秋の焼き芋パーティー

    作者:陵かなめ

     ある日の放課後、空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)は両手に沢山の芋を抱えて鼻歌を歌っていた。
    「焼き芋~、焼き芋~、ら、らんららんらんらん♪」
     スキップしながらグラウンドに向かう。
    「焼き芋しようと思ってね。だって、もう9月だもんね。9月って言ったら、秋だよね。だから、秋らしいことしてもオッケーだと思うの」
     と、言うわけで、いそいそと焼き芋の準備に取り掛かった。
    「ねえ、一緒に焼き芋食べない?」
     落ち葉はあまり集まらなかったので、古新聞を集めて焚き火を作る。
    「ほら、ホイルでくるんで火に入れるだけで、ホクホクの焼き芋ができるんだよ。あとは……、まあ、火があるから色んな物を串に刺して焼いても美味しいかもね♪」
     まだまだ暑い日もあるけれど、一緒に焼き芋いかがですか?


    ■リプレイ

    「わ、大きいダンボール!」
     準備をしていた鈴緒に、紺子が近づいてきた。
    「田舎から送ってきたけれど、一人では食べきれないので」
     さつま芋と柴栗だ。
    「焼き芋たぁ秋らしいな! 空色もなかなかおもろい事考えるやん♪」
     火花は大きなペットボトルを差し入れに抱えている。
    「お芋はホイルでくるむ前に濡らしておくと蒸す感じが加わって味わいが変わるので」
     と、優歌が綺麗な水を用意した。
    「なるほどな。ほな、使わせてもらおかなー」
    「はい、どうぞ」
     火花と優歌が焼き芋の準備に取り掛かった。
     グラウンドに、生徒が集まってくる。
     燐音がそわそわと焚き火を見て。
    「って、百合姉様焦げてる真っ黒ー?!」
    「食い物は無駄にしてはいけないからな、勿論食うけどな」
     涙目の燐音を尻目に、百合は黒焦げのマシュマロを口に運んだ。
     マシュマロはかくもシビアなものなのか。燐音がゴクリとのどを鳴らした。
    「まず芋焼こう、芋」
     一都は二人の様子を見ながら、さつま芋やその他食材を焚き火に入れた。
     【Cc・秋の味覚満喫し隊!】も準備を始めた。
    「何もってきました?」
     依子が朱姫の手元を覗き込む。
    「栗とナッツなんて持ってきてみました!」
     火は跳ねるが、パチッと言う音も秋らしくていいと思う。
     焚き火で焼き芋は初めてというサズヤ、焚き火での調理は初めてというアイナー。二人揃って依子をお手本に作業していた。
    「……これで作れるとは……確かに、簡単。アイナーも、完成?」
     サズヤが見ると、アイナーも芋をホイルでくるみ終わったところだった。
    「一つ覚えた」
     得意げに芋を掲げる。
    「串にぶすっといっちゃいましょ!」
    「ぶすっとですね」
     芋が焼ける間に、依子と昭子はマシュマロを焼いていた。
     【Σ芋】として集まってきたメンバーは。
    「わぁ~……いい匂い。おっとと」
     空気をめいっぱい吸い込み、千那がよろけた。すかさず、クレイが声をかける。
    「メロンちゃんに徹ちゃん、あまり火に近付かないようにね。あっちっちだよ」
     お兄さん心配と。
    「危なくないです、こども扱いしないでください」
     ところが、不意に火が燃え上がり、
    「……きゃっ」
     徹が身をすくめる。
    「傍目から見れば、仲よし兄妹ですね?」
     そんな三人の様子を見てナーシャが言った。皆、微笑ましく思う。
     そういえば焼き林檎にアイスを乗せるのも美味しいと気づいた。
    「シグマ部長、ちょっと近くのコンビニまで行ってきてー☆」
    「な、なんで俺が買い出しに……仕方ねぇなぁ……アイスだけでいいのかよ?」
     春陽がさわやかにシグマを押し切る。
    「ハルはそうやってさらっとパシるからな」
     梛がけらけらと笑った。
    「……ならチョコがかかったクッキー買ってきてほしいな」
     リアが言う。マシュマロを挟んだら美味しくなると思う。
     結局、荷物持ちにクレイ、飲み物調達にナーシャも同行して、シグマは買出しに。
    「……シグマ先輩、芋は取っておきますから」
     焚き火に付きっ切りだったアヅマは、シグマに同情の目を向ける。
     【T★】のメンバーも、準備を始めた。
    「わぁ、皆も色々持ってきてるね」
     安納芋と林檎を抱えたイヅナが、声を上げた。
    「じゃじゃーんっ! ましゅまろー!」
     深愛は持ってきたマシュマロを串に刺し始める。
     ひふみは、芋、具なしおにぎりそして。
    「香ばしく焼かれる為にスーパーに並んでいた茸を持って参りました」
    「茸は定番だな、俺も迷ったし」
     そう言うイヅルはおやきにした。
     焼き奉行となったイヅル。両端からイヅナとひふみが団扇で風を送る。
     【狐屋】のメンバーが用意した食材は芋と栗だ。
    「美味しく出来ると良いなぁ」
     ダンボール一箱分のさつま芋を用意した夕月。
    「そんなにですか?」
     驚いたように清美が言う。だが、焼けるだけ焼こうと思う。
     さて、栗が程よく出来上がった。
    「この歯触りと香りがいいんだよね」
     登が笑顔で言う。その隣で。
    「……うわぁぁぁ!? なんすかこれ!? 美味しい、美味し過ぎるっす!!」
     アナスタシアが感動していた。実は焼き芋など見たことも食べたこともなかったのだ。
     【七天】の芋もそろそろ良い頃合だ。
    「白焔さん、火は見てますので食べててください」
     緋頼に言われ、白焔がさつま芋を手に取った。
    「じゃ、少し頼む」
     目の端にせっせと焼く鈴乃の姿が映る。
    「鈴乃、味見を」
     出来立てほかほか、芋を味見する。
    「はふ。おいしいのです」
     その様子を鞠音はじっと見ていた。
     四人で遊んだり、食べたり。どうしてこんなに、心地よいのだろう。わからないもの以上に、曖昧なものが増える、幸せな感覚。
    「ほかほかでおいしいのですよ?」
     鈴乃が差し出した芋を鞠音が受け取った。
    「甘い……」
     素直な感想が零れた。
     【元社務所】の食材も焼けてきた。
    「紺子ちゃんはお久しぶり」
    「お久しぶりだよー」
     挨拶をしたのも束の間。
    「ふぎゃっ! 熱いでごぜーます!」
     美菜がかじった焼きトマト。その熱々の汁が勢い良く小次郎の目を直撃した。
    「ふぉっー!!」
     のた打ち回る小次郎は勢いのまま焚き火に突っ込んだ。熱い。焼ける。水を。そのまま池に飛び込む。
     その姿、呆然と見送るしかなかった。
    「……とりあえず、水も滴る何とやらと呼んであげるわ」
     銘子が苦笑いを浮かべる。
    「紺子さん、こっちで軽く食べていきやせんか?」
     さつま芋と串刺しソーセージを手に、ギィが紺子を呼んだ。
    「ありがとー」
     紺子が目を輝かせる。
    「可愛い女の子が側にいてくれるだけで、幸せものだよ♪」
     彩華は笑いながら、食材を頬張る紺子を眺めた。
    「んー、空が高くて、秋っすねぇ」
    「これから秋の深まりが楽しみだね♪」
     ギィと彩華は、高く澄み渡った空を見上げた。
     【UISCE】のメンバーが焼けたホイルを手にしていた。
    「何か超美味しそうな料理が完成してる!?」
     開けてびっくり。狭霧が手にしたホイルの中身は、千総の用意したお芋とキノコと芳醇なバターの香り。
     千総は、
    「……瑞樹さんのほくほく紫芋やね!」
     瑞樹の紫芋を引き当てた。
     瑞樹は紫芋ではなかったことに残念な気がしたけれど。
    「これ、もしかして蜜芋? すごい、甘くて美味しい……」
     匂いにつられ一口かみ締めると、甘みが口に広がった。
    「蜜芋は穂村君に当たったのか、喜んで貰えて嬉しいよ」
     瑞樹のおいしそうな表情に、一樹が声をかけた。
     一樹はと言うと、
    「おお、これは十七夜君のさつま芋バター」
     狭霧のホイルが手元に来たようだ。
    「秋の味覚の共演って感じで良いのう」
     覗き込んだ篠介が言う。篠介は薩摩芋と林檎をレーズン、砂糖、レモン汁を入れ蒸し焼きにしている。
     蓮二は再開したじゃがバタちゃんに皮ごと齧り付いていたが、甘い匂いにつられ大口になってしまう。
    「はふっ! 一樹、俺にも牛乳を……!」
     慌てて、一樹から牛乳瓶を受け取った。
    「皆火傷すんなよー?」
     蓮二の声に笑い、皆食べ始めた。
     【吉祥寺3-D】の仲間の様子はと言うと。
    「普段見せない集中力で完璧に焼ききって見せる」
     俺は焼き芋の達人だからなと、晃。
    「真に美味しい焼き芋を味わうならこれだっ」
     銀都は土鍋と石で即席石焼芋を作るべく、作業に没頭する。
    「いくつか焼いておくから、みんなも好きに食べてくれよな」
     武流は鶏の桃肉やきのこのホイル焼きまで準備していた。
     焼けたものに手が伸び始める。
    「モグモグ……お茶、どうぞ。モグモグ……」
     ララはひたすら食べながら、紅茶を皆に勧めた。
     芋を食べ続けているのは成美も同じだった。黙々と食べ続けている。
    「むぐむぐ。くぴくぴ。っぷはー! 幸せ☆」
     あるなはご満悦の表情で牛乳を飲み干した。はっと自分の姿を見つめなおし、頬を赤く染める。
     色々焼いていた奏音が手にしたのはジャガイモだった。
    「誰か半分こしない?」
     声をかけると、四方から手が伸びてきた。
    「適当に飲んでもらってかまわないぜ」
     沙雪が、持参したお茶や牛乳を並べる。
     さて皆が食材に舌鼓を打っているころ、銀都は。
    「……あ、焼くことに夢中で俺の分がなくなってた」
    「ま、こういう日も良いものさね」
     皆の様子を見て、沙雪が穏やかにつぶやいた。
     【吉祥寺6年椿組】の仲間の豊富だ。フルーツが目立つ。
    「焼きバナナって試してみたかったですよぅ」
     バナナをホイルに包んでいるのはヒオだ。
    「私みかん持って来たよ!」
     潤子が言うと、
    「わたしはブドウにしてみました」
     真琴もにこにこと焚き火に食材を放り込んだ。
    「……あつい! ウマい! 牛乳飲む! 甘い! ウマいッ!」
     昂輝が歓声を上げると、他のメンバーも食べ始めた。
    「あ、包丁でしたらほふるが持っていますよ?」
     切り分けはお任せですぅ♪ と、にこやかに穂布留は包丁を握る。なぜ包丁を? 乙女の嗜みだから。うふふ。初めての焼き芋、穂布留はとても楽しそうだ。
     【久遠】のメンバーも食べ始めていた。
     焼き芋の皮について二つに分かれるようだ。
    「ちなみにわたしは鈴音くんと一緒で皮ごとぱくり派」
     言いながらましろが焼き芋を口に含む。
    「とても美味しいですよ」
     鈴音も焼き芋を口に運ぶ。
     その様子を見て、皮ごとパクリ。
    「おいしいね」
     宝がほんわりと微笑んだ。
    「よく皮ごと食べると栄養とかが~、っていうのは焼き芋でもあるのかな?」
    「皮のお味、お焦げとか、どうなのでしょう?」
     仁奈と藤乃が興味津々に皮ごと食べる皆を見ている。
    「俺も皮ごと派だけど剥くの面倒って理由なンです」
     奈兎は宝の差し出したジャガイモにも手を伸ばす。
    「あ、そうそう。カメラ持ってきて見ました」
     ジャスミン茶を配っていた帷が、カメラを皆に向けた。楽しい思い出が写真に納まる。


     学園生活についてなど話していた晴夜が、ふと手を止めた。
    「誕生日、おめでとっす、フィオ。これ、プレゼントって奴っす」
     頂点に星のマークがあしらわれた白の帽子だ。
     照れくさそうな表情を見てフィオレンツィアは思う。自分は青春と程遠い場に身を置いてきたから、男女の機微などよくわからない。けれど。
    「晴夜と仲良くできたらと思う気持ちは本物だと思うわ」
     真面目に向き合わなければと、笑顔を向けた。
     猫舌の千李は息を吹きかけジャガイモを冷ましていた。
     味はどうかと蓮に声をかけられ、慌てて一口かじる。熱い。思わず蓮の服をつかんだ。
    「……おぃおぃ、そんな焦って食う事ねぇーぞ」
     けらけらと蓮が笑う。
    「また機会があれば……作ろうぜ」
    「うん、楽しかった。次は焼くものいっぱいもってくる」
     焼けば何でもおいしくなるに違いない。お寿司にアイスなど千李は数々の食材を思い浮かべた。
     テスト勉強のご褒美という名目で人とオリキアはやってきた。
     焼き今川焼きを食べさせあいっこする。
    「おいしいー?」
    「……ありがとね、オリキアちゃん」
     チョコレートもコーヒーも、人の好物だ。それを用意してくれるオリキアに感謝の言葉を。
    「心もぽかぽかあったまるねー」
     頬張りながらオリキアが笑顔を見せた。
     桃夜がクリスに焼き芋を差し出した。
    「えーと……トーヤ。あーんは……その流石に恥ずかしいかなって」
    「周りの目なんてオレには関係ないからね。クリスも恥ずかしがらずに食べてくれるかな? てか、食べてくれないと拗ねるよ?」
     どっさりの焼き芋と焼き銀杏に玄米茶。そして、赤面するクリス。
    「うっ。わかったよもう」
     一口食べれば、甘くておいしいと満面の笑顔が溢れた。
     焼き芋のおいしさに頬を緩める陽羽は、ケイネスとの初デートだと思い出しはっと顔を上げた。
    「ケイくんも食べてみる? 安定の川越産だぞ!」
     食べかけの芋を差し出すと、ケイネスがその腕をつかみ一口食べた。
    「……美味いな、あと口ん周り大変な事なっているぞ」
     陽羽の口の端から食べかすを拭い取りぺろりとなめる。
     思わず背中を叩いて、陽羽は真っ赤な顔を隠すようにそっぽを向いた。
     だがケイネスは赤い耳を見て照れ隠しだと気づき、クスッと笑みをこぼした。
     本格的な壷焼き芋を試みた恭太朗は、取り出した焼き芋を火華に渡す。
    「わぁ黄金色です! すごいおいしそう!! というかおいしいです!」
     火華は幸せそうな顔でもぐもぐと安納芋を頬張った。
    「おい、全部食うなよ!? 俺のも残しとけよ!」
     恭太朗の手にそっとのせられたジャガイモ。安納芋の横に忍ばせておいたのだ。
    「あと、ナンダ、誘ってくれてありがとな」
     恭太朗の言葉に、火華はもぐもぐと返事をした。
    「ジャガバタなのですよ、ジャガバタ~♪」
     璃理が出来上がったじゃがバターを祇音に勧めた。
    「ではいただくとするかのぅ」
     ほくほくと、美味しい味が口に広がる。
    「マシュマロ? 持ってきてみたんだー」
     近くでは、詠朧が串に刺したマシュマロを。
    「私は苺を持ってきました」
     フミルは焦げないよう、注意深く苺を焼き始めた。
    「苺かぁ。ほら、もう火が通り始めてるよ」
     そこへ、与四郎がひょいと顔を覗かせる。
    「ほい、どーぞ?」
    「ありがとうございます。あ、苺いりますか?」
     詠朧からマシュマロを受け取り、フミルが苺をじっと見つめる与四郎に問いかける。皆にと、沢山用意していたのだ。
    「え、いいの? ありがとう」
     与四郎が笑顔で受け取った。
    「秋といえば、松茸でしょうか? 食べてみたいです」
     フミルがそんな話を回りに振ると、祇音がかかっと笑った。
    「フミル、松茸、いるかえ?」
     丁度、天然の松茸を用意していたのだ。松茸独特の良い匂いが広がった。
     【武蔵野スイーツクラブ】のメンバーも食べ始めた。
    「ほら、ちから。熱いうちに食べるのだっ」
     白金が焼き芋をちからの口まで運ぶ。
    「わーいいっただっき」
     ちからは喜んでかぶりつき、
    「ぼふ、もふ、ぶほおっ!!?」
     熱いっ。しかし、涙目でらいじょうぶ、おいひいよとOKサインっ。
    「アイス冷たくておいしいね」
    「秋はやっぱり芋がおいしい季節ですよね」
     言いながら綾音と縁は、アイスと焼き芋を交互に口に運ぶ。
     雅と紗綾が近づいてきた。
    「サヤちゃんが紅芋や紫色のお芋持ってきてくれたっす! 分け合うっす!」
    「農家の親戚のツテで分けてもらいました」
     いかにも美味しそうな芋に、綾音が瞳を輝かせる。芋の代わりにと、縁はクラッカーとマシュマロで作ったスモアを配った。
    「篠山さん、とうもろこしが焼けましたよー」
     とうもろこしを持参した薫から声がかかる。
    「おお! サンキュウ薫ちゃん!」
     興味津々だった仁が受け取った。
     仁は綺麗な芋を二つに割って紗綾に渡した。
    「ほら、これ。一番の自信作な」
     少し顔が赤い。
    「ありがとうございます。ちからさん、アイスを分けてもらっていいですか?」
    「いいよいいよー」
     紗綾は芋とアイスを受け取る。一緒に食べるという発想がなかったので、試してみたいと思っていたのだ。
     食材を頬張る満足げな笑顔。
     焚き火を囲んだパーティーは楽しかった。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年9月19日
    難度:簡単
    参加:89人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 14/キャラが大事にされていた 9
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