●
ある町と男の話をする。
この話には甘さや酸っぱさはひとつもなく、ただ苦みと塩の味だけがする、そういう話だ。
だから、ハッピーエンドや、都合の良い幸福をご提供することはできない。
もう一度言う。
ある町と男の話をする。
賑わいのある町であった。
商店街と、健康ランド。あといくつかの店と、住宅地。
普通より、ほんのすこし豊かな土地だった。
だがそれも昔の話だ。
「次はこのビルが取り壊されるのか」
ハーフタイプのヘルメットとスカーフ、そして工業用のツナギという、古めかしくも陳腐な格好をした男が解体作業用シートに覆われた建物を見上げていた。
ビルは近辺では最も大きな健康ランドとして機能し、住民の憩いの場となっていた。だが娯楽や景気、若者がもつ平均資本の変化によりこうした娯楽施設は衰退の一途をたどり、およそ五年ほど前に閉鎖。長らく廃墟となっていたビルはガラの悪い連中のたまり場となり、土地の持ち主は重い腰を上げて解体する金を払うに至ったという有様である。
こんな仕打ちを受けているのは、なにもここだけの話ではない。
町にあった様々な商店や娯楽施設は、大手ショッピングセンターの流入により衰退。多く安くを旨とし堅牢なノウハウによって打ち上げられた商業戦略に独力の勘と経験がかなう筈も無く次々とシャッターを下ろし、若者はシケた町から逃げるように他県へ移住。客を失い経営利益が上がらないと踏んだショッピングセンターは足早に退去し、瞬く間にビルごと解体していなくなってしまった。
ならば商店街の出番かと言えばそうではなく、牙を抜かれた商店の老人たちは片っ端からボケはじめ、その半数は既に他界していた。
町は陸の孤島と化し、若者の流出は更に加速。
気づけば町は老人と一部の若者だけのものとなり、当たり前のように治安は悪化した。
狭い土地ならテッペンにのぼれると甘く見たのか、若者たちは我先にと非行に走り、数だけは大量にある廃墟を根城に戦国時代ごっこに興じていた。
この町には既に、金も人も力も無い。
だがまだ生きている人たちが居た。
力がいる。
どんなものでもいい。
力がなくては、町を守っていくことは出来ない。
「……」
男は足下を見た。彼にしては最大限の手加減でもって打ちのめした若者たちが大量に転がっている。
自分たちの城を逃したくないからと解体業者につっかかった非行少年たちだ。
「力を求めて暴力に走ることは愚かだ。それはずっと昔から知っている。だが必要悪なのだ。誰かがやらねばならない。誰かが悪にならねばならない。悪として、悪を潰さねばならない。町を守るためには、私は……」
祖父の代から受けついだヘルメットをおさえ、彼は瞑目した。
「闇を受け入れよう」
●
「ご当地ヒーローがダークネスになったみたいだから、殺してきて頂戴」
虹色の髪をしたエクスブレインの説明は、要約するにそのようなものだった。
ある町を代々守り続けてきたご当地ヒーローの高校生『荒吐・刃鬼』は町の治安を裏側から押さえることで存続させるなどという悪しき考えで闇堕ちをし、今も一般人たちを暴力で従えているという。
このような悪行を見逃せばゆくゆくは巨大な悪、すなわちダークネスとなり世を更に混沌へとおとすであろう。ゆえに彼は死すべきである。
という理由である。
「ダークネスの根城はここで、主な人員構成はこう。要するにダークネス一匹と強化一般人三匹、あと有象無象ってとこかしら。一応『バベルの鎖』で予期くらいはされるでしょうけど、逃げたり喚いたりする立場じゃないでしょうから、直接行ってねじ伏せて来て。うん? 一般人を殺したくない? じゃあ殺界形成でも王者の風でもなんでも使って黙らせたらいいんじゃ無いかしら。ラブフェロモンで台無しにしてやってもいいわね。どうせ彼らは非行少年どもよ。価値の無い人間だから、正直どうなってもいいわ。今後ダークネスにくみする存在ってことは、ダークネスの一部ってことでもあるんだし。殺してしまっても別に構わないわよね」
一息にそう語ると、エクスブレインの女は資料の束を押してよこした。
「それじゃ、あとはよろしくね。ダークネスさえ倒せれば、あとは好きにして構わないわ」
参加者 | |
---|---|
天方・矜人(疾走する魂・d01499) |
石上・騰蛇(穢れ無き鋼のプライド・d01845) |
ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576) |
暗月・朔也(正義なんてクソ食らえ・d08241) |
百舟・煉火(キープロミネンス・d08468) |
犬蓼・蕨(犬視狼歩の妖異幻怪・d09580) |
改・昂輝(灼紅鬼・d18542) |
柳葉・司門(顔の無い男・d21040) |
●悪対悪
元々近隣にできた大型ショッピングセンターにあやかって存在していた立体駐車場も、企業が建物ごと撤退した今となっては土地の肥やしにしかなっていない。
土地の所有権を持っていた老人も一昨年他界し、管理を任された孫が不良グループを率いて根城とし、更にそれらを叩きつぶしたダークネスによって制圧されるという経緯をたどって、今は悪党の根城と化していた。
そんな土地へ、顔を包帯だらけに下ひょろながの男がやってきた。
名前を柳葉・司門(顔の無い男・d21040)という。
彼の異様な雰囲気に門番役の不良少年たちは若干たじろぎはしたが、なんと言っても悪の砦。無言で彼を取り囲んだ。
「見るからに関係者って雰囲気だが、見ねえ顔だな。知り合いか?」
「いんや。なんか用なのかよ」
首をコキリと鳴らしながら屈強な巨漢が近づいてくる。司門など片手で放り投げそうな男だ……が。
「シマ、荒らしに来マシタ」
そうとだけ言うと、司門は巨漢の顔面を鷲づかみにし、アンダースローで放り投げた。驚くべきことに。
巨漢はたむろしていた男たちをボーリングのピンのようになぎ倒しながら入り口の奥へと転がっていった。
「なんだこいつ! カチコミか!?」
手に木刀や鉄パイプを持って飛び出してくる不良少年たち。だがそんな彼らの足下で謎の光が爆発した。
驚いて転倒する彼らを威圧するように、ガタイのいい男が現われた。暗月・朔也(正義なんてクソ食らえ・d08241)という。彼は銃の安全装置を解除すると、太い首をごきりと慣らした。
「で、向かってくるか?」
こうこられて立ち向かえるような奴なら、こんな所でたむろしては居ない。
意味の分からないことをわめきながら散り散りに逃げていった。
当然と言えば当然だが、いささか大げさな反応では無いか?
いや、そんなことはない。
奇妙なロッドによって無理矢理にへし折られた裏の鉄扉から犬蓼・蕨(犬視狼歩の妖異幻怪・d09580)が無言のまま入ってきたのだ。一緒に入ってきた百舟・煉火(キープロミネンス・d08468)と一緒にずかずかと上階行きの階段へ向かうと、くいっと扉のほうを親指でしめした。
片眉を上げてみせる煉火。
「お帰りはこっちだよ。死にたくなければさっさと去りな!」
圧倒的な破壊力である。彼女がパニックテレパスを放っていたので尚更、不良少年たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出していった。
上階へ来てみれば、状況は更に大変なことになっていた。
改・昂輝(灼紅鬼・d18542)が駐車してあった車をパンチで拉げさせ、ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)が大型バイクを爆発炎上させていた。
「灼紅鬼(あくやく)のおでましだ。いるんだろ、ヒーロー」
「テメェら……!」
スレッジハンマーを持った男が向かってくる。強化一般人か。そうとわかりはしたものの、気にもとめない。その必要がないからだ。
振り下ろされたハンマーは当然のように……そう、当然のように天方・矜人(疾走する魂・d01499)の手に収まった。まるでカラーボールでもキャッチしたかのように、片手で軽々とだ。
矜人は炎のようなため息をついて、顔面にパンチを一発だけいれた。
それだけで男はハンマーを残して吹き飛び、下への階段をどかどかと転がり落ちていく。
まるでオモチャのような扱いだ。
「そ、そんな江島さんまで……」
「く、クソが! 殺してやる!」
不良少年の一人がリンゴの皮むきにも使えなさそうなナイフを取り出して突撃してくる。
だがナイフは誰にも刺さることは無かった。
具体的に言うなら、両手をぶらんと下げて歩く石上・騰蛇(穢れ無き鋼のプライド・d01845)の腹に刺さる一センチ手前でピタリと止まっていた。
見えない壁が? いいや違う。ならば念動力の一種だろうか? それも違う。
動作があったとしたら一つだけだ。
騰蛇が、眼鏡のレンズ越しに彼を一瞥した。
本当にそれだけである。
不良少年は蛇ににらまれたカエルのごとくぴたりと止まり、全身から嫌な汗を流してガタガタと震えていた。
「うるさい。汚らわしい。触れてくれるなよゴミクズめらが」
「ヒ、ヒゥ……!」
殺す殺すと吠えていても、本物の殺気に触れればこの通りである。
不良少年たちはとるものもとらず一目散に遁走したのだった。
これが、悪の根城と化した立体駐車場から人間がひとりも居なくなるまでの一部始終である。
この場に残った九人に、人間はいない。
人間外れの灼滅者と、化物未満のダークネスのみだ。
●『必要悪手』荒吐刃鬼
立体駐車場、屋上階。
パイプ椅子やら長机やらドラム缶やら。およそ駐車場とは思えないようなものがごろごろと並んだなかに『彼』はいた。
横倒しにしたドラム缶に腰掛け、傍らにひっかけたヘルメットをゆっくりと手に取る。
階段を上がってきた矜人たちを一瞥して立ち上がった。
「アンタが荒吐か」
「そうだ。お前たちはダークネス……いや、『格』を見たところ灼滅者か。徒党を組んで地域侵略か?」
「まあ、そんなところですね」
騰蛇はどこからともなく刀を取り出すと、眼鏡のブリッジを指で押した。
「この絞りかす同然の町、潰しますよ?」
「好きにしろ。ただし」
ヘルメットを被り、荒吐刃鬼はゴーグルを下ろした。
「――生きていられたらな」
タンッと地面を踏む音がした。したと思った瞬間には矜人の背後に立ち、腰から抜いた銃を抜いていた。本来マウントされる筈のコンバットナイフはオミットされており、代わりにマガジンの底がハンマー状になっているカスタムモデルである。
彼はそれを二丁引き抜くと、オーラを纏わせて矜人の後頭部と騰蛇の側頭部を同時に強打。二人はのけぞりつつも反撃に出た。
騰蛇は抜刀から斬りかかりまでをワンモーションで。矜人は振り向きラリアットを繰り出す。
そんな二人の攻撃を銃身でそれぞれ受け止める刃鬼。
が、戦闘相手はその二人だけでは無い。一瞬硬直した刃鬼めがけて昂輝が突撃。異形化した腕で思い切り殴りつけた。
刃鬼はモロにくらって吹き飛ばされるが、落下防止用の鉄柵に着地。更に拉げつつ跳躍した。
中空で上下反転し、二丁の拳銃によって掃射。
しかし煉火が間に入り、虹色のオーラを広げて防御した。
刃鬼をキッとにらむ。
「貴様がこの町最後の砦なのだろう。愛のために堕ちたのならば、すべてをもって救って見せろヒーロー!」
「知った口をきくな、よそ者」
二丁の銃を揃えて同時射撃。オーラの塊となった弾丸が煉火のオーラを貫通し、彼女の肩に着弾、破裂した。
肩を押さえつつもビームを発射する煉火。攻撃は刃鬼の腕をかすり、彼は身体をひねって着地した。
その瞬間を待っていたかのように影業がわき出し、刃鬼の足へ絡みついた。
払う暇すら与えずにライフルで銃撃を仕掛けてくるジュラル。
「闇堕ちしてまで町を守りたかったんだろ? だったら出し惜しみせずに恋い!」
「……」
刃鬼は冷静に銃を連射。互いの弾頭同士がすべて途中でぶつかり合い、拉げたピンバッチになって地面に転がった。
これで攻撃は終わりか?
否。
司門の影が長く伸び、食虫植物のように刃鬼を覆ってしまう。
「堕ちたはいいデスガ、果たしてこのあとうまく行くものデショウカ? いずれ町を破壊し尽くす悪の権化になるやもしれないデスヨ?」
「それでゆすっているつもりか」
影を内側から破壊して飛び出してくる刃鬼。彼の繰り出したハンマーアタックを、司門はチェーンソー剣で受け止めた。武器にバキンとヒビが入る。
「私は悪だ。爆弾や怪獣ではない。他者を虐げ、蹂躙し、捕食し、吸収し、征服し、破壊するだろう。そうして得た利益は全てこの町のものとなる。悪の巣窟となるだろうが、それら全ては私の管理下。健全で幸福な町民を永久に活かし続けるための暴力装置となるのだ」
横から繰り出された蕨の突きを首の動きで交わし、逆に彼女の額に銃を突きつける。連続射撃。
頭を砕かれたかと思いきや、蕨は器用に身体をそらして回避。突き込んだロッドそのものに魔力を流し込んで爆発させ、刃鬼をその場から吹き飛ばした。
「悪をもって悪を潰すには限界があります。それ以上の力に潰されるだけ。自己犠牲に走らず、維持を通すのがヒーローというものではないですか?」
「意地を通せば『それ以上の力』に潰されないとでも? より簡単に潰されるだけだ。そこらのチンピラを殴って何が変わる。悪党をやっつけて何が変わる。せいぜい犯罪が減るだけだ。町の衰退を何一つとめることなどできない」
「それで王様気取りか。兵隊どもは今頃オネンネしてるぜ、お前のせいでよ」
刃鬼の足下に弾が着弾したと思いきや、突如として周辺が氷結。刃鬼は足にまとわりついた氷をオーラで破裂させると、続けて発射された魔矢を半身になって回避した。
「俺の目的はお前を倒すことだ。生きていようが死んでいようが関係ねーんだ」
「チッ……!」
銃を水平に構え、ずかずかと歩いてくる朔也。
もし本物の悪党なら、彼らがあえて一般人を殺さずにいたことを見抜いただろう。本当に殺した方が楽だというなら、一人の生首を引っこ抜いて水戸光圀の印籠よろしく翳してあるけばいいだけだ。何なら口に爆弾でもくわえさせて罠に仕立ててもいい。
だがこのとき、刃鬼の胸をなにかが締め付け、判断力を鈍らせていた。
そんな時だ。偉業の腕をした昂輝が、鉄パイプのようなものを叩き付けてきた。刃鬼は即座に反応。銃のハンマーマガジンでそれを受け止める。
激しい金属音が鳴り響き、振動と衝撃が走った。
更に騰蛇の刀が繰り出される。またも銃身で受け止める刃鬼。
その時である。
彼らの攻撃を通し、刃鬼の身体へ何かが伝わった。
それは魂の叫びとしか言いようのない何かである。
共感のような、同情のような、正義をもって悪となった男に対する、それはまさしく救済であった。
「お前たちは、まさか……!」
目を見開く刃鬼。その時反射的に、彼は技を繰り出していた。
足を払い、相手の腕をひねり上げる。ただそれだけで騰蛇と昂輝は何メートルという距離を吹き飛び、鉄柵に身体をぶつけた。
刃鬼が力を込めたのでは無い。彼らの力を利用した、合気道に似た投げ技である。
かつて祖父の代にてふるわれ、暴漢悪党犯罪人を千切っては投げたと言われる秘伝の奥義。それは彼の名からとり『アラハバキ』と呼ばれていた。
由緒正しき、ヒーローの技である。
ドラム缶や長机を破壊しながら転がった昂輝は、ニヤリと笑って身体を起こした。
「目ぇ覚ましたかよ、ヒーロー」
「私はヒーローではない」
「悪党だってか。じゃあ俺は――」
ぴょんと跳ねて立ち上がり、昂輝はオーラを漲らせた。
「『悪役』だ」
昂輝、跳躍。刃鬼はキャッチを押してマガジンを排出すると、どこからともなく現われたガイアマガジンなるものをはめ込んだ。
オーラの噴射とともに突撃する昂輝。それに対し、刃鬼は後ろ回し蹴りで応戦した。
拳と蹴りがぶつかり合う。勝ったのは刃鬼であった。腕がまるごと吹き飛び、地面をスライドする昂輝。
「ほぉ……」
朔也はその様子に眉を上げると、銃から極太のビームを発射した。
それに対し、たった一発の銃撃で対抗する刃鬼。しかし弾頭は熱く輝き、ビームをあろうことか引き裂いて直進。朔也の腹へとめり込んだ。
腹を押さえて息を吐く朔也。表情は特に変わっていない。
「ここからは簡単には倒せねえぞ。気ぃ引き締めていけ。負けたらすべて『おじゃん』だぞ」
「言われなくとも!」
虹色のオーラを纏って突撃する煉火。
彼女をフォローするようにジュラルがバスタービームを連射した。ずりおちかけたサングラスを直す。
「あとで美味しいトマトジュースが飲めそうですねえ、これは」
対して刃鬼はビーム射撃を手放し側転で回避。鉄柵に一度着地してから更に跳躍。燃えるような蹴りを繰り出した。
対抗してキックを繰り出す煉火。蹴りと蹴りが中空で相殺し、エネルギーの渦が波紋のように広がり周辺のガラクタを吹き飛ばしていった。
「その力はなんのためだ! 荒吐ィ!」
ガチンを歯を食いしばる煉火。
ぶつかり合った力はお互いの身体を爆発させ、彼らを立体駐車場の外へと放り出した。
一般人なら即死するような距離を自由落下した刃鬼はしかし、両足から地面に着地。
そんな彼めがけて蕨がフリーフォールアタックをしかけてきた。バックステップで回避。先刻まで居た地面が彼女のロッドによって砕け散った。
「あなたに必要だったのは、力じゃ無くて仲間だったんです。支えてくれる、仲間だったんですよ」
顔をあげ、キッとにらむ蕨。
続いて騰蛇と司門が屋上から飛び降りて着地。地面を軽く粉砕しながらも刃鬼へと斬りかかった。
回避直後の刃鬼である。司門と騰蛇のクロススラッシュが綺麗にはいり、彼のツナギが肉ごと引き裂かれた。苦しげに顎を上げる刃鬼。
その様子を確認した矜人が屋上の鉄柵に飛び乗ってダイナマイトモードを発動させた。輝くアイシールド。赤く染まるスーツセット。何かの骨のような大剣を生み出すと、刃鬼めがけて飛び立った。
「さあ、ダイナマイトにハジけるぜぇ!」
彼の大上段重力斬りが炸裂するまでのほんの一瞬。ゴーグル越しに目が合った。
――お前、本当は罰して欲しかったんじゃねえのか?
――俺が? まさか。
――荒吐家が代々守ってきた町をこんなにしちまった、ってよ。お前は確かに頑張った。だから誰も責めちゃくれねえ。そうしてお前は一人になっちまったんだ。誰の力も借りることができないまま。
――だとしたら、だとしたら俺は今!
――心配するなよ。なにせ俺たちは……!
矜人の剣が刃鬼を切り裂き、地面を盛大に破壊した。
まるで断頭台の刃が落ちたかのように。
●『必要正義』荒吐刃鬼
後日談にならぬように語ろう。
戦いの後に目を覚ました刃鬼は、自らのてのひらをじっと見つめ、静かに涙を流したという。
暫くして矜人が学園に来るかと問いかけたとき、彼はこう言った。
この町を離れられない。けれど協力はしよう。
「正義はまだ、この世界に必要らしい」
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年9月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 26/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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