北海道のとある海岸。ここに流氷がやってきた。しかしただの流氷ではない。流氷の上に誰かが乗っているのだ。その乗っている人物は昇ってくる太陽に背を向けて、腕を組んでいた。
「長い旅であった! 故郷ロシアから流氷に乗ってやってきた、我こそピロシキ怪人! 今こそ、我がピロシキ本来の姿を広める時! とぅ!」
ピロシキ怪人と自らを呼んだその人物の頭部は確かにピロシキとなっている。しかし、日本でよく見かける揚げたピロシキではなく、東欧で見られる焼いたピロシキだ。
そのピロシキ怪人は勢いよく流氷から北海道の大地へと着地する。
「待っていたぞ」
ピロシキ怪人の前に現れたのはカレーパンを片手に持った屈強な男児。
「お、お前は!」
「俺はお前を倒すためにやってきたカレーパンがトレードマークの華麗・真! お前をこれ以上先に行かせるわけにはいかねえ――覚悟!」
「ふふふ、我が初戦の相手に不足なし! 行くぞ!!」
かくして、2人の戦いは熱く始まりを告げるのであった。
「どうしたどうした! 全く手が出てねえじゃねえか!」
圧倒的な力で押すのは真だった。超硬度の拳の連撃がピロシキ怪人の体を穿つ。それでもピロシキ怪人は不敵にも笑みをこぼす。
「ふふふ、この程度か。この程度なのか、華麗・真よ! 笑止! まったくの笑止よの!」
パシッと真の拳をいなしたピロシキ怪人は一度距離をとる。
「ふん、そんな大口を叩く割に距離をとるとは……俺に恐れをなしている証拠!」
「何を言っている! みせてやろう、ピロシキの具材の如き七色のピロシキ絶技を!」
構えた。
そう真が認識した時にはピロシキ怪人は真の懐に潜り込んでいた。そして下からせり上がってくる殺気。
「――ッ!」
「ピロシキシュゥゥト!」
ガードを固めるよりも早くピロシキ怪人のつま先が真の顎を打ち抜いた。
「やりやがったな!」
たたらを踏んで後退する真はガムでもかむように、ポケットからカレーパンを取り出して一口で丸々平らげる。
「鉄の味がするカレーパンは不味ぃんだよ!」
そして再び間合いを詰めると真は得意の拳をピロシキ怪人に叩き込む。
「それだけ見せられれば飽きもするわ、力とはこう使うのだ!」
真の腕を掴んだかと思うと、真の突きの勢いを利用して、ピロシキ怪人は真を宙に放り投げる。
「ピィィィロシキバァァスタァァァァ!!」
凄まじい衝撃音と共に真の身体は地面に叩きつけられる。
「こ、この……カレーパンはピロシキの遠い親戚みたいなものだろ……」
優しくしやがれ、と舌打ちをしながら立ち上がる真のことをピロシキ怪人は凄い形相で睨みつけている。
「ピロシキを揚げるなど邪道! まして外見から中身まで似ても似つかぬものに親戚と呼ばれようとは……許せぬ! 我が貴様を丸焦げにしてやるわ、くらえ! ピロシキィィィィィビィィィィム!!!」
真っ赤に燃え上がるピロシキ怪人の頭部から放たれた熱光線は真の身を包み込む。
「な、なんだとぉ!?」
ドボン!
「――ふん、所詮は我が敵ではなかったということだな。さあ、本当のピロシキの姿を広めに行こうではないか!!」
高笑いをしながら、ピロシキ怪人は戦場を後にするのであった。
「みなさん集まりましたね」
五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は集まった灼滅者たちに微笑みかける。
「ご存知の方も多いかもしれません。まだ、夏も終わっていないというのに、北海道に流氷が漂着しました。当然のことながら、ただの流氷ではありません。ロシアのご当地怪人を乗せた巨大な流氷です。その流氷には多数のご当地怪人が乗っていたようですが、何らかの理由で流氷が破壊され、ロシアン怪人たちは北海道の海岸のあちこちに漂着し始めています」
しかし、事件はそれだけではありません。と姫子は言う。
「このロシアン怪人の漂着に対応して、アンブレイカブルが動き出しています。どうやって、流氷の漂着を知ったのかはわかりませんが、格好の腕試しの場と思ったのか、各地で漂着したロシアン怪人に戦いを挑んでいます」
そこで、みなさんに提案です。と姫子はにっこりと笑う。
「ロシアン怪人とアブレイカブルとの戦いの後、生き残った側を撃破し灼滅してください。これは、ロシアン怪人とアンブレイカブルを一気に倒せるまたとないチャンスです」
にっこりと小首をかしげて姫子は説明を続ける。
「今回、みなさんが戦うことになるのはロシアン怪人――頭部がピロシキになっているピロシキ怪人でしょう。使用してくるサイキックはご当地ヒーローに似たものを使ってきます。ですが、ご当地ビームだけは少し違うので注意してください」
具体的にはご当地ビームだと【怒り】のところが【炎】に変わっており、ガトリングガンのブレイジングバーストに近い。それ以外にも威力はアンブレイカブルを倒しただけあって、相当の威力があると考えていいだろう。
「ピロシキ怪人はアンブレイカブルとの戦いで受けた殺傷ダメージが残っているので、みなさんには十分な勝機があります。油断しなければ大丈夫だと思います」
説明を終えた姫子はもう一度灼滅者を見回す。
「ロシアン怪人の目的はまだわかりませんが、その目的を阻止できるように頑張ってください」
そう言って姫子は灼滅者を送り出すのだった。
参加者 | |
---|---|
笠井・匡(白豹・d01472) |
櫻枝・弧月(黄昏の月・d02671) |
天咲・初季(火竜の娘・d03543) |
出雲・陽菜(イノセントチャーム・d04804) |
ジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183) |
三園・小次郎(愛知讃頌・d08390) |
ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベラー・d11167) |
橋本・月姫(中学生魔法使い・d18613) |
●対決! ピロシキ怪人
地平線の向こうがうっすらと明るくなる頃。海辺にある崖の上で、2つの主義がぶつかっていた。
ピロシキとカレーパン。
「なんとなく、香ばしい匂いが漂って来る気がする」
そう鼻をひくつかせるのは犬変身をした三園・小次郎(愛知讃頌・d08390)だ。小次郎の霊犬であるきしめんは背後で口はもぐもぐと動かしている。
「やめて尻尾は噛まないで」
ピロシキとカレーパンの戦いをじっと影から見つめながらも尻尾をぶんぶんと振るのは蛇変身をしたジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)だ。
他の灼滅者たちもピロシキとカレーパンの戦いの行く末を見守る。そして戦いはカレーパンが海に落ちて幕を閉じる。
「ふはははは、広げてやろうぞ、本物のピロシキの姿を!」
「其処までだ、ピロシキ怪人。……通すわけにはいかない」
意気揚々と海を背にするピロシキ怪人の目の前に現れたのは8人の灼滅者たち。櫻枝・弧月(黄昏の月・d02671)は両手を広げてピロシキ怪人を睨みつける。
「待て待て待て~ィ」
とワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベラー・d11167)もマテリアルロッドと妖の槍を両肩に担いで飛び込んでくる。
「残念、まだ気が早い。次の相手は私たちですよ」
「我がピロシキ道を邪魔するというのか! ええい、揚げるなどという邪道なピロシキしか知らぬ人間なぞ、我の敵ではないわ!」
『我が名のもとに門よ開け』と解除コードを唱え、赤の魔女服に身を包んだ天咲・初季(火竜の娘・d03543)の周辺には光り輝く輪が舞い始める。ピロシキ怪人も構えをとる。
「……俺、カレーパン派なんだよなー」
「なんだと、貴様。あんなもののどこが良いというのだ!!」
小次郎の呟きをピロシキ怪人は聞き逃さない。
「はぅ……ピロシキがいっぱい食べられる依頼かと思ったら怪人退治でした……早く始末して帰りたいんで……そ、その……さっさと灼滅されてくれますか」
「貴様も我がピロシキ道を邪魔するというのか!」
おどおどしながらも言っている内容は結構ひどい橋本・月姫(中学生魔法使い・d18613)は一喝するピロシキ怪人に思わず身を縮める。
「好き嫌いはめっ、だよ……? 好き嫌いしちゃ、おおきくなれないの……」
「我はもう十分に大きいわ! 見よ、この美味しさと大きさを限りなく追及し両立したピロシキを! これ以上大きくしたら、美味しさと大きさの黄金比が崩れるだろうが!」
「怪人とやりあうのは初めてだけど、いや興味深いなぁご当地怪人って」
出雲・陽菜(イノセントチャーム・d04804)にこれでもかとピロシキ怪人が自分の頭部を見せつけているのを遠くから見る笠井・匡(白豹・d01472)。確かにかぶり物ではなくピロシキが頭の人型とはなかなかに異様なものであろう。
「ズトラーストヴィチェ。長旅ご苦労さまでした」
優雅な様子でB‐q.Riotを抜いたジンザは言葉を続ける。
「それで貴方の行き先は2つ。今すぐ強制送還か、ここで僕達に灼滅されるか、です」
「ふふふ、先ほどのやつと同じようなことを言うな。甘い! たかがひよっこ8人に我がピロシキ道を止められるわけがないわ! 来いっ!」
ピロシキ怪人に言われるまでもなく灼滅者たちが飛びかかる。
ここに戦いの火ぶたが切って落とされた。
●ピロシキの野望を打ち砕け!
「ピロシキって美味しいらしいけど、食べたことないなぁ」
「ピロシキは好きだ! よって貴様を美味しくいただく!」
「よろしい! 悪しき揚げピロシキを食べるよりも本物の焼きピロシキを食べ、我が美味しさに気付くのだ!」
ばっと諸手を広げるピロシキ怪人に向かって匡とワルゼーが捩れた槍を同時に突き立てる。
「いくぜ、相棒」
正面から突っ込んだ匡とワルゼーとは別に小次郎はきしめんと共に左右から間合いを詰める。
左からは小次郎の縛霊手、右からはきしめんの刃。
「甘いわ!」
ピロシキ怪人は両手で同時に攻撃を受け止める。両手から血が流れ落ちるが、致命傷には程遠い。
「ふはははは! 効かぬ、効かぬぞぉ、揚げピロシキしか知らぬ者の攻撃などぉ!」
「Quiet、ならば熱々のシェパーズパイにして差し上げましょう」
ふっとジンザの姿が陽炎のように揺れる。次の瞬間にはピロシキ怪人の死角に立ったジンザの容赦のない一撃が振り下ろされた。
鮮血がぱっと吹き出るのにピロシキ怪人は顔をしかめる。続けてライドキャリバーに乗った弧月が妖の槍を振るいピロシキ怪人の傷を深める。しかし、ピロシキ怪人はどうという様子もなく構えを解かない。
「ふふふ、その程度か。今度はこちらから――いくぞ!」
瞬間、ピロシキ怪人の姿が灼滅者の視界から消える――いや、月姫を除いてだ。怪人の繰り出す無数の拳を月姫は大鎌で弾く。
「ピロシキシュゥゥゥト!」
大声で技名を叫ぶのと同時か少し早くピロシキ怪人のつま先が月姫の身体を蹴り上げた。
「離れるの!」
陽菜は槍でピロシキ怪人を突き、月姫との距離をとらせる。
「わかってくれるまで、おいしいピロシキたくさん食べてもらうの……!」
「貴様、それはピロシキとは呼ばんぞ! 揚げたピロシキなぞピロシキにあらず!!」
陽菜が手にしているのは揚げたピロシキ。それをピロシキ怪人は忌々しく睨みつける。
「美味しいものに貴賎はないのにカレーパンだ、ピロシキだーって争うなんて考えられません……うぅ、そういうこだわり強い人ほど関わるのが面倒くさそうです……早く済ませて帰りたいです……」
蹴られた箇所を押さえながら言う月姫は大鎌を脇に構えてピロシキ怪人を見据える。そして遠心力を最大限に利用して思いっきり鎌を振る。鎌に宿った黒き波動がピロシキ怪人を包み込む。
「はるばるやって来て、大層立派な目的があるんだろうね!」
初季はレーヴァテインでピロシキ怪人に斬りかかる。
「当然だ、我がピロシキの味を世界に広めるために我は日々活動しているのだ!」
「焼いたピロシキ食べたことないけどね」
「ぬぬぬぬ!」
初季の言葉に興奮するピロシキ怪人に匡は問いかける。
「僕はピロシキ食べたことないけど……潮風にさらされたピロシキってどうなの?」
「我がピロシキの旨みは潮風に負けるようなやわなものではない!」
「アルゼンチンのエンバナーダは好きだけどピロシキってあれの親戚みたいなもんでしょ?」
あ、僕が好きなのは卵とツナが入ってるやつね。と言う匡に
「それも揚げるではないかぁ!」
とピロシキ怪人は声を荒げる。
「それにしても、わざわざ流氷に乗ってやってきたのだから本場のピロシキを広める以外にも何か目的があるんじゃない?」
「ふん、あったとしても我がピロシキの美味しさを理解出来ぬ者に語るものか!」
そう言ってピロシキ怪人は匡を投げ飛ばす。
そんな揚げピロシキ派が多数を占める灼滅者だが、ジンザは違った。
「僕は焼いたピロシキも充分に理解できますよ」
その言葉をピロシキ怪人はどれだけ待ち望んだだろう。戦いの最中での呟き、よほど注意していないと気付けない呟きだったが、ピロシキ怪人の耳はその言葉を逃さなかった。あまりの嬉しさにジンザの方を余所見して目の前の弧月とライドキャリバーの攻撃の直撃を受けたほどだ。
「やはり日本は歪んだ国なのだ! 揚げたピロシキなどというおぞましい物を嗜みおって! だからこそ、手始めにこの地から本物のピロシキを広げていくのだ! ハハハ――ハァ!?」
そう高笑いをあげるピロシキ怪人は気付かなかった、月姫の足元から伸びる影に。月姫が伸ばした影はピロシキ怪人を包み込み、トラウマを与える。
「ふふふ、全てのピロシキをカレーパンに変えるべく暗躍する北海道カレーパン怪人が貴方の相手をしてくれますよ! さあ存分に楽しんで下さい!」
「なんだと!? この地に歪んだピロシキが広がったのは貴様らがカレーパンに変えて回っていたせいとでもいうのかぁぁぁぁ!!」
頭を抱えて膝までつけて叫ぶピロシキ怪人に灼滅者の容赦のない攻撃が叩き込まれる。
「くっ、我はこの程度の障害で屈したりなぞはしない、ぞ」
胸に手をあてながらピロシキ怪人は立ち上がる。戦いはまだ続く。
●鮮烈、ピロシキ怪人
ただひたすらに揚げピロシキをこき下ろし、焼きピロシキを賛美するピロシキ怪人であるが、アンブレイカブルを倒すだけのことはあって、攻撃の質を高かった。
「私……この戦いが終わったらピロシキを食べるんだ」
「俺、この戦いが終わったらカレーパンを食べるんだ……」
あからさまな死亡フラグをたてる陽菜と小次郎。
「食べるなら我がピロシキを食べろぉぉぉ!」
ピロシキ怪人が咆哮をあげながら光線を放つ。爆音と土煙の中に小次郎の姿が消える。しかし、土煙から出てきたのは小次郎への攻撃を肩代わりした弧月だった。
「……ピロシキさん、きっと食わず嫌いなの……だから食べたら美味しさがわかるの……」
陽菜が妖の槍を回転させながら突撃する。
「……日本式ピロシキ、食べてくださいなの」
「なにぃ!?」
妖の槍の先端に取り付けられていた揚げたピロシキが驚きで口を開けたピロシキ怪人に飛び込む。
遅れて槍の穂がピロシキ怪人を斬り、ピロシキ怪人は歯を食いしばって痛みに耐える。
「――!? なんじゃこらぁ!」
「……私のお気に入り、気に入ってくれた、かな……?」
どきどきと胸を高鳴らせつつ、上目遣いに聞く陽菜にピロシキ怪人は怒りを爆発させる。
「揚げたピロシキだけでなく、中身が餡子なんてどんな味覚をしておるのじゃぁ! 食べ物は無駄にできぬから、吐き出すことは情けでせぬが許さぬぞぉ!」
律儀に咀嚼して嚥下したピロシキ怪人の頭部は怒りのあまり真っ赤に燃えあがる。ピロシキ怪人の気が逸れたのを月姫は逃さず虚空ギロチンでピロシキ怪人の身体を切り刻む。
「ふはははー。この生ピロシキを揚げられたくなければ大人しくしてるのだー、なの……♪」
「そのピロシキ、今すぐ焼いてやるわ! 唸れ、我が頭部! ピィィィロシキビィィィィム!!」
放たれた熱線は問答無用で陽菜を炎に包みこむ。
「あんまし無茶するなよ」
小次郎の指先に光が集まり、光弾となって陽菜の傷口に打ち込まれる。光は陽菜の炎を打ち消し、傷も癒す。
「見えてますよ……そこだっ!」
自らのバベルの鎖を瞳に集中させた初季の指先に魔力が高純度で圧縮される。そして指鉄砲で撃つと同時に魔力が彗星となってピロシキ怪人の肩口を射抜いた。
「ぬぅ、やるな!」
「ならこれはどうかな」
匡の武器がピロシキ怪人に接触すると、膨大な魔力がピロシキ怪人の体内で爆発する。
くの字に体を曲げたところにジンザが間合いを詰める。
「この……間合いっ」
だが、殺気を感じたジンザは詰めるスピードを緩めた。瞬間、ジンザの前髪が数本、宙に舞った。ピロシキ怪人の鋭い蹴りが掠めたのだ。頬に強烈な熱を感じながらも、ジンザはピロシキ怪人が蹴り上げた足ではない軸足を斬る。
機動力が落ちたピロシキ怪人にワルゼ―が一気に間合いを詰める。
「ハァァァ!」
ピロシキ怪人と拳をぶつけ合うワルゼー。閃光の如き速さで拳を繰り出すワルゼーにピロシキ怪人も目を見開いて拳を放つ。
「貴様、なかなかやるな」
流れる汗を拭いながらピロシキ怪人はワルゼーに言う。
「そっちこそ」
ワルゼーも笑みを浮かべて再び攻撃に移る。
「しかし貴様の動き、先の一合で見切った! ピィィィロシキバスタァァァ」
突き出されたワルゼーの腕を取ったかと思うと、ワルゼーを宙に放り投げる。ふっと宙を舞う感覚を味わったワルゼーは続けて、地面に強く引っ張られるのを感じる。同時に襲い掛かる衝撃と降り注ぐ土砂。
その土砂煙の中から飛び出たのは初季。手には炎を纏った光輪。
「こんがり焼いてあげるよ、お望み通り!」
「ふははは! 燃える燃える我が頭部が――って我が頭部は既に焼けておるわ!」
初季のレーヴァテインで頭部が炎に包まれたピロシキ怪人は地団太を踏む。
「冷凍ピロシキなら揚げたほうが美味しそうですよね」
ジンザがピロシキ怪人に微笑む。するとピロシキ怪人の周辺から温度が急激に下がり、ピロシキ怪人の耳の部分などが凍り始める。
「く、この程度の攻撃で!」
負けるかぁ! とピロシキビームを放つピロシキ怪人。
「炎が――!」
「任せろ!」
ピロシキ怪人の炎が仲間たちに広がってきたのを察知した小次郎が夜霧をその地点に放つ。メディックの恩恵を受けた夜霧は仲間の炎をかき消していく。
炎が消え、傷も癒えた灼滅者たちは再びピロシキ怪人に迫る。
「ピロシキ道を邪魔するなぞー!」
「ブロッシャイチェ……オホーツクを渡って、お帰り願いますよ」
「みなさん、タイミングを合わせましょう」
陽菜の掛け声にあわせて、マジックミサイルが一斉にピロシキ怪人を射抜いた。
「こんな我が美味しさを、理解しない者の攻撃な、ど!」
血を吐き、崩れ落ちそうになる体を支えるピロシキ怪人の闘志はまだ消えていない。
しかし、その闘志ももう風前の灯火だ。手足は凍りつき動きが鈍り始めているピロシキ怪人。
「これで終わりだ」
弧月はライドキャリバーを踏み台にして跳躍する。ライドキャリバーはそのままピロシキ怪人へと突撃する。跳躍した弧月は宙返りして手にした槍を投擲する。そしてそのまま槍の石突きを蹴りつけて、ピロシキ怪人を貫いた。
「く、く、誰一人と我がピロシキの素晴らしさを教えることができずに終わるとでも言うのかー!」
ピロシキバンザァァァイ!
そんなピロシキ怪人の断末魔は爆発音によってかき消される。
こうして戦いは決着するのだった。
●ピロシキの薫りのあとには
「好き嫌いしない子の勝利なの……♪」
Vサインをする陽菜。その隣では月姫がはぅ、と大きく息をついている。
「ピロシキと一口に言っても、具材も多様。調理法だって、焼き・揚げ、いずれもあって良いだろう」
弧月も肩をすくめて、ピロシキ怪人が爆散した跡を眺める。
「本場の味をごり押しとかは頂けないけど、そこまで推すなら1回食べてみるかな、ピロシキ」
どこかに売っている店がないかと匡は探し始める。それならここにとワルゼ―が言う。
「さ、皆はピロシキ派? それともカレーパン派、いずれかな?」
ちなみに我はピロシキ派、とワルゼ―は自前のカレーパンとピロシキを仲間達に振る舞う。
「俺、カレーパン! 夏だからこそ揚げたてのサクッとしたカレーパンが良い」
と小次郎がカレーパンを取ると初季やジンザたちも思い思い手にして、せり上がる朝日を背に美味しくピロシキやカレーパンを食べるのであった。
作者:星乃彼方 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年9月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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