燃ゆる劫火

    作者:立川司郎

     遠くオホーツク海の流氷が、静かに流れゆく。
     ここから見えぬはるか先で壮絶な力と力のぶつかり合いがあった事も、夢であったかのように海は静かであった。
     緩やかな風に乗り、巨大な流氷の欠片がひとつ北海道北岸へと流れ着いた。日本の南部では炎天下に晒されるこの時期、流氷は時季外れの氷雪を纏って降り立った。
     ぽつんと立った影は、長く太い蝋燭のように立ち尽くして居る。
     どうやら、男であるらしい。
     鋭い眼光は、先ほどから海岸の方をじっとにらみつけていた。彼の纏う氷雪の向こう側の沿岸には、それをかき消すような炎を拳に宿した女が一人立っている。
    「ミェティエリ(吹雪)のザハーロ、お前を待っていた」
     すべては、業大老の為……そしてあたしの為に!
     高らかに宣言すると、彼女は名を名乗った。
    「あたしはアンブレイカブル、劫火(ごうか)だ」
     炎を名乗った彼女は、流氷がたどり着くと同時に乗り込んだ。流氷の上は、ザハーロが巻き起こした雪と流氷の上に積もっていた雪が舞い上がり、白く変化している。
     飛び込みつつ、拳の連打を浴びせる劫火は炎に包まれていた。拳は燃え上がり、鳥の羽のように風圧で揺れている。
     直線的であるが、その動きには無駄がない。
    「炎と氷……いずれが勝つか、試してみるか」
     ザハーロはすうっと目を細め、氷塊をとがらせて解き放った。弾雨のように降り注ぐ氷柱が体を削るが、劫火はうすら笑いさえ浮かべている。
     飛び込み、飛び上がりざまに蹴りを叩き込む。
     相手の懐に入り戦う事が、彼女のスタイルであった。
    「燃やし尽くす! あたしの炎で何もかも……!」
     彼女の炎は、永遠に溶けない意思の炎でもある。戦いを求める意思の炎は、彼女の拳に乗って氷を打ち砕いた。
     ふわりと風が巻き上がり、吹雪をかき消していく。
     大きく息を吐きながら、拳を収めた劫火はにいっと笑い勝利に酔いしれた。
     
     臨海学校から慌ただしく、事件が駆け込んできた。
     エクスブレインの相良・隼人(高校生エクスブレイン・dn0022)は、残暑を扇で吹き飛ばしながら口を開いた。
     持ち込まれた話は、ただならぬものである。
    「どうやら、ロシアのご当地怪人を乗せた流氷が北海道北岸に流れ着いたらしい。元々デカイ流氷だったようなんだが、まぁ破壊されてあちこちバラバラに流れはじめている。その一つが北海道にたどり着いた」
     だが、ロシアのご当地怪人の戦いを挑んでいるのは我々だけではなかった。すでに先にアンブレイカブルが到着し、彼らと死闘を繰り広げているというのである。
     彼女の名は、劫火。
     相手のご当地怪人はミェティエリ(吹雪)のザハーロといい、吹雪や氷を操っているという。
     双方の力は全く真逆の方向で、近接の劫火に対して距離を開けるスタイルのザハーロ、炎と氷。
    「だが、この戦いはいずれ劫火の勝利で終わる。この瞬間を狙って戦えば、劫火を倒す事が出来るだろう」
     ザハーロを倒す前に介入すれば、二人が共闘して灼滅者に狙いを定めてくるかもしれない。そうなれば、こちら側には圧倒的に不利である。
     どちらも倒す為には、ザハーロが倒されるまで待つしかなかった。
    「しかしこの戦いで、劫火も疲労している。相手が押し切る前に、灼滅出来るんじゃないかと思うんだ」
     相手は怪我をしていても、力は衰えがない。
     特に近接した敵に対しての攻撃は、容赦が無いだろう。
    「正面から戦いたい奴も居るかもしれねぇが、二者とも倒す絶好の機会なのは違いねぇ。よろしく頼むぜ」
     隼人はポンと肩を叩いて促した。


    参加者
    嘉納・武道(柔道家・d02088)
    ユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758)
    ミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)
    武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)
    アイナー・フライハイト(ひとかけら・d08384)
    ルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)
    木元・明莉(楽天陽和・d14267)
    ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)

    ■リプレイ

     しなやかで無駄のない体から繰り出される拳は、時に強く、柔らかく、そして炎のように熱く繰り出された。
     足音一つでさえその戦いに水を差すようで、灼滅者達は息を殺して海岸へと接近する。
     一人はミティエリのザハーロ。
     もう一人は、炎を拳に纏って戦う劫火というおんなであった。
     氷を使うザハーロの戦いも美しいが、劫火は……とてもシンプルで美しい。
    「綺麗だね」
     まだ若いルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)の声が、嘉納・武道(柔道家・d02088)の耳に届く。
     ルリもまた、じっと劫火の戦いを見ていた。
     だけどこの炎が終わりを迎えると、知っている。これから自分達は戦うのである。そしてその結果は、勝利しかない。
     少なくとも、皆その為にここに来た。
     ルリがふと視線を伏せると、ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)はタイミングを計ったようにそっと立ち上がって、ルリに声を掛けた。
    「そろそろ終わりそう」
     符を手の中にしっかりと握ったベリザリオの手を、はっとミカエラ・アプリコット(弾ける柘榴・d03125)が表情を変えて掴む。間髪入れず戦いに赴く事で有利になるのは分かって居る。
    「ねえベリザリオ、ちゃんと正面から戦いたい」
     飛び出していって先に挨拶をするのは容易いが、仲間とタイミングを合わせないのは足を引っ張る事に繋がる。
     ミカエラの気持ちは、武道にもよく分かる。
     ベリザリオが仲間を振り返ると、武神・勇也(ストームヴァンガード・d04222)が斬鑑刀を下げてちらりとミカエラを見た。
    「相手は弱っていても業大老配下のアンブレイカブルだ、手段を選んでいられる相手ではない」
     そっけなく勇也はそう言ったが、木元・明莉(楽天陽和・d14267)が間に入ってなだめた。
     実際明莉も、ここで速攻攻撃に出るべきだと考えている。これは、強者に弱者が挑む為の作戦の一つ。
     しかし同時に、明莉には聞いておきたい事もあった。
    「木元は聞いておきたい事があったんだろ。聞くなら、戦う前じゃないかと思うけど」
     アイナー・フライハイト(ひとかけら・d08384)が明莉に話しを振る。
     実際後ろめたい思いをしていたアイナーは、先手を打たなくても勝てるというならそれに越したことはないとも思う。
     むろん、最善を尽くすのが自分達の努めであるが。
     皆の話を聞いていたユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758)が、ベリザリオに顔を向けた。
    「アンブレイカブル相手…なら、正面から戦いを申し込めば、逃げるはなさそ…ね」
     ユエファの答えに、ベリザリオは苦笑した。彼女らがこうも言うのだから、聞き分けねばなるまい。
    「悪役になるより、いいかしら。わかったわ、先制攻撃は出来なかったけど……その分、わたくしが支えてみせますわ」
     軽く肩を叩き、ベリザリオが笑い返した。
     明莉もそれを聞いて、心を決める。
    「いつでも攻撃に出られる準備はするからな」
    「ありがとう」
     パッと笑顔を返し、ミカエラは劫火の方を振り返った。
     火と氷の戦いを、もう少しだけ見ていたかったけれど……劫火の炎が、ついに氷を溶かした。拳に乗った炎が、ザハーロの体を吹き飛ばす。
     流氷の上に叩きつけられたザハーロは小さく呻き声をあげ、やがてすうっと吹雪とともにかき消えていった。
     シンと静まりかえった海岸に、ぽつんと劫火は立ち尽くす。
     その視線がこちらに向くと、ミカエラは真っ直ぐに歩き出した。
    「さっきから覗いてたが、何の用だ。……てめぇらもロシアの野郎か?」
    「俺達は武蔵坂学園の灼滅者だ」
     明莉が答えた。
     勇也がちらりとこちらを見たが、明莉は落ち着いた様子で劫火の反応を見ていた。劫火は武蔵坂学園という名に聞き覚えはないようだったが、何となく思い当たるものはあるのだろう。
    「先日富士急でやりあった、ってのはあんた達か。……話は聞いてるよ」
    「それは光栄。……聞かせてくれ、ここに来たのは何故なんだ? ここにご当地怪人が来るという事を知っていて来たんだろう」
     明莉達はエクスブレインの指示があってここに来た。
     では、劫火はどうやってここに来たのだろうか。
     その答えは明確である。
    「ロシアのご当地怪人に関して、業大老からの指示があったって聞いたからさ。さて、次はこっちの質問だ。……遊びにここに来たんじゃないんだろう、お前達」
     劫火がにやりと笑って聞くと、ミカエラは前に一歩進み出た。
     表情に迷いは見られず、今から行う戦いに心躍らせているように見える。ミカエラは口を開くと、キラキラと光る瞳で劫火を見上げた。
    「劫火、すごい戦いだったね。悪いんだけど、次はあたし達の相手、してもらえるかなっ!?」
     劫火は、ふと笑って身構える。
     そう言われれば、アンブレイカブルとして断る訳にはいくまい。彼らにとって戦いは常に、勝利か敗北か、生か死か……。
     深く深呼吸をした劫火は、灼滅者たちが攻撃に動き出すのを待ったように足を踏み出した。

     正面に突っ込んだミカエラは、武道の動きに合わせて劫火を左右から包囲する。明莉の指示で暗が動くが、劫火の視線は武道とミカエラを追っていた。
     まだ戦いの疲労が取れていないのか、武道には微かに呼吸を整えている様子がうかがえた。
     左に構えた武道は、ミカエラが掛かるのを待って後に続く。
    「まだ、後手に回るだけの余力はあるって言うのか!」
     動きをじっと見ている劫火の様子に、武道が呟く。
     あくまでも後衛を守る為にいる武道であるから、彼女への攻撃より守りを優先して動く。積極的に力で拳を叩きつけてゆく武道の動きに、劫火がうっすら笑った。
     手応えは固く、武道の拳は届いていないように感じた。
    「くっ…固いっ」
    「殴り合いなら…得意なんだよッ!」
     劫火はにやりと笑うと、拳を振り上げた。
     力任せのパンチは、炎の宿った劫火の腕から繰り出されて武道の視界をグラリと揺らした。軽い脳震盪のように、意識がフラつくのを感じる。
     しかし更に迫る業火の動きに、暗が反応した。
    「まずはガードを緩める。ミカエラ、俺に合わせてくれ」
    「分かったよ!」
     ミカエラの明るい声が、明莉に返る。
     武道との間に暗が割って入ると、ミカエラはすうっと身構え、劫火の視線が自分に来るのをじっと待った。
     意識を集中した明莉の手が大鎌をゆるりと操り、断罪の刃を振り下ろす。半円の刃は影を作り、ふうっと劫火を刈り取った。
     劫火の拳が下から刃をたたき上げるが、大鎌の衝撃が劫火の肩口をザクリと切り裂く。闇に咲く月のような半円の刃が振られる度、劫火に血を滴らせる。
     その傷は、容易に癒えはしない。
    「数々の仲間を破った力、見せてみろ!」
     彼女の言葉に、明莉が目を細める。
     勝利。
     弱者。
     一人では、彼らに太刀打ち出来ない。その為に、どんなことでもしよう。だけど、そこに目的があるから真っ直ぐに立っていられるのだと思う。
    「あんたの強さは、少し怖い」
     ぽつりと明莉が言った。
     ただ強くなる為に存在している、アンブレイカブルの強さは歪で危うい。だけど、ひたむきなその姿勢に共感している自分もある。
     死すら恐れず立ち向かう彼女たちに、明莉はとても強烈な力を感じた。
     正面から劫火に拳を振りかざしたミカエラの様子は、劫火に少し近いように感じられる。それも少し危うく、そして眩しい。

     強烈な劫火のパワーに、武道やミカエラさえ押されつつあった。攻撃に晒される彼らに、ベリザリオは符を放って炎から守ろうとする。
     幸い彼女は一対一の攻撃に専念している為、炎が広がりにくいのは不幸中の幸い。
    「符を優先しますわ、もし火が消えないようでしたら仰ってね」
     ちらりと武道を見て、ベリザリオが言った。劫火の攻撃は一撃が重く、ベリザリオは気が抜けない。
     いまだ炎に焼かれながら、武道は構えを右に切り替えた。
    「……俺の力でどこまで行けるか分からんが」
     力で押しても彼女に叶わないと感じた武道は、拳から繰り出す風刃で劫火に応戦する。炎を吹き飛ばす風ではないが、武道の風は刃のように劫火の腕や体を切り裂く。
     押されがちな武道のやや後ろに位置取り、勇也が大刀を地に引きずった。重く影を落とす斬鑑刀の一撃すら、彼女は平然と受け止めるのである。
    「悪いが、炎に炎で返させてもらおう」
    「……任せるさ」
     武道が痛みを堪えて笑うと、勇也は刀をゆっくりと構えた。大きな刃が風を切り、劫火に叩きつけられる。
     炎を宿した大刀と、炎を纏う劫火の拳。
     ストレートな打ち合いであるが、劫火は少しずつ相手の勢いを削いでいるように感じる。力も強いが、それに上乗せして身が素早い。
     すうっと飛び込んで来た劫火の前に、武道が立ちはだかる。下から繰り出した拳が武道を叩き、地面に転がした。
     だが武道が正面で受け止めている間、勇也が横に回り込んでいた。大刀を重々しく振り上げ、切り込む。
    「正面から戦うだけでは……あるまい!」
     重い大刀を劫火の足下に叩き込むと、ザックリと切り裂いた。
     死角からの一撃に、劫火がよろりとよろめく。追い打ちに出た勇也の刃を辛うじて受け止めているが、先ほどまでのキレが無い。
     狙い定めたアイナーの光の刃が、劫火に次々と襲いかかる。
     少しおぼつかない足取りであるが、劫火はステップを踏んで回避を計る。
    「ルリ、足止め頼む」
     アイナーの声に、ルリが影を放った。
     ルリから飛び出した影が、一歩二歩と下がって躱す劫火の足に絡みついて食らいつく。逃げようと蹴散らす劫火にも負けず、ルリの影がは追いすがった。
     絡みつく影は、海岸の砂浜を散らして劫火の足に黒い蛇のように。
     ピタリと足を止めると、劫火は大きく深呼吸をした。目に輝きが戻るのを見て、ルリがハッと何かに気付いた。
    「拘束解かれちゃう! もう一度、お願い!」
     追い詰められると、劫火は一歩下がって体勢を整える。
     落ち着いた戦いぶりに、ルリは感心していた。それでも手は止めず、縛霊手で捕縛を試みる。ルリに合わせて影を放ったユエファは、ミカエラや暗で止めきれない劫火の攻撃に晒され、炎に焼かれていた。
     傷をものともせず、ユエファに組掛かる劫火。
     とっさに雷を放って対応するが、拳によるダメージはユエファを容赦なく削った。
    「大丈夫、雷が守ってくれてるわよ。傷はわたくしが癒しているから、攻撃に専念してちょうだい」
     ベリザリオがシールドリングを送ってくれた事に気付き、小さな光の輪にユエファが安堵の息をつく。
     ほのかな光とベリザリオの声が、少し冷静さを取り戻してくれていた。
     大丈夫、ベリザリオの言うように炎は大分抑えられている。再び距離を少し開け、防御わ任せながらユエファは攻撃のタイミングを計った。
     影を使って、ルリが足止めをしてくれている…あとは、そのチャンスを逃がさないだけ。背のアイナーがガンナイフを構えると、ルリがこくりと頷いた。
    「逃がすなよ」
     アイナーは、自身に言い聞かせるようにルリに声を掛けた。
     ルリが構えたのは、ランス。氷の力を宿し、ルリは先ほどのザハーロとの戦いの再戦のように氷の力を解放した。
     氷塊が勢いよく飛び出し、次々と劫火に叩き込まれる。
     劫火の足に絡みついた影に意識を集中し、ルリが必死に粘った。ここで押し負けては、劫火にまた回復する隙を与えてしまう。
     足を絡め取られながら、劫火は炎を放った。
     明々と燃える炎が、目に飽き付く。
     この炎は、どれだけの鍛錬で培われたものなのだろう。ただひたすら、戦いに身を置いて削った技と体は、一瞬一瞬に光輝いて見えた。
     ……ああ、綺麗だ。
     ルリは、踏みとどまりながらもその光景に目を奪われる。
     ぎゅっと拳を握り締め、ルリは声をあげた。
    「ルリは……独りじゃないんだよ! だから、戦えるんだ!」
     ルリの声に、劫火が視線を向けた。
     目が合い、ルリは声が届いたことを知る。
     次の瞬間アイナーのガンナイフから放たれた弾丸が、劫火に叩き込まれた。半身捻った劫火に合わせて追撃する弾丸に、劫火の目が見開かれた。
     弾丸にぐらりと体が傾ぎ、さらに上段から勇也の刃が叩き下ろされる。
     鋭い一撃が、劫火の体を切り裂く。
     一撃は炎も、劫火も全て切り裂き……そしてふうっと全てをかき消した。

     ざあざあと押し寄せる波を、ルリはじっと見つめている。
     独りじゃない。
     誰とだって、ルリはみんなで一緒に考えてみんなで戦うんだ。それが強さで、それが武蔵坂の戦い方なんだ。
     笑顔を浮かべ、ルリがくるりと振り返った。
    「帰ろう!」
    「……そうだな。おい、行くぞ」
     武道がミカエラと明莉を振り返る。
     ぱっと振り返り、ミカエラが口を開いた。腰に手をやり、ミカエラは何か強い意志を秘めた瞳が武道を見上げた。
     思わず怯んだ武道に、明莉はくすりと笑って肩を揺らす。
    「お土産」
    「…お土産?」
     武道が明莉に聞き返すと、ミカエラが頷いた。
    「みんなに北海道のお土産頼まれてたんだ!」
    「新巻鮭か?」
    「何でそんなもの持って帰るんだよ、甘味だよ甘味! チョコレート! チーズ!」
     必死に食い下がるミカエラの様子を見ながら、明莉はむしろ新巻鮭でもいいかもしれないと思案する。
     むろん、その場合鮭を卸すのは自分ではないが。
     ベリザリオも、甘味と聞いて笑顔を浮かべた。
    「いいわね、ホワイトチョコにキャラメル。産地直送のミルクスイーツは、北海道土産にぴったりよ! ……そう思うでしょ?」
    「いいんじゃないのか?」
     ベリザリオに聞かれ、アイナーが曖昧に相づちをうつ。
     学園に帰るまでが依頼って言うし、皆が土産を買って帰るならアイナーもそうするしかないわけである。仕方なく歩くアイナーの視線に、海を見つめるユエファと勇也が写った。
     先ほどのルリと同じように、ユエファが海の方を見ている。勇也は目を伏せて、何かを祈るようにしていた。
    「今頃奴らはどうしているんだろうな」
     勇也が、海を見ながら言った。
     奴らというのは、ご当地怪人の事であろう。こうして海岸に辿り着いた怪人が居るという事は、ここを突破した者もくぐり抜けた者も居るのだろう。
    「ボス格の怪人も突破済み、当然ゲルマンシャークの一味と合流しているのだろうな」
    「…そうでないといいんだけどな」
     アイナーが溜息まじりに、勇也へ答えた。
     波打つ北海道の海を、ユエファはまだじっと見つめていた。その表情はいつもと変わらず表情は読み取れないが、海の向こうに何かを見いだそうとしているかのように感じる。
    「…予兆の事は不明…けれど、業大老や柴崎、強いのが近くにいる事…あるかもしれない…ね」
     この海の向こうで、アンブレイカブルとご当地怪人に何があったのか。
     そして、何が起ころうとしているのかをユエファは知りたいと思った。

    作者:立川司郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年9月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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