ゴンゾウはベッドに寝たまま、白い天井を見上げてため息をついた。事の起こりは一週間ほど前。ちょっと体調不良で病院に行ったら、色んなところに異常が見つかり、すぐ入院となった。長年の不摂生と、寄る年波が災いしたらしい。医者にはもう長くないと言われている。年も年なので、手術も難しいらしい。
だが、ゴンゾウには死ぬ前にどうしてもやり遂げたいことがあった。どうしても、生きてるうちに、一度、たった一度だけでいい……!!
「キレーなねーちゃんをはべらせて、ハーレムの王になりたいぃいいいい!!」
ゴンゾウは深夜で、しかも個室なのをいいことに最期の願いを叫んだ。
……もっとマトモな願いだったら、それなりにシリアスなシーンになっていたかもしれない、その時だった。
「その願い、叶えてア・ゲ・ル♪」
突然一人のナースがガラッと扉を開けて部屋に入ってきた。格好からしてナース、には違いないんだろうが、胸元が大きくはだけているわ、短めのスカートに大きくスリットが入っていて太ももが露になっているわ、ナースにあるまじきけしからん格好である。ゴンゾウは思わず目をこすった。ナースが病院にそぐわない姿をしていたからではない。あまりにも自分好みのナースさんがタイミングよく現れたので、お迎えでもきたのかと思って。
「いやだわ、ワタシはお迎えなんかじゃなくて、むしろその逆。アナタを助けに来たのよ。ワタシの眷属になるのが条件だけど」
ベッドの傍らに腰掛けたけしからんナースが、ゴンゾウの心を読んだかのように言う。
「ワタシなら、アナタの病気を治して差し上げられますわ。そうすれば、一生に一度と言わず、何度でもアナタ好みのハーレムを作ることだってできる……」
ゴンゾウの手を取り、やさしく擦りながらナースは甘く囁きかける。
「お、おう……よく分からんがワシの病気を治してくれるんじゃな? そしたら夢のハーレムが作れるんじゃな?」
ナースの色香に盛大に鼻の下を伸ばしながらゴンゾウが言う。その目は大きくはだけた胸元に釘付け。
「ええ、勿論。さぁ、ワタシと契約を……」
「するするする!」
こうして、ゴンゾウは深く考えないままに、いけないナースと契約を結んでしまったのであった。
「とある病院に、淫魔……いけないナースが現れます」
桜田・美葉(小学生エクスブレイン・dn0148)が集まった灼滅者達に告げる。
「……何がいけないのかは、よく分かりませんけれど。少なくとも良くはないですね……。病人やけが人に『病気や怪我を治す代わりに配下に加わる』ように契約を持ちかけ、契約を結んでしまった人を強化一般人とし、次々と配下に加えているんです」
実際、強化一般人となった患者は、病気や怪我が完治して退院した後、行方不明になっているようだ。
「せっかく完治したのに行方不明とか……恐ろしいことです」
ぶるっと体を震わせ、
「どうか、これ以上の事件が起きないように、いけないナースを灼滅してください……!」
美葉は帽子を押さえて、深々と頭を下げた。
続いて、詳しい説明に移る。
「いけないナースは、深夜に目ぼしい患者を探して病院内を徘徊しているようです。どうやらプラチナチケットに似た能力を持っているらしく、病院内も自由に動き回ることができるみたいですね」
接触するなら、その時が良いだろう。いけないナースは胸元も太ももも露な、看護師に似つかわしくないけしからん格好してる上に、淫魔の翼まで生えてるので見ればすぐに分かるはず。
「病人やけが人の中でも、特に病気やけがを治したいという強い意志を持つ人が選ばれているようなので……そういった人を装っておびき寄せるのもいいかもしれませんね。あまり多すぎても怪しまれてしまうので、やるなら2~3人くらいにとどめた方が良いと思いますが……」
戦闘になれば、いけないナースはサウンドソルジャーのサイキックを用いて戦う。それから、手にした注射器で回復も行うようだ。ポジションはメディックになる。
「幸いにも、いけないナースは普通のダークネスよりも弱めなようですね……だいたい、灼滅者の皆さん4~5人で互角くらいでしょうか。でも、甘く見てはいけません」
いけないナースの方も、病院内に何人かの強化一般人を護衛として残しているのだから!
「現れる強化一般人の方は5名ほど……ですね。強化一般人の方にも、その、お気をつけください……特に女性の方は」
……ん? 特に女性?
「……というのも、その、なぜか護衛として残った強化一般人の方の多くが、その、どう見てもいけないナースの色香に惑わされて契約してしまったクチの方というか、つまりあの……」
……要するに女好きのスケベジジィが多いらしい。
「特に護衛として残った強化一般人の中でもなぜかリーダー的な存在になっているゴンゾウさんはその傾向が強いようで……」
そのゴンゾウさんの将来の夢はキレーなねーちゃんを集めて一大ハーレムを作ることだとか。それはともかく。
「ゴンゾウさんのポジションはクラッシャー、それ以外の方はディフェンダーが二人、ジャマーが二人、という構成になります。ゴンゾウさんも含めた前衛の人はバトルオーラのサイキックを、ジャマーの人は影業のサイキックをそれぞれ使うみたいです」
なお、倒された強化一般人は例外なく元に戻る。なので思いっきりやっちゃってください。
また、この時、いけないナースの治療の影響により、病状が軽くなっていたりすることがあるようだ。色ボケジジィの症状なんか軽くならなくていいよとか酷いこと言わないであげてください。
最後に美葉は言う。
「いけないナース達が、だれの命令で動いているかは分かりません……。でも、本人を問い詰めても、おそらく答えが返ってくることはないと思います。とにかく今は、事件を解決することに力を注いでください……ゴンゾウさんのハーレム計画を阻止するためにも」
それはついででいいけどな。
参加者 | |
---|---|
凌神・明(英雄狩り・d00247) |
橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616) |
華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389) |
安曇・陵華(暁降ち・d02041) |
神凪・陽和(天照・d02848) |
大條・修太郎(メガネ大百科・d06271) |
神田・依都(エスポワール・d08205) |
リステア・セリファ(デルフィニウム・d11201) |
●えっちなのはいけないと思います
「人は……いなさそうだな」
闇を纏い、先行して病院内に侵入した大條・修太郎(メガネ大百科・d06271)が辺りを見回して呟く。深夜の病院内には人気もなく、どこかひんやりとした静けさが漂っていた。同じく闇を纏った神凪・陽和(天照・d02848)は、修太郎と手分けして、隠れる手段のない仲間を誘導していく。目指すはナースステーションから離れた、奥の方の広い空き病室。万一誰かに見つかったとしても、リステア・セリファ(デルフィニウム・d11201)のプラチナチケットもある。潜入は無事にできそうだ。
それにしても、と橘・瞬兵(蒼月の祓魔師・d00616)は首をすくめて
「……夜の病院って、怖いよね」
とポソリと呟いた。実際、夜の病院にはどこか独特な雰囲気がある。まして瞬兵はまだ小学生だ。そう呟いてしまったのも無理はない。一方で、同じ小学生である華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)の意識は病院には向いていないようだった。
「あーあ、クロキバさんじゃなくて、節操のないおじいさん達が相手かぁ。私の身の回りを世話してくれたおじいさん達は、とても厳しくておっかなかったけどなぁ」
そう言ってため息をつく。そう、今回の敵は色ボケジジィ軍団といけないナース。
「えっと、えっちなのはいけないと思います……」
何か想像してしまったのだろうか、瞬兵は少し頬を赤らめて言った。
「じぃさん元気だな~。いけないナース倒しても元気なままらしいし、帰ったらおばあさんに怒られると良いよ」
安曇・陵華(暁降ち・d02041)もそう漏らす。だが、そもそも彼らにはおばあさんがいるのだろうか? それはさておき。
「元気なことは良いことだけど欲に溺れちゃうのは好ましくないかなあ……せっかくだから丁重に女の子扱いしてもらいたいところだね!」
神田・依都(エスポワール・d08205)がそう言ったところで、灼滅者達はちょうどよさそうな空き病室を見つけた。中に入っていく仲間達と一旦別れ、陵華とリステアは周辺の病室へと向かう。魂鎮めの風で一般人を眠らせるために。深夜ゆえ、殆どの患者は眠っていると思われるが、念のためだ。コートの代わりに白衣を羽織い、リステアは慎重に各病室を回って風を吹かせていく。陵華も病室の中にこっそり入り込んだ。どの病室も明かりは消えており、起きている人がいるのかいないのかも分からなかったが、陵華は
「ごめんな、ゆっくり眠ってくれ」
と一言謝って眠りをもたらす。
手早く用を済ませ、二人が戻ってきたのを確認すると、依都は殺界形成を発動させた。病室で待機していた面々は、既にベッドやカーテンの陰に姿を隠している。身を潜めつつ、凌神・明(英雄狩り・d00247)は
(「人の夢と言うものは、叶う寸前が一番良い音を立てて砕けると思うんだが、如何だろうか?」)
と一人不敵な笑みを浮かべた。なお、今回彼は女装姿である。騙せるかなー本能で嗅ぎ分けるかなー色ボケジジィだし、と言う興味本位で。
神薙使いの二人も隠れたところで、修太郎と陽和の二人はいけないナースを呼び寄せるために演技を始める。
「ああああもう嫌だこんなとこに閉じ込められて毎日味うっすい病院食で量少ないし肉少ないし ラーメン! ハンバーガー! 塩分がどうした油が何だってんだよおお! どうせ治んないんだ好きなもの食べて成仏させろってんだよ!」
「私なんてもう2ヶ月もベットで絶対安静ですよ。道路をジョギングしてたら車に跳ねられましてね。全身の骨が派手に折れてしまって。もう嫌になりますね。早く治って一杯動きたいです!!」
淫魔に聞こえるように、わざと少し大きめの声で話す。と、狙い通り、
「その願い、叶えてア・ゲ・ル♪」
聞いた通りの姿の、いけないナースが部屋に入ってきた。
「ほんとか、外出られるのか!」
仲間が戦闘態勢に入るのを悟られない様、修太郎はその話に食いついたフリをする。勿論、といけないナースは蠱惑的な笑みを浮かべ、だいたいエクスブレインから聞いた通りの話を持ちかけた。
「さぁ、契約を……」
そう言って差し出す手を、
「あーもう勿論! ……するもんかってーの!」
修太郎は振り払い、代わりに殲術道具を握った。他の仲間もカードを開放し、淫魔に迫る。
「な……! ひどいわ、ワタシをハメたのね!」
ナースが叫ぶ。だが患者を誑かし、強化一般人に仕立てあげている奴に言われたくない。
(「人の気持ちを弄ぶのは、許せないよ」)
いけないナースを初めて間近で見て、依都は淫魔が宿敵であることを再確認する。改めて闘志が燃え、手に力が篭った。しかし誑かされてることに気付かないジジィ軍団は、いけないナースの声に応じてどこからともなく沸いてくる。
「ナースちゃ~ん! 助けに来たぞお……っとおお! 若いおなごがこんなに!」
「たまらんのう」
興奮したようにハァハァと荒い息を吐き、手をワキワキさせる。そんな色ボケジジィ達に、灼滅者の絶対零度の視線が突き刺さった。
「ご老体に鞭打って戦わせるような相手はちゃんと灼滅しないといけないよね……? ……例え、なんか鞭打たれてる方が全然そんな感じがしなくても」
瞬兵がそう呟き、明も
「とりあえずベットにもどろうか、入院患者!」
と言い放つ。紅緋も頷いて、
「敬老の日も過ぎましたし、遠慮はいりませんね。年寄りの冷や水という言葉を骨の髄まで叩き込んで、ベッドへ送り返してあげましょう!」
と敵をしっかり見据えた。その間に陵華は部屋の入り口に立ち、サウンドシャッターを展開すると同時に電気を点ける。それが戦闘開始の合図となった。
●人の夢と書いて儚いと読む
「これがアナタのハーレム計画の第一歩よ! 頑張って!」
いけないナースが調子のいいことを言って、一番手前にいるジジィ――おそらくゴンゾウに怪しい注射を打つ。
「うおお! なんか力が漲ってきたぁ! よしこの嬢ちゃん達倒せばワシのハーレムに加えられるんじゃな!?」
ゴンゾウが叫び、陵華に無数の拳で殴りかかってくる。こっそり乳やら尻やらふとももやらにも手を伸ばしながら。
「ええい、近づくなエロじじぃ!」
陵華は本気で嫌そうな顔をして、その手を振り払った。身長は小学生サイズだが、残念ながら身長では判断してくれなかったらしい。おまけに相手は今攻撃力が上がっている。受けたダメージは少なくない。心的にも。
「待ちなさい! やるならせめて私にしときなさい!」
そこに凛とした明(女装)の声が響く! バレるまでは完全に女を演じ切る心構えだ。遠慮なーく! と明の懐に飛び込み、同じく閃光百裂拳からのボディタッチ! した爺さんが飛びのいた。
「こいつ男じゃぞ!?」
「引っ掛かったなこのだぼがァァッ!! しかし正解者には嵐をプレゼントだ」
明はニヤリと笑い、魔術で竜巻を引き起こす。片腕を異形巨大化させた紅緋も、ゴンゾウへと殴りかかった。
「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します」
その一撃はしかし、相手のディフェンダーに庇われ、届かない。だがそれもディフェンダーを削る手伝いになる、と紅緋は気を取り直した。一方でゴンゾウは
「残念じゃのう、嬢ちゃんがもう少し大きくなったらワシのハーレムに加えてもいいんじゃが……」
などとほざいていた。
「お断りします」
紅緋はきっぱりと答える。
修太郎は鬼神変でゴンゾウを殴りつけつつ、軽い調子で話しかけた。
「じーさん年いくつだよ、元気だな。医者の言う寿命なんか気にすんなって。でもハーレムはやめとけよ。金あるの? 無理じゃね?」
ゴンゾウはうっと声を詰まらせた。実際、一夫多妻が認められている国でも、それができるのは一部の金持ちぐらいである。陵華も頷き、
「おばぁちゃん子だったからお年寄りは好きだが、これは無いわ~」
と同じく鬼神変でゴンゾウを殴った。こちらはディフェンダーに庇われてしまったが、口撃はしっかり伝わり、ゴンゾウは打ちひしがれる。メンタル弱いな。
そんなゴンゾウに、スケベ仲間は
「しっかりするんじゃゴンゾウ!」
と集気法をかけたり、
「ほらこういうの好きじゃろ!?」
と依都を触手で縛ったり(影縛り)、リステアの服を切り裂いたり(斬影刃)した。
依都は
「も~、困ったおじいさん達だな~」
なんて愛想笑いしてるが、リステアはゴミを見るような目で見ている。攻撃する相手を間違えたんじゃないだろうか。
瞬兵が清めの風を吹かせ、陽和がシールドリングで盾を付与すると、リステアは早速
「押し潰す……!」
と異形化した腕でゴンゾウを叩き潰しにかかった。
「……魅惑の、歌を」
依都もすぅっと息を吸い込み、神秘的な歌声を紡ぐ。続いて彼女のビハインド、カロンも顔を晒してトラウマを植え付けた。催眠とトラウマに苦しむゴンゾウを、いけないナースは
「しっかりして! アナタのハーレム計画はまだまだ始まったばかりでしょう!?」
と天上の歌声で鼓舞する。それに力を得たゴンゾウは、再び閃光百裂拳でセクハラ込みの攻撃を仕掛けてきた。だがそれはさっきと同じ単調な攻撃。見切るのは簡単だった。華麗に避けて、灼滅者達はゴンゾウに集中攻撃を加える。時々はディフェンダーに庇われたものの、これだけの人数で一斉に攻めれば、やがては落ちる。次第にふらふらしてきたゴンゾウを、陵華は先ほどの恨みも込めて
「とっとと倒れろ!」
とマテリアルロッドで力いっぱい殴りつけた。それがとどめとなった。
「あと少し、だったのに……ワシの、ハーレム計画……」
虚空に手を伸ばし、ゴンゾウはガクリと頭を垂れる。
あと少しどころか、かすってさえいなかったけどな。
●断罪
ゴンゾウが倒れたことで、今まで回復に専念していたナースも、踊りながらこちらに攻撃を仕掛けてきた。それはもうおっぱいがポロリしそうな勢いで、腰を激しく振って。情熱的に! いやらしく!
そのダンスをガン見しながら、残ったジジィ達はこれ以上伸ばせないほど鼻の下を伸ばす。ダメだこの爺さん達。ともあれ、
「よーし、皆でゴンゾウの仇をとるんじゃぁ!」
淫魔の踊りを見て気力が回復したのか、老人のうちの一人が拳を天に突き上げた。
「おおともよ! ゴンゾウの果たせなかった夢はワシが代わりに叶えるんじゃ!」
「いやワシじゃ!」
などと言いながら、残りのジジィ達は女性陣に向かって突撃する。修太郎は肩をすくめた。
「揃いも揃ってエロオヤジばかりまあ……他人に迷惑かけなければ許容範囲かもしれんが、欲求的に無理だよね! じーさんに幸あれ!」
そのまま閃光百裂拳でエロジジィ達を迎え撃つ。修太郎の壁に阻まれた爺さんに、明は業刀劔を振り下ろした。
紅緋はジャマーに石化をもたらす呪いをかけ、陵華もジャマー達を凍りつかせる。爺さん達も負けじと閃光百裂拳でべたべた触ってきたり影で縛ってきたり服を破ってきたりしたが、その度に瞬兵と陽和が着実に回復した。
続く戦闘の最中、不意にリステアに向かってジャマーの一人が飛び込んでくる。
「実は……ワシ……気の強い女子が好みなんじゃぁ!」
リステアの視線がさらに冷たくなった。
「死にたいのなら今すぐ真っ二つに割ってあげるわよ?」
「ああ……その蔑んだ目でもっと!」
「さよなら」
無慈悲に爺さんを踏みつけ、断罪の刃でとどめをさす。一方、セクハラ的な言動も愛想笑いで軽くスルーしていた依都にも、残りのジャマーの魔の手が迫るが。
「すみません、お年寄りは守備範囲外なので……また来世!」
さらりと笑顔で毒を吐きつつ、依都は閃光百裂拳で吹っ飛ばした。これで残るはディフェンダーの二人のみ。
「これは……ちょっとまずいんじゃないかのう」
「ううむ……仕方ない、セクハラのための拳は一旦封印じゃぁ」
そう言って、残った二人は紅緋に向かってオーラキャノンを放つ。だが紅緋は軽やかにステップを踏んで回避し、逆にデッドブラスターを放った。カロンも霊障波で援護し、陵華も轟雷を放つ。こうなると仲間のダメージも肩代わりしていたディフェンダー達はあっという間に窮地に陥った。
「もう遠慮はいりませんね」
陽和も攻撃に転じ、斬影刃で沈める。祖父母に育てられた陽和はかなりのおじいちゃん、おばあちゃんっ子だが、エロジジィに容赦はしない。元気な老人にシンパシーは感じるけれど。
最後の一人も、
「輝く御名の下、裁きの光もて、煩悩を照らし清めん……」
と瞬兵が放ったジャッジメントレイで倒れた。
一人残った淫魔はうろたえたが、いけないナースの逃亡に注意を払う灼滅者は多く、出入り口は既に固められている。
「逃がしませんよ。そこのいけないナースの人も、八つ当たりしてあげますから!」
紅緋が風の刃でナースを切り裂き、
「さぁ、砕け散るがいい!」
明も超硬度の拳で打ち抜く。さらに無数の灼滅者達の攻撃が追い討ちをかけた。苦し紛れに紡ぐディーヴァズメロディもあまり効かない。リステアはそんなナースに「Arioch Scythe」を突きつけて問う。
「無差別に眷属を増やしてるみたいだけど、何を企んでる?」
「さァね」
いけないナースはそっぽを向いた。リステアはため息をつく。まぁ、端から回答は期待していない。そのまま突きつけた大鎌の刃に炎を宿らせて叩きつけた。
最後に修太郎はマテリアルロッドを掲げて言う。
「おびき寄せる時はああ言ったけど、旨いものは勝手に食べるから結構だ。色ボケする程ジジイじゃないし!」
そして放ったフォースブレイクが、いけないナースを灼滅した。
●色ボケジジィは放置プレイで
「……やれやれ、随分とお騒がせなご老人だったなあ。いつまでも元気に過ごして欲しいけどねえ」
武器を下ろし、依都は呟く。一方、リステアは色ボケジジイに付き合う義理もないと、倒れた老人達は放置して、淫魔を灼滅した場所に何か落ちていないかチェックしていた。だが特に何もないようだ。
老人達を放置してるのはリステアだけではない。紅緋もだ。というか爺さんに対してなんらかのフォローを考えてる人の方が少なかった。
「使ってない部屋が散らかってたらちょっと拙そう……働いてる誰かが怒られない程度には片付けたいかな」
修太郎はむしろ部屋の方を気にする。
「そうだなぁ、ベッドとか元通りにしといた方が良さそうだ」
陵華も同意して、出来る範囲で片付けていく。整えられたベッドに、明は適当に老人達を寝かせていった。
「倒したあとはただの患者だしな」
「もうあんなことしないといいんですけれどね」
爺さん達を眺めて陽和は言う。気を失ったままの爺さん達に瞬兵は一応改心の光を当てるが、効果のほどは未知数だ。
それでも、いけないナースは無事に灼滅した。この病院に平和が戻ったことは間違いない、と灼滅者達は病院を後にするのだった。
作者:ライ麦 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年11月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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