魅惑のバニーガール

    作者:天木一

     博多にある繁華街。日が落ち始め、夕日に照らされた道を人々が慌ただしく歩いていく。
    「なあ、今日なに食う?」
    「いつものファミレスでいいだろ」
    「今日はハンバーグにしようかな」
    「じゃあ行くか」
     そんな中、4人組の男子高校生達が大きなスポーツバッグを担ぎ、部活帰りに何を食べようかと相談していた。
    「おい、あ、あれ……」
     店に向かおうとした時、一人が皆を止めて指差す。皆が何事かとそちらを向いた。
     そこに居たのは、堂々と街を歩くバニーガール姿の女性だった。
     歩く度にぴょこんっとウサギをイメージしたカチューシャが揺れる。
     際どいラインの胸元から覗く谷間は男達の視線を集め、たわわに実った胸が思わず唾を飲み込ませる。
     お尻から足の丸みを帯びたラインは扇情的で、情欲を沸き立たせる。
    「ば、バニーさん……萌える」
    「やべーこれはやべー……ごくりっ」
     少年達は見蕩れたまま身動きが出来なくなった。
    「ふふ、そんなに目を血走らせてどうしたの?」
     そんな少年達に、女性は前屈みになり上目遣いに尋ねる。挑発的なポーズで余計に興奮させていた。
    「もう私に夢中みたいね。それじゃあファンになってくれたお礼にこれをあげるわ」
     女性が胸元から取り出したのは黒いカード。それを少年達に配る。
    「ファンの証としてこれをプレゼントしちゃうわ。欲望と興奮のままに好きなだけ人を殺してね。そうしてくれると私とっても嬉しいわ♪」
     女性はウインクして投げキッスを飛ばし、その場を立ち去る。
     残された少年達はふらふらと、当初の目的であるファミレスの方へと歩き出す。
    「じゃあ行くか」
    「ああ、ファミレスだったよな」
     少年達は楽しそうに笑う。だがそれは暗く殺意に満ちた笑いだった。
     
    「新学期早々だけど、臨海学校で騒ぎを起こしたHKT六六六人衆が、また事件を起こすみたいなんだよ」
     能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が集まった灼滅者に早速説明を始める。
    「黒いカードを持った男子達が殺人事件を起こしてしまうんだ。しかも前とは違い、一般人ではなく武器やサイキックのような力で攻撃するようなんだよ」
     それはソロモンの悪魔や淫魔の配下のように戦う力を持っているという事だ。
    「それが黒いカードの能力なのかどうかは分からない。だけど犠牲者が出るのを放ってはおけないよね。男子達の行動を止めて、黒いカードを回収して貰いたいんだ」
     少年達がカードに操られ殺人者になってしまう前に止めてやりたい。
    「そうそう、倒してしまえば正気を取り戻すみたいだから、難しく考える必要はないよ」
     少年達が向かうのは駅前のファミリーレストラン。
    「そこで待っていればやって来るはずだよ。夕食時だから店内の人は多いよ。でも外の方が人が多いから気をつけて」
     戦う場所は店の中でも外でも選択できる。中ならば敵を逃がしにくく被害も拡大し難い、だが中の人を逃がすのが難しいだろう。
     外ならば敵が逃げやすいが、人も非難しやすい。だが大勢の人を巻き込む可能性もある。
     利点を有効に使うのも、欠点をカバーするのも作戦次第だ。
    「健全な男子高校生なら、バニーガールなんて居たらつい見蕩れちゃうよね。そんな男子の浪漫を逆手に取るなんて許せないよね。みんなで助けてあげて欲しい。お願いするよ」
     誠一郎は真剣な表情で頷くと、灼滅者達を見送った。


    参加者
    因幡・亜理栖(おぼろげな御伽噺・d00497)
    藥島・至葉(蓮盟・d00704)
    普・通(正義を探求する凡人・d02987)
    成瀬・圭(声亡き唄・d04536)
    椿・深愛(ピンキッシュキャラメル・d04568)
    砂原・皐月(禁じられた爪・d12121)
    相馬・貴子(高でもひゅー・d17517)
    久瀬・隼人(反英雄・d19457)

    ■リプレイ

    ●ファミレス
     博多の繁華街を夕日が照らす。街には明かりが灯り始め、多くの人々が仕事や学校の帰りに行き交い賑わう。
     そんな混雑し始める夕方の時間に、ファミレスの店内に入る3人の少女。
    「ご注文はお決まりでしょうか?」
    「オレンジジュースを1つ」
    「じゃあメロンソーダを!」
     席に座る藥島・至葉(蓮盟・d00704)が携帯を眺めながら注文すると、隣の相馬・貴子(高でもひゅー・d17517)もジュースを頼み、大きな硝子窓から外を見る。
    「私はいいよ」
     その向かいに座る砂原・皐月(禁じられた爪・d12121)は手をひらひらさせて水を飲む。注文を復唱すると店員は奥へと去っていった。
     席に座った3人は客に紛れながら、いつでも動けるように店内の様子を調べる。
    「バニーガールを見たいのかコロシがしたいのか、どっちなのかな?」
     貴子がそんな疑問を口にすると、至葉はさあと首を振り、皐月はダルそうに水を飲みながらそりゃバニーだろと投げやりに言った。
     入り口が開く音と共に1人の少女が入ってくる。
    「ファミレスとうちゃーっく! おともだち来るまで待ってるから案内はまだいいです!」
     店内に入った椿・深愛(ピンキッシュキャラメル・d04568)は店員にそう言うと、出入り口付近の待ち合い椅子に座り携帯を弄る。
     そんな様子を店外から3人の灼滅者が見ていた。
    「お母さんとお父さんから、変な人に変なものをもらっちゃダメとか教えてもらわなかったのかな?」
     店の外から周囲を警戒する因幡・亜理栖(おぼろげな御伽噺・d00497)は、カードを貰った少年達の行動を疑問に思って首を傾げる。
    「しかしバニーガールねえ。まあ、魅力的に映るのはしゃーねえよな」
    「つーか街中で見つけたらむしろ引くわ」
     幾ら思春期の少年といえど、人が死ぬような事態になるのは論外だと成瀬・圭(声亡き唄・d04536)が言うと、久瀬・隼人(反英雄・d19457)は街中でバニーガールはねぇだろうと肩を竦める。
     3人は店を見渡せる位置から敵がやってくるのを待っていた。
    「えーっとこの荷物はこっちかな?」
     店の関係者の振りをして裏口から侵入した普・通(正義を探求する凡人・d02987)は、荷物運びを手伝いながら敵が来るのを待つ。
     店の中も外も、忙しそうに人々が動き、いつもと変わりなく時間が過ぎていく。

    ●テニス部
    「あの人たちかな?」
     亜理栖の視界に、スポーツバッグを持った制服姿の4人組の学生が入る。その声に応じて隼人と圭もそちらに視線を向けた。
    「ああ、あれで間違いねェだろ」
    「それじゃあ中の面子にも報せるぜ」
     ふらりふらりと歩く4人の少年を確認して隼人が頷くと、圭は携帯からファミレス内に待機する仲間に連絡を入れる。
    「表口から入るみたいだね」
     亜理栖もそれを報せる為のメールを手早く送る。
    「よし、俺たちも行くぜ」
     少年達がファミレスの入り口に近づくのを見て、隼人が動き出す。亜理栖と圭もそれに続く。
    「いらっしゃいませ! 4名様でしょうか?」
    「なあ、なんだったっけ?」
     少年達がファミレスの扉を潜ると、店員が元気良く出迎える。
    「ハンバーグ……じゃなくって……」
    「そう、殺すんだろ」
    「じゃあ殺るか」
     少年達は虚ろな目で、スポーツバッグからテニスラケットを取り出して振り上げる。
    「お店の中でラケット振り回さないの! めーっだよう!」
     ラケットが店員の頭に直撃する直前、そこに割って入り攻撃を杖で受け止めながら注意するのは、入り口付近の待ち合い椅子に座っていた深愛だった。
    「なんだぁ?」
    「邪魔するんじゃねぇ!」
     左右の二人の少年が深愛に向けてラケットを振るう。だがその攻撃は受け止められる。いつの間にか近づいていた至葉と貴子が左右に立ち、それぞれの獲物で防いでいた。
    「早く早く避難を」
    「ここは通さないのだーっ!」
     至葉が驚き固まっている店員に顔を向けて警告し、貴子はアルティメットモードに変身し、これ以上店内には入らせないと構える。
     その時入り口側から周囲に向かって殺気が放たれる。見れば亜理栖、圭、隼人が入り口から敵を逃がさないよう塞いでいた。
    「ここは危ないよ?」
     亜理栖から放たれる殺意に押され、店の中の人々は入り口から出来るだけ遠ざかろうとする。
    「みんな、こっちから逃げて! 早く!」
     そのタイミングで通が裏口を開けて一般人達に声をかける。その言葉に一斉に店内の一般人が裏口へと動きだす。
    「裏口から逃げるんだようー!」
     深愛が動きの遅い一般人の背中を支えるように押す。
    「おいおい、これからオレ達がお楽しみタイムだってのに、どこ行くんだ?」
    「逃げるなよ、なあ。俺達はバニーさんの為にも殺さなきゃならないんだ」
     少年は逃げる一般人に向けてラケットでボールを打つ。そのボールが逃げる客の後頭部に届く直前に、拳がボールを弾いた。衝撃にボールは見当違いの方向へと飛んでいく。
    「出すもん出してとっとと寝ろ、行動開始だ!」
     皐月が気迫と共に月の如きオーラを纏い、拳で掌を叩いた。
     灼滅者達が暴力に飲まれた少年達を囲み、戦いが始まった。

    ●バニーに魅せられて
    「なあ、なんなんだよあんた等はぁ!」
     少年がテニスボールをラケットで打ち出す。弾丸のように高速で飛来するボールを、深愛が縛霊手で受け止めた。
    「店内でそんなことしたら危ないんだよう!」
     深愛がボールを捨てながらそう注意する。
    「ちぃーっすぅ。一番バッター成瀬、キツい一発配達のためここに推参ー」
     ふざけた調子で圭が赤色の釘バットを担ぎ、堂々と敵の前に立つ。
    「なんだこのヤンキーが! 俺達とやるってのか?!」
     少年がラケットを振るって叩き付けようとする。
    「――I'm rock'nrole!!」
     そこに圭は踏み込んでフルスイングでバットを振るった。ラケットとバットがぶつかり合う。その衝撃に吹き飛んだのは少年の方だった。
    「な!?」
    「なにやってくれてんだよ!」
     倒れた少年に、横から別の少年がフォローに入る。ボールを上に投げて跳躍、体をしならせサーブを打つ。
     圭を狙う剛球を霊犬のティータが割り込み、代わりに受ける。ティータは体勢を崩しながらも、ボールを弾いた。弾かれたボールは宙に上がる。それを更に別の少年がジャンプしてスマッシュする。
     強烈な一撃を貴子はエネルギーの盾で受ける。だがボールの勢いを殺し切れずに、後方へと逸してしまう。
    「失敗したのだ!」
     ボールが逃げ遅れている一般人へと飛来する。その背中にぶつかる寸前に、通が魔力を込めた杖でボールを弾く。
    「こっちは大丈夫だよ、任せて!」
     通は流れ弾にも油断無く、一般人を庇いながら誘導を続ける。
    「ほっ……しかしテニスラケットとボールでこうヤって戦うんだねー。オーラでも纏っているのかなー」
     被害が出なかった事に一息吐きながら、貴子は戦う少年達を観察する。
    「なんだよじろじろ見んな」
    「そうだぜ、俺達にはバニーさんがいるんだ、お前らみたいな女の魅力の欠片もない奴らには興味ないぜ」
     そう言って灼滅者の女性陣を見渡し、少年達は可笑しそうに笑う。
    「なっ」
    「…………」
     貴子はその失礼な物言いに思わず絶句し、至葉は無言で拳を握り締めた。
    「はははっ! おいおい、バニーさんと比べたら可哀想じゃないかーぷっはははっぐふぅあっ!」
     笑っていた少年が吹っ飛ばされる。至葉が腕に縛霊手を纏って殴りつけていた。
    「女性に対して失礼だね」
     顔は無表情だったが、その拳は震えていた。
    「そんなデリカシーのないことを女性に言う人は、しっかり教育しなくちゃ」
     亜理栖が巨大な剣を手にする。敵を叩き斬る為だけの無骨な鉄塊を、白い薔薇が飾る。
    「これからちょっと痛い思いをするかもしれないけど、これは教育の鞭だよ」
     緋色のオーラを宿した剣を振り抜く。少年はラケットで受けるが、その質量を支えきれずに吹き飛ばされれ、壁にぶつかってずり落ちた。
    「クソッ痛てー」
    「よくも!」
     仲間の受けた攻撃の仕返しと、後ろの少年がラケットを手に亜理栖へ襲い掛かる。だが少年の顔に向けて銀光が奔る。衝撃に殴り飛ばされて、尻餅を突いている少年の上に落ちた。
    「ちょっ……ぐぉ!」
    「まったくこれだから男は……」
     拳を打ち出した姿勢のまま、呆れたように冷たい視線を皐月が少年達に向ける。その拳がカウンターとなって少年を捉えたのだ。
    「この暴力女め!」
     少年のジャンプサーブからの弾丸ボールが皐月に襲い掛かる。だが隼人がそのボールを盾で受け止め、そのまま間合いを詰めると突撃するように盾を叩きつけた。
    「どうした? てめェの力はこんなもんか?」
    「っ見せてやるよ! バニーさんに貰った愛の力を!」
     隼人の挑発に、殴られた少年が怒りに任せてもう一度攻撃しようとする。
     少年の意識が完全に隼人へ向けられたところへ、通の腕が鬼のように異形化し、少年を殴りつけた。
    「一般人の避難終わったよ!」
     見れば店内には既に灼滅者と少年達しか居ない。裏口から全員が無事に逃げ出したのだ。
    「さあ、こっからはお仕置きタイムだぜ」
     圭が釘バットを手に、口を曲げて笑ってみせた。

    ●お仕置き
    「うぉっ」
     凄まじい勢いで振り抜かれる釘バットを、少年が地に這いつくばるように避ける。
    「女の子に悪口いっちゃダメなんだようっ!」
     そこに深愛が杖を叩き付けた。背中を叩かれ悶絶する少年。
    「その通りだよ! 言って良い事と悪い事があるんだよー!」
     貴子は禍々しい黒い槍を振り回し、少年達を薙ぎ払う。
    「悔しかったらバニースーツを着て来い!」
    「そうだ! お前らはまだスタートラインにも立ってないんだよ!」
     そのあんまりな台詞に女性陣は絶句した。
     罵声を浴びせながら立ち上がる少年達。ラケットでサーブを打つ。
     そのボールをティータが口に咥えた刀で弾く。それを別の少年が飛びついてボレーで弾き返す。
    「テニスをしにきた訳じゃねえンだよ」
     隼人が鬼の腕と化した右腕でそのボールをキャッチした。
    「やるなら野球だよなぁ!」
     背後から圭がバットを振るった。全身を打球と化して少年は吹き飛ばされ、壁にめり込み気絶した。
    「ホームランってか」
    「タクミ! このやろう! バニーさんからもらった力を思い知れ!」
     尻餅を突いていた少年が立ち上がりボールを打つ。至葉がその前に立ち、腕から生やした刃でボールを切り裂いた。
    「うさぎよりねこがいい」
     そう言って返す刃で少年の体を斬る。刃が逆袈裟に制服に赤い筋を作った。
    「痛ぇ……」
    「街中のバニーガールなんて、不審な人にものをもらうからそうなるんだよ」
     亜理栖がよろける少年に向かって剣を十字に振るった。赤いオーラの逆十字が現われ少年を吹き飛ばし、意識を掻き消した。
    「こんなバカな……オレ達はバニーさんから愛を貰ったんだぜ? こんなわけのわからん奴らに負ける理由がない!」
    「訳が分からないのはキミたちだよ!」
     倒れた仲間を信じられない目で見る少年の前に、通が立ち塞がる。少年のラケットと通の杖が交差する。硬い物が割れる音と共にラケットが折れた。それに目を奪われた少年に、通はくるりと一回転して杖を顔面に叩きつけた。
     頭から血を流し、意識を朦朧としてふらつく少年に皐月が止めを刺そうと接近する。
    「させるかっ」
     それを止めようともう一人残っている少年がサーブを放つ。弾丸のように黄色いボールが突き進む。
    「死なない程度にお仕置きしてやろう。そう簡単に女を信用しないように、な」
     皐月は鋼鉄の槍を下段に構え、踏み込むと鋭く突いた。切っ先が跳ね上がりボールを貫き、そのまま捻って少年の腹を突き刺す。
    「ぐはっあああ!」
     少年は口から血を流しながらも、槍を抜いて距離を取ろうとする。
    「逃がさないよー」
     その背後から貴子が槍を回転させ振り抜いた。遠心力を加えた強烈な打撃を背中に受け、少年はふらりとよろめく。そこに魔法の矢が飛び込みその身を貫いた。
    「悪いことをしたら、おしおきされるんだよう」
     魔力の矢を撃った深愛は、そう言って倒れる少年を見た。
    「今日は……ハンバーグに……」
     そう言って力尽き少年は気を失った。
    「クソッこのくらいで!」
     残った少年は力を振り絞って傷を塞ぎ、周囲を見渡す。
    「みんなやられたのか……クソッ」
     このままではやられると、入り口にちらりと目をやる。しかしその目前に逃がさないと、圭と隼人が立っていた。
    「クッソ! そこをどけよ!」
     少年がボールを打つ。だが圭はそれを絶好球と打ち返す。咄嗟に少年は帰ってきたボールを顔の前でラケットで防いだ。
    「この状況で逃げられる訳ねえよな」
     圭が釘バットを振る。ラケットで受けようとした少年の腕をぼきりと乾いた音と共にへし折った。
    「ああ、痛って……」
    「遊びは終りだ。これで目ェ覚ませ」
     隼人が跳躍する。力を込め放たれる蹴りが少年の胸に叩き込まれ、少年は反対の壁まで吹き飛ばされた。
     そのまま最後まで立っていた少年は意識を失い、4人の少年が倒れ伏して戦いは終わった。

    ●黒いカード
     気を失った少年達を集め、その体から黒いカードを取り上げようと、灼滅者達は持ち物を調べる。するとポケットから黒いカードが覗いて見えた。
    「で、このカード、僕たちが触っても大丈夫?」
    「気をつけて、ね」
     何かあった時にフォロー出来るよう至葉が見守る中、亜理栖が恐る恐るカードを触ったが、特に変わった事は起きなかった。
    「しっかし女って怖いよな、ホント」
     自分も女である事を棚に上げて、皐月は黒いカードを少年のポケットから取り出しながら呟く。
    「バニーガールって眷属なのか、淫魔のダークネスなのか」
     そこのところどうなんだろうと、疑問を抱きながら通は黒いカードを見る。このカードもまた臨海学校の報告にあった物の進化した物なのかと、とめどなく思考を巡らす。
    「うーん……考えてもよく分からないけど、気になるなあ」
    「ま、持って帰って調べりゃなんか分かるんじゃねえか?」
     悩む通に、ここで考えるより持って帰った方が早いと、圭は横からカードを覗き込む。どう見てもただのカードだなあと、圭は黒いカードを手にした。
    「そうだな、これがなンか手がかりになればいいんだがなぁ」
     隼人も黒いカードを見る。こんな物で敵の勢力が増えるとすれば、めんどくせェことこの上ないと溜息を漏らす。
    「帰りにここで食べられなかったデザートが食べたいよう」
     戦いが終りお腹が空いたと深愛が言うと、もうすぐ夕飯の時間なのを皆が思い出した。
    「それはいい考えだね。ついでに晩御飯も食べて帰ろうよー」
     貴子が賛成と手を挙げると、ここまで来たのだから博多で食事をして帰るかと皆も賛成する。
     博多の賑わう繁華街を灼滅者達は楽しそうに歩き出す。誰が何を企もうともやるべき事は変わらない。
     灼滅者達は騒がしい雑踏に紛れ、街の光へと向かって歩き去った。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年9月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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