激闘! ハブVSツングースカ大爆発!?

    作者:るう

    ●北海道、稚内付近
    「ほほう、日本の遥か反対側から来たと言うスキー? それはご苦労な事コフ」
    「海人(うみんちゅ)にとって、遠泳三千キロなどほんのウォーミングアップよ」
     季節外れの流氷の漂着した、原生林に囲まれた砂浜で、二人の男が睨み合う。
    「まあ、そんな事はどうでもいい。ここで貴様を俺様の空手で倒す。それ以上でもそれ以下でもない」
     空手着の男の両腕が、素早く幾つかの型を披露した後戦いの構えを取る。他方、季節外れの毛皮コートの男は、ただ目を細めるばかり。

    「食らえ! 毒手拳!」
     瞬間、ハブの動きを取り入れた琉球アンブレイカブルの腕が、その爪を正確にロシア怪人の脇腹に突き立てる!
    「どうだ! 俺様の爪を食らえば、貴様は毒でもがき苦しむ事に……何ッ!?」
     しかし……怪人の破れたコートの下から現れたのは、氷と土の混じり合った硬質の体。
    「その程度の爪で我がツンドラボディを貫こうなど、笑止千万ノフ」
     そして次の瞬間……怪人が跳んだ!
    「ツングースカ大爆発(ツングスキー・ヴズルィーフ)!!」
     蝶の形の衝撃波が、強烈な閃光と共に空手家を襲う!

     閃光が晴れた後、そこには大きく抉られた浜辺と薙ぎ倒された木々……そして佇む怪人しか残されていなかった。

    ●武蔵坂学園、教室
    「季節外れの流氷に乗り、ツングースカ怪人がやってくる!!」
     コホン、と一つ咳払いをし、神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)は話を続けた。
    「……とまあ、もう知っている者もいるとは思うが、無数のロシアのご当地怪人の乗っていた巨大な流氷が何らかの理由で破壊され、その破片が怪人を乗せたまま北海道の各地へと漂着しているらしい」
     しかも話は、それだけではない。
    「どのように知ったのかは知らないが、これに対し、腕試しのつもりかアンブレイカブルが動き出している!」
     いずれも強大な敵であり、万が一にも両方を敵に回せば、恐らく全滅も免れまい。
    「そこでお前たちには、両者の雌雄が決した後、生き残った側を撃破し灼滅して欲しい!」
     この方法であれば、怪人とアンブレイカブルを共に灼滅することができるだろう。

    「さて……お前たちに向かって貰うのは、原生林に囲まれたとある浜辺だ!」
     近くに人はいないので、周辺の被害を考える必要はない。
    「そこでツングースカ怪人は巨大な爆発を引き起こす必殺技を使い、琉球空手の使い手を容易に屠る! だが、怪人は相手の攻撃が全く効いていない素振りを見せるものの、実際にはある程度弱っているようだ!」
     もちろん、いくら弱っているとはいえ、永久凍土のごとき強固な肉体も、強烈な爆発技も依然として健在だ。油断は禁物。気を引き締めて、確実に怪人を撃破する必要がある。
    「そう、確実に、だ! 爆発は男のロマンだが、それはヒーローが使うからこそロマンになる! ツングースカ怪人に、怪人が爆発していいのは負けた時だけだと教えてやってくれ!」
     ……唐突に何を言い出すんだお前は。


    参加者
    嵯神・松庵(星の銀貨・d03055)
    東方・亮太郎(ジーティーアール・d03229)
    日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)
    東堂・イヅル(デッドリーウォーカー・d05675)
    天外・飛鳥(囚われの蒼い鳥・d08035)
    ハイナ・アルバストル(憂鬱の秋風・d09743)
    月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)
    空本・朔羅(うぃず師匠・d17395)

    ■リプレイ

    ●激闘の影で
    「日本の遥か反対側から、ご苦労な事コフ」
    「海人にとって、遠泳三千キロなどほんのウォーミングアップよ」

     怪人とアンブレイカブルが対峙する近くの林の中で、灼滅者たちは戦いの様子を見守っていた。
    「一対一の戦いに割り込むような野暮はナシっすよね」
     様子を覗く空本・朔羅(うぃず師匠・d17395)が囁きながら、わくわくと目を輝かせる。そんな興奮気味の朔羅の声を、ハイナ・アルバストル(憂鬱の秋風・d09743)は無表情に聞き流しているように見えた……けれど彼を良く知る者であれば、その顔にも楽しげな感情が含まれていることに気付いただろう。
     もっとも彼らは、決してバトルの見物のために来たわけではないのだけど。
    (「うわぁ、痛そう……」)
     アンブレイカブルの爪が怪人の脇腹に突き刺さった瞬間、日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)は思わず目を覆いそうになった。けれど、この後の戦いに役立つかもしれないと、沙希は激闘の様子をしっかりと目に焼き付けておく。

    「ところでさ、つんぐーすかって何だろう? マングースかと思ってたのに違った……」
     首を傾げる天外・飛鳥(囚われの蒼い鳥・d08035)の呟きを聞いて、同じ疑問を抱いていた東堂・イヅル(デッドリーウォーカー・d05675)は携帯で調べてみた。
    「なるほど。どうやら、ツングースカ大爆発っていうのはだな……」
     だがしかし、その後のイヅルの説明は、大爆音と激しい閃光に掻き消される!
    「ツングースカ大爆発!!」
     木々が薙ぎ倒され、灼滅者たちのいた場所が露になる中で、嵯神・松庵(星の銀貨・d03055)はすっくと立った姿のまま、ゆっくりと顔を覆っていた腕を取り除けた。
    「ツングースカ怪人。勝ったところ悪いが……こっちの相手もして貰おうか」
    「戦いの直後を狙うとは卑怯者め……と普通なら言う所だろうが、その程度の小細工など、圧倒的な力で捻じ伏せてやるのが我々のやり方コフ」
     大口を開けて笑う怪人の声を遮る、甲高く作った声。
    「さあ、遊ぼうよ」
     月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)の道化の仮面は嘲笑い、怪人を凝視しながら襲い掛かるタイミングを図っている。
    「我を愚弄するノフ? ならばお望み通り、蹂躙してやるスキー!」
     対する怪人の瞳がぎらりと光ったその瞬間、東方・亮太郎(ジーティーアール・d03229)の背後で何かが輝いた!
    「ロシアン怪人がなんぼのモンじゃい! この俺たちが相手だ! 来い! 走甲車ァ!」
     叫びと共に飛び込んでくる真っ赤なスポーツカー! 亮太郎を撥ねる直前で、車の特殊機構が動作する!
    「装着合体、走甲車メタファイター!! 日本のヒーロー舐めんなよッ!」
     スポーツカーから変形した鎧が亮太郎を包んだかと思うと、剣のV8エンジンが唸りを上げた……しかし、威圧するようなエンジン音を前にして、怪人は全く動じていない。
    「その剣は、こけおどしスキー。その構え……守りの姿勢でも我を倒せると思っているコフか? 我も舐められたものノフ」

    ●力とは格差なり
     怪人の手より、青白いビームが放たれる! けれど、それが亮太郎に達するよりも早く、一台のライドキャリバーがその光を遮った!
    「ホライゾン!」
    「師匠! どうかお願いするっす!」
     朔羅は冷気のビームを受けたホライゾンの修復を傍らの霊犬に任せると、背筋を伸ばして敵へと向き直る。
    「そのショボい霧は何コフ?」
     嘲笑われても、朔羅は自分の選択を、仲間が夜霧を上手く使ってくれる事を信じている。迷いはない。犬の姿を取って現れてくれた師匠には、初めて見せる戦いぶりだ。
     もっとも……ただの霊犬を師匠の化身と思い込んで疑わないのは、朔羅だからとしか言いようがないのだが。
    「で、怪人が爆発ってのが明らかに負けフラグなのはわかるんだけど、つんぐーすかって何なのさ? ロシアの食べ物?」
     ダンスのような槍さばきと共に、飛鳥は怪人に問いかける。
    「質問しながら攻撃などとは、是非とも我らの同志になって欲しいノフ」
     優雅ながら鋭い槍の一撃は、けれど怪人の体の表面を削るのみ。僅かに土と氷を撒き散らさせはするが、怪人は泰然と構えたまま動じない。

     その怪人の眉間を、一発の魔法弾が打ち据える!
    「我を相手に狙撃とは、白い死神にでもなったつもりスキー?」
     大爆発で倒れて密集した木々は、ハイナにとっては格好の身の隠し場所だ。怪人は少し凹んだだけの額を軽くさすると、ぎろりとそちらを睨もうとし……首筋に違和感。引き攣ったような感覚が、怪人を襲う。
     すぐに林の中に消えたハイナに代わり、怪人には松庵から種明かしをした。
    「さすがは永久凍土の体。ちょっとやそっとの攻撃では傷つかない硬さは驚異……だが、搦め手ではどうかな?」
     そして松庵の影もまた、夜霧に隠れて浜を這い、仁王立ちする怪人の足元を締め付ける!
    「その程度のもので、動きを止めようとは笑止千万コフ。我は痛くも痒くもないノフ」
     松庵に続き、幾つもの攻撃が突き刺されども、怪人が余裕の表情を崩すことはない。そればかりか……突如! 怪人は大きく空中へと身を躍らせて、胸の前で両腕を構える!
    「小手先技で勝とうなど、自らの見通しの甘さを悔いるノフ! ツングースカ大爆発!」
     再び響き渡る大爆音!
     周囲は念のため、巴が人払いをしてはいる。けれど、その結界の範囲を遥かに越えて、爆発音は四方に轟いたことだろう……もっとも結界のおかげで、誰もその音源を確かめに来ることはないだろうが。
    (「何て爆発なんだ……」)
     咄嗟にイヅルは、周囲の仲間たちの数を数える。一、二……いや、無理だ! 太陽よりも眩しい光が、仲間たちの姿を完全に覆い尽くしている! けれど……。
    「確かに、恐ろしい威力だ……だが、最後に立っているのは、俺たちだ」
     轟音に掻き消されぬようしっかりと言葉に出すと、イヅルはいつでも仲間に癒しの歌を聞かせられるよう、ギターを持つ手に力を込める。

     炎が、ちりちりと肌を焼く感覚。
     燃え上がる景色に、沙希はあの時の光景を重ね合わせていた。
    「お姉ちゃん……」
     押し寄せる絶望。思わず、姉を呼んで助けを求める。
     けれど、ひとつの希望が沙希を包む。沙希はもう、あの時のような無力な少女ではない。
     怯えていたのは、たった一瞬の出来事。次の瞬間、彼女の体は何かに導かれるように動き出す!
    「もう、誰かが倒れるところは見たくない!」
     爆風の前に立ち塞がる沙希が、身を挺して作った影の中。道化が一瞬、恭しくかしずくかのように頷いた。膝立ちの姿勢から、道化は音もなく跳び上がる!

    「アジーン……ドヴァー……トリー……。直撃は四人と一台だと思ったが、一人は跡形もなく消し飛んだノフ? ハーハーハー……」
    「どこを見ているんだい? こっちだよ」
     高笑いする怪人が振り向くよりも一足早く、道化――巴の巨大化した腕が、怪人の頭を後ろから鷲掴む!
    「閃光に紛れて背後を取るとは、ひとまずは褒めてやるスキー……しかし、その程度で勝ち誇ろうなどとは思わないで貰うノフ……」
     ぎちぎちと音を立てて軋む怪人の頭部。それを道化は無造作に、爆発の高熱で変成したガラス質の砂浜に投げつける。
     続けざまにその上に叩き込まれる、巴の拳! 今度ばかりは、さすがの怪人も体をばねのように使い、回避と同時に大きく距離を取る。
    「シベリアの寒気よ、我に力を与えるコフ!」
     大きく広げた怪人の両腕を目掛け、遥か北西の空より輝く風が来たる。ダイヤモンドダストを含む風が怪人を取り巻いたかと思うと、欠けた凍土の体を見る間に修復してゆく……。

    ●力のみが格差にあらず
    「よもや、我を力でねじ伏せかけるとは……しかし、そろそろ終わりにしてやるスキー!」
    「まだまだァ!」
     メタファイターのエンブレムが、きらりと光る。その光沢は、つい先ほど爆炎に曝されたとは思えない神々しさを放っている!
    「お前が何度俺たちを傷つけようとも、俺たちはその度に立ち上がる! 何故なら俺たちは……ここで倒れるわけにゃいかねえんだよ!!」
     亮太郎の周囲を飛び回っていた光輪が、所定の位置に収まった。激しくライトが明滅し、亮太郎とホライゾン、二つのエンジン音が怪人に迫る!
    「纏めて叩き落してやるスキー!」
     大きく腕を振りかぶった怪人の、先の戦いで傷ついた脇腹に、沙希は体当たりするようにしがみ付いた。
    「邪魔だコフ!」
     強烈な冷気のビームが、その体を遠くまで弾き飛ばす。凍りかけた海水混じりの砂にまみれて、沙希は辛うじて膝を立てた。彼女の思惑通り、迎撃の機会を沙希に使ってしまった怪人を睨みながら。
    「おのれ……次こそは、跡形もなく消し飛ばしてやるコフ」
    「それでみんなを守れるのなら、私は何だってするよ。どんなに卑怯なことだって、たとえ自分を危険に晒したって」
     誰ひとりとして欠けることなく、武蔵坂学園に戻る……自分自身がその中から除かれる可能性を、沙希は決して考えていなかった。……何故なら。
    「大丈夫っすか!?」
     ぱりん、という音とともに、沙希にこびり付いた氷が割れた。下から現れた小光輪が、朔羅の元へと帰ってゆく。
    「無茶しすぎっす! さっきだって大爆発の直撃を受けたばっかりっすよ!」
     叱るような口ぶりではあったけれど、朔羅の顔は笑っていた。それは、命を預けてくれるほど、沙希が朔羅や、他の皆を信じてくれていた証拠に違いなかったから。
     そして、重い期待に自分がしっかりと応えられたこと……しかも何よりも、それを師匠の前で見せられたことが、朔羅にとっては自己の存在意義の確認でもあった。

    「実に下らんコフ。弱者同士での自己犠牲など、一体何の役に立つスキー?」
    「力押ししか知らないお前には、決してわからないだろうな」
     松庵の指先が滑らかに動き、空中に紫色の魔法陣を描き出した。その中心が歪んで渦巻いたかと思うと、麻痺の力の篭った弾丸が生み出される。避けようともせずに、怪人はその魔法弾を左腕で受け止める……否、ここまでの幾度もの攻撃を受けてきた怪人の足はいつの間にか、咄嗟の回避をするに足る力を残していなかったのだ。
    「さて、そろそろか」
     魔法陣を描く指を止めると、松庵はチェーンソー剣を唸らせる。体の芯まで伝わる振動が、動きの鈍った怪人の四肢から感覚までをも奪い去る!
    「……少なくともこれは、お前が彼女に気を取られた結果だな」
    「ツングースカ怪人! お前はここで負ける! その敗因は二つ……俺たちを侮り、そして爆発を過信して驕ったことだ!」
     沙希を後ろに庇いながら、亮太郎は怪人に剣を向けた。初めて怪人が、自ら一歩引いた。
    「それじゃあ、そろそろお仕舞いだね♪」
     抵抗らしき抵抗もできず、嵐のように打ち込まれた飛鳥の拳に踊らされるばかりのツングースカ怪人。最後の一発を受けて砂浜に倒れた怪人を見下ろして、飛鳥は問う。
    「灼滅される前に、一言だけ教えて貰うね。結局……つんぐーすかって何なのさ?」
    「それは……本気で言ってたスキー……?」
     怪人の目が一瞬、点になる。てっきり出来の悪い挑発とばかり思っていたが……にやり。
    「ならば……我を見逃すと言うのであれば、教えてやっても構わんコフ。もちろん我は、このまま何もせずに国へと帰るノフ」
    「う~ん……?」
     一瞬、頬に指を当てて考える飛鳥。その様子を見て、怪人が内心、約束は破るためにあるのだとほくそ笑んだ瞬間!
    「やあ! ロシアじゃ命乞いをする時に、そんな顔をするんだねえ!」
     おどけたような口調とは裏腹に、道化の杖は真っ直ぐに怪人に突きつけられていた。
    「さあ、楽な方と苦しい方、どっちでもいいんだよ?」
     体を揺らす道化と、包囲する灼滅者たちを交互に見る。そして、怪人は観念したように目を瞑ると……。
    「食らうノフ!!」

    ●オホーツクに羽ばたく蝶
     一筋のひびの入った仮面の瞳が、憎悪の色を帯びた。無邪気なまでに残忍な杖が、幾度となく怪人の体を打つ。
    「うん、あれじゃいいサンドバッグだね」
     悲鳴を上げる怪人を遠巻きにしながら、ハイナは呆れ顔で様子を見守った。
    「まったく、君はそういう駆け引きとかは苦手そうなんだから、無理するなよ」
     前後不覚になりながらも這いずって逃げようとする怪人を、折角なのでわざわざ影で引きずって、元の場所まで戻してやる。怪人が何だか悲しそうな顔はしたけれど、まあ、自業自得だし。
    「だ、誰か……我を助けて欲しいノフ……」
     哀れだけれど、決して許すわけにもいかない、それでいて憎めない怪人の姿を見ているうちに、イヅルの心にふと、とあるメロディが浮かんできた。
    「こ……この歌は!」
     怪人の耳に飛び込んでくる、祖国ロシアの民謡。正確な発音ではないかもしれないが、イヅルはそれを、腹の底から歌い上げる。

    「祖国よ!」
     感極まれり! 滂沱のごとく涙を流し、海の向こうを仰ぎ見る怪人が、突如叫んで立ち上がる!
    「ウラーーーーーーー!!!」
     大きく跳躍し、胸の前で両腕を構えたツングースカ怪人!
    「ツングスキー……」
     その先の言葉は、三度響き渡った轟音に掻き消され、灼滅者たちの耳には届かなかった。

     まばゆい閃光の引いた後、空には、蝶の形をした爆発痕だけが残っていた。

    ●消え行く蝶を見上げて
    「ふぅ……消耗したところを狙わなければ、どうなっていたことやら」
     あと少し戦闘が長引いていたら、と松庵は額を拭う。負け……まではしなくとも、何人かとは差し違えか。
    「沖縄からわざわざやってきたアンブレイカブルにも感謝しないとね。どうでもいいけど」
     戦いが終わればこれ以上、ハイナがこの場に留まる意味はない。けれど岩にちょこんと腰掛けると、もうしばらく仲間たちの様子を観察してみる。

    「本当に大丈夫っすか!?」
     心配して駆け寄る朔羅に、沙希は強く頷いた。こんなところで屈するわけがない。守るべき者がいる限り、彼女は何度でも立ち上がる。
    「なら良かったっす! ……っと」
     消えゆく爆発痕に向けて、朔羅は手を合わせて一礼した。
    「おかげでまた一つ修行になったっす!」
     つられるように空を見上げて、イヅルは今日までの幾つもの戦いを振り返った。
    (「日本ばかりか、世界にも爆発に固執する怪人は多いんだな……」)

    「へっくし!」
     ここが北海道だと思い出し、道理で寒いわけだ、と亮太郎が愚痴る。
    「風邪引かないうちに帰らねえとな」
    「せっかくだし、お土産も買って帰りたいなー♪」
     最寄の町はずっと先だというのに、飛鳥の頭の中は既に、熊缶やら何やらで一杯になっている。
    「あれ……何か忘れてる気がするけど、まあいいや!」
     そんな飛鳥の様子に首をかしげてから、巴は両手を広げて肩を竦めた。

     ツングースカ大爆発。
     それは、蝶の形の爆発痕を森林に残した、彗星の落下が原因とされる爆発である。

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年9月26日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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