暴虐を楽しめ

    作者:波多野志郎

     ――地獄絵図であった。
    「あ、ああ、あ……」
     少年は腰を抜かして、その光景を見た。アスファルトには大きな血溜まりが。その血の海には、原型をなさない人であった肉の塊が大量にばら撒かれていた。
     バシャン、と音がして、少年は振り返る。そこにいたのは、くたびれたスーツを着た中年の男だった。その妖しく輝く目で少年を見下ろし、男は小さく呟いた。
    「いけないな、こんな夜中に外を出歩くなんて。うん、感心しないね」
    「ひ、あ、あああ、あ……」
    「まともな受け答えも出来ないのかい? まったく、最近の若い者はこれだから……」
     半狂乱で這って逃げようとする少年に、男は嘆かわしいと言いたげに首を左右に振った。どこまでも芝居がかった――いや、どこまでも芝居だった。
     その表情も。言葉も。声色も。こうして、何人の人間を肉塊に変えて殺した事も。男にとっては、ただ殺したいという欲求に彩を加えてみた、それだけの事だ。
    「ほらほら、友達だったモノは丁寧に扱いなさい。何故なら――」
     血の海で溺れるように這う少年に、男はゆっくりと湿った足音を立てながら歩み寄った。
    「何故なら、君も今から『同じ』になるのだから」
     悲鳴。ぶち撒かれる液体の音。圧壊音。そして、狂った笑い声――暴虐を楽しむ男は、自分が作った地獄を心の底から楽しみ抜いた……。

    「……最悪っすよ」
     その光景を思い出したのだろう、湾野・翠織(小学生エクスブレイン・dn0039)は青い表情でこぼした。
     今回、翠織が察知したのはデモノイドロードの存在だ。デモノイドヒューマンと同じ力を持ち、デモノイドと化して戦う事も可能な存在――悪に染まりきった心を持つ者が相手である。
    「……最悪の相手っすよ、こいつ」
     ただ、殺す事を楽しんでいる。今回の未来予測で犠牲になる少年達も、決して褒められるような存在ではない。だが、命を奪われるほどの悪では決してないはずだ。
    「それ以前に、善人であろうと悪人であろうと老若男女誰であろうと――殺したい、と思った時に目に付いた相手を殺す、それだけっすよ、こいつは……」
     こんな危険な存在を放置出来るはずがない。何とかして対処して欲しいっす、と翠織は続けた。
    「夜の繁華街、そこから少し外れた路地っすね。そこで、ちょっと人を殺したくなったから殺そうとして……運悪く、少年達が通りかかっちゃったんす」
     だから、このデモノイドロ-ドと接触するのは簡単だ。少年達と遭遇する前に、自分達が遭遇してしまえばいいのだ。
    「街灯があるっすから、光源とかは必要ないっすね。通りも広さはそこそこあるっすから、戦う分には充分っす」
     ただ、このデモノイドロードは手強く、狡猾であるため場合によっては逃走する可能性もある。それをどう対処するか、考えておく必要があるだろう。後、長引いてしまった場合も考慮して、人払いの手段も用意しておくといい。
    「こいつを放置すれば、どれだけの人が犠牲になるかわかったもんじゃないっす。倒す以外の選択肢はないっすから……よろしくお願いするっす」
     そう翠織は厳しい表情で、締めくくった。


    参加者
    両月・葵絲(黒紅のファラーシャ・d02549)
    暁・紫乃(殺括者・d10397)
    村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)
    ジグバール・スィーラ(月光の徙者・d15196)
    片倉・純也(ソウク・d16862)
    相馬・貴子(高でもひゅー・d17517)
    駿河・一鷹(迅雷銀牙ヴァーミリオン・d17774)
    赤城・影司(剛炎の治癒者・d19791)

    ■リプレイ


     ただ真っ直ぐに、その裏路地は伸びていた。
    (「この奥にいるな」)
     表面上は淡々と、しかし、決して小さな変化も見逃さないように意識を集中して片倉・純也(ソウク・d16862)はその匂いに意識を集中した。
    (「ひどい匂いだ」)
     業の匂いで肺が腐りそうな気分だった。この先に、確かに目標がいる――純也はそう目配せをした。
    「…………」
     それに黒ずくめにフード、といういでたちで両月・葵絲(黒紅のファラーシャ・d02549)が小さくうなずく。
    (「隠れるつもりは、ないみたい」)
     教えられ、闇に意識を向ければ確かに一人分の気配を感じられた。サバンナでライオンが堂々と寝そべっているのと同じだ――自分は狩る側だと、奪う側だと認識している強者の在りようだ。
    「おやおや、未成年がこんな時間に出歩くのは感心しませんよ?」
     その言葉と共に、安っぽい電灯の下に踏み出してきたのはくたびれたスーツを着た中年の男だ。張り付いたような薄ら笑い。ふらつくような足取り。だというのに、そのギラついた目だけがおぞましい印象を抱かせた。
     その男の姿を見て、村井・昌利(吾拳に名は要らず・d11397)は無言。喧嘩用の指貫グローブを嵌め、上着を脱ぐ。そして、手首を軽く揉みながら短く言い捨てた。
    「……さて――行くか」
    「はは、物騒ですね。親父狩りとか言うのですか?」
     昌利の気迫を真正面から受けながら、その軽い態度は一切変わらない。飄々とした、とも呼べない。場違いな軽さだ。
    「殺したいから殺す。わかりやすくてそーいうのは嫌いじゃないの。でも――紫乃も偶々お前を殺したくなったからおあいこ、でいいよね?」
     百足姫とアトラクナクア、二本のチェーンソー剣をスレイヤーカードから引き抜き、暁・紫乃(殺括者・d10397)はギャリギャリィンッ! と火花を散らしソーチェーンを擦り合わせる。それは、紫乃の儀式でありスイッチだ。一気に思考を戦闘思考――殺人鬼的思考へと切り替えた。
    「ははははは、そういう事ですか」
     棒読みの笑い声を上げ、弾けたように男は振り返った。
    「あれあれ? バレちゃったー?」
     そう言って笑うのは、相馬・貴子(高でもひゅー・d17517)だ。その後ろでは、赤城・影司(剛炎の治癒者・d19791)も肩をすくめた。
    「じゃのう、結構慎重な奴みたいじゃの」
    「当然ですよ、私は臆病者なのですから」
     男の言葉に、しかし、ジグバール・スィーラ(月光の徙者・d15196)は逆に表情を引き締める。この男に、真実など存在しない。言葉も態度もすべてが演技だ――もしも本物があるとしたら、その悪意だけなのだろう。その立ち振る舞いだけでも、ジグバールにはそれが透けて見えた。
    「このような相手は殴って沈めるのがいいと聞いた……遠慮はしない」
    「ああ、まったくだ」
     ジグバールの言葉に、飄々と駿河・一鷹(迅雷銀牙ヴァーミリオン・d17774)は言ってのける。知己であるジグバールからの信頼の視線を受けながら、一鷹はスレイヤーカードを天へと掲げた。
    「ライズ・アップ!」
     ガキン! と黒と赤の強化スーツを身にまとう一鷹を見て、男が笑う。その笑みに、その場にいた全員の背筋が凍りつく――口の端を持ち上げるだけ、その形だけの笑みが、男の本物に見えたからだ。
    「ああ、はいはい。正義の味方の登場と言うやつですか。私も、子供の頃大好きでしたよ? 正義の味方。だから、大変喜ばしい」
    「――来るぞ」
     純也の警告に、灼滅者達が身構える。その瞬間、ミシリ……! と男の体が軋みを上げて膨れ上がっていく。青く青く、その身は異形と成り果てた。
    「一度、本当の悪役ってものを演じてみたかったところです」
     デモノイドと成り果てた男は、ハンマーとなったその右腕を容赦なく地面へと叩き付けた。


     衝撃が、撒き散らされた。アスファルトに亀裂を走らせた大震撃に、影司が一陣の風を吹かせる。
    「初っ端から、やってくれるのぉ!」
     清めの風に足が軽くなるのを感じながら、昌利が一気にデモノイドロードへと間合いを詰めた。
    「暇なんだろ。ちょっと付き合ってもらおうか」
     デモノイドロードの懐、そこへ身を低くもぐりこませた昌利が手刀で太い足を切り上げる。それに構わずデモノイドロードは昌利の頭へ肘を落とそうとするが、昌利はこめかみをかすめる程度のわずかな動きでそれをかわした。
     そこへ、ギャリギャリィンッ! とけたたましい音が響き渡る。百足姫とアトラクナクアで鋏のように×字を描いた紫乃だ。
    「あー、これうるさいから嫌いなのー」
     ギギギギギギギギギギン! とデモノイドロードのハンマーと紫乃の騒音刃が鎬を削る。デモノイドロードが構わず前へ、力押しして来るのを紫乃は逆らわずあっさりと後方へ跳んだ。
    「行って」
     そこへフードを外し、ふわふわ広がるピンクロングの髪をなびかせながら葵絲が魔法の矢を撃ち放つ。ドドドドドドドン! とデモノイドロードにマジックミサイルが突き刺さっていく――そして、純也が下賜の刃銃を横に薙ぎ払った瞬間、デモノイドロードを影が縛り上げていった。
    「く、ははは」
     笑い声を上げ、デモノイドロードが影を振り払う。その姿に、純也は目を細める。
    「さすがに、捕まえるのは無理か」
    「お前もミンチにしてやろうかー!」
     呟きに重なり、霊犬であるてぃー太の眼差しに癒された貴子が跳躍する。縛霊手の拳を握り締め、デモノイドロードへと振り下ろした。それをデモノイドロードは青く変貌させた刃で受け止め、振り払う。
    「貴様には慈悲はかけん。……情けも、遠慮もしない」
     魔導書を開き、ジグバールがそこに記された原罪の紋章を虚空へと指で刻んだ。そのカオスペインの苦痛に、デモノイドロードは喉を鳴らして笑った。
    「くくくく、いけませんよ。正義の味方の言葉とはとても思えません。悪であれば殺していい、などなんて浅ましい」
    「お前がそれを言うのか」
     シールドを拡大させながら、一鷹が言い放つ。そして、その黒と赤の強化スーツの胸元を拳で叩き、真っ直ぐに告げた。
    「このスーツは命を救う為の装備で、俺の力は命を守るための刃……俺にも誇りはあるんだな、これが」
    「正義としての?」
    「力を振るう者としての、だ」
     真っ直ぐに答える一鷹に、デモノイドロードが震えた。最初は小さく、やがて大きく――デモノイドロードは大爆笑する。
    「ハ、ハハ、ははははははははははははははははは!! ああ、ああ! 素晴らしい! 心の底から、本気で言っているのですね!? そのような戯言、幼子意外の口から聞けるとは思えませんでした!」
    「……殺人への興味は元からか?」
     純也からの問いかけに、デモノイドロードは振り向く。そして、デモノイドが小首を捻った。
    「はい? 殺人への? 興味?」
    「悪事の自覚は?」
     それは、質疑応答のようなやり取りだ。あるいは、実験を行なう研究者と非検体の事務的な答え合わせか?
     しかし、そのやり取りがよほど楽しかったのだろう、デモノイドロードはその鉤爪となった指先を純也へと突きつけて言った。
    「ああ、ズレがありますね。あなた、呼吸するのに理由がいりますか?」
    「――――」
     その問いに、反応したのはジグバールと貴子だ。ジグバールにとって、その正義感から決して相容れない存在だ。貴子にとって、それは純粋な怒りだった。
    (「デモノイドの力に飲み込まれながらも必死に生きようとした人がいてさー、一方でこういう奴が生き延びて人の形のまま好き勝ってやるってさー」)
     この理不尽な差は、何によって生じたのか? 抑えようのない怒りを貴子は自覚した。
    「呼吸をするのは、単に生命活動に必要だから、ですよね? でも、どうせなら気分良く呼吸しようと思いませんか? そのためなら、早起きしてたるい散歩で朝の空気を味わったり、汗水たらして山に登って山頂で深呼吸するでしょう? 私にとっての殺人など、その程度なんですよ」
     デモノイドロードが、両手を広げる。口の端を笑みに歪め、言ってのけた。
    「殺人は、大前提で。後はどうやれば気分良く殺せるか、それをただ追求して楽しんでいるだけなんですよ」
    「……そうやって欲望のままに生きるのは獣の所業だ。だが、獣だって誇りがあるし、戯れに殺しはやらない。アンタは獣以下の外道だよ」
    「まさか。違いますよ」
     押し殺した一鷹の言葉に、他でもないデモノイドロードが異を唱えた。
    「――未満、です。以下など、獣に対して失礼でしょう?」
    (「……なんじゃ、これ」)
     影司の背筋が、凍る。人を傷つける事を躊躇う優しさを持つ影司にとって、目の前の存在は理解し難い存在だった。姿形が、ではない。その精神が理解出来ないから、ではない。
     理解出来るのに、理解したくない――手を伸ばせばそこにある近しいモノ、コレはそういう存在なのだ。
    「……、要るのは過程(感情)か結果(殺人)か両方か」
     誰にも届かぬ呟きを、純也がこぼす。それを知ってか知らずか、デモノイドロードは歌うように言ってのけた。
    「所詮、人の語る善悪など自分にとって都合が『良い』か、都合が『悪い』か、程度の事。なら、存分に自分が望む事を楽しめばよいではないですか――どうせ、誰かから正義と呼ばれ、誰かから悪と呼ばれるのがこの世の常なのですから」
    「あー、もう。いい加減、黙ってくんない? ムカつくからー」
     貴子が眉根を寄せて言い捨てる。それは、この場にいた全員の共通の願いだったろう。
    「私かなーり怒ってるぞー」
    「おやおや、ですか?」
     軽口はここまでだ、そう言いたげに灼滅者達とデモノイドロードが同時に動きだした。


     路地の壁を蹴り、デモノイドロードが跳躍する。しかし、それを紫乃が上空を取って道を塞いでいた。
    「逃がさないの!」
     オーラが集中された足で連続蹴りが繰り出される。デモノイドロードはそれを受け止めて、空中でバランスを崩した。
     そこへ、葵絲が小柄な体躯で間合いを詰める。
    「……どうしてそうやって壊すのが好きなのか、わからないわ」
    「壊すのはお嫌いですか? あなたは」
     葵絲とデモノイドロードが、言葉を交わす。互いの武器を振るい合う中、葵絲は静かに言い捨てた。
    「かんたんに壊せるものを壊して、何がすごいの? 楽しいの? ……そんな人、ばかりなんだもの……力が強いだけ」
     デモノイドロードの右腕が大きく弾かれる。生み出されたその隙間に、葵絲は迷わず踏み込んだ。
    「わたしは壊れない……これ以上、やらせないわ。みんなも、どこかの、だれかも」
     ゴォ! と突き出された葵絲の異形の拳がデモノイドロードの巨躯を宙に浮かせる。渾身の鬼神変を繰り出し、葵絲は言った。
    「だから、逃がさない」
    「そうですか」
     空中で一回転、体勢を立て直したデモノイドロードがそのDMWセイバーを葵絲へと振り下ろした。ハンマーのように重量に任せた斬撃だ、それを貴子がその身を盾に受け止めた。
    「さっせないよー」
     ガギン! と縛霊手とオーラが軋みを上げる。そのまま構わず重量で押し切ろうとしたデモノイドロードの顔面を昌利は掴み、そのまま壁へと投げつけた。
    「ただ力任せに暴れるだけなら餓鬼でも出来る」
    「餓鬼と大人でやる事が違う、そう思っている内は子供ですよ?」
     拳を振るうデモノイドロードを昌利が迎え撃つ。足を止めての打撃戦。受け、流し、払い、かわし、打ち、繰り出す――その攻防を目にしながら、影司はシールドリングの小光輪を飛ばし貴子を回復させた。
    「きばりやぁ! ワシも援護しちょるけんのぉ」
     影司と共に、てぃー太も一鳴きし貴子に続く。純也と一鷹も視線で合図を送り、挟み込むようにデモノイドロードへと駆け出した。
    (「許す訳にはいかない」)
     ジグバールは、そう静かに決意を固める。このデモノイドロードに、邪悪な男に、何人の罪のない人々の命が奪われたのだろうか? それを思えば、ジグバールの胸が痛んだ。
     このようなものに、奪われていいはずがない。このようなものが、あっていいはずがない。どんなに理屈で飾り立てようと、このデモノイドロードの行なった事は許されない罪悪だ。
    「く、はははははははは!!」
     牽制の大震撃に、灼滅者達が大きく後方へ跳んで間合いをあけた、その瞬間だ。
    「懺悔する暇すら、与えんぞ」
     バララララララララ! とジグバールが五芒星型に放った符が攻性結界を形成、デモノイドロードを押さえつける様に叩きつけられた。ミシリ、とデモノイドロードの筋肉が軋みを上げる――そこへ、てぃー太が口に咥えた刀の斬撃でその脇腹を切り裂いた。
    「ダーメ。お前の死に場所はここー」
     口調はおどけ、その双眸には冷たい殺意を宿しながら貴子がデモノイドロードを影によって更に縛り上げる!
    「く、か、は、はは!」
     それでも、デモノイドロードは動く。その右腕を砲塔へと変貌させ、紫乃へと死の光線を放った。
     紫乃は、それをオーラを集中させた横蹴りで受け止める。ジリ、と靴底が軋みをあげながらも、紫乃はそのまま一気に目の前に生み出した気の塊をデモノイドロードの胸元に蹴りこんだ。
    「ぶっとべなの!」
     ドォ! とオーラの砲弾を受けて、デモノイドロードの体が宙を舞う。その背後へと昌利は無言で忍び寄り――。
    「――ォ!!」
     裂帛の気合いと共に、昌利はデモノイドロードをアスファルトへと叩き付けた。
    「は、はは、これは、ぶがわるい、ですね」
     大きくデモノイドロードが後方へ跳ぼうと試みる――だが、それを影司が許さない。
    「逃が、せん……!」
     影司の射出したリングスラッシャーが、デモノイドロードの背に突き刺さる。その影司の視線を受けて、デモノイドロードが低く呻いた。
    「まったく、私には理解出来ない人種がいますね……」
    「あなたこそ、理解されない」
     葵絲の足元から走った影が、デモノイドロードの巨体を飲み込む。それをデモノイドロードは、内側から切り裂き這い出した。
     そこに、純也と一鷹が迫った。下賜の刃銃を、WOKシールドを、それぞれ刃と変えた二人が、同時にデモノイドロードを胴を薙ぎ払った。
    「は、はは、まだ、殺し、た、りな……」
     笑い、デモノイドロードはその場に崩れ落ち、二度と立ち上がる事はなかった……。


     鎮魂の意を込めて、ジグバールは白百合とユーカリのリースをその場に捧げた。あの男に、ではない。理不尽に奪われた者達へと捧げられたものだった。
    「……そら、こいつが最低な奴ゆうんは分かる、せやけど……ちと、つらいもんもあるわぁ……」
     影司が深いため息と共に、こぼす。その優しさは、あの悪人にさえ向けられた――その事を咎める者は、その場には誰もいなかった。
     ただ、死だけは何者にも平等だ――皮肉にも、それだけの事であった……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年8月28日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 12/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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