VSマリモ怪人!~世界マリモ化計画!

    作者:海あゆめ

    『マーーーリ、マリッマリッマリッ!!』
     耳につくダミ声が阿寒湖の空の下に響く。
    『さあ、目覚めるがいい、同胞達よ!!』
     全身緑色のその男が叫ぶ。
     湖の底から、ポチャリ、またポチャリと音を立てて大きなマリモが浮かび上がった。
     緑の男は満足げに口の端を持ち上げて、ばさりとマントをひるがえす。
    『さあ、行くぞ! まずは土産物屋に捕らわれている同胞達を助けるのだ……そして、ゆくゆくはこの北の大地を……』
     男はくつくつと邪悪な笑みを漏らして肩を揺らし、空を仰ぐ。
    『いや、世界をマリモで埋め尽くして征服してやるのだ!!! マーーーリマリッマリッマリッマリッ!!』
     緑の男……マリモ怪人。
     恐怖の世界マリモ化計画が今、始まろうとしている……!

    「今日はお集まり頂きありがとうございます。では、さっそく説明しますね」
     穏やかな笑みを浮かべた、五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、教室に集まってきた灼滅者達に軽く一礼してみせると、さっそく手にしていたノートを開き、事件の解説に入った。
    「今回、皆さんには北海道の阿寒湖に向かってほしいんです。天然記念物のマリモが生息する湖として有名な場所ですね」
     姫子はにこにこと穏やかに話すが、エクスブレインである彼女がそう言うということは、その場所でダークネスが関与する事件が起こるということだ。
     ダークネスは、灼滅者達にとって強力で危険な敵だ。だが、そのダークネスを灼滅することが灼滅者の役目である。たとえそれが、たった一部の出来事でしかないのだとしても……。
     灼滅者達は姫子の次の言葉を待った。
     彼女の語る未来予測に従って行動すれば、ダークネスのバベルの鎖による予知能力をかいくぐり、強力なダークネスとの戦いを有利にすすめることができる。
     真剣な面持ちの灼滅者達に、一度ノートから視線を外した姫子はにこりと笑いかけ、そして告げた。
    「マリモ怪人です」
    「は……?」
     思わずだろう。どこかから、そんな声が漏れた。
    「ふふ、気持ちはよく分かりますが、わりと強敵なので注意して下さいね」
     言いながら、姫子は説明を続ける。

     北海道の阿寒湖に現れた、ご当地怪人ダークネス、マリモ怪人が世界をマリモで埋め尽くし、征服しようと目論んでいる……らしい。
    「マリモ怪人は、阿寒湖のマリモに力を与えて配下にしているようですね。五つの大きなマリモを引き連れて、手始めに近くのお土産屋さんを襲おうとしてるんです」
     怪人は、瓶詰めにして売られている養殖マリモを解放し、新たな配下にしようと企んでいるのだという。
    「なので、マリモ怪人がお土産屋さんに乗り込む前にやっつけちゃってください。マリモ怪人は湖のほとりにいます……地図でいうと、この辺りですね」
     いそいそと広げた地図に、姫子はペンで印をつけた。
    「それと、マリモ怪人はいろいろな技を使ってくるので注意してください。マリモを集めて体力を回復したり、マリモを飛ばして攻撃してきたり、ですね。詳しくはこちらにまとめましたので、後で読んでおいてくださいね」
     地図と一緒に資料のプリントを灼滅者達に手渡して、姫子はにっこりと笑ってみせる。
    「マリモは可愛いと思いますが、それで世界を埋め尽くされてしまっては困っちゃいますよね。放っておけば被害者が出てしまう危険性もありますし……皆さん、マリモ怪人の灼滅、よろしくお願いします」
     笑顔を携えたまま、姫子は灼滅者達に向かって丁寧にお辞儀をした。

     世界がマリモ化の一歩を踏み出すか否かは、君たちの手にかかっている……!


    参加者
    千葉・日夏(小学生ご当地ヒーロー・d00077)
    帆柱・れとろ(高校生蒸気圧ガール・d00794)
    間乃中・爽太(バーニングハート・d02221)
    謝華・星瞑(紅蓮童子・d03075)
    愛宕寺・朱里(小学生ご当地ヒーロー・d03783)
    松田・時松(中学生ご当地ヒーロー・d05205)
    赤井・千歳(旭川の赤い閃光・d05424)
    小早川・健吾(壊傑ズガット・d07119)

    ■リプレイ

    ●どこだ! マリモ怪人!
     北海道の阿寒湖に到着した灼滅者一行。今日の彼らの目的は、湖に現れるというマリモ怪人の討伐なのだが……。
    「阿寒湖のマリモ。それに、隣町の摩周湖には川湯温泉ですか……ふむふむ……北海道は本当に自然が豊かですね!」
     ガイドブック片手に、精神的にも物理的にもフルルンと胸を弾ませ、帆柱・れとろ(高校生蒸気圧ガール・d00794)が熱心にメモを取り。
    「おお北海道……! あっ! あの羊羹美味しそうですね!」
     上京してから久々の帰郷となる、松田・時松(中学生ご当地ヒーロー・d05205)は、感極まって涙ぐみながらテンション高めに土産物屋に並んでいる羊羹の試食をパクついて。
    「やっぱ、腹が減っては戦はできぬ、ってやつだよな! このやきとり丼っていうのすっげー美味いぜ!」
    「鹿なのになんで焼き鳥なんだろーね? 美味しいからいいけどっ!」
     間乃中・爽太(バーニングハート・d02221)と、千葉・日夏(小学生ご当地ヒーロー・d00077)は、テイクアウト用にしてもらった、阿寒町名物、鹿肉の焼き鳥丼を満面の笑みで頬張っている。
     すっかり観光を楽しんでいるように見える灼滅者達ではあるが、じつはこれ、ガイアチャージの真っ最中なのである。
     というのも、各ご当地のヒーローである彼らはこの北の大地の観光名所のパワーを吸収しようと、予定されている時刻よりもだいぶ早めにやってきたのだ。目的の怪人討伐の事を忘れているわけでは断じてない。それもこれも、全ては今日この日、この地に現れるマリモ怪人と戦うためなのである。
    「み、皆さん何というか……け、結構余裕ですね? わ、私なんか緊張してしまって……!」
    「ま、大丈夫さ。俺達が守らなければならないこの地についての情報も集まった。あとは、皆で力を合わせれば何とかなるだろ!」
     おどおどと不安そうに言いながら深呼吸を繰り返す、赤井・千歳(旭川の赤い閃光・d05424)に、小早川・健吾(壊傑ズガット・d07119)は、手をつけていない焼き鳥丼を手渡して、にっと笑ってみせた。
     北海道パワーもチャージ完了。準備は万端。あとはマリモ怪人との決戦を迎えるばかり。
    「むう、マリモは熱に弱いようじゃが、怪人はどうなのかのう……お、そろそろ近いな」
     睨めっこしていた地図から視線を外して、謝華・星瞑(紅蓮童子・d03075)は顔を上げた。遠くに湖のほとりが見えるが、肝心の怪人の姿はまだ見えない。
    「……おびき寄せに挑戦してみるのじゃ」
     少し走った緊張に、皆ごくりと息を飲む中、愛宕寺・朱里(小学生ご当地ヒーロー・d03783)は小さく咳払いをしてみせ、そして深く息を吸う。
    「マ~~~リ、マリッマリッマリ~~♪」
     綺麗な高音。歌うような声が湖畔に向かう。
     すると……。
    『マ~~~リ、マリッマリッマリッマリッ!!』
     反応してか否か、湖の方から汚いダミ声が返ってきた!
     間違いない。あれは、マリモ怪人だ!
     顔を見合わせ、大きく頷いて、灼滅者達は湖畔へ向かって駆け出した!

    ●遭遇! マリモ怪人!
    『マ~~リ、マリッマリッマリ!!』
     全身緑の男……マリモ怪人は北の大地の空を仰いでダミ声高らかに笑う。その空の下、阿寒湖の水面には大きなマリモが五体、ゆらゆら揺れながら浮かんでいる。
    『さぁ、ゆくぞ同胞達よ! 土産屋に捕らわれている同胞達を解き放つ時がついにきたのだ!! そして目指すは……そう、世界征服!!! マ~~リ、マリッマリッ!!』
    「「待てぃっ!」」
    『マリッ、何奴!?』
     突然背後から響いた声に、マリモ怪人は振り返った。そこにいたのは、横に並んだ灼滅者達。
    「でっかい心を真っ赤に燃やし、小さな身体をフル回転! 燃え上がれ……俺の心! バーニングハートッ! 間乃中爽太、燃えて行くぜ!」
    「ええ!? ほ、本当に名乗りやるんですか!?」
     堂々と声を張り上げた爽太の横で、千歳が気弱な声を上げた。
    「大丈夫だよ、赤井先輩! いけますよ! 北の大地が真っ赤に燃える! 唸れご当血、即席グリーン、もしくは松田!」
     そこをゴリ押して時松がビシッとポーズを決める!
    「紅蓮の炎を心に宿す、不撓不屈の少年ヒーロー! 紅蓮童子、ここに参上!」
     戦闘モードな口調の星瞑が、真っ赤なマフラーを風になびかせる!
    「ズガッと参上! ズガッと解決! 人呼んで正義の壊し屋、壊傑ズガット!!」
     続いて健吾も雄々しく!
    「蒸気圧ガール・Nモード解放! 門司港戦姫☆蒸気圧ガール、出発進行!」
     青いスクール水着を纏ったれとろは、たわわな両の胸をフルンと揺らして!
    「え、えと、えと……あ、赤井千歳ですっ!! 宜しくお願いしますっ!!」
     そして千歳が深々とお辞儀をしてみせる!
    「……ああっ!? な、何か違うっ!?」
    「大丈夫! 大丈夫なんだよっ! わーーーっ!!」
     ちょっぴりコケかけた登場シーンを、日夏が大きな声援と拍手で丸め込む! それから一拍おいて、せーので。
    「「参上! 即席ヒーローズ!!」」
     決まった! 決まったったら決まった!
    「皆、熱いのぅ。妾は溶かされてしまいそうじゃ」
     見事な名乗り上げに、朱里はうっとりとため息をつく。
    『ぐぬぬ、何だ貴様らは! 私の邪魔をする気か! この私の世界をマリモで埋め尽くすという崇高なる野望を!! ふん、いいだろう、よく聞け人間共よ! 私の名は! ミスターーーーーマリッ……』
    「好機じゃ! 放てっ!」
    『ブッッ!!』
     マリモ怪人が名乗りを上げようとしたその瞬間、勢いよく飛んでいった矢と六文銭がマリモ怪人の顔面にズブリと埋まった。
    「まったく……せっかくのヒーローの余韻が台無しじゃ!」
     ぷんすか怒る朱里の隣で、彼女の霊犬の梵もまるで同感だというように、ワン! と吼える。
    「……マリブ?」
    「マリブ?」
    「ミスターマリブ?」
     ひそひそ囁かれる、おそらく違うと思われるマリモ怪人の名前。マリモ怪人はブルブルと緑色の身体を震わせながら顔面に埋まっていた矢と銭を自分で引き抜き、ゆっくりと顔を上げた。
     と、そこへ、バシャリと光るカメラのフラッシュ。
    「この写真がお前の最後の姿だ、とっておけ」
     愛用のポラロイドカメラから出てきた一枚を、怪人に投げつける星瞑。マリモ怪人の肩が、くつくつと揺れる。
    『……っ、フッ、効かんなぁ……フフフ、効かんぞ!! そしてこの私を怒らせたな!! 行けぇ、同胞達よ!! この人間共こそ正しく宿敵!!』
     本当に効いていないのかどうかは定かではない。が、マリモ怪人は心なしか涙目で、投げつけられた写真をぐしゃりと握りつぶして配下のマリモを灼滅者達へとけしかけてくる!
    「お前のすきにはさせないぜ! ヒーロー開始ッ!」
     首から提げたゴーグルを装着して戦闘モードに入る爽太。
     戦いの火蓋は、今切って落とされた……!

    ●対決! マリモ怪人!
     ブルンと荒ぶった五体のマリモが、灼滅者達に迫る!
    「……っ、ごめんねっ!」
     素早く前に出た日夏が、マリモに向かって手を突き出した。
    「アクアラインビームっ!」
     真っ直ぐに伸びた光線がマリモを貫く!
    「いくぜ、これが、壊し屋の正義の鉄槌!!」
     そこへ間髪を入れずに滑り込んできた健吾がバイオレンスギターを振り下ろすと、べちょり、と嫌な音を立ててマリモは地面に落ちた。
     事前に聞いていた情報の通り、怪人の力で強化されているとはいえマリモ自体にそれほど強い力はなさそうだった。
    『ななな、なんということだ! 私の同胞がぁぁぁっ!!』
    「同胞だと思ってるんなら、マリモたちを変な野望のために戦わせるのは止めるんだよ!」
     日夏のごもっともな正論。大袈裟にがっくりと膝をついて悲しみに暮れるマリモ怪人に、健吾はゆっくりと近づいていく。
    「お前、何故マリモが養殖までされて売られているのか考えた事は無いのか?」
    『何だと……?』
    「それは、可愛いからだ! 確かにそれは人間のエゴかもしれない……だが、お前のやっている事も充分エゴだ!!」
    『ぐうぅ~、言わせておけば……ええい黙れ黙れ! エゴの何が悪い!! 私は! マリモで世界を征服してやるのだぁぁっ!! マ~~リマリッマリッ!!!』
     潔い逆ギレである。
     だがこの時、灼滅者達は確信した。
     このまま押し切れば勝機は見える!
    「終わったら、ちゃんと湖に返してあげるからね!」
     迫ってくる巨大マリモ達を抑えながら、時松は影を宿した妖の槍で手近な個体を思い切り殴りつける。
    「まだまだぁっ!!」
     後方から響いてくる、星瞑の激しいダンスステップ。
     勢いづいた灼滅者達の攻撃に、マリモ達は次々と薙ぎ倒されていく。
    『ええい、もっと気張らんか! 私は見たいのだ! マリモで埋め尽くされたこの世界を!! 青い地球が緑に染まるその時をぉぉぉっ!!』
    「ご当地とはそれぞれの土地の輝き……それをマリモで埋め尽くす行為など、許されません! 蒸気号!!」
     れとろの声に、ライドキャリバーの試作型蒸気号は古臭いエンジン音を響かせて応えた。
     搭載された銃からの掃射攻撃。被弾したマリモ達が動きを止めたその隙に、れとろは両手の中にオーラをじっくりと溜め込んでいく。
    「……いきますっ!」
     気圧計の針と一緒に、れとろの胸がまたしても大きく揺れる! すごい、大きく揺れる!放出されたオーラは最大限。飲み込まれたマリモが、またべちょりと地面に落ちた。
    『ぐおぉぉっ、我ら天然記念物のマリモに何たる仕打ち! 貴様ら人間共は、マリモに塗れて苦しむがいい!! はあぁぁぁぁっ……マリモ・ボンバーーーッッ!!』
    「わっ、わっ……え、えと……カムイさん、お願いしますっ!!」
     咄嗟に、千歳は相棒のライドキャリバー、カムイに跨り、一気にマリモ怪人の目の前まで距離を詰めた。
     機銃掃射の弾丸を発射させるカムイから飛び降りて、千歳は手にしたガンナイフを低く構える。
     次の瞬間、大きな水音と共に、飛沫が上がった。同時に、千歳の気の抜けた悲鳴が上がる。
    『マ~~~リ、マリッマリッ! ンンン~、なかなかいい眺めじゃないか人間!』
    「あ、あああんまり見ないで下さいーっ!? カっ、カムイさん~っ!!」
     全身ずぶ濡れになってしまった千歳。マリモ怪人の執拗な視線に、真っ赤になってカムイの影に身を隠す。
     この怪人、わりと最低である。
    「何という……! 大丈夫かえ!?」
     後方に回っていた朱里は、慌てて霊犬の梵を振り返った。
     合図は指笛。朱里は頬を膨らせて咥えた指を思い切り吹くも、慌てすぎたかプスーっと不発する。
    「……す、すまなんだ」
     思わずしょんぼり。どこか頼りない主人に、ワン! と一喝しつつも、梵はきちんと千歳の元へ駆け寄って浄霊眼を施した。
    『ぬぅぅ~っ、なかなか小賢しいじゃないか人間共!』
    「ああそうさ! 俺の炎は火傷くらいじゃすまないぜ!」
     千歳に代わってマリモ怪人の前に出た爽太が、炎を纏った拳を構え、そのまま勢いに乗せてマリモ怪人の顔面を殴りつけた。
    『ぐぎゅるぶっ!』
     じっとりした重たい手応え。何かが潰れたような変な声を漏らしたマリモ怪人がぐらりとよろめく。
    「どうだ、今度は効いたか?」
     不敵に笑ってみせて、爽太は怪人を見やった。
     操られていた罪もないマリモ達は、千歳と爽太が怪人を抑えている間に滞りなく解放されている。
     あともう一押し。
     皆そう思ったその瞬間……。
    『……マリッマリッマリッ』
     マリモ怪人が可笑しそうに肩を震わせた。
    『笑止! 笑止笑止!! 我らがマリモの力を甘く見るな人間共よ!! これが! 世界を征服するマリモの力だ!!!』
    「なっ、何だ!?」
     大きく両手を広げたマリモ怪人の身体に、大小様々、いくつものマリモが集結していく……!
    『見よ! これぞ最強の鎧! マリモガーーードっ……』
    「させませんっ! 北の大地の雄大さをこの身に……っ!!」
    「食らうがよい! サバカレー甘口ダイナミック!!」
    『ぬぅぅっ、貴様らは本当に小賢しいな!』
     活躍する間もなく、れとろと朱里のダイナミックな攻撃で破壊されるマリモ怪人の最強の鎧。
     時は、満ちた。
    「これで決まりだっ! バーニングキック!!」
     燃え上がる爽太の一撃が。
    「いっくよー! 落花生キーーック!!」
     いわずと知れた千葉県名産。日夏の、どこか香ばしそうな一撃が。
    「阿寒湖の怒りを知れ! 阿寒湖キック!」
     吸収したばかりの阿寒湖パワーを秘めた健吾の一撃が。
    「うちなーの大地よ、我に力を! 吼えろ、シィィサァキーック!!」
     道産子なら真冬でも暑いと感じるという、常夏の沖縄パワーを秘めた星瞑の一撃が。
    「唸れ! 怒りの北海道キーーック!!」
     生粋の北海道生まれ北海道育ち。道産子娘、時松の一撃が。
     マリモ怪人に突き刺さる!
    『ぐおぉぉぉっ、覚えてろ人間共!! たとえ私がここで果てようとも、すぐに同胞達が立ち上が……っ、マ~~~リブ~~~ッッッ!!』
    「あっ……ま、またマリブって言った……」
     すごい勢いで飛んでいくマリモ怪人を見送る千歳。
    「こうして悪は倒された……」
     キリっと決める時松。
     そう、こうして、悪は倒されたのだ。今日ここに集ったヒーロー達の手によって……!

    ●世界マリモ化計画、阻止完了!
     あわあわと、千歳が慌てる。
    「ふ、普通に湖に戻すだけで大丈夫なんでしょうか……っ!? なっ、何か、ちょっと崩れてるような気が……っ」
    「だっ、大丈夫っすよ! とっ、とにかく早く湖に!」
     釣られて爽太も何だか焦る。
     地面に落ちてそのままになっていた罪なきマリモ達。灼滅者達は急いで彼らを集め、阿寒湖へと戻してやる。
    「よし……これでお主達は自由じゃ。元の場所で暮らすが良い」
     ゆっくりと湖に沈んでいくマリモ達を見つめながら、朱里は満足そうに息をつく。
    「これでズガット怪傑! だな!」
     背負っていたギターのストラップを締め直しながら、清々しく笑う健吾。
     恐怖の世界マリモ化計画を目論んでいたマリモ怪人。その野望は無事果たされることなく無下に終わった。
     だが、マリモ怪人が散り際に残した言葉を、ヒーロー達は忘れない。
    「ご当地怪人の居る限り、我々の戦いは続くのですね……」
     れとろの呟きに、皆も感慨深く頷いた。
     マリモ怪人に限らず、これからいろいろな怪人がいろいろな形で世界征服を目論むことだろう。
     そう、ヒーロー達の戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
    「けどまぁ、今日は勝てたんだから良かったですよね! そだ、近くにアイヌ料理の店があるらしいんですよ。皆で行ってみません?」
    「それは面白そうじゃな! そうじゃ、何か土産も買っていきたいのう」
    「お土産っ! 私マリモ買って帰ろうかなー?」
     時松の促しに、星瞑と日夏の足取りも軽い。

     マリモ怪人との戦いに、無事勝利を納めた灼滅者達。
     恐怖の世界マリモ化計画。世界は、その第一歩を踏みとどまったのだった。

    作者:海あゆめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年9月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 11/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 3
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