていたのだ。しかも、笑顔。
「こんな愛らしいシュヴールごと打ち返せないでしょう。完璧です」
「俺も行くよー」
更に冬希が続けてコーギーボール。
「花咲さんに向かってくる相手を片っ端から倒します!」
「俺もキャッチするよ。運動神経には一応自信があるからね!」
「皆さん……!」
ざっと前に出る清美と登の頼もしさに思わず潤む冬日の瞳。
しかしそれでもシュヴールは罪の無い霊犬。そんなボールを叩き落とすなんて酷すぎる。
「大丈夫、冬日。こっちにもにゃんこボールがあるから」
身体を張ってシュヴールを受け止めようとしていた冬日に芥汰がにゃんこボールを差し出せば、流希もこくりと頷いた。
このビーチバレー、どうやら心理戦バレーになっている模様。
ぽんと飛ぶにゃんこボールに、犬組もやっぱり負けていない。
「ナオちゃんアレやるか、がってんしょうち! いっくよー!」
雛子がくるりと正面に背を向けて、ストレリチアの足を両手に乗せる。
そしてそのまま、めいいっぱい上空にぽ――ん!!
「更に、エイティ――ン!」
飛びあがったストレリチアはその姿をないすばでぃーなお姉さんに変える。
「うおおお良いプロモーション! 食い込んだり色々跳ねたり揺れたり艶かしい!!」
一の手は完全に止まり、カメラを持ってこなかったことを悔やむ程にガン見していた。
「一、これは勝負なんだ、喰らえ! 一球入魂、我が渾身の一撃! フハハハハ!」
「違う違う、俺同じ犬組!!」
体型を根に持つ律からは何故か内部分裂が発生していた。
フルボッコにされる一はそれでも幸せそうに見えた――高々とジャンプする、そのプロモーションがよく見えるから。
「それなら……影縛りだ!」
それでも負けないのが猫組主砲の絹代。
ルールなんてあってないこの状況、絹代がストレリチアを影で絡めようとすれば、神流もまた獅央と頷き合う。
獅央の動きは獲物を追う獣のよう。
縦横無尽に駆け巡り、
「神流来い!」
全身のバネを使って足で神流を蹴り上げれば、神流と獅央の足が交差した。
「いっけー。スカイラブラブハリケーンです!」
「ラブラブじゃなくて友情だから!?」
ダンっと犬組の砂浜にボールが落ちる。
しかし見ればいつの間にか猫組側にもスイカやらカラフルやら柴犬ボールやら――。
「これぞ、イガニンポー・ボール分身の術にござる。ニンニンッ!」
「ふふふー、俺のボールが1つだけっていつ言ったー?」
ハリー、そして冬希。
犬組もなかなか手強い。それでも。
「簡単にはやられないよって、言ったよね」
「クラスメイトの力だって、見せてあげます」
増える魔球――もとい、ビーチボール。
ダンと飛ばせばまた返り、今度はまた打ち返せないボールが飛んでくる。
ボールは落ちて、シュヴールも落ちて、にゃんこボールを冬日が離さなくて――。
「ところでコレ、勝敗どう決めるんだっけー?」
ぽつりと、冬希が呟いた。
その瞬間、ヴォルフガングの背後から唸り声が迫ってきた。
シュヴールである。
「はて? 時にプルプル震えながら斬魔刀を私へ構えているのは何故ですか? あ、決して利用した訳では……」
「ワウッ!!」
飛びかかったシュヴールに、ヴォルフガングさん逃げて、超逃げてと――犬組も猫組も勝敗そっちのけで追いかける。
それがビーチバレーの終了となってしまった。
「たまには青春ぽいのも良いだろ。……青春?」
「……多分、青春ですねぇ……」
追いかけなかった芥汰と流希は、そんな彼らを温かく見守っていたのだった。
作者:斗間十々 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年8月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 9
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