美醜の階級

    作者:蔦草正果

     身支度を整えてベッドに入ると、麗美はその機械を持ち上げて眺めた。
     サイズにして新書判程度。今にも点灯しそうなランプがくっついている。コードの類は見当たらず、丁度、親戚のお兄さんが持っていた古き良き携帯ゲームと似ていた。骨董品みたいだ。
    「本当に強くなれるのかな……」
     抱き心地も良くなさそうだ。これに関して言えば胸の上に石を載せるのとどう違うのか。
     迷った結果、学生鞄に入れていた音楽プレーヤーを引っ張り出し、イヤホンを耳に嵌めた。操作ひとつで眠りを誘う甘い囁き声が流れてくる。
    「……はぁ。やっぱり二次元はしあわせ」
     ため息をついて眼鏡を外し、布団の中で目を閉じた。

     夢の中は新鮮な驚きと愉悦に満ちた空間だった。
     意思を持ったスライム。獰猛な狼や猪。人間型でありながら見るに耐えない醜い生き物。それらの群れを屠り続けるほど、えも言われぬ万能感と優越感が自分を満たしていく。
     今の私はなんて美しいんだろう。
     握る手諸共血塗れた日本刀が放つ妖しい光をうっとりと眺める。
     満足すると、薄い笑みを浮かべ次の敵へと振り返った。――目を瞠る。
    「……ひっ。や、やめて。やめて」
     悲鳴混じりの声が零れた。
    「み、見ないで。見ないでえぇぇ! 見ないでください!」
     彼女の前に立っていたのは、煌めかしいまでの美貌を持った騎士の青年だった。
     眩しすぎるほどの端正な顔立ちにある冷徹な瞳。直視出来ない。
     すらりとロングソードを抜く所作、その軌道さえ美しい。
     持っている得物の存在さえ忘れ、彼女は涙目で一目散に逃げ出した。
    「ど、ど、ど、どうせ私を蔑んでるんでしょ……! これだからイケメンなんて嫌いなのよ……!」


    「六六六人衆は博多にご執心なのか。どうか知らんが、新たな六六六人衆の育成計画に身を乗り出したようだ」
     教室に集まった皆を見て、曽良嶺・玄途(高校生エクスブレイン・dn0156)はそう切り出した。
    「ヤツらはシャドウの協力を得て謎の機械を一般人に渡している。とはいえ無作為ではないようだ、渡すのは"HKT六六六人衆の研修生"と銘打たれた一般人に限られる。その機械を受け取った人間達は悪夢を見るようになるのだと」
     悪夢の内容は殺人ゲーム。
     ヴァーチャルな予行演習。人を殺したことのない人のための、やさしい睡眠学習プログラム。
    「悪夢を完遂したものが、晴れて研修生から正規の六六六人衆になるのだろう。……そのゲームの途中で戦意喪失した人間を守り、現れた敵を撃破する、のが今回の任務の芯だ」
     躊躇する六六六人衆研修生。名は望月・麗美(もちづき・れいみ)。
     敵の造形は夢の中とは思えぬほどのリアリティを持ち、"撃破"などという生易しい表現では拭い切れない感触を持つという。特徴といえばその程度で、苦戦はしないだろう、と曽良嶺は続ける。
    「――が。夢の中のゲームで乱入してきた者に対し『都合のいい助っ人キャラ』だと思うのも無理はないのかもしれない。まばたきで終わるような簡単な撃破は『ゲームの仕様』だと思われてしまう可能性が高い。そうなると阻止どころか、却って攻略が勢いづいてしまうだろう」
     敵を倒す前に、彼女が戦意喪失している状態であることを踏まえて、このゲームをやめるよう説得する。可能であれば二度と六六六人衆の誘惑に乗らないように更生させることが出来れば。
     それこそが最優先事項。
     少し間を置いて、エクスブレインがこほんと咳払いをした。
    「……望月は、いわゆる三次元の美形が嫌いなようだ。恐怖と言っていいのだろうな。見下されているような強い不安を無根拠に感じるのだという。殺意に変わるのもそう遅くはないだろうが、――嫌いは好きの裏返しと、ほら、言うだろう」
     微妙な言い淀みがそこにある。何度か浅く首をひねり。
    「コンプレックスも大方その辺りにあるようだ。美醜に関する恐怖症を克服出来れば、六六六人衆へ向かうような歪んだ道も修正出来るんじゃないか。……匙加減やら作戦やらは前線に一任する。あまり刺激しすぎるなよ」
     そそくさと視線ごと提案から逃れ、すかさず続けた。
    「で、だ。望月を目覚めさせると、それを六六六人衆が察知し、ソウルボード内に現れる可能性が僅かながらある。戦闘後も警戒は怠るな。当然ながら対峙する必要はない。――以上、解散」


    参加者
    羽嶋・草灯(三千世界の鳥を殺し・d00483)
    由井・京夜(道化の笑顔・d01650)
    神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)
    佐和・夏槻(物好きな探求者・d06066)
    上木・ミキ(ー・d08258)
    勅使河原・幸乃(鳥籠姫・d14334)
    王子・サトル(無礼者・d20841)
    ホテルス・アムレティア(騎士たらんとする者・d20988)

    ■リプレイ

    ●境界線のあちらとこちら
     眩しいいきものが大挙して追いかけてくる。抜き身の剣を携えてどこまでもどこまでも。
     高じた恐怖に悲鳴を上げかけたHKT六六六候補生は、自分の足がもつれ、転ぶまでを自覚した。
     咄嗟に振り仰ぐ。
    「あ、あ、あ、……」
     振り上げられた騎士の剣。
     駄目だこれは。美しいものが下した判断に、醜い私が逆らえるはずがない。
     硬く目を瞑った。
     ――終わりだ。
    「はいよぉぉおおおおシルバぁああああああ!!」
     高らかな掛け声が戦場にこだました。馬の足音など聴こえない。
     動揺して目を開けた麗美が見たものは、なんだかよくわからないいきもの(※ナノナノ)を背中にひっつけて美形の騎士の横っ面に今まさにドロップキックをかますイケメン(推定)――王子・サトル(無礼者・d20841)の姿だった。
     したっ、と着地して豊かな髪を掻き上げたサトルは、完璧なスマイルをもって麗美に手を差し伸べる。
    「大丈」
     麗美は逃げ出した!
    「ちょっ待って! 王子何も言ってないじゃん! まださわりだけじゃん!」
    「ごごごごっごごごごめんなさいいい!!」
     壊れかけの洗濯機のような声を上げながら逃走する麗美の行く手に、羽嶋・草灯(三千世界の鳥を殺し・d00483)が立ち塞がる。
     きゅっ、と掛かった急ブレーキに、受け止めようと持ち上げていた両腕を下ろした。
     由井・京夜(道化の笑顔・d01650)が麗美の再びの逃走を阻止するために、後方から袖へと手を伸ばし、掴む。
    「!?」
    「はじめまして、キミが望月ちゃんだね」
     振り払おうとする動きさえ見るだにいっぱいいっぱいで、
    「京夜。それ倒れると思うわよ」
     横合いからやたら居丈高に言った勅使河原・幸乃(鳥籠姫・d14334)の言葉は案外外れてもいなかった。来た方向にはマテリアルロッドで殴り倒されたばかりの騎士が横たわっている。
     美形許容量限界でその場に座り込もうとした麗美を草灯が支えると、もはや綿の抜けたぬいぐるみのような有り様になった。
    「我輩達はあなたを止めに来ました。麗美殿」
     新たにやってきた紛うことなき美形、ことホテルス・アムレティア(騎士たらんとする者・d20988)が極めて穏やかに告げるも、ひっ、と上がった小さい悲鳴にその発言の返答は含まれていないだろう。萎縮している。
    「怖がらないで。僕達は君を傷つけたりはしない。……君の悪夢とその先を止めに来たよ」
    「と、止めに……来た? ……お助けキャラ、みたいな……?」
    「呆れた。夢だけじゃなく頭の中もゲームなのね」
     幸乃が腰に手を当てながら息をついてみせると、麗美はそっと顔を伏せ、ごめんなさい、とか細い声で謝罪する。
    「あたし達はあなたを助けに来たの。分かる? こんな野蛮なゲームで鍛えて強くなってしまって、どんどんゴツくて不細工になってしまうかもしれないあなたをね?」
     くすくすと笑いながら前線へ戻る幸乃。それを半ば呆然と聞いていた麗美は、次第に顔を赤くして首を何度も横に振る。
    「じゃあ、あなた達はなんだっていうの? やっぱり別の生き物なの? 私とは違う、って……?」
    「麗美ちゃん、聞いて。僕は君の顔は可愛らしいと思――」
    「やめて、そんなの聞きたくない! どうせ馬鹿にしてるくせに……!」
     草灯の内心の呆れ、持ち上げて説得しようとする目論見が見透かされているのか、或いは麗美の卑屈さがそうさせるのか。半ば悲鳴を上げてもがく彼女はしかし、灼滅者の腕からは逃れられない。落ち着いたかと思えば涙目で息を荒らげている。
    「止める説得は、周囲の状況を冷静に見れるようになってから、かな」
     京夜が戦場を振り返る。防戦のために展開する仲間達のその向こう。
     途切れる気配の見えない騎士の群れが、皆に――否、この夢の主へ向けて殺到してきていた。

    ●胸中の刃と花
    「――まあ、美形で人生が楽しそうで順風満帆な人を見るとイラっと来ますよね」
     後方で高らかに上がった拒絶を耳にした上木・ミキ(ー・d08258)は、前線に殺到してきた騎士のロングソードをウロボロスブレイドで弾き、いなしながらそうごちた。雑に蹴り転がして最後の一手だけを止める。単純過ぎる作業。
     ちらりと前方に目を遣る。折良くサトルがいい加減泣き真似を止め、立ち上がりざまにチェーンソー剣で薙ぎ払いこちらへ退いてくるところだった。
    「引き止められなかったなー。王子の何がいけなかったのかなー」
    「泣いてても美形なところとかじゃないですか」
    「……誰も、最初から、綺麗な人なんて、いません、です」
     攻撃を防ぎながら神宮時・蒼(大地に咲く旋律・d03337)がぽつりと呟くと、
    「そうなんだよ! そうなんだよ。王子、ちょっともう一回行ってくる!」
     言うなり前線を離脱したサトルに代わり、幸乃と京夜が後方から飛び出す。
    「シャドウと協力してわざわざ機械作ったり、地域限定したり、何でこんな面倒なことをするんだか」
    「……研修生、ですか……。六六六人衆も、不思議な事を、する、ものですね……」
     京夜の呟きを拾い上げた蒼はそう応えたあと、ふる、と小さく首を横に振って。
    「ですが……目先の、脅威は、取り除いて、置かないと……出来れば、更生、していただきたい……ですね」
    「彼女のためにもね。ああ、もう、グロイの苦手なんだけどっ」
     これまで見てきたソウルボードと比べても屈指の出来をしているかもしれない、と京夜は思う。シールドで弾いた剣の重さも、敵を退けるためにした最低限の反撃の手応えも、全く大した速度を感じないけれど、ただひたすらに生々しい。恐らくこの身体を糸で切り裂いたら、――まさしく想像通りなのだろう。
    「美貌も醜貌も、皮一枚では変わらないって」
     仲間の思考を読んだかのような佐和・夏槻(物好きな探求者・d06066)の呟きは、どこか淡々として、分析めいた気配をまとっていた。防壁を突き抜けていこうとする騎士の足を影業で絡め取り、放り投げる。
    「それでも彼女は攻撃出来なかった。美しいものが強くて、醜いものが弱いと、そう思ってるのかもしれない」
    「ならこちらがこのまま薙ぎ払って終い、はやっぱりよろしくないですね」
     ――ミキがそう相槌を打った一方で。
    「おいーっす。王子だよ! お近づきの印にこれあげる!」
     草灯に取り押さえられている麗美。その項垂れた顔の眼前へ、サトルが二枚の紙を差し出した。
     無気力無抵抗状態でいた彼女の目が、赤丸の乱舞を映したあとそっと持ち上がる。
    「これ、は……?」
    「これはひどい」
    「ひどいよね」
     草灯の呟きに対し、額に手を当てて他人事のように応じるサトル。
     ホテルスがそっと言い添える。
    「――貴方と同じ人間なんです。アニメを見たり本を読んだり、友達と遊びに行ったりする他、このように惨憺たる成績を打ち出してみたりもする」
    「で、でも。でも。私は醜いから、貴方がたと違うの! もっと頑張らなきゃならないしッ、こんな成績を取っても許されるのはやっぱり」
    「許す許さないなど誰が決めるのです。我輩が貴方を蔑んでいると思われるのでしたら我輩は其れを否定致しましょう。……蔑まれていると感じられておられるならば、其れは御身自身が自分を醜いと思い、蔑まれておられる故なのです」
    「……ッ」
     硬直した彼女は、今度は怒りとはまた異なる感情で頬を熱く染め上げていた。視線がまた足元へ落ちる。
     偽れない心の中。彼女には自分がとても卑小なものに見えているのかもしれない、と、草灯は不思議なものを見る目で眺めている。
    「蔑む、か。……心の持ち様で見え方なんて変わってしまうしね。卑下したり、見た目に惑わされて見下す姿の方が余程見苦しい」
    「そもそもさぁ。いい奴かヤな奴か顔だけでわかるわけ? そしたら最初から人の良し悪しって決まってるってことじゃん。ケンカ売ってんの?」
     テスト用紙を服の中にしまい込みながら、サトルがどこか傷ついた風に続ける。
    「王子のこと、やな奴だって決めつけないで。ちゃんと王子のことを見てよ。それに、……自分のことも。グロいモンスターを倒して悦に浸って、顔だけで中身のないあんなのにビビッてる、今のもっちはホントに美人?」
     少女は淡い瞬きをした。
     ――その時、気付いたのかもしれない。
     助けにきたという人々の堂々たる居住まいと、今こうして惨めに怯えている自分との違いに。それが俯いている今でさえ明確に"見えて"いる事実に。
     灼滅者達が平然と防戦の壁をキープし続ける中、ミキがふらっと陣を抜けて下がる。
    「問いましょう。なぜ力が欲しいのか。と思いましたがもう答えは出ているようですね。蔑まれたくない、と」
    「……」
    「しかしまあ、力を手に入れても貴方は思い描くキャラクターにはなれませんよ。そこにいるのは力を手に入れただけの麗美さんです。貴方が美形を異物のように扱うのと同様、力を手に入れて異物となった貴方がいるだけ。おやそうするとおかしいですね。あなたはまた、異物として蔑まれることになりそうですか」
     がくり、と麗美が膝をついた。支えていた草灯は此度は素直に手を離す。
    「……じゃあ、私、どうすれば……いいの?」
    「簡単なことだよ。日本刀ではなく、花を持つべきという話だ」
    「おい皆さん化粧の仕方とか肌の手入れの方法とか麗美さんに教えてあげてくださいっていうか私も美しくなってチヤホヤされたいので教えろくださいお願いします」
    「後でね!」
     前線を見渡して高らかな声で言い切ったミキに、いよいよと武器を振り回す幸乃が弾けるような声で応える。
     エンジェリックボイスを紡いでいた蒼が、ほんの少し笑うように柔い声で続けた。
    「……人は、誰でも、綺麗になれます、です。……なので、お姉さん、も、頑張れば、とっても、美人さんに、なれると、思う、のです」

    ●戦場の敵と味方
     誰が明言したともなく、けれど確かに移り変わった空気は、それ以上に速やかに戦場の景色を変えた。
     夏槻が巧妙に広範に張り巡らせた結界糸は、抑制力どころか集団の多くへ永遠の行動阻止を果たした。取りこぼした数体については京夜が薄目を開けながら封縛糸で確実に止めを刺していく。
    「……奈落へ……堕ちろ……です」
     癒しの歌声から一転、ぽつりと呟いた蒼の腕が異形化し、騎士達を十把一絡げで薙ぎ払う。いやに生々しい重みと感触に少女は少しだけ眉を寄せて、ふるり、と首を振った。
    「ズッタズタにしてやんよ!」
     前線の先へ飛び込んだ幸乃とサトル、それを追って駆けた草灯の鏖殺領域が戦場を均した。
     負った傷などホテルスが易易とリカバリをしてしまう。常に全快と言って差し支えない。
     それをも縫って来る雑兵など存在しなかった。
     ポケットに手を突っ込んで立ち位置ばかりは護衛のミキが、顎をしゃくってみせる。
    「見てください。あれが特別です。結構しんどいですよ」
    「……」
     敵数がもはや数えて足りる頃合と見計らい、蒼が一線から退いた。小走りに駆けてくる。
    「……全部、倒しきる前に、……お姉さん」
    「な、なに……?」
    「……眼鏡をコンタクトに変えたり、服装の印象を変えたりするだけでも、……人は違って見えるそうですよ」
     ぼんやりとした中でもいささかの真剣さを滲ませて、
    「……見た目が明るくなれば、……性格も明るくなります」
    「……」
    「刀ではなく花。早速と言ってはなんですが、貴方にこれを」
     回復の手を一旦止めたホテルスが、跪き、胸元から純白の花を差し出した。
    「クリスマスローズ。この花の花言葉は『不安を取り除いてください』。――どうか、そのお心を安らかになさってください」
     受け取るまで向けられ続ける涼しげで真摯な眼差しを突っぱねることなどやはり出来ず、麗美は恐る恐ると手を伸ばす。
     夢の中だというのに、花の香りが鼻先で淡くひらいた気がした。

    ●違わないあなたとわたし
     仮想空間に薄れが見られる。
     ならばこの馬鹿げたゲームの場はじきに終わりを迎えるのだろう。そう思い、夏槻は死屍累々を横目に麗美へと駆け寄った。
    「大丈夫?」
    「……うん」
    「なんだかあのゲームみたいだった。リアリティは違うけど、なんだっけほら。知ってる?」
    「……、……ば、ばっさばっさ敵を切り倒していく、あれ?」
     麗美がタイトルを零すと、夏槻はそうだと素直に感心した風に反応を示した。
    「詳しいね。お薦めとかってあるのかな」
     束の間呆けたように言葉を聞いていた彼女は、こく、と息を飲んで顔を上げる。
    「……うん。あ、あのね、そのシリーズだと――」
     その遣り取りを眺めていた京夜が曖昧に笑う。
    「当然なんだけど、怯えてる時より全然いい顔してるよね」
    「そ。だから中身のほうが大事だって言ったよ」
     振り返ると、草灯は静まり返った戦場へいまだに目を配っていた。この夢に潜り込む直前に外した眼鏡もそのままだ。
     ミキがくいと顎を上げて一同に言い遣る。
    「鬼の居ぬ間になんとやらですよ。さっさとトンズラこきますよ」
    「善処もしたものね。後から振り返ってみたら何故こんなに追い詰められてたのか、笑っちゃうくらいの話になるはずだわ」
    「……問題ない、と、ボクは信じる、です」
    「少なくともポン刀片手に暴れるのはなんか違う、くらいには目覚めてくれたんじゃないですか」
     さて、じゃあ、帰りましょう。刃ではなく花となるための世界へ。
     夏槻が差し出した手を、ためらいがちながらでも彼女は確かに取って。

     何もかも消えたあと、柔らかな花の香が夢の中に吹いたのは――きっと幻想ではないだろう。

    作者:蔦草正果 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月5日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 8
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