チョウザメ男はキャビア好き

    作者:相原あきと

     北海道沿岸部。
     砕けた流氷に乗って浜辺に上がって来たのは鮫だった。
     2足歩行して陸地へ上がってくる鮫、もっと言うとチョウザメだ。
     チョウザメ男は背中に抱えていた荷物を降ろすと、マイペースに浜辺に組み立て式の椅子やら机やらをセッティングし始める。
     コップに飲み物、皿にはパン、そして机の中央には世界三大珍味と言われる『キャビア』が山盛り。
     準備が終わると男は優雅に椅子に座り、パンにクリームチーズをつけキャビアを大量に乗せる。
     完璧だ、満足そうにチョウザメ男が頷く。
     日本到着祝いにまずは一口……うまい。
     やはりキャビアはロシア産に限る。
     そう味を噛みしめていると……。
    「ぺっ、ぺっ、ジャムだと思ったのに甘くないッス!」
    「!?」
     いつの間にか少年アンブレイカブルが横におり、勝手に料理を頬張っていた。
     しかもキャビアは舌に会わなかったようで渋い顔をしている。
    「戦いしか脳の無いアンブレイカブルか……おのれ、戦闘前のキャビアタイムすら楽しめない愚か者が、この私のダイヤモンドクローで串刺しにしてくれる!」
     チョウザメ男がその拳(指の付け根)から爪を生やすと、水を飲む少年へと襲いかかった。

     チョウザメ男の拳から生えた4本の爪(ダイヤモンドクロー)を、少年アンブレイカブルは身を捻るように回避する。
     そのまま少年が回し蹴りを放つも、チョウザメ男は避けずにわざと胴を蹴られる。
    「当たったッス!」
    「わざとに決まっている」
     チョウザメ男が少年の足をガッシと掴むと、強引に宙へと放り投げる。
    「くっ」
     少年が空中で体勢を立て直し眼下のチョウザメ男を確認しようとするが、すでに男はそこにいなかった。
    「ど、どこッスか!?」
    「上だ」
     冷静な声が響くと同時、少年の腰に衝撃が走る。
     チョウザメ男が少年の腰に乗るように立ち、さらに少年の両手を掴んでキメる。
    「キャビアスペシャル」
     冷たい声と共に身動きが取れない状態で落下、大地に叩きつけられる少年。
     だが、子供の外見でもアンブレイカブルだ。ぐっと再び立ち上がる。
    「強いッスね……」
    「違うな……お前が戦い方を知らぬだけだ。私の氷をまめに砕くのは悪い判断じゃない、だが、回復ばかりで勝てると思うな!」
    「そ、そうなんスか?」
    「ふっ、もし仮に回復しながら戦いたいなら……戦況を一発でひっくり返せるような、必殺技を持つことだ。そう……このようにな!」
     チョウザメ怪人がダイヤモンドクローの腕を回転しながら少年アンブレイカブルへと突貫する。
    「食らえ! キャビアスピンドライバー!」

     カッ!

     ………………ポチャン。
     遥か沖合に少年が落下する音が微かに聞こえ、再び浜辺は静寂を取り戻す。
     チョウザメ男は再びテーブルに付くと、優雅にキャビア料理を口に運ぶのだった。

    「みんな聞いて、北海道にロシアのご当地怪人を乗せた流氷が漂着したの!」
     教室に集まったみんなに鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が話しだす。
     もとは巨大な流氷に無数のロシアン怪人が乗っていたのだが、何かの理由で流氷が砕け、怪人達はオホーツク海を漂流し、北海道の海岸のあちこちに漂着し初めているらしい。
    「それで、なぜかロシアン怪人の漂着に対応して、アンブレイカブルが動き出しているの。もしかしたら格好の腕試しとか思っているのかもしれないわ。だから、みんなにお願いしたいのは……」
     珠希が言うには、ロシアン怪人とアンブレイカブルが戦った後、生き残った側を撃破し灼滅してほしい……という漁夫の利を狙う作戦だった。
    「みんなに向かって貰う浜辺では少年アンブレイカブルとチョウザメの怪人が闘ってるの。勝つのはチョウザメ怪人よ。アンブレイカブルがKOされて沖合に吹っ飛ばされてから怪人に接触して」
     チョウザメ怪人は冷静な性格をしているらしく、戦闘でのポジションはスナイパー。
     どの能力値も弱点は無く、効率的な戦い方をしてくるらしい。
    「でも、怒らせたりピンチになると、一撃必殺の大ダメージを技を使ってくるみたいだから、そこは注意してね」
     もちろん、アンブレイカブルとの戦闘後なので、多少なりともチョウザメ怪人へのダメージは残っている。
     しっかり作戦を立てて挑めば、灼滅できる可能性は決して低くは無い。
    「ちょっとズルイ作戦かもしれないけど、ダークネスを倒せる機会を放っておくわけにもいかないわ。気を付けて、それでもって灼滅してみんなが帰ってくるのを待ってるわ!」


    参加者
    霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)
    緋梨・ちくさ(さわひこめ・d04216)
    松田・時松(女子・d05205)
    綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)
    源・頼仁(伊予守ライジン・d07983)
    ンーバルバパヤ・モチモチムール(ニョホホランド固有種・d09511)
    紫宮・樹里(文豪の地を守る椿姫・d15377)
    ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)

    ■リプレイ


     北海道沿岸部のとある浜辺。
     チョウザメ怪人が優雅なキャビアタイムと洒落込んでいるのを、物陰から観察していたポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)が、交代とばかりに無言で双眼鏡を仲間へ手渡す。
    「うまそうにキャビア食べやがって……海の宝石キャビアか、こっちも富山湾の宝石白エビを出すしかねーな」
     受け取った双眼鏡をのぞきながら口にするのは富山のご当地ヒーロー綾木・祇翠(紅焔の風雲・d05886)だ。ギリリと拳を握るのは祇翠だけではない。
    「高級食材をあんなに……」
     この北海道出身のご当地ヒーロー松田・時松(女子・d05205)も、怪人を観察しつつ食欲を我慢する。我慢する。
     だが、どこの世も正直者はいる。
    「キャビア、美味しそうですわね」
     じゅるりとヨダレが垂れそうな雰囲気でンーバルバパヤ・モチモチムール(ニョホホランド固有種・d09511)。
    「高級食材だろ? 旨いのか? 俺食べたことないから分かんないけど……」
     源・頼仁(伊予守ライジン・d07983)が疑問を口にする。
     我慢している人もいるのにこいつらは――。
    「良いこと思いついた! あの怪人にお願いしたら食べさせてもらえないかな?」
     頼仁の案にンーバルバパヤがコクコクとうなずき。横から「えっと……」と紫宮・樹里(文豪の地を守る椿姫・d15377)がお弁当を見せる。キャビアを食べる準備は万端だ。
     サムズアップする頼仁とンー。
     そんなことをしている間に、双眼鏡の向こうではいつの間にか少年アンブレイカブルと怪人の激闘が始まっており、灼滅者達も息を飲む。
     戦いは怪人優勢で進んでいく。実力は拮抗しているのかもしれないが怪人の方が経験豊富なようで戦い方に余裕があったのだ。
     見る見るうちに少年アンブレイカブルが血だらけになっていく。
     結構残虐ファイトである。
    「なんというおそロシア……鮫こええー、食べ物の恨み怖ー」
     緋梨・ちくさ(さわひこめ・d04216)が思わず引く。
     まぁ、食べ物の恨みで残虐ファイトになったのかは不明だが……。
     やがて怪人の必殺技が炸裂し、アンブレイカブルが沖合にぽちゃんと落下した。
    「観察はここまでですね。行きましょう」
     カードからドラグシルバーを解き放つと、そのライドキャリバーに乗った霧島・竜姫(ダイバードラゴン・d00946)が先陣をかけ、残り7人も一斉に怪人の前へと飛び出していくのだった。


    「今度は誰だ?」
     チョウザメ怪人が新しく現れた灼滅者達へ不機嫌そうに問う。
    「遠路はるばるご苦労さん。けど、残念ながら徒労に終わらせてもらうぜ……北海道はご当地ヒーロー、松田時松、見・参!」
    「この国のヒーローか」
    「その通り。できれば速やかにお帰り願いたいね」
    「悪いが入国にいろいろ手間取った、土産も無く帰るわけにはいかんな」
     スッと怪人が灼滅者達へ向き直る。
    「さっきの戦い見せてもらったけど、俺達にあんたの必殺技がそう簡単に決まると思うな!」
     そう言って見栄を切るのは頼仁。
    「見ていた、だと? ふん、漁夫の利でも狙うつもりだったか?」
    「ま、確かにヒーローらしくないかも知れないけど……この北海道はお前たちの好きにさせるもんか! 日本のご当地ヒーロー、伊予守ライジン、いざ参る!」
    「えっと」
     頼仁に続いて前に出るは着物姿の小さな少女、樹里だ。
    「次の相手は私たちです。異国の怪人来ようとも我がご当地愛の前に敵はなし」
    「残念だが私のキャビア愛に比べれば、おまえ達ごときは相手にならん。今帰るなら見逃してやるぞ小さい少女よ」
    「帰りません! それに相手にならないかは戦ってから言って下さい! うっかり近所の和菓子屋さんが江戸時代からの老舗だったりする本郷の力を見よ!」
     と、樹里が決――。
    「あと小さいって言うな!」
     ――決めた。
    「おまえ達がこの国のヒーローである事はわかった……。で、コレもおまえ達の仲間か?」
     怪人が用意した椅子に座り、こっそりキャビアを食べている祇翠をあごで指す。祇翠の頭の上に乗った紫雲(霊犬)がテシテシと祇翠をぽむり皆の視線に気がつかせる。
    「む……」
     祇翠は口を拭いてマイペースに仲間の輪に戻ると。 
    「世を跋扈せし怪人に鉄槌を、キャビアを食べるため灼滅戦隊此処に参上」
     すごい勢いで沈黙が流れる。
     紫雲も呆れ顔だ……。

     ドルゥウンッ!

     ライドキャリバーのエグゾースト音が響き、怪人の視線が祇翠からキャリバーに跨がる竜姫へと注がれる。
    「ご当地パワー100万といったところでしょうか。強敵ですね」
     竜姫の言葉に怪人が間髪入れず。
    「その単位は不明だが……強さを数値化すると相手の実力を見誤るぞ。戦い方によって2倍にも4倍にも12倍にもなることだってある」
    「なら……先手必勝!」
     竜姫のドラグシルバーが即座に突撃をかける。
    「ふん!」
     怪人はその突撃を左手で受け止めるが、即座に視線を斜め上へ。
    「いい連携だ……だが」
    「レインボービート!」
     怪人と視線が合うが竜姫は空中から斜め下の怪人へ拳を連打する。
     虹色に光が瞬くが……。
    「っ!?」
     乱打が終わった時、竜姫の拳は怪人の手に握られており。
     ぶんっ!
     空中へと投げられる竜姫。
    「(キャビアスペシャルが来る!)」
     小学校の休み時間に男子が似たような技を真似して遊んでいたのを思い出した竜姫は、とっさに腕を取られぬよう胸の前で交差する。
     だが――。
    「キャビアスペシャル!」
     ドガッ! バキッ!
     竜姫は唖然とする。
     狙われたのは……ドラグシルバーだった。
     ハンドルが見るも無惨に曲がり転がる。
    「本当はお前を狙ったのだがな、機械に救われたな」
     怪人が竜姫に言う。
    「……蒼き寄生の強酸液……溶解して……」
     必殺技後の怪人にポルターのDESアシッドがなげかけられる。
     煙をあげて焼けただれる肌、特に先ほどの少年アンブレイカブルに傷つけられた場所は一気に傷が広がったようだ。
    「くっ、連戦では傷が治りきっていなかったか」
    「……悪いけど……さっき言った通り……漁夫の利、よ」
     無表情に言うポルターに怪人が舌打ちする。
     ポルターの攻撃に続けと灼滅者が次々に攻撃を開始する。
     だが、怪人も自らの傷と予想以上の灼滅者達の強さに冷静さを取り戻すと。
    「ダイヤモンドクロー!」
     ジャキンッ! と指の付け根から鋭い爪が伸び、怪人は一足飛びに接近する。
    「ちくさ!」
     仲間の声にとっさに飛び退こうとするちくさだが、怪人がさらに加速し4本の爪が目の前に迫る。
     覚悟を決めるちくさ。
    「チョールナヤ・イクラー!」
     ちくさが絶叫する。
     避けられないタイミングだった。
     ちくさはさらに呟く。
    「イクラなら赤であるべき……あ、目の前が真っ赤だー、アハハ」
    「バカ言ってるな!」
     目の前の赤……赤い髪の祇翠が振り向きざまに言う。
    「あれ……痛くない?」
     見ればちくさと祇翠の前、ダイヤモンドクローをくらってふらふらになっている霊犬がいた。
    「よくも紫雲をやってくれたな!」
     祇翠が巨大な斧を振りかぶって怪人へと飛び込んでいく。
    「……エンピレオ、今のうち……お願い……」
     ポルターに言われナノナノのエンピレオがハートをとばして霊犬の紫雲を回復させる。
     ぐぐっと立ち上がる紫雲がエンピレオに頷き、エンピレオも頑張れと頷き返した。
    「……その身を戒める……」
     一方、ポルターは怪人の動きを止めようと自身の影を伸ばして怪人の足をからめ取る。
    「ふんっ!」
     強引に踏み込み影をもろともしない怪人だが、足を取られた一瞬は隙となる。
    「レインボースラッシュ!」
     竜姫が駆け抜けるようにサイキックソードで斬り捨て、七色の輝きの後に怪人が血を飛び散らせる。
    「ほう……今のはなかなかだ。相手にとって不足は無いようだな」
    「ひとつ、教えてくれますか?」
     怪人が本気を出そうとするタイミングでンーが聞く。
    「あなたもご当地怪人さんなら……そのキャビアの良さを広めたいのでしょう?」
    「無論だ」
    「なら、私たちにも貴方ご自慢のキャビアの良さ、教えて頂けませんか?」
    「いいだろう。なら私の配下になると誓え」
     できるわけが無い! そう叫ぶ大多数の仲間達。
    「………………」
     ンーバルバパヤ(と他数名)は、そんな仲間達の空気を読んで、とりあえず黙っている事にしたのだった。


     チョウザメ怪人は攻めあぐねていた。
     最初に回復役を怒り状態にして潰す予定だったが、灼滅者達はメディック以外もお互いフォローしあって他者回復を行い、さらにサーヴァントの数も多くなかなか狙った相手へ攻撃が通らなかったからだ。
    「くっ……せめて万全ならば……」
     怪人が音をあげ始める。
     3色弱点の無い怪人だったが、スナイパーを多くし命中率を上げた灼滅者達の作戦は正しく、怪人へコンスタントにダメージを蓄積させていた。
    「斧で三枚下ろし、拳でミンチ……キャビアも良いがサメ肉料理も良いと思わないか」
     祇翠の斧が振り抜かれ咄嗟に伏せる怪人だが、背中の背ビレが宙に舞う。
    「私のフカヒレが……おのれ!」
     背ビレを切り飛ばされた怪人が怒りの形相で灼滅者達から距離を取ると、自身が置いていたテーブルの上へと飛び乗る。
    「敵のご当地パワーが急上昇しています!」
     竜姫が叫ぶ。
     仲間達が一斉に頷き、ちくさ1人が突撃。
     不可視のシールドで殴りかかる。
     ぶんっ!
     怪人は通常より2倍ぐらい高く跳躍してその攻撃を回避。
     さらに空中で両拳のダイヤモンドクローを頭上で揃える。
     だが、ちくさの本当の目的はソレではなかった。
     テーブルの上にあったキャビアの瓶を掴むと――。
    「おらああああ、キャビアなんて気持ち悪い物食えるわけねえだろー!」
     キャビアの入った瓶をキャビアごと地面に叩きつけた。

    「許……さん……!」

     ピークに達する怪人の怒り。
     空中でぐるぐると回転し始め、ドリルの矢のようにちくさへと急降下する。
    「キャビアンスピンドライバー!」
     ちくさの土手っ腹に回転力と突進力を加えたダブルのダイヤモンドクローがめり込む。
     一瞬で意識が途切れ死を直感する。
     しかし。
    「立った……だと!?」
    「へ、へへ……」
     肉体の限界を越えてなお立ち続けるちくさに怪人が驚愕する。
     バチッ!
     その瞬間、怪人の体に制約の魔力が命中し、その自由を奪う。
    「!?」
    「……そのまま、動かないで欲しい、かな……」
     隙をついたポルターの一撃。
    「みんな、チャンスだ!」
     ノリ良く声をかける時松。
     5人の仲間達が即座に集まる。
     まず時松が叫んだ。
    「知っているか。北海道にはチョウザメの養殖場があるという事を……」
    「なん……だと?」
    「つまり北海道には、外国産のキャビアが入り込む様な余地など無い! オホーツクを渡ってロシアに帰るがいい!」
     次は樹里が「えっと」と。
    「一応聞きますけど、怪人さん、リア充だったりしませんよね?」
    「だったらどうする」
    「えっと……慈悲は無い! です!」
     ビシっとポーズ。まだまだ見習い感が強いです。
     3人目は頼仁。
    「あんたのキャビアンスピンドライバーはすごい技だな……だが、北海道パワーも乗せた俺の必殺技を見せてやるぜ!」
     さらに祇翠が。
    「驕れるキャビアに同じ海の宝石が鉄槌をくれてやる! 皆での連携技で一気にとどめだ!」
     そして5人の中心にいた人物(戦隊モノならレッドの位置だ)が一歩前へ出て日本刀を構える。
     僕のヒーロー(ちくさのビハインド)だった。
     ……っつーか、なんでビハインドがレッドポジション!?
    「荒ぶる僕のポーズだよ!」
     気にせずちくさ。
    「皆さんの友情パワー、無駄にはしません! 一気に決めます!」
     5人の背後、司令官ポジションで竜姫が叫び両手をクロスさせ虹色の必殺技を放つ。
     さらに時松が、樹里が、頼仁が、祇翠が、僕のヒーローが!
    「レインボービーム!」
    「北海道ダイナミック!」
    「リア充爆発しろ!」
    「ライジン豊後水道シュートッ!」
    「富山湾の必殺弐式、白エビキックッ!」
    「さあ行けヒーロー。僕らを助けてくれ!」
     6人もの必殺技が動きの止まった怪人に次々に直撃する。
    「ば、バカな……世界三大珍味の……この、私が……」
     煙をあげつつ仰向けに倒れた怪人。
     もう消え去るだけの怪人にンーバルバパヤが近づく。
    「貴方が消えてしまう前にどうしても聞いておきたいことが……」
    「く……どうせ最後だ……なんだ?」
     倒れたまま答える怪人。
    「……キャビアってチョウザメの卵ですわよね? 共食いになるのでは……」
     ンーバルバパヤに並んでポルターも「……共食いに、見える……」と質問をかぶせる。
     そんな2人にチョウザメ怪人は最後の最後でハッとする。
    「そういえば……」
     あわわ、と動揺しつつチョウザメ怪人は消えていったのだった。


    「っていうか日本語うまかったよな、ロシア怪人なのに」
     時松がチョウザメ怪人の消え去った跡を見ながら呟くと、横に来た樹里が。
    「怪人倒したらキャビアが落ちないかなと思っていたのですが……」
     せっかく用意したご飯が……と、しゅんとする樹里。
    「あきらめるな」
     そう言って樹里の肩を叩くのは祇翠。
     確か怪人がテーブルにキャビアの入った瓶を残していたはず……と。
     しかしテーブル付近に行ってみると。
    「瓶詰めを粗末にしてごめんねキャビアさん」
     ちくさが大地に散乱したキャビアに謝っていた。
     そういえば挑発するために投げ捨てていたっけ。
     再びがっくしくる一同。
     だが、諦めなかった者にキャビアの神は微笑む。
    「ありましたー!」
     ひときわ大きく響きわたる声。
     見れば怪人の持ってきていた荷物から、ンーバルバパヤが一斗缶を取り出し頭上にペカー!と掲げていた。
    『流氷印のキャビア缶』
     まさかチョウザメ怪人の忘れ形見を手に入れる事ができるとは!
     所有権はンーバルバパヤに渡すとして、せっかくだからとその場で祝勝会。
    「お、おいしいです……ああ、あの怪人さんとはもっと別の形でお会いしたかったです」
     キャビアを食べつつンーバルバパヤが怪人を惜しむ。
    「パンに乗せて食べるんだっけ? あ、松田さんも食べなよ?」
     ちくさに言われて時松も一口。
    「おいしいな」
    「ねー? 僕たちは皆生きている! 生きているから美味しい物が食べられる!」
     ちくさが何か悟りっぽい事を熱く語る。
     竜姫やポルターもせっかくなので、と食べてみる事に。
     普段は食べれぬ高級な味……というか食べ慣れぬ味。
     美味しいかどうかは人それぞれだが、食べれる時に食べておくのも良い経験だ。
    「でもしょっぱいなー!」
     ま、ざっくり言うと黒いイクラだし……。
     頼仁がパチンと手を叩いて皆に言う。
    「なあ、無事灼滅できたし皆で北海道のおいしい物食べにいこうぜ!」
     北海道ならいろいろ美味しいものも多いだろう。
     灼滅者達は意気揚々と街へと向かうのだった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年9月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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