イフリート源泉防衛戦~死と炎の輪舞

    作者:天木一

     クロキバが武蔵坂学園の生徒に話かける。
    「先日、ノーライフキングノ邪悪ナ儀式ヲ一ツ潰シタノダガ、ソノ儀式ノ目的ハ、我ラノ同胞ガ守ル源泉ヲ襲撃スル為ノモノデアッタ」
     儀式の妨害は間に合わず既に敵は動き出している。
    「敵ノ数ハ多ク、我ラダケデハ撃退ハ難シイダロウ」
     クロキバは悔しそうに言葉を続ける。
    「モシ、武蔵坂ノ灼滅者ガ撃退シテクレルナラバ、我ライフリートハ、ソノ指示ニ従ッテ戦ウダロウ」
     何としても源泉を守りたいとクロキバは武蔵坂学園に協力を依頼しに来たのだ。
    「ヨロシク頼ム」
     
    「やあやあ、みんな集まったね」
     能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が説明を始める。
    「クロキバからの情報で、イフリートの支配する源泉に、ノーライフキングの眷属が襲撃するみたいなんだよ」
     サイキックアブソーバーの予知でも同じ事が起きると出ている。
    「みんなにはイフリートに協力してノーライフキングの眷属を撃退して欲しいんだ」
     提携できる可能性のあるイフリートの勢力が減り、ノーライフキングの勢力が大きくなるのは望ましくないだろう。
    「みんなに守って欲しいのは箱根の山にある源泉だよ。そこを目指してスケルトンの群れが3つのグループで登ってくるんだ」
     源泉に近づけない為には迎撃しなくてはならない、戦力を分散させて迎撃する必要もあるだろう。
     舗装されてない山道だ、戦闘中に一度分散した戦力の合流は難しい。
    「敵はそれぞれ5体の群れが3つ。その源泉に居るイフリートの協力も得れるから、1箇所は迎撃を任かせられると思うよ」
     源泉に居るイフリートは猪の形をしている。頭は良くないが、単純な命令なら理解できるだろう。戦い始めると他の事が目に入らなくなるタイプのようだ。難しい命令を出すと混乱してしまう可能性もある。
    「夏休みが終わると思ったら、最後にまた事件だね。宿題の残ってる人は大変だろうけど、この事件も解決して欲しいんだ。お願いするよ」


    参加者
    高良・美樹(浮草・d01160)
    紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)
    千条・サイ(戦花火と京の空・d02467)
    函南・喬市(血の軛・d03131)
    御盾崎・力生(ホワイトイージス・d04166)
    穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)
    花澤・リアン(フィオレンツァ・d15736)
    巳葦・智寛(高校生エクソシスト・d20556)

    ■リプレイ

    ●箱根の山
     暗闇に包まれた夜の険しい山道を、一筋の月明かりが照らす。
     そんな中、3チームに分かれた灼滅者達がそれぞれの戦場で戦う準備をしていた。
    「夜道で出会うなら骸骨よか綺麗な華がええのになー」
     千条・サイ(戦花火と京の空・d02467)は軽口を叩きながらも、油断なく戦場になる周囲の地形を探る。
    「ダークネスに手を貸すってのも癪だけど」
    「クロキバ自ら来たって言う心意気は買うがな」
     依頼ならばやるしかないと、高良・美樹(浮草・d01160)は登山靴で山道を踏みしめる。
     隣では花澤・リアン(フィオレンツァ・d15736)がランプで暗い山道を照らす。
    「放っといてもっと厄介なことになるのも困るしなー。ま、やってやるか!」
     穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)も気合を入れて敵を待つ。
     4人が敵を待ち構えていると、ガチャガチャと金属の音が聴こえた。それに続けて鳴子の音と共に明かりが灯る。それは仕掛けた簡易の罠に獲物が掛かった証。その明かりに照らし出されたのは、スケルトンの群れが険しい山道を登っている姿だった。
    「敵が来たぜ!」
    「5体いるね」
     恒汰が真っ先に敵を見つけると、美樹が冷静に敵の数を数える。
    「ほんなら精々派手に散ってもらおか」
    「ああ、それじゃあ蹴散らすか」
     楽しそうに笑みを浮かべるサイと、表情を変えないリアンが頷き、4人は一斉に攻撃を仕掛ける。

     山に群生する木々の中、灼滅者は息を殺して敵を待つ。
    「使い走りの次は共闘か……だが放置しておくわけにもいかんしな」
     ダークネストとの共闘を疑問に思いながらも、函南・喬市(血の軛・d03131)はやるからには全力を尽くすと覚悟を決める。 
    「きみもやるか?」
    「いや、結構だ」
     迷彩のミリタリー服を着こなす御盾崎・力生(ホワイトイージス・d04166)が、顔にも迷彩の顔料を塗りながら尋ねると、それを見ていた巳葦・智寛(高校生エクソシスト・d20556)が首を横に振る。
     それから3人はそれぞれ木に登り身を隠す。暫くすると、からんからんと木のぶつかる音が響いた。
    「来たな……1時の方向に敵発見」
     樹上に居た智寛が罠に掛かった敵を見つけ、トランシーバーで仲間に報せる。
    「準備はいいな? では仕掛けるぞ」
    「援護援護を頼む!」
     敵が射程に入ると、喬市と力生は木から飛び降りて敵部隊を迎撃する。

    「えーと、なんて呼べばいい?」
     イフリートとの共闘に複雑な心中をしながらも、紗守・殊亜(幻影の真紅・d01358)が隣を歩く炎を纏う猪のイフリートに名前を問う。
    「ブゥォォォッ」
    「えー……と、よしブウって呼ぶよ」
     返事する猪の鳴き声に、殊亜が名付ける。
    「ブゥォ!」
     すると猪は大きく鳴いたのだった。

    ●険しき道
    「まずは一体」
     リアンのオレンジの眼がランプに照らされ炎のように揺れる。その瞳に写るのは突然の襲撃に慌て振り向く骸骨の姿。オーラを纏った拳がスケルトンの肋骨を打ち砕いた。
     リアンに反撃しようと剣を振り上げるスケルトンの頭が砕け、崩れ落ちる。射線の先で美樹の構える銃から煙が上がっていた。リアンはそのまま拳を打ち続け、敵を粉々に打ち砕いた。
    「次だね」
     美樹は表情を変えないまま次の敵へ標準を移す。
    「そっち危ないで!」
     横手から槍が突き出される。それをサイがエネルギーの盾で攻撃を弾き、そのまま押し返して骸骨のバランスを崩す。更にその後ろから振り下ろされる戦斧の一撃を咄嗟に跳躍して避けつつ、漆黒の弾丸を撃ち敵を牽制する。
     バランスを崩し山道が滑り足を取られて転んだ骸骨へ、恒汰が拳に雷を宿し骸骨の顔を殴りつけた。衝撃で頭が外れて吹き飛ぶ。
    「これで2体目!」
     だがスケルトンは頭を失ったまま槍を突いた。恒汰の腹を狙う一撃を霊犬が咥えた刀で防ぐ。
    「しぶといやっちゃ」
     サイが夕闇の如きオーラを纏い踏み込むと、拳の連打を叩き込む。一撃ごとに骸骨の体は打ち壊され、骨が散乱した。
    「助かったぜ!」
    「油断するな、次が来る」
     恒汰は後ろに下がり、リアンが赤く輝く鋼糸を張り巡らせる。鋼の糸が絡み付き骸骨の動きを止める。そこに恒汰が槍を構え、捻りながら突き出す。穂先が一番前の戦斧を持った骸骨の肋骨を砕いた。その時何かが飛来する音がした。
     リアンが咄嗟に大輪の花のような盾で頭を防ぐように構えると、衝撃が腕に奔る。落ちたのは矢だった。
    「飛び道具持ちがいるぞ」
     その警告に皆が頷き、後方に居る骸骨へ視線を走らせた。
     先頭の骸骨は戦斧を横薙ぎに振り抜く。赤い鋼糸を断ち斬り恒汰に迫る凶刃。だがその攻撃は届かない。
    「なかなかの威力やで。せやけど俺を倒すにはまだまだ足りへんな」
     見ればサイが割り込み盾で受け止めていた。そこへ美樹が凝縮したオーラを撃ち。斧を持った骸骨の背骨を撃ち砕く。体が折れ、上半身と下半身が分かれて地面に落ちた。
     そこに盾を持った骸骨が割り込もうと突進してくる。しかし足が途中で止まり、盾の骸骨は静止する。見ればその全身に幾重にも鋼の糸が巻き付いて動きを完全に封じていた。
    「こっちは任せろ」
     リアンがそのまま盾の骸骨の相手をする。
     サイが止めを刺そうと骸骨に近づくと、真っ二つにされながらも残った上半身は斧を振るう。だがその振り上げた斧が地面を転がる。ぼとりと骸骨の手が落ちた。美樹の放った弾丸が手首を撃ち抜いていた。
    「アンデッドは粉々にしないとダメかな?」
     少し口元に笑みを浮かべると、美樹は上半身に向け矢を射る。尾を引くように飛ぶ矢が骸骨の頭を打ち砕いた。骸骨は動かなくなる。
     盾を持った骸骨がリアンにぶつかるように盾を叩きつけて吹き飛ばす。土の脆い坂道に、足が滑るのを膝を突いて堪えると、そこにもう一体の骸骨が剣を振り下ろす。
     その前に霊犬が駆けつて刃で軌道を逸らす。剣はリアンの腕を浅く斬った。そこへサイが手を伸ばして漆黒の弾丸を撃ち、スケルトンの肋骨を数本吹き飛ばして黒く侵食する。
    「好き勝手させへんで!」
     骸骨がサイへ視線を向ける。リアンがその隙を突き、骸骨を背後から持ち上げると地面に突き刺すように投げた。ぼきりと骨が砕け、骸骨は沈黙する。
    「残り一体」
     弓を持った骸骨が攻撃を仕掛ける。鋭く放たれた矢は闇夜を奔り急所を狙う。。サイがその攻撃を音で掴んで盾で受け止めた。
     そこに美樹の撃つ弾丸が曲線を描き、骸骨の矢を持つ右腕の肩を撃ち抜いた。力が入らずだらりと下がった腕。その隙を突いて恒汰が懐に入り拳を打つ。胸の中央に当たった拳はそのまま骨を砕き背中に突き出た。
     無事な手で骸骨は恒汰の顔を突き刺そうとする。だがその攻撃は止まる。リアンが骸骨の腕に鋼糸を絡ませて引っ張っていた。
    「これで終りだぜ!」
     恒汰がもう一度拳を叩き付ける。骸骨は頭を失い膝をついて地に倒れ伏した。
    「5体、これで終りだね」
     美樹が周囲を見渡し、動く敵が居ないのを確認して仲間を見る。そして他のチームはどうなったかなと、携帯を手にした。

    ●木々の砦
     木々が影を作り、深い闇色を濃くする山道に、激しい戦いの光が灯る。
     力生が重々しい無骨なガトリングガンを構えると、射線に入った骸骨に向けて無数の光の弾を撃ち出す。
     骸骨は被弾しながらも何とか逃れようと木を盾にしようとする。そこに光条が放たれ頭部を撃ち抜いた。
    「各目標の位置情報を算出」
     智寛は骸骨を撃ち抜いたライフルを構えたまま、他の敵の場所を探る。
    「喬市。4時の方向、距離20メートルに敵1体だ」
    「了解だ」
     喬市は槍を手に突撃してくる骸骨に対してエネルギーの盾を構える。鋭い突きを払いのけ、敵の突進の力に合わせてカウンターで盾を叩き込む。衝撃に骸骨がよろめき木にぶつかった。
     そこに位置を変えて回り込んだ力生がガトリングの弾を撃ち込む。無数の弾丸の衝撃に、骸骨は不気味に踊るように砕け、穴だらけになった木ごと一緒に倒れた。
    「よし、一体撃破だ。次は……」
     力生が次の敵を探そうとした時、暗闇の中から矢が力生の頭部目掛けて飛来する。直撃する寸前、喬市の盾が割り込む。
    「無事か?」
    「恩に着る」
     喬市と力生は目配せすると、矢の飛来してきたであろう方向へ向かう。
    「力生。そのまま真っ直ぐだ、その木の裏に隠れている」
     智寛が上から見ていた情報を2人に伝えると、喬市と力生は左右から木の裏に回り込み、挟み撃ちを仕掛ける。
     力生が光を放つ。裁きの閃光が弓矢を持った骸骨の左顔を消し飛ばした。骸骨は力生に向け矢を番える。そこに背後から喬市が接近し、オーラを纏った拳で畳み掛ける。
     その時、喬市の背後から新たな骸骨が剣を振り上げて現われる。
    「そうくると思っていた」
     智寛が狙い済ました一撃を放つ。漆黒の弾丸が骸骨の頭を撃ち砕いた。骸骨はそれでも剣を振り下ろす。だが攻撃を受け僅かに間を開けた隙に、刃の先から喬市の姿は消えていた。ぐるりと骸骨は首を回す、すると既に横に移動し、杖を手に振りかぶる姿があった。
    「砕けろ」
     魔力を込めた杖の一撃が骸骨の胴体に叩き込まれる。衝撃が肋骨から背骨に奔り、骸骨は砕けて地面に転がった。
     飛来する矢を力生は木々を盾にしながら避ける。
    「これで三体目だな」
     ダメージを受けていた弓矢を持った骸骨に、力生が止めとばかりにガトリングの弾を浴びせ、蜂の巣にする。矢を番えようとする姿勢のまま骸骨は崩れ落ちた。
     残りの2体はと周囲を見回した時、魔法の弾と雷が木の上に居た智寛を襲う。不意を突かれ、攻撃の直撃を受けて智寛は木から落下する。
     だがその攻撃によりおおよその位置を把握した喬市と力生が迎撃に向かう。
     木の陰から放たれる風の刃が渦を巻き、竜巻となって襲い来るのを喬市が前に出て盾を構える。体に幾つもの傷を負いながらも、仲間へは攻撃を通さないと、踏ん張って風を受け止めた。
     そこへ力生がガトリングの弾を撃つ。竜巻を貫き弾は杖を持った骸骨を穿つ。
     風の勢いが弱まったところで喬市がオーラの塊を撃ち出し、オーラは避けようとした骸骨を追いかけ粉砕する。
    「残るは一体のみ」
     喬市が視線を向けると、指輪をした骸骨が手をこちらに向けていた。
    「悪いが仕留めさせてもらう」
     稲妻が奔るよりも速く、智寛のガトリングが火を噴く。吐き出される弾に骸骨は雷をぶつけるが、雨のように降り注ぐ弾丸に撃ち負け骸骨の体が削られていく。
    「これで終わりにしよう」
     力生も位置を変えて横からガトリングの弾を吐き出す。十字砲火に骸骨は避ける方向を失い身動きが取れない。そのまま骸骨は釘付けとなり骨が砕けていく。
    「止めだ」
     走り勢いをつけた喬市の盾が叩き込まれた。衝撃で骨はばらばらに砕け、地面に散らばった。
     周囲には白い骨が散乱し、動く死者は居なくなった。そこで力生は携帯が震えているのに気付き、ボタンを押した。
    「こちらは終了した。状況はどうだ?」

    ●猪は駆ける
     なだらかで見通しのよい山道。暗闇の中登ってくるのは骸骨の集団が、設置されたランタンの明かりに照らし出された。、
    「ブウ、あいつを狙うぞ!」
     それを待ち受けるのは殊亜とイフリートは、隠れる場所も無く、互いに武器を構えて対峙すると。まず一番前を歩く盾の骸骨を狙う。
    「ブゥッ!」
     猪が炎を全身に纏い敵目掛けて突進する。骸骨は盾を構えるが、トップスピードに乗った猪のぶつかる衝撃に、盾はひしゃげ、骸骨は吹き飛び地を転がる。そこへ殊亜が光輪を投げつけ、止めを刺した。
    「次だよ」
     ライトで照らし出されたのは剣を構えた骸骨。猪はまたもや突進を始める。敵の後方から放たれる矢を猪は纏う炎で焼き尽くし、振り下ろされる剣を受けても突進は止まらない。衝撃に剣が吹き飛び骸骨は宙を舞う。猪はそのまま駆け抜け、落下して倒れた骸骨を踏み砕いた。
     残った骸骨達はイフリートの突進を警戒して散開する。
    「別の技使って!」
     それを見た殊亜は猪に呼びかける。だが猪は興奮状態にあるのかそのまま突進を始める。
     骸骨達は避けながら矢を放ち、雷を落とす。猪はそれを受けても速度を落とさない。矢を放った骸骨は飛び退き進路から逃れる。その時、急ブレーキした猪は地を滑りながら反転し炎を吐き出した。火球は骸骨の全身を燃やして骨を炭化させる。
    「お、中々いい炎出すね」
     負けじと殊亜もライドキャリバーのディープファイアも仕掛ける。殊亜の影が幻獣の姿をとり、雷を放つ骸骨の体をその爪で斬り裂き、ディープファイアがそこに機銃を撃ち込む。よろめく骸骨の前に猪が迫る。突進を避け切れず骸骨は宙に舞い、ぐしゃりと落ちて砕けた。
     猪はその勢いのまま最後に斧を構える骸骨へと向かう。殊亜とディープファイアが光輪と機銃で敵を牽制すると、猪は炎を吐いた。襲い来る攻撃を骸骨は避けようとするが、光輪が放物線を描いて足を斬り裂き、機銃の弾に進路を塞がれる。迫る炎を斧で受け止める。だが炎は全身を覆い、骨を燃やす。
    「ブゥォォォォォ!」
     猪が止めと突進する。斧ごと骸骨の体を打ち砕き、胴体をへし折った。骸骨が宙に打ち上げられ、砕けた肋骨が周囲に散乱する。
     その落下地点にディープファイアに乗った殊亜が駆け寄る、落ちてくる骸骨目掛けて炎の剣を振り上げた。乾いた骸骨は良く燃焼し跡形も無く消え去った。
    「ブゥブゥォォォッ!」
     満足そうに空に向かって雄叫びを上げる猪。
    「あー、疲れた。帰りに温泉入りたいな……」
     殊亜はそれを見ながら、汗を拭って息を吐く。その時携帯が震えているのに気付いた。ポケットから取り出しボタンを押す。

    ●静かな山
     山の奥、獣道の続く人の入らない源泉の傍に、戦い終えた灼滅者が集まっていた。
    「帰ってきたか、全員揃ったな」
    「これで面倒な仕事も終わりだね」
     力生が最後にやって来た殊亜とイフリートを確認すると、美樹は一仕事終えたと気を抜く。
    「敵の情報を何か得れればと思ったが……無理のようだな」
    「ブゥォッ」
     智寛は会話できそうにない猪のイフリートを見て嘆息する。骸骨も調べてみたが特別なものは持っていなかった。
    「汗も掻いたし、帰りに温泉に寄っていかない?」
    「温泉か、ええな、俺は賛成やで」
     殊亜が仲間を見渡して提案すると、すぐさまサイが笑顔を見せて賛同する。
    「オレは温泉まんじゅうが食べたい!」
     せっかくここまで来たのだから、恒汰は温泉に行ってこの地域の銘菓も食べたいと手を挙げた。
    「まあ、少しくらいのんびりするのもいいかな」
    「そうだな、新学期早々疲れた顔で学校に出るのもなんだ、少し羽を伸ばして帰ろう」
     リアンと喬市も頷き、まずは山を下りようと歩き出す。
     殊亜はじゃあねとイフリートに手を振りその後に続く。
    「ブゥォォォ……」
     どこの温泉に行こうかと、灼滅者達が話しながら麓に向かって歩いていると、背後から猪の鳴き声が響いた。
     それはイフリートの感謝の声だったのかもしれない。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年9月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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