アルパカファイヤー!

    作者:空白革命

    ●アルパカさんの衰退ダンスをご想像ください
     何度目かの夜、夜のネオン街をアルパカが駆け抜けた。
     ……いや、別にアルパカはもふもふ派とさらさら派がいるんだよみたいな動物知識を語ろうとしてるんじゃなくて。
     まあ町中をアルパカがパッカパカしてたってだけでもう酷いし、見た人が100%振り返って『アルパカダァー!』って叫ぶのは間違いないと思う。
     けど飲み屋帰りの千鳥足サラリーマンは振り返ったときこう叫んだんだ。
    「ファイヤーアルパカダァー!」
     そう、アルパカはなんでか身体から火を噴いていたのだった。
     なんでかって?
     そりゃイフリートだからだよ!
     
    ●諦めろ! そいつにはアルパカ語しか通じない!
     ドキッ灼滅者だらけの武蔵坂学園。
     さーて今日も依頼依頼とか言いながら教室の扉を開いたら。
    「パーカァ」
     アルパカが振り返った。
     綺麗なソプラノボイスだった。
     扉を閉めた。
     ……でもなんか首から下がJC制服だったし、『this is a pen!』のポーズしてたし、もしかしたら、もしかしたら須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)ことまりりんちゃんかもしれない。
     おそるおそる扉を開けると、椅子に座って『このペン二百円でどう?』のポーズしたアルパカがいた。
     こちらに気づいたアルパカがぱこっと頭を外して。
    「待って! これはね、説明のためにね! 借りたの!」
     あ、まりパカだって思った。

     以降、着ぐるみ半脱ぎ状態のまりんちゃんによる説明です。
    「ある日あるところにアルパカ……じゃなくてイフリートに闇堕ちしちゃった男の子がいるの。そもそも両親がアルパカ顔だったし生まれた頃から天然アフロの白髪でアルパカみたいな顔してたしあだ名もアルパカだったけど決してアルパカじゃ無かったんだ。でも晴れてアルパカファイヤーの仲間入りをしちゃったってわけなの」
     何回アルパカ言うねんと思ったけど、とりあえず最後まで聞いてみる。
    「もう、ほとんど獣っぽくなっちゃって、今見せたような『ギリギリ人類に近いアルパカ』みたいな状態なの。でもまだ完全なるアルパカじゃいよ。そうなったら人を襲っちゃうし、唾だって吐いちゃうし、前歯もなくなっちゃうと思うの。そうなったらきっと悲しむよ。誰が悲しむかちょっとわからないけど、きっと悲しむと思う。飼育員さんとかが……」
     大事そうにアルパカヘッドを抱きしめるまりん。
    「このアルパカさんを助けてあげて。きっと人間性かアルパカ性を引き出すことでダークネス性を弱めることができるはずだから、うまくしたら灼滅者にだってなっちゃうかもしれないよ!」
     最後にかぽっとヘッドを被ると、まりんはガッツポーズした。
    「パカァ、パカパカパカァ!」
     これ、被ったらパカしか言えなくなるんかい。


    参加者
    龍宮・神奈(闘天緑龍・d00101)
    若菱・弾(キープオンムービン・d02792)
    マリーゴールド・スクラロース(小学生ファイアブラッド・d04680)
    鏑木・カンナ(疾駆者・d04682)
    葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)
    中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)
    漁火・涼(火之夜藝速・d19999)
    玖珂・朝花(夏色の花・d20064)

    ■リプレイ

    ●アルパカファイヤー大追跡24時 ~ネオン輝く繁華街のパカい罠!~
    「パカァー!」
    「アルパカダァー!」
    「ウワーアルパカダー!」
     ネオン街を駆け抜け、ビールケースとかドラム缶とか空き缶の詰まったゴミ袋とかを蹴散らしていく四本足の毛むくじゃらがいた。アルパカファイヤーである。
    「アルパカ発見っ、A通りを左せ……あっちがう右折したよ右折!」
    「ナノッ」
     マリーゴールド・スクラロース(小学生ファイアブラッド・d04680)は散乱したビールケースを飛び越えつつ、携帯電話に向かって叫んだ。
     一緒に走っていた中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)が空き缶蹴飛ばしながら振り向く。
    「無駄に足早いわね。とりあえず、『激おこパカ着火ファイアー!』とか言ってるほうに進めばいいのよね?」
    「そんな声あげるひと居ないよ!」
    「ナノッ!」
     紅葉に律儀なツッコミを入れるマリーちゃん(と頭上の菜々花)、だったが。
    「ウワー激おこパカ着火ファイヤーダー!」
    「「本当に言ってる!?」」
     ブランド商品かなにかが入った紙袋を放り投げて叫ぶおっさん。
     アルパカファイヤーはそんなおっさんのおでこに足を乗っけてクイックターン。来た道を猛スピードで戻り始めた。
     それを追いかけるように突っ走る鏑木・カンナ(疾駆者・d04682)のライドキャリバー・ハヤテ。
     おっさんの頭上を器用に飛び越えると、身を屈めてハンドルをひねった。
    「夜のネオンを駆け抜けたい気持ちはわかるけど、迷惑行為はとめるっきゃないわね、ハヤテ!」
     道を急カーブしていくアルパカを確認。
     カンナは身体を限界まで傾け、アスファルトに黒い焦げ後をつけながら全力カーブをかけた。
     進行方向から追い込みにかかっていた漁火・涼(火之夜藝速・d19999)のライドキャリバー・ブレストがいたが、彼は片足ブレーキをかけつつカンナと交差。一馬身遅れてカーブしきるとアルパカを一緒に追い始めた。
    「あいつ、絶対アルパカ関連でいじられて闇堕ちしただろ! それ以外考えられねえアルパカぶりだぞおい!」
     更に後方から豪快に上半身をはだけさせた若菱・弾(キープオンムービン・d02792)がライドキャリバーと共に追いついてきた。三台体制で併走する。
     弾はいつからきていたものか青いツナギ服のファスナーをつつーっと首まで閉じると、なんか青いキャップを被った。
    「フン、だとしても泣き声が気にくわねえな。アルパカはムカつく感じで『フーン』だ。ったく、ムシャムシャしながら臭い唾飛ばしてくるあの畜生の何がいいんだ」
    「まあまあ、なんでもいいじゃないの」
    「そろそろ目標地点に追い込める。勢い上げていくぞ!」
     ……一方その頃。
     葉新・百花(お昼ね羽根まくら・d14789)は携帯を耳に当てていた。
    「はい、はい。そろそろこっちに来るようで……急いでください。では」
     携帯を畳んでポケットに入れる。
     ここはいわゆる追い込み目標地点である。
     まあゆーても、キャリバーさんの走りと灼滅者ダッシュってこういう戦闘状況では大体にたようなもんなので、別にキャリバー組だけでやる必要はないのだが、その辺は気分というやつである。
     バイクで追い回してる感じがカッコイイでしょ?
    「それにしてもあるぱかさん……火なんか出したら折角のもこもこが焦げちゃいそうです」
    「それは、んっと……ダークネスパワーなのよ!」
     両手をばたばた振ってダークネスパワーを表現してみる玖珂・朝花(夏色の花・d20064)。
     ちなみにこの辺にいた一般人(主に酔っ払いとか家なきオッサンとかである)は殺界形成でどいてもらった。ちゅーいち女子の朝花にはやたらミスマッチだが、上半身をぐりっとひねって振り向きつつ『ころす、のよ!』とか叫ぶ朝花を想像して楽しんで頂きたい。集中線いりで。
     頭をかりかりとかく龍宮・神奈(闘天緑龍・d00101)。
    「しかし世の中アルパカだらけだな。どんだけ魅入られてんだよ。俺が相手したダークネスだけでも既に二人目だぜ」
     そこへ。
    「パッカパカァーッ!」
     アルパカファイヤーがおもむろに突っ込んできたのだった。

    ●アルパカ探検隊 ~灼滅者は夜の町に伝説のアルパカファイヤーを見た!~
     章区切りなんかしちゃったが、あの場面から一秒と進んでいない。
    「そっこだぁぁぁぁぁあ!」
     神奈はパッカパカァとか言いながら大ジャンプしたアルパカへと豪快に振り向きつつ高速封印解除。握り込んだ斧を回転かけつつぶん投げた。後のドラゴン・トマホークである。
     斧はアルパカに直撃。パカァといいながら上方向にスローモーションで回転。
     そこへ神奈たちを挟んで反対側のブロック塀を乗り越え、マリーゴールドと紅葉が縁からジャンプ。中空のアルパカへと接近した。
    「ここで通行止めだよ!」
    「からのー、毛刈りっ!」
     二人のクロスキックが炸裂。踏みつけられる形になったアルパカは地面に叩き付けられ……はせず、屈強な四つ足でずだんと着地してみせた。ひび割れるアスファルト。あと削げた頭頂部。
    「パァカァ?」
     しかしアルパカは口を『うゅうぃ~っ』と動かすと、頭のもこもこをきゅぽんと再生させた。
    「なんて再生速度っ」
    「ナノッ」
     そしてすたんと着地するマリーたち。
     そしてどや顔(本人的にはデフォルト顔)するアルパカ。
     そして後ろから容赦なく轢く弾キャリ。
    「パカァ!?」
     見事にアルパカの背中から頭までにタイヤ跡をつけた弾は、壁際のところでくるっとターンした。
    「再生力が高いなら死ぬほど轢いとけ。まずはそっからだ!」
    「この依頼が戦闘する依頼だってことをこの短い尺の中で主張するんだ!」
    「葉新さんが何を言ってるのかわからないです!」
     斬艦刀を構え、機銃射撃をしつつライドキャリバーで突っ込んでくる涼。
     対して百花も斬艦刀を構え、アルパカをサンドするように斬りかかる。
    「パカッ!」
     タイヤ跡を修復したばかりのアルパカを理由無きシザーアタックが襲う。
     慌ててぺたーんと座る姿勢になるアルパカ。
     それはもうぺたーんである。毛皮のついた芋虫的生物かってくらいだ。嘘だと思うなら『アルパカ座り』で画像検索すればいい。
     かくして刈られる背中の毛。
    「パカァァァァア!」
    「ねえ、さっきから毛刈りしてばっかりな気がするんだけど。いいの、これ?」
     カンナはアルパカに狙いをあわせると槍を構えてキャリバー突撃を開始した。
     余談になるが、文中で鏑木カンナと龍宮神奈を取り違えることは絶対に無いので安心してほしい。でもそれ以上のかき分けはできそうにないので、心の目で見分けていただきたい。
     どうしてもと言うなら脳内で「かんな(ドラゴン)、かんな(蛍光色)」とかき分けてほしい。
     さて、本編に戻ろう。
    「パカッ!」
     自らへ繰り出された槍を首の動き(首だけ横にうねっとスライドしたのでビビった)で交わし、がしっと槍にかみつくアルパカ。
     が、カンナはそこで止まらなかった。噛まれたのをいいことにキャリバーごと回転し、アルパカを叩き付けたのだ。
     どこへ?
     すぐそばにいる朝花へだ。
    「アルパカでもやっちゃいけないことって、あるのよ!」
     朝花は腕を異形化させ、ぐるんぐるんと振り回してから、アルパカめがけて全力パンチを叩き込んだのだった。

    ●26時間アルパカ ~愛はアルパカを救う~
     また章区切りなんかしたが、やっぱりあんまり時間はたっていない。
     パンチで吹っ飛ばされたアルパカが近くの塀に頭からめり込み、しばらく足をバタバタさせてから引っこ抜いたところである。
    「パ、パカァ……」
    「この様子……説得のチャンスって気がするのよ。たぶんだけど!」
     ハッとして振り返る朝花。
     カンナはコホンと咳払いすると、派手な金髪をかきあげた。
    「見た目はどうあれもとは人間なんだし、そっち方向で呼びかけてみましょ。ねえ、あんたはそんな炎をまき散らすための存在じゃ無いはずよ。そうでしょ皆」
    「そうです! 唾をまき散らしてもいいですけど、炎はだめです! アルパカファイヤーです!」
    「そういう意味で言ったんじゃ無いんだけど」
     ガッツポーズで呼びかけるマリーゴールド。
     胸の辺りにふよふよ寄ってきた菜々花(ナノナノ)になんかもこっとしたやつをかぶせた。
    「菜々花、これを被ってパカパカ鳴けば、なにか通じ合えるかもしれないよ!」
    「ナッ、ナノ!」
     何を理解したのかキリッとした顔で頷く菜々花(ナノパカ)。
     アルパカに近寄っていくと、全力のボディランゲージでもって喋り始めた。
    「ナノッ、ナノナノ、ナノナノナノォ!」
    「パカ? パッカパカ。パカァ……」
    「え、通じ合ってるの?」
    「ナノ!」
    「パカ!」
     菜々花はキリッとした顔で手(?)出した。
     そして思い切りぶん殴られた。
    「ナノォォォォォォォ!」
    「通じ合えてない!?」
    「なぜ通じ合えると思った!」
     弾はツナギと帽子、そしてその辺にあったデッキブラシやバケツを掴むとアルパカに自己主張を始めた。
    「自分を思い出せアルパカ! そのままなんだか分からない生き物になるつもりか! 思い出すんだ、飼育員さんやお客さんに可愛がられた穏やかな日々を……!」
    「パカ……」
    「お前の大好きな牧草、沢山用意したぞ!」
     こちらをご覧くださいのポーズで後ろをしめす弾。
     どっからどう持ってきたのか知らんが、もっさりの牧草ブロックに腰掛けてポージングする百花の姿があった。
     灼滅者さんってたしか、サイキックエナジー分解できない普通の物体は収納できない筈なので、つまりこの人たち牧草やらツナギやらを一生懸命ここまで運んできたことになるのだが、その辺を映像で想像するとちょっぴり愉快になれるかもしれない。
     アルパカはたっぷりの牧草と『かもーん』みたいなポーズしてる百花をせつなげに見つめた。
     見つめてから。
    「バーカファイア」
     ぶごーって炎を吐いた。めっちゃ燃える牧草。
    「一生懸命運んできた牧草がー!」
    「てめぇ! それでもアルパカか!」
    「いやアルパカじゃないだろ」
     説得の文句考えてなかったなーとか言いながら地面に斧で落書きしていた神奈がやる気なさげに裏ツッコミした。
     一方でアルパカは、何を思ったのか自ら炎に包まれた。
    「あれは!?」
    「まさか……!」
     炎の中から翼を広げて飛び上がるアルパカ。
     頭には一本の角。背中には炎の翼。そう、その姿こそ……!
    「あれは、神獣パカコーンだというのか!」
    「楽しそうだなお前」
     あくまで出番待ちの神奈がやる気をなくしてるかたわら、紅葉が胸元をぎゅっと握って悲しげに目尻を光らせた。
    「まって、思い出して、あなたの中のアルパカを! 今のあなたは確かに暖かそうよ。でも……燃えてたら、毛が刈れないじゃないっ!」
     首を振る紅葉。はらりと散る滴。
    「燃えてたら草も食べられないし、座ってくつろぐこともできないのよパカパカァ!」
    「パカパカ?」
    「アルパカ語のつもりじゃないのか?」
     地面の落書き(アルティメットアルパカの図)に加わって語る涼。
     とかやっていると、アルパカはすたっと二本足で着地した。
     それだけではない。体つきも人間っぽくなり、パッと見スリムな着ぐるみを着込んだおにーさんに見えなくも無い感じだった。翼と角はえてるけど。
    「何っ!? まさか今のでうっかり人の心を取り戻したのか!? あれが、ゴージャスモードだというのか……」
     いつのまにかアルパカを着込んでいた弾が冷や汗を流しながら言った。
     ちなみにこれはスレイヤーカードから出したらしい。つまり『戦場食、鏡、ストッキング、ヘッドホン、ミニバッグ』のうちのどれかということになる。予想して楽しもう。戦場食が濃厚っぽい。
    「だとしたら人の言葉も……」
     ごくんとつばを呑む百花。
     アルパカは目を細めて言った。
    「パーカァ」
    「アルパカのままだった!」
    「そろそろ俺らの出番でいいよな!」
     待ちきれなくなった神奈がいきなり突撃。
     アルパカはオーラヒヅメを斧に変形させると彼女の斧を受け止めた。飛び散る火花。
     神奈は鍔迫り合い状態で叫んだ。
    「何度も言うけど、アルパカの泣き声は『パカァ』じゃねえ!」
     腹を蹴っ飛ばす。
     アルパカは後ろに飛ぶが、器用に身をひねって着地。両手から波動的なものを出す構えで炎を発射した。
    「パァカインフェルノゥ!」
     周囲を覆ってしまうほどの炎である。
     しかし涼と朝花はそのなかを直進。
    「女の子に攻撃してるんじゃねえぞてめぇ!」
    「それは人としてもやっちゃいけないことなのよ!」
     二人同時に剣を翳すと、飛び込みからのクロススラッシュを繰り出した。
     腹をX字に切り裂かれ、パカァーという断末魔を上げて爆発するアルパカ。
     かくして……。

    ●さらばアルパカ ~フォーエバー~
     そこらじゅう丸焦げの中、神奈とマリーゴールドは遠い目をして目尻をぬぐった。
    「さよなら、アルパカ」
    「帰ろう、みんな……」
     百花はそう言って歩き出し、紅葉もまた歩き出した。
     首を振ってキャリバーのエンジンをかける涼とカンナ。
     朝花もまた、最後にのこった弾へと振り返って言った。
    「アルパカはきっと、朝花たちの心のなかに生き続けるの……よ……?」
     弾とアルパカ男がキャリバーに跨がっていた。
     小さく首を振りながら、渋い声で言う弾。
    「アルパカ欲しいパカァ」

     武蔵坂学園に、今日もまた変な奴が増えた。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年9月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 8
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