紅れ葉は血に濡れる

    作者:立川司郎

     町を見下ろす小高い丘に、ひっそりと木は立っていた。
     すでに失われて久しい天守閣跡は、今はベンチが据えられて公園となっている。夏でも風がよく通り、城跡を囲んで城下へと続く道をモミジの木が囲んでいる。
     今はまだ色づいてはいないが、秋も深まればよい散歩道となるだろう。
     城跡を歩きながら、勾月・静樹(夜纏・d17431)はふと視線を城跡の端へと向ける。
     大きなモミジの木であったが、その木には青々とした葉が一枚も付いてはいなかったのである。
    「……あれか」
     枯れたモミジの木の側に歩み寄り、静樹は見上げる。枝の間から、秋の日差しが差し込んでいた。
     城跡に上る道の側にある売店の反対側、ちょうどこのあたりに天守閣が建っていたと思われる。
    「その木は枯れているんですよ」
     側のベンチに座っていた老女が、静樹に話しかけてきた。彼女によると、この木はもう長い間枯れたまま、ここにあるのだという。
     明治の頃、この城主に連なる家系の令嬢が恋人と二人で城跡にモミジの木を植えた。モミジは大きくなったが、赤くなったのは僅かな間……それ以来、こうして枯れたままここにあるのだという。
    「この城には悲しい逸話などありはしませんよ。でも、モミジを植えたおひいさまには……あるかもしれませんねぇ」
     老女はそう話して、笑った。
     枯れて長い年月が経ち、いつしか噂が流れるようになった。白い振り袖に小豆色の袴、そして編み上げ靴を履いた若い女性と、書生風の袴と編み上げ靴の青年が二人、夜ともなるとこの木の側に現れるのだと。
     彼女は手にすらりと細い刀を持ち、まっすぐな太刀筋でこちらに斬りかかってくる。
     青年は同じく刀を手にしているが、彼女よりも少し太刀筋が乱れている。
    「美しく咲く桜の下には、人の骸が埋まっていると昔の作家さんも仰ったじゃないですか。……多分、おひいさまもそうしてモミジを咲かせようとしているんじゃないですか?」
     老女は静樹に話すと、やれやれと腰を上げて歩き去った。
     ……桜の下に死体が埋まっていると言われ始めたのは、静樹の記憶によれば近年になっての事だ。
     明治時代のお姫様の頃には、そんな噂があったとは思えない。これは都市伝説の仕業、人の作り出した幻だ。
    「モミジを求める人の心が生み出した負の産物、という訳だ」
     咲かぬモミジは、人の血を求める時のみ紅葉を散らす。
     
     山が真っ赤に色づくのも、あと一月。
     相良・隼人はまだ青い葉を手の内でひらひらともてあそびながら、教室の椅子に腰掛けた。
     残念ながら、行く先は赤く色づいてはいないらしい。
    「この城跡の奥にある紅葉の木は、もう百年近く枯れたままだ。元々はこの城に連なるご令嬢が植えたものらしいが、何の因果か全く葉を付けやしねえ」
     人はそこに、闇を見た。
     令嬢が恋人とともに、枯れた紅葉をよみがえらせる為に人の骸を求めているという闇を、である。
    「どうやら、今朝方この木の下で死体が見つかったそうです。もはや、一刻の猶予もありませんね」
     静樹が様子を見に行った、その日の朝の事である。
     この紅葉の木に現れる都市伝説は、深夜に現れるという。枯れた紅葉の木のすぐ木の下に立つと、ふたりは現れる。
     隼人が話すには、令嬢の方が近接攻撃は優れているという。
    「ご令嬢はさすがに太刀筋が良い。どちらかというと、男の方が後ろに立っていて彼女をフォローする形だ」
     近接しての攻撃力は、ご令嬢は高い。
     攻撃するたびに自分の力を増すようで、余計な負荷を与えてこない分破壊力と能力は優れていると隼人が言う。
     一方男の方は、時折彼女を労るようにして傷を癒やしたり、隙を見て足止めを計る。
     隼人は攻撃方法について話しながら、ふと首をかしげた。
    「……それにしても、ご令嬢と書生じゃ、ちょいと身分の釣り合わねえ恋人だな。もしかすると、本当にこの紅葉には悲しい逸話が隠されているのかもしれんな」
     隼人の話を聞いて、静樹は何か考え込むようにしていた。


    参加者
    灰音・メル(悪食カタルシス・d00089)
    黒鶫・里桜(おねえちゃんらぶ!・d05408)
    虚中・真名(緑蒼・d08325)
    シーゼル・レイフレア(月穿つ鮫の牙・d09717)
    樹・由乃(草思草愛・d12219)
    越坂・夏海(残炎・d12717)
    勾月・静樹(夜纏・d17431)

    ■リプレイ

     ここは風がよく通る場所だ。
     ランタンを手にしたまま、虚中・真名(緑蒼・d08325)はふと城下の光景に目を奪われた。街を見下ろすようにあるこの公園には、かつて城があったという。
     天守閣があれば、きっと良い眺めだっただろう。
     ぼんやりと城下の夜景を眺めている真名に、越坂・夏海(残炎・d12717)が声を掛ける。二度目でふ、と真名が振り返ってゆるりと歩き出した。
     一つ、二つ……ランタンを邪魔にならないように設置し、灯り代わりにする。街灯がある為、ランタンは無くても良かったかもしれない。
    「街灯だけでは心許ないと思って持ってきたんですが」
    「いや、公園の街灯ってそんな明るくないし、丁度良かったんじゃないか?」
     ポンと真名の肩を叩き、夏海が他の仲間の所へと歩いて行く。
     灰音・メル(悪食カタルシス・d00089)と黒鶫・里桜(おねえちゃんらぶ!・d05408)は紅葉の木から少し離れた所に立っており、出現に備えている。今回囮になるのは彼女達である為、作戦の打ち合わせは念入りに行った。
     本当はこういった話に耳を傾けてしまいがちな夏海であったが、皆の手前……特に戦闘中はしっかりしなければと気を張っていた。
    「ああ、これがその枯れ木かぁ」
     シーゼル・レイフレア(月穿つ鮫の牙・d09717)が枯れ木を見て呟いた。
     都市伝説を出現させないよう、シーゼルも近づかないようにしている。
    「ずっと枯れたままなのに、けっこう倒れずに保つもんなんだな」
    「お、そういやそうだな。……もしかして、まだ根っこは生きてんのかな」
     夏海とシーゼルは、なんだか少し期待が持てるような気がして、二人して枯れ木を見つめた。戦いが終わったら、ゆっくり見て見たい。
     時計を確認した樹・由乃(草思草愛・d12219)が皆に時刻を告げると、それぞれ枯れ木の周囲で配置についた。まだ生きてるのかもしれない……そんな話を聞いた由乃は、興味深げに枯れ木をじっと見つめている。
     この枯れ木で何が起こったのか、彼女なりに推察しているのかもしれない。
    「……本当に、人は何かに縛られる事が多いよな」
     ぽつりと言った勾月・静樹(夜纏・d17431)の声。
     それが何の事を言ったのか、静樹はそれきり黙ってしまったから分からない。由乃は振り返って静樹を見たが、ガンナイフを握り締めて枯れ木を見据えた。
     公園内は静寂に包まれ、ガイスト・インビジビリティ(亡霊・d02915)が静かに殺気を放った周囲から人を遠ざける。誰かがやって来るような様子はなかったが、戦闘中に来られてもやっかいである。
    「準備、完了」
     ガイストがそう言うと、里桜は紅葉の木の傍にメルとともに向かった。
     里桜とメルは同じキャンパス同士。ここに来るまでに、少しだけキャンパスの話題を出したら、二つ年上のメルと和やかに話が出来た。
     それに、里桜の霊犬も灰音という名である。
    「身分差ある恋物語って、みんな好きよね」
    「ロマンチックだもの。禁じられた愛、ってやつ?」
     メルがそう返すと、里桜は首をかしげて黙り込んだ。
     禁じられていないより、禁じられている方がいいの?
    「……りおにはまだ、むずかしいのよ」
     里桜は少し頼りなげな声で言うと、じっと枯れ木を見つめた。暗がりにぽつりと落ちた影は二つ、一つは月下に輝く刃をしっかりと握って、小豆色の袴をはいている。
     もう一人は、彼女の背に隠れるようにして気弱そうな態度の書生が。
    「あなたは、どう思う?」
     二人を見ながら、里桜が問いかける。
     令嬢が柄に手を掛けると、メルは里桜を背に押しやるようにして笑顔を浮かべた。
    「Guten Abend! 本日は御日柄もよ……って危ないわね」
     突如斬りかかってきた令嬢に、挨拶をする間もなくメルが飛び退いた。刃はメルの服に裂け目を残してピタリと静止した。
     鋭い返しで突いてきた令嬢の動きに、ガイストのビハインド、ピリオドが割って入る。
     守りが間に合わず、ピリオドの腕を令嬢の刃が切り裂いた。
    「下がってて」
     メルが言うと、里桜ははっと周囲を見まわした。既に殺界形成はガイストが済ませてくれているようだ。
     夏海は続けて、サウンドシャッターで音を遮断する。
    「よし、これで安心だな」
    「うん。……ゆっくりおはなしが、できるのよ」
     ほっと息をつき、里桜がロッドを握り締めた。

     飛び込み、流れるような動きと軽やかな足捌きで踏み込む令嬢の剣は、速く力強い。やや後ろから影を使って攻撃するガイストは、ピリオドに支援をさせながら令嬢の背後へと攻撃の手を向けていた。
     彼女は背中を信じているのか?
     それとも、攻撃に専念しているのか。
    「影刃、射出」
     淡々と攻撃するガイストに合わせるピリオドも、他の前衛を守るように動きつつ攻撃に転じる。書生は令嬢より少し遅れ、攻撃してきたガイストへと攻撃の手を向ける。
     彼女の動きの邪魔にならぬよう、一歩遅れて動く書生の刃は決して速くはなく、ガイストにも視認する事は出来た。
     だがやはりそれは都市伝説である存在、伝わる衝撃とエネルギーは重い。
     横凪ぎに払った書生の刃で、ガイストの手にジィンと痺れが伝わる。言葉は発しないが、ただ書生は息切れのような息を吐いていた。
    「防護、割断」
    「こっちを向きなさい書生さん」
     魔導書を開いたメルが、書生に原罪の紋章を刻み込む。紋章の力か、書生は落ちつかない様子であった。
     切っ先を迷わせた結果、すうっとメルの方へと突っ込む。
     総攻撃に転じていた最中、メル達前衛の仲間へのガードがやや緩んでいた。灰音が間に合わず、メルに刃が突き刺さる。
    「くっ……」
    「気をつけてください、ご令嬢が来ます」
     静樹の声でメルがハッと顔を上げると、令嬢の顔が間近にあった。するりと懐に入り込んだ刃が、撫でるようにメルを切り上げる。
     刃を返し、更に一撃。
     笑みすら浮かべた令嬢は、メルが立ち上がると飛び退いて剣を構え直した。適度な距離を保ち、そして飛び込み斬り付ける。
    「書生に攻撃を割きすぎました」
     静樹が眉を寄せ、メルを抱えるようにして気を送り込む。一度立ったメルであったが、やはり傷は深い。
     傍にいた静樹の手をかすめるようにして、令嬢の刃はメルだけを貫いた。
     その鮮やかな剣捌きに、静樹が目を見張る。
    「いけません、下げてください!」
     静樹が後ろに声を掛けると、狙いを定めていた里桜がメルの腕にしがみついた。引きずるようにして、令嬢の攻撃圏内から引きはがす里桜。
     意識は朦朧としており、戦闘出来る状態にはなかった。
    「メルちゃん、しっかりするの」
    「何……してるの、戦いな…さい」
     重傷を負いながらもそう声を掛けたメルに頷き、里桜は立ち上がる。
    「灰音、もう少しだけあの人を抑えておいてほしいの。……難しいけど、おねがい」
     書生より強い令嬢に対して、灰音だけというのは心許ない。それでも、今弱っている書生を先に倒さねばと里桜は続けて影を放った。
     必死に食い下がる灰音を見ながら、里桜は呟いた。
    「おねえさんにはいま、何が見えているの……?」
     ただひたすら、剣を振るうこの女性には、紅葉は見えているのだろうか。思いを押さえ、里桜は書生へと攻撃を続行した。

     令嬢の薙ぎ払いをかろうじてシールドで受け止め、夏海は見まわした。周囲を真名の霧が覆い、少しずつ傷の痛みを和らげてくれている。
     それに、書生を倒すまでの間霧が力になってくれる。
    「……それはいいが」
     夏海はメルに変わりシールドを書生に叩きつけて気を惹くが、そのかわり今度は自分が集中砲火を喰らう可能性がある。
     令嬢を引きはがしておかなければ、同じ轍を踏む事になる……と夏海は霊犬の灰音とピリオドに視線を配った。
    「頼んだぜ……」
     夏海が書生の元へと飛び込むと、真名は夏海の後ろにするりと周り、自らの腕を異形化させて令嬢へと爪を奮った。
     治癒、そして一転して攻撃と攻守を使い分ける真名。
    「この人は長く抑えておける程度の力ではありません、倒すなら今です」
    「……ああ」
     夏海の叩き込んだガトリングを弾きながら、書生の足が止まる。背後に真名がいるのを、気配で感じる……真名の治癒の手が足りなければ、夏海がやらねばと背後の仲間へ気を配った。
     迷いのある書生の動きは、仲間の攻撃のせいだけではあるまい。
     剣の腕も、令嬢に比べてそれほど上手いとも言いがたい。そこに何があったのか、夏海は気になったが口にする事はなかった。
     ただ、攻撃の手は止めずにひたすらガトリングガンを構える。
    「……っ、ごめんな…」
     夏海の声は、多分誰にも聞こえていない。
     ガンナイフから放った弾丸を叩き込む由乃が、ちらりと気付いたか気付かなかったから夏海を見て、それから銃口を下ろした。
     くずれおちた書生の姿が、幻のように揺らめいて消えていく。
     呼吸を整え、由乃がガンナイフを構え直す。
    「桜は死体で美しく咲くといいますが、紅葉も美しく咲くのでしょうかね」
     凛とした声で、由乃が言う。
     死体で咲く花ってのは、ろくな花じゃないと夏海は思ったが、由乃はけろりとした顔で言っていた。
     冷静に構え直し、そして倒れた書生の事を思う様子も見せずに令嬢に向き直った。
    「まさに、獅子奮迅の働きですね」
     剣を構えた令嬢は、はなから書生などいなかったかのように爛々とした目で……否、狂喜の目でこちらを見ている。
     飛びかかってきた令嬢の刃をピリオドが受けるも、耐えきれずに崩れ落ちる。ガイストはそれを無言で見送り、令嬢の元へと飛び込むように駆け出した。
     死角に回り込もうとするガイストの動きを捕らえ、剣で斬り付け威圧する令嬢。次に向けられた由乃のガンナイフの切っ先を見て、横に躱す。
     すうっと伸びた細い腕は、切っ先を由乃の体に差し込む。吸い込まれるように、剣は由乃のみぞおちを貫いた。
    「回復はお任せしておりますから」
     由乃は真名が反応したのに気付き、銃床で令嬢を殴りつけた。刃は食い込み、痛みが由乃の腹部をギリギリ締め付ける。
     だが、目は令嬢と同じように爛々と光っている。
    「……あなたも、早く追いかけて差し上げなさい」
     飛び退きながら刃を引きはがすと、その前へ静樹が割って入り光の刃を放った。背に庇うようにしながら刃を放つ静樹の意を汲み、由乃が真名を振り返る。
     既に闇の力を使って由乃の傷を抑えてくれていたが、由乃も傷を抑えてじっと予言者の瞳で傷を見つめた。
     痛みが和らぎ、由乃は目を細めた。
    「僕、思ったんです」
     傷を癒しながら、真名が話してくれた。
    「紅葉の赤は、血を思い起こすのだと思います。人の死体から養分を吸い取る桜より、ずっと」
     人の血を吸い、その赤を吸い取る。
     枯れ木はそれが嫌だから、ずっと葉を付けないのかもしれませんね。
     真名の話を聞いたシーゼルが、にやりと笑って剣を構えた。エモノを引き裂くチェーンソーの刃が、唸りをあげて令嬢を狙う。
    「人を殺して蘇る木より、よっぽどいい話じゃねーか。血が嫌いで枯れた木か」
     シーゼルは静樹の光刃が引き裂いた傷を狙い、剣を叩き込んだ。容赦なく引き裂くチェーンソーとモーター音が、令嬢の集中力を乱す。
     耳障りな音を振り払うように、令嬢がシーゼルに斬りかかる。
     鋭く正確な動きはシーゼルの回避を許さず、切り裂いた。ただシーゼルは彼女には何も言わず、チェーンソーをぶん回す。
     引き裂かれた体のまま、彼女はすうっと居合いの構えを取った。
     ハッと静樹が顔を上げ、サイキックソードを奮う。
    「来ますよ!」
     周囲を薙ぎ払う令嬢の刃が、竜巻のように何もかも引き裂いていく。シーゼルは手を切り裂かれながら、必死に剣を構える手に力を入れた。
     体はフラつくが、まだ戦える。
    「……それじゃ、終わりにしよう」
     夏海がぽつりと静かに言い、シーゼルは笑って言う。
    「ああ、行くぜ」
     勢いをつけて剣を叩きつけたシーゼルに倣い、夏海も景気よくガトリングガンをぶちまける。悲しい逸話だけれど、自分達まで悲しい顔をしていては駄目だ。
     だから、シーゼルも夏海も悲しい顔はせずに力を放った。

     元の通りの静寂が戻った。
     さくりと乾いた土を踏んで歩き、シーゼルが枯れ木の傍へと歩み寄った。夏海が後ろについて枯れ木の傍にいくと、シーゼルは笑みを消してじっと枯れ木を見上げた。
    「身分が違えど、思いがあれば……とは思うんだがなぁ」
    「……」
     好きな気持ちをごまかしたりは出来ない。
     夏海は無言で、枯れた木を見る。
     そこに残された残像は、悲しみしか記録してはいないように見えて、静樹がひとつ溜息をついた。ただそれが単なる残像だと分かって居ても。
    「都市伝説にも感情がある。この前例は十分にあります」
     ぽつりと由乃が言うと、視線が彼女に集中した。
     それがハッキリとした感情だとか、それは灼滅者とて分からない。ただ感情に見える何かを現しているように見える事はある、と。
     それを、由乃は感情と表現した。
    「つまり、この方々にも感情がある。何を想ってここにとどまっていたんでしょうね」
    「ああ、何だか聞きたくない話でしたね」
     静樹が軽く笑いながら返すと、由乃は小さくそうでしょうねと頷いた。笑うしかない状況だから笑っただけで、静樹もあまり嬉しくない話である。
     すると、意識を失っていたメルが目を開いて体を起こした。介抱していた里桜の傍にいた灰音が、ペロリとメルの頬を舐める。
    「……ちょ、くすぐったいわね。……そういえば……あなた、何か話してなかった?」
     メルが問いかけたのは、真名であった。
     真名は携帯に残した記録を確認しながら、口を開いて話し始めた。少しだけ、携帯や交番などで道中聞いた話である。
     それは古いお話。
    「結局書生さんは立派な軍人さんになって、ご令嬢と幸せに過ごした……という噂が聞けました。よかったですね」
    「なんだ、それを早く聞きたかったぜ。……あの書生さんが軍人として立派にやっていけたのか、ちょいと心配だけどな」
    「大丈夫なのよ。あのおねえさんが前衛ってことは、書生さんはお尻に敷かれてたのよ。軍人さんになっても、おねえさんと居られれば幸せだったの」
     里桜は笑顔でシーゼルに言った。
     尻に敷かれたとサラリとハッキリ里桜は言っていたが、その話に思わず静樹も笑みを零した。彼の傍でぽつりと立って話を聞いていたガイストが、ふと眼下に視線を向ける。
    「夜景、絶景」
     ガイストの眼下には、キラキラと輝く現在の城下町が広がっていた。そこには、夜にしか咲かない現代の紅葉の花、街の灯りが咲いている。

    作者:立川司郎 重傷:灰音・メル(ヴィーゲンリート・d00089) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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