臨海学校~勇気を出して、こ・す・ぷ・れ☆

    作者:一縷野望

     博多湾某海の家前――ここには、異様な熱気が満ちていた!
     ……なんというか、普段はインドア派なちょっとむっちりな殿方が目立つ。
     どうもヲタク系イベントでキャラをイメージした水着が着れるらしい。あまつさえそのまま泳いじゃえるらしい。
     真っ赤なチャイナにミニスカ水着!
     巫女さん風水着!
     男性用には執事服の上に黒水着!
     ウサミミ、ネコミミ、イヌミミも防水加工で安心だね!
    「あ、あの……」
     もじっ。
     おっと、チャイナの前を隠す素人娘が、今、注目を集める快感に目覚めようとしているぞ!
    「勇気をだし……ました」
    「「「おおおおおお!」」」
     怖れるように手を除けた彼女へ、野郎どもの歓声と喝采があがる。
    「そんなあたしを見て……ください!」
     ばっ!
     弾けるようにほとばしる『紅』
     すっげー演出効果凝ってるー、なんてのは錯覚だった。
     実際は彼女の握るナイフが、男達の間を踊り創りあげた血の池地獄。自らプロデュースですよね、わかります。
    「あは、あはははは♪ あたし、いっぱい殺します」
     だから見て見て見て!!!
     

    「夏休みと言えば、臨海学校!!」
     黒板に書いた文字をバーン! と叩く灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)に、 機関・永久(中学生ダンピール・dn0072)は小首を傾げた。
    「永久、ノリ悪いね」
    「ええっと……夏は、結構普段から、泳いでた、から……でしょうか?」
     海に特別感を抱かないとか……自分探しに突入した永久を置き、標は説明を続ける。
    「で、その行き先九州で、大規模な事件が起こるっぽいから、ついでに解決してきてよ」
     大規模と言っても、起こすのは一般人。コスプレした自分に群がる観客をナイフで斬り裂いての大量殺人が、海辺の一角で起るのだという。
    「強化一般人ですらないし、灼滅者ならさくっと解決できるでしょ」
    「でも、どうして急に暴れ出したん……でしょうか?」
     永久の問いに標は肩を竦める。
    「ダークネスの組織が絡んでるんじゃないかな。事件を起こす一般人は、カードみたいな物を持ってて、それら操られてるくさいんだよね」
    「カード、ですか」
     空中に四角を描く永久。
    「そ。だから無力化したらカードを取上げて。そしたら直前までの記憶をなくして気絶するっぽいから」
    「保護して……休憩所で休ませればよさそう、ですね」

     カードに操られるのは木村マイという女性だ。
     彼女はコスプレイベント「姫ヲどおる♪」のチャイナ水着で、自分に衆人の注目が寄せられた瞬間に殺戮を開始する。
    「現場は結構バタバタしてるから、短時間ならイベントの提供側に紛れたりもできそーだよ。自由参加のイベントだから観客になるのは難しくないし」
     皆で工夫してマイの殺戮を未然に防いで欲しい。
    「大立ち回りは……難しそう、ですか?」
    「コスプレショウの発展で、いけると思うよ?」
     キャラになりきって云々というやつだ。とはいうマイは一般人なので手加減は必須、お忘れなく。
     解決したら海で遊んでくればいいだろう。
     うまく納める事ができれば、コスプレイベントに参加してちょっと変った水着を着ることもできる!
    「目的はわかんないけどさ、放っておけないよね」
    「もちろん……です。行きま、しょう」
     そう言って皆を見る永久の腕には、しっかりと水中眼鏡とシャチフロート(膨らまし済み)が抱えられていた。


    参加者
    風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)
    杉本・沙紀(闇を貫く幾千の星・d00600)
    ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)
    色射・緋頼(兵器として育てられた少女・d01617)
    比奈下・梨依音(ストリートアーティスト・d01646)
    忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)
    日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)
    楪・奎悟(不死の炎・d09165)

    ■リプレイ

    ●主役を奪え!
     独特の空気を孕みあがる歓声の中、木村マイはタオルに秘めた刃が踊る未来を妄想する。
     ――もうじきステージはいっぱいの赫で染まるのね♪

    「密命により、貴殿の命貰い受けるでござる」

     怜悧な声と苦無の感触でマイの動きは止められた。
     命を奪う。
     まさに企んでいた事が紫苑のくのいち、色射・緋頼(兵器として育てられた少女・d01617)から発せられた。
    「そうはさせぬっ」
     ドン。
     安普請の舞台がやけに大きく啼いた。
     右裾から現われたのは女侍、忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)。ひっつめた髪を靡かせ参ります!
     キッ……ン!
     くのいちと女侍、偽物の武器から金属質な音が聞こえたのは流麗にして殺伐とした剣舞に魅入られたからか。
    『ええ?! ぶっ殺しデビュー邪魔し……』
    「さぁ!」
     マイの抗議は闊達な声に潰された。
    「はじまった純和風剣戟ショー!」
     シルクハットと蝶ネクタイな黒猫かぶりもの、中の人の熱中症を心配しちゃう。でもそんな懸念はオールタイムにゃんこさんな風雅・月媛(通りすがりの黒猫紳士・d00155)には無用!
    「果たして勝つのはどっち?!」
     左手に鮪、右手に舵木を抱え仁王立ちのどう考えても特異点、周囲が目を剥くが気にしないぞ。
    『ちょっとぉっ!』
     タオルが落ちてチャイナ水着が出てきたが観客は余り見てくれない、なにこの屈辱感。
    『勇気出したのよっ、見てよ!』
     頭に血が昇ったマイは自分を見もしない最前列へ斬りかかる。
     が。
    「そんなこと私がさせないよ」
     飛び入り参加な巫女少女、日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)が自分の腕を刺させて庇う。
    『おい、あれホントに刺さってんじゃね?』
    『えーまさかー』
     不安を孕んだざわめきを吹きとばさんと、軽快な少年の声が響いた。
    「あー、慌てないでくださーい」
     燃えるような赤髪の着流し少年、比奈下・梨依音(ストリートアーティスト・d01646)は、観客の後ろ側をぐるり走りながらアナウンスを続ける。
    「今舞台でやってんのはショーの一環でーす」
     後押しするように二人目の巫女の銀糸が熱気の中弾む。
    「沙希」
    「うんっ」
     ミルドレッド・ウェルズ(吸血殲姫・d01019)が沙希の手を取れば、ふわり舞台でひらく銀と黒の巫女少女。
    「巫女娘見参!」
     遠くはらはら見守る姉にウインクした沙希は、ミルドレッドと背中を合わせ寸分違わず札を構えた。
    『『『おおおおお!』』』
     舞台に食いつくお客様方を鎮める声音は貞淑なるメイドから。
    「お客様、どうかお席について下さいませ」
     そっと彼らの胸を押し杉本・沙紀(闇を貫く幾千の星・d00600)は快活に微笑みかけた。
    『ひゃーメイドさんに触ってもらえたー!』
    『お、俺もっ』
    「はい、お客様はこちらへどうぞ」
     砂浜に地響き立てて殺到する集団を巧みにマイから離すよう沙紀は立ち位置をずらす、もちろん笑顔で。
     突如坂道を転げるようにはじまったショーに男達はやんややんやと歓声をあげる、が……。
    『チャイナの子、ヤバくない?』
     こんな時でも冷静なのは衣装を見に来ていたコスプレイヤー嬢達である。
    「お嬢様方、どうかなされましたか?」
     コスプレショーは見せながらマイからは隠すように優雅に立つは180越えの長身長。楪・奎悟(不死の炎・d09165)はモノクル越しの瞳を柔らに眇めた。
    『きゃあああ!』
     黄色い歓声をあげて彼女達は奎悟の執事水着に不躾な指を伸ばす。
    『すっごい、実際着るとこーなるんだぁ』
    『案外イケてるよねー』
     水着! 執事!
     ……この珍妙な取り合わせがイケて見えるのは、モデルがいいからに他ならない。

    ●贅沢剣戟ショー
    「前に出すぎないでくださーい。ショーが中止になりまーす」
     内側に入った梨依音が走って観客を押し戻す背後、四人の乙女はマイを舞台の中央に誘導する軌跡を描く。
    『勇気出したのにぃ、はりきって殺そうとしたのにぃっ』
     無茶苦茶に振り回すナイフを緋頼は苦無で難なく止めた、が。
    「ッ!」
     急にがくんっと不自然に膝をつく。
    「――助太刀いたす」
    「敵に庇われるなど屈辱の極みでござる」
    「やぁれ! ここに来て成立する友情は泡沫か永遠か!」
     すかさず月媛が煽る中、
     一、
     二、
     三、
     バネ仕掛けのように直線的なナイフを模造刀が壊れぬよう気遣い玉緒は弾いた。
     ……四。
    「ッくぅっ」
     限界の模造刀を庇う為指に当て上体を折る。
    『ひゃっはー! アンタ達二人ぶっころころ殺しィ』
     舞台に響くマイの狂気に負けじと玉緒が叫ぶ。
    「そなたらの声援こそが力となるのだ! 頼む!」
     ――力を貸してくれ!
    『さーむーらーいー!』
     熱狂が梨依音が整理した列から興奮したお坊ちゃま達を突出させる。
    「お客様、どうぞご着席なさって応援ください」
     沙紀が押しとどめるが何だか届いてないくさい。
    「どうか、メイド長の沙紀の言葉をお聞きくださいませ」
     ので、奎悟も白手袋の手で優雅に強固に押し戻す。
    「メイド長、怒らせると、怖い……です」
     下っ端執事っぽい機関・永久(中学生ダンピール・dn0072)も頷き後押し。
    「お客様」
    「どうか」
    「「ご着席下さいませ」」
     力尽くでファンにして座らせたぞ。
     その間舞台は急展開――力得て立ち上がった女侍が切り拓いた路に巫女少女が、立つ。
    「あわせるよっ」
    「ああ」
     超ミニ袴の沙希とミルドレッドは背中合わせになり呼吸を揃える。二人を裂くように切っ先を向けつっこむマイ、だが斬れたのはつけ袖の残像。
    「こっちだよ」
     拳にオーラを纏わせたミルドレッドが猫騙し、ぱんと澄んだ音に瞠目したマイの額に、
    「はっ!」
     沙希の放った札が張り付いた。
    『?!』
     札を剥がそうとするマイを通りすがり峰打ちしたのは、緋頼。
    「おおっとこれにて、終幕!」
     マイがあっけなく倒れたのを誤魔化すように月媛が盛り上げ幕を引いた。

    ●海であそぼ☆
    「無事助けられて良かったわね」
     玉緒は羽織を脱ぐとマイの柔肌を隠すようにかけた、本当は遊ぶのに邪魔だからというのはさておき。
    「ショーはこれで終わりでーす! 引き続き、撮影会を楽しんでくださーい!」
     すかさず梨依音がメガホンでフォロー。折角の海の1日、無粋な痕跡は欠片だって残したくない。
    『ねーねー、着流しの君、侍ちゃんと並んでよ』
    「おお、羽織を外すとそーなってるんですね!」
     ダークグレーのハイネック水着は意外にもシンプル、デジカメを持ってまじまじと見るのは矢宵。待ってましたのお遊びタイム、魔法少女風のふんだんなフリルのビキニで砂浜に登場だ。
     綺麗なお姉さまも大好き、同じ年だけど玉緒の侍ガールは凛として格好良かったからアリアリ。
    (「む、胸は同じぐらいかな?」)
     なんて不埒な事を考えてたら、
    「隙アリ! たぁ!」
     ショーでは余り立ち回れなかった梨依音が生き生きと玉緒に斬りつけてきたぞ。
    「ぬっ、させぬ!」
     玉緒も再びスイッチが入り模造刀で弾き応戦、かぶりつきのショーは注目必至、マイから目が逸れた。
    「マイお嬢様を休憩所にお連れするかねぇ」
     解けた髪のお団子から怪しげなカードは回収し、奎悟は仲間達と移動開始。
    『え、これパレオなんですかー?!』
    「すごい、手が込んでますー」
    「ええ、良かったら触ってみる?」
     玉緒を囲む手作り派コスプレイヤーさんと矢宵のそんな声を聞きながら。

    「さっちゃんの胸にナイフが刺さった時、冷や冷やしたですよー」
     身を呈して庇いたかったと胸に手をあてるのは沙希の姉、翠。いつもは怒られる方だけど今日は頬膨らませて怒ってみた。
    「心配かけてごめんね」
     姉妹の絆に微笑ましさに頷くミルドレッドだが、顔をあげた瞬間デジカメ集団と目が合いギョッとする。休憩所出たばかりの所にまで追ってきたか!
    『ポーズくださーい』
     お札が目だたぬようと選んだ恰好だが、
    「逆に目だっちゃったような?」
     観客ずらり。
    『おかっぱ巫女さんも可愛いー!』
     先程は沙希と好対照だったけれど、今となっては翠と二人の方が収まりが良く映る。
    (「ボク似合ってないかな?」)
     ところでな、銀髪巫女さん正義な面々がミルドレッドの前に徐々に列を作っているのだよ。てか胸元ひっぱり首傾げとかその仕草ずるいよ!
    『さっき戦ってた時みたく、お札をこーですね……』
    「どうしよ?」
    「むぅ」
     ポーズ指導に焦る二人の背を翠はぽんと押す。
    「楽しんだ人の勝ちなのですよー♪」
     いつも髪を飾る艶やかな向日葵、そんな笑顔に沙希もミルドレッドもつられて破顔。
    「あ、永久くん。お疲れ様」
    「巫女、さん」
    「……水着、なんか変じゃないかな?」
     脚がすーすーと照れる沙希にそんな事ないとの声。照れて林檎の頬な妹に複雑な姉心です。

     緋頼と白焔、ふたりの間に言葉はなくとも通じ合う。ほら今だって労いのタオルが降ってきた。
     くのいち緋頼が映えるよう観客に紛れあえてマリ側を支えた。殺陣を盛り上げ任務を成功に導く、それも一手。
     だができれば刺客として襲いかかってみたかったのが本音。
     もっと言うと本気なら、或いは武器を持たず二人舞うなら……。
    『さっきのショー、アンコールありです?』
     二人のひとつ目の願いはあっさり叶う事となる。
    「……追手か」
     と。
     軽く跳ね舞台に上がる彼はその前傾姿勢のまま、剣を羽のように背後に翳し、駈ける。
    「行かせない」
     胸に隠したもう一振りを振り下ろす。
     ふ。
     緋頼は躰を傾けしゃがむ。無言で下段から招いた銀を追手の首を狙い踊らせて。
    「……」
     解いた帯に絡め取られた銀にくのいちの紅が至福を刻み眇められた。
     互いの動きは手に取るように――だからこその命のギリギリを掠める舞(武)に観客達は息を呑む。
    「楽しんでくれたら幸いでござる」
     それは観客と、なにより白焔に向けられた言葉。
     殆ど表情の動かない彼女が涼やかに微笑む、唯それだけで今日という日は大成功だったと、彼もまた口元を綻ばせた。

    「奎悟さーん、沙紀さーん!」
     何処までも晴れ渡る夏色の空に、柔らかなネコミミとしっぽがゆらり。マイを休憩所に届けたベストタイミングに、執事さんとメイドさんは晴れやかな顔で駆け寄った。
    「奎悟さんと沙紀さんが事件でコスプレするって聞いたですから、急いで猫耳と猫シッポ持ってきたです」
     膝に手をつけばへにゃり、にゃんこ耳もお辞儀。更には無事事件解決と聞いてさらにおみみはへんにょり垂れた。
     ……猫セット、間に合わなかった。
     ぼんやり眼はそこはかとなくしょんぼり。でもめげずなこたは耳尻尾をさしだしてみた。
    「俺がつけても似合わねぇと思うけどなぁ」
     とか言いつつもつけてくれる辺り人がよい、琥珀目のにゃんこな奎悟さん。執事さんにネコミミとかとてもツボの人には涎モノ。
    「沙紀さんも……ッわっ?!」
     差し出した腕は引かれ、よろけた拍子に蒼い飛沫が周りで散った。思わず手放し水に浮いた白猫に指が伸びる。
    「どう? 似合ってる?」
     悪戯の主、真っ白沙紀にゃん登場~。
    「そうそう。やっぱ、こういうのは、カワイイ子がつけた方が絵になるぜ」
    「すごく似合ってるですよ」
     なこたは満足げに頷くと、海水を目一杯吸ったパーカーをかぶり直す。
    「お揃いですー」
     そのまま水遊び、通りすがるは萎んだシャチを抱える永久。
    「永久もつけてみねぇ?」
    「お……猫」
     奎悟の差し出した真っ黒耳をちょんと頭にのせる。
    「猫、好き」
     自分の記憶を確認するように、こくこく。
     ネコミミ、ずれた。
     きゅきゅっ。
     しっかりつけ直す仕草が妙に生真面目でころりころり鈴転がりな笑みを生む。
    「んー♪」
     ごきゅごきゅ。
     ブリッジになるぐらいラムネを体いっぱいで味わう梨依音。既に焼そばはごちそうさま。海の家のお姉さんのお盆にあいた皿と瓶をのせると、とやっと勢いよく砂浜へとジャンプ☆
     どんなに人が押し寄せてもくっきり目だつ大きな黒猫はっけーん!
    「永久くんお疲れ様……て、ネコミミ? 衣装増えてるじゃないの」
     ぷはっと吹き出す月媛は猫さんなわけですよ。ビーチボールを複数個確保、ヤル気満々です。
    「永久くん発見!」
     ぽす☆
     ネコミミがイヌミミに変化! 矢宵さんの早業です。
    「あ、ネコミミより毛が硬い、です」
     触って確認。納得いったか、シャチに空気入れ開始。
    「わんこな永久くん、萌え!」
    「わふ?」
     萌え? と返したつもりがイヌミミにつられた、そこをお写真カシャリ。
     ショーもやった、ご飯も食べた、だったら次は――。
    「やっぱ、夏って言ったら泳がないとだよな! 永久」
     ぱんぱんの浮き輪と同じぐらいわくわくで膨らんだ胸のを抱え、梨依音は永久のシャチをつん、そして両手を広げ太陽を抱きしめる仕草でへにゃ笑い。
    「はい。海……なんとなく……日本海が好き、です」
    「博多湾ってどうだっけ? まっいっかー!」
    「わ?!」
     わんこみみ永久、ローズピンクな長髪も似合いそうと思いつつ、梨依音は手を引き海へだーいぶ!
     仲間内で固まったのを機に、なこたはたまと一緒にばしゃばしゃ犬かき。ネコミミ沙紀と奎悟がそれを追う。そこに浮き輪でぷかぷかの梨依音と矢宵にイヌミミ永久も混ざる。ちょっとしたケモミミパーティ♪
    「ビーチバレーする人、この指止まれー!」
     しゅたっとあがるはにゃんこのにくきゅう。
    「できれば、あの二人の連携を見てみたいわ」
     玉緒は息ピッタリの殺陣を見せた緋頼と白焔を視線で示す。
    「OK! じゃ、玉緒さんはにゃんこさんと組みましょ!」
    「私、お姉ちゃんとミリーさんと組みたいな」
    「3対2対2、上等! ハンデよ!」
     そんな威勢の良いにゃんこさんですが……。
    「大丈夫か?!」
     きぐるみの重たい頭で走り回って何がなにやら、砂浜で足取られボールを落とす落とす。
    (「実質一人チームで走りまくり、これもいい練習ね」)
     月媛が砂浜につっこむ後ろ、玉緒が自分であげたボールをアタック!
    「きゃっ!」
    「さっちゃん危ないっ」
     ボールを拾おうとして転ぶ沙希を支えた翠も見事にすってんころりん。
    「大丈夫ー?」
     転んだのは二人。ミルドレッドは少し迷った後で頬緩めると両手を二人にさしだした。
    「1チーム脱落ねっ」
     そもそも月媛がもう脱落してるんじゃないのかとはつっこまず、玉緒今度は緋頼チームへ柔らかにボールを打ち下ろす。
     とんっ。
     着地点が前でも焦らず白焔は対応、後ろにまわされたボールを緋頼がぱしりっ。
    「そっち行ったわ」
    「にゃぁああ~」
     猫さん猫さんそっちは逆方向ですがな。
     ぽへっと力無く落ちるボール、ずしゃっと派手に転んで後ろ足ぴくぴくのにゃんこさん。
     そんな光景に海から砂浜から笑い声が空へと弾けあがる。ひとつひとつ、彼らしか咲かす事ができない花火のように。
     彼らは博多湾で起る悪夢の1つを無に帰した灼滅者――今は夏休みを楽しむ学生だけどね!

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月23日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 1
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