老紳士翁縁からの招待状

    作者:月見月

    ●いま再びの招待状
     秋風吹き荒む伊豆諸島。肌寒い海風を感じながら、八人の灼滅者が砂浜を歩いていた。彼等の視線の先には、小さな孤島があった。一見何の変哲もなさそうな島だが、現実は違う。
     ブレイズゲート。一見すれば何の変哲もない場所だが、時に常識では考えられぬ事が起き、ダークネスやその眷属が闊歩し幾度も蘇る異界。彼等はこの突如として出現したブレイズゲートの警戒を行っていたのだ。
    「ブレイズゲート化しているってのはあの島かな?」
    「ええ、そうみたいね。確か、分割存在化した六六六人衆が陣取っているみたい」
     灼滅者達は手元の紙に目を落とす。そこには以前ブレイズゲートに踏み込んだ灼滅者達の報告が記されていた。
    「罠や眷属を仕掛けた部屋を嫌が応にも通らせ、自分は高みの見物か……絡め手好きな手合いかねぇ……あん?」
     ぺらぺらと報告書を振る男が、何かに気付き動きを止めた。その様子に、傍らにいた少女が声を掛ける。
    「どうしたんですか?」
    「いや、これがよぉ……」
     尋ねられた男が小さな紙片を差し出す。それは黒地に金の箔で文字が刻まれたチケットだった。勿論、彼は先ほどまでそんな物は持っていなかった。その表面には『ミステリーツアーへの招待状』の文字が。
    「これって……!?」
    「どうやら、ブレイズゲートのダークネスが復活したみたいね」
     チケットを中心に集まる灼滅者達。以前の例では、このチケットの裏にツアーについての内容が書いてあるとの事だった。果たして、そこにはこんな文面が綴られていた。
    『一階にあるのは使用人室と食堂。使用人室では当館のマスコット、猫のプラトーがのんびりくつろぎ皆様をお出迎えします。食堂では船旅に疲れた皆様のために、お食事を用意しておきます。どうか、お腹を空かせて訪れ下さい。二階に待つのは遊戯室と客室。遊戯室には当館一のダーツ名人が皆様と腕を競おうと、今か今かと待っております。客室に行くならご注意を。配線が古く、電球も息切れをしています。お足元にご注意を。私は最上階、館主の館にてお待ちしております。それでは是非とも探索をお楽しみ下さいませ。神秘的な館主 翁縁より』
     文面は以上である。
     洋館内部は六六六人衆によって所々が封鎖され、最上階へ向かうには、それぞれの階にある二つの部屋から一つを選んで突破してゆかねばならない、という点は以前と同じではあるが……。
    「文面が、前と変わってる?」
    「場所は同じですけど、内容が変化していますね……ブレイズゲートでは何が起きるか分かりません、これぐらい不思議ではないでしょう」
     青年の言葉に答えた少女の言葉を聞き、男は報告書をくしゃくしゃに丸め、後ろに放り投げる。
    「それじゃ、前の報告はあんまアテになんねぇってことか。面白れぇ、分かり切った所をなぞるんじゃつまんねぇからな」
    「ただ、ダークネスの能力はそんなに大きくは変わらないはずよ。まるっきり無駄という訳じゃないわ」
     そういうと、女性は男の捨てた紙を拾い上げる。
    「六六六人衆、序列第614位、翁縁。ステッキとオーラを駆使して戦う老紳士。分割存在とはいえ、決して侮って良い相手ではないわ」
     と女性がそう言ったとき、ざわりと一際大きな風が吹いた。ふと灼滅者達がそちらを振り向くと、そこには一艘の小型クルーザーがタラップを降ろして停止していた。ご丁寧にも『歓迎 ミステリーツアー参加者様ご一行』のノボリまで掲げられている。
    「ご丁寧にお出迎えってわけか」
    「招かれたからには、断るわけにはいかないね」
     互いに頷き会うと、タラップを踏みしめクルーザーへ乗り込む灼滅者達。彼等を乗せた船は、孤島に向けて動き出すのであった。


    参加者
    浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)
    浦波・仙花(壁の向こうの紅色・d02179)
    御柱・烈也(無駄に萌える熱血ヒーロー・d02322)
    九条・有栖(中学生シャドウハンター・d03134)
    木島・御凛(ハイメガキャノン・d03917)
    天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)
    久間・礼二(高校生フードファイター・d19787)
    オリシア・シエラ(桜花絢爛・d20189)

    ■リプレイ

    ●到着『まんぷく食堂武蔵丘支店』御一行
     秋の伊豆諸島に吹きすさぶ潮風を受けながら、クルーザーに揺られていた『まんぷく食堂武蔵丘支店』 の灼滅者たち。程なくして、彼らはブレイズゲートである島のひとつに到着し、地下にある船着場へ降ろされた。
    「ミステリーツアーへの招待状……何かキナ臭いよね」
     天樹・飛鳥(Ash To Ash・d05417)は手に黒紙のチケットを握りつつ、辺りを見渡す。招待状に書かれた内容は穏やかだが、額面どおりに受け取れるはずもない。
    「また面妖な招待状を頂いたものだ……出来れば肉料理とか、俺の大好物の甘いモノが出るといいのだが……」
     言っている内容は普通だが、その間も久間・礼二(高校生フードファイター・d19787)のお腹は鳴り続けているため、いろいろと台無しであった。
    「何が起こるか、わからないかぁ、厄介だけどやるしかないわね。 気合い入れていきましょか♪」
    「まぁ、気を抜かずにぱぱっと攻略しちゃいますか」
     九条・有栖(中学生シャドウハンター・d03134)の言葉に答えながら木島・御凛(ハイメガキャノン・d03917)は一階へと続く階段を上る。
    「さっさと最上階の爺をしばき倒そうぜ!」
     御柱・烈也(無駄に萌える熱血ヒーロー・d02322)を筆頭に、仲間達もそれに続いて食堂へと足を踏み入れるのであった。

    ●食堂:お腹を空かせて召し上がれ
    「取り敢えず、いきなり仕掛けてくるってことは無いみたいね」
     室内に足を踏み入れるや、弓を構え周囲を警戒する有栖。室内は中央に長テーブルと椅子、壁には絵画や時計の置かれた、シックな食堂だった。
    「あう~~……お腹すいたのです。肉じゃがが食べたいのです……ん?」
     招待状の言葉を律儀に守り、食事を抜いてきた浦波・仙花(壁の向こうの紅色・d02179)。お腹を押さえつつふらつく彼女の鼻腔を、ふと食欲をそそる香りが刺激した。砂糖醤油の懐かしい匂いがする方向を見やると……。
    「こいつは、すげぇな……」
     肉じゃがはもちろん、肉の丸焼きにステーキ、鰹の活け作りや洋食、紅茶やケーキ、果ては干し柿……多種多様なご馳走が、湯気を立てて食卓に鎮座していた。思わず烈也は、肉汁滴る骨付き肉に生唾を飲み込む。これだけみれば、非常に魅力的な状況なのだが。
    「好物を用意されているなんて、明らかに怪しい……っ!?」
     何時、何処でこちらの嗜好を知り得たのか。場所が場所なだけに、飛鳥もすぐには手を出そうとしなかった。が、視線はバターが溶けるほど熱されたレアステーキに引き寄せられている。
     そうして各人が手を出すかどうかを決めあぐねていた時、突如彼等の身体に異常が起こる。鳩尾辺りに強烈な違和感が起こり、思わず身体がくの字に曲がる。その感覚を彼等は職業柄、よく知っていた。
    「 『お腹を空かせて訪れ下さい』とは、こういう事だったか……!」
    「一口食べてみようかな、とは考えたけれど……間違いない、これは完全に罠!」
     それは、飢餓と言っても良いほどの空腹感だった。無理矢理にでも食べさせようという魂胆なのだろう。礼二と御凜が悔しげに歯がみするも、視線は嫌が応にもテーブルのティーセットに向いてしまう。香りから察するに茶葉はダージリン、ミルクも入っているか。
     理性と飢餓の間で苦しむ灼滅者達。その中でまず動いたのは浦波・梗香(フクロウの目を持つ女・d00839)だった。
    「食べ物を粗末にするな、と言いたい所だが……今はそんな事を言っている場合ではないか」
     ジャキリとバスターライフルを構える梗花。料理に何か仕掛けてある以上、そのままにする道理はない。僅かな罪悪感を覚えつつ引き金を引き、テーブルの上を薙ぎ払った。
    「空腹感は消えないけど、これで少しはマシには……ならないようね」
     煙が晴れると、テーブルは粉々に砕け散っていた。そして、その残骸の上には無数の料理が浮遊している。それらは瞬く間に集合し、人型となった。間違いない、あの料理は眷属の擬態だったのだ。
    「鰹のたたきに初挑戦です!」
     料理が眷属なのではないかと予想していた灼滅者達の立ち直りは早かった。真っ先に動いたのはオリシア・シエラ(桜花絢爛・d20189)だ。拳を握り込むや、鰹の刺身が寄り集まった場所へと叩き込んだ。
    「……たたきってのは、炙りながら作るんだよ」
     さらに飛鳥が魔導書から破壊の禁呪を放つ。その衝撃で各料理の結合がゆるみ始める。どうやら待ち伏せを主戦術としているため、耐久力は高くないらしい。
     だが敵もただ棒立ちになっている訳ではない。結合の緩んだ場所から、熱々の肉汁や出汁、沸騰した紅茶が溢れ出した。
    「皆は必ず守る! 特に女性陣は必ず、だ!」
     前へと一歩踏み出し、身体を張って盾となる礼二。火傷するほどの熱さに顔を顰めつつも耐え、返す刀で炎を宿した斬艦刀を頭部の干し柿へ叩き込んだ。その一撃によって爆発四散する料理眷属。部品となっていた料理は炭化し、消えていった。
    「ふぅ……違和感も消えましたね。眷属はまだしも、空腹感とは」
    「やっぱり、食べるならお姉ちゃんの料理が一番なのです」
     それと同時に元へ戻ったお腹をさすりつつ、有栖と仙花はほっと一息吐く。見ると、食堂の奥にはドアが生まれていた。あれが次の階への扉なのだろう。その後、室内に異常がないか確かめた一行は次の階層へと歩を進めるのであった。

    ●遊戯室:ダーツ勝負、その的は
     二階へと上がった灼滅者達の前に現れたのは、薄暗い照明の中に浮かぶ遊戯室だった。
    「ふむ、招待状にはダーツ名人が居るとのことだが」
     得物を手に、辺りを警戒する礼二。先ほどの食堂の件もあって、灼滅者達の警戒心も高い。故に、薄闇から飛び出してきたダーツにも対応できた。
    「っ、そこっ!」
     素早くダーツを叩き落とす御凜。全員が飛んできた方向へ武器を構えると、カッと照明が瞬いた。白い円の中に、ダーツを構えたタキシードが浮かび上がる。タキシード服の眷属、それがここの相手のようだった。
    「ダーツ名人って言うからダーツの勝負かと思えば……普通にダーツ勝負にしなかった事を後悔させてあげるわ」
    「射撃勝負なら負けないわ! 梗香さん、お願いします!」
     御凜の言葉に合わせながら、ずいと梗花を前に出す有栖。それに半ば呆れつつ、梗花はライフルを構える。
    「まぁ、そういうのも嫌いじゃないな」
     引き金が引かれると同時に、一条の光が闇を引き裂く。それはタキシードの肩を撃ち抜き、後ろにあった的の中央を穿つ。それを挑発と受け取ったのか、タキシードはダーツを手に襲いかかってきた。
    「抜き打ちの速さなら負けていないつもりだよ!」
     空を裂いてダーツが飛ぶのと、飛鳥が霊を払う結界を展開するのは同時。鋭い切っ先が飛鳥の腕を射抜き、結界がタキシードの身体を縛り上げる。
    「勝てない相手ではありませんが、用心に越したことはありません!」
    「動けないうちに……畳みかけるのです」
     この先には強敵が待ち受けている。故に僅かな怪我でも治そうと、オリシアは無数の光輪を飛鳥の腕へ纏わせ傷を癒す。一方では仙花が高速で回転させた鞭剣をタキシードへ叩きつける。タキシードもダーツを投げて防ごうとするも、身体の自由が効かないことも相まって、それらは次々と弾かれていった。荒れ狂う刃が服をズタボロにしてゆく。
    「俺たちはとっとと上の爺をぶっ潰さなきゃなんねぇんだ。道を開けて貰うぜ!」
     うねる刃の嵐を突き進み、烈也が巨大な刃を頭上に掲げる。対するタキシードは当たらなければ数で勝負とばかりに、無数のダーツを投擲する。烈也の肩や腕、脇腹を貫く短矢。頬を掠め、血が一筋流れようとも止まる様子はない。
    「お、らぁっ!」
     振り下ろされる強烈な一撃。それはすでにボロボロとなっていたタキシードを千々に引き裂いた。爆散するタキシードが、部屋中に舞う。それらは床に着くことなく灼滅されていった。
    「ふむ。まぁ、こんなところか」
    「ダーツ名人、的は人……ま、私達の敵じゃないわね」
     周囲を油断無く警戒する礼二と有栖。とりあえず、トラップが発動する気配はなかった。
    「取り敢えず、ここはこれで終わりのようですね……あら?」
     オリシアの視線の先には先ほど梗花が打ち抜いた的があった。戦闘を余波を受け崩れたのだろう、的が剥がれ落ちた場所から扉が覗いていた。
    「……何が幸いするか分からないな」 
     苦笑する梗花。彼等は残った的を剥がすと、最上階へと進むのであった。

    ●最上階:待ち受けるは神秘的な館主
     階段を登り、目の前に現れた扉を開けるとそこは最上階、館主の部屋だった。左右に本棚が並び、真正面に大きな執務机。そしてその奥の豪奢な椅子に、一人の老紳士が身を預けていた。
    「皆様、よくぞここまで辿り着きましたねぇ」
     笑みを浮かべる紳士。だが、灼滅者達は警戒を緩めない。目の前の男がダークネスであることを知っているからだ。
    「では改めて自己紹介を。私は六六六人衆が序列第614位、翁縁。貴方たちが死ぬまでの短い間ですが、覚えておいて頂けると幸いです」
     恭しく一礼をするも、その慇懃無礼さは隠せない。それに対し、御凜が前へ出て応える。
    「ミステリーツアーなんてふざけた招待ありがとうね。まぁ、予想通りミステリーそっちのけで完全に戦闘アトラクションだったわけだけど……」
     彼女はそこで言葉を一旦切ると、武器を構える。仲間達もそれに続き、各々の得物を手にした。
    「お礼と言っちゃなんだけど……二度とこんなふざけたツアーが組めないように全力でぶっ飛ばす!」
    「ふっふっふ、では試してみましょうか!」
     翁縁がステッキを手に机を飛び越えるのと、御凜が電撃を纏わせた拳を叩き込むのは同時だった。拳撃が翁縁の鳩尾を捉え、突き出されたステッキが御凜の脇腹を貫き、押し返す。その一瞬の攻防が、戦闘開始の合図となった。
    「食堂での料理の礼だ、たっぷり味わえ!」
     御凜を押し返した翁縁へ、礼二は腕を巨大な砲身へと変え、毒性の光線を放った。目映い光が翁縁を侵し、毒が蝕む。
    「この程度!」
    「おっと……まだまだいくよ?」
     体勢を立て直そうとした翁縁へ、今度は飛鳥が追撃をかける。魔を払う結界が翁縁の身体を縛り上げた。流れを取られ、老紳士は歯がみする。
    「料理にありつけなくて、お腹ぺこぺこ。早く倒して、みんなとご飯を食べに行くの!」
    「残念、眷属料理を食べていれば、それが最後の晩餐になったのですがねぇ!」
     相手の腱を狙い放たれる刃。鞭剣の円の軌道と太刀の直線的な動きが翁縁を狙う……が。
    「甘い、サッカリン糖よりも甘いですよぅ!」
    「きゃっ!」
     分割存在となり、弱体化していたとしてもダークネス。六六六人衆の序列持ちである。棒立ちで攻め立てられる程脆弱な存在ではない。全身のオーラを瞬間的に爆発させ迫る刃を吹き飛ばすと、返す刀で圧縮した衝撃波を放つ。吹き飛ばされた仙花へ、更に回転させたステッキを叩き込んだ。
    「ふ、ふふっ! そうです、それが私と対峙した者の在るべき姿ですよぉ!」
     勢いづき、更に攻撃を重ねようとする翁縁。だが、振り下ろされるステッキの前に人影が飛び込み、それを防いだ。
    「どうした、こんなもんかよ? 俺は強いからな、この程度全然堪えないぜ!」
    「貴様っ!?」 
     飛び込んだのは烈也だった。斬艦刀を盾に、ステッキを受け止めていた、そのままの体勢で思い切り息を吸い込むと、部屋をびりびりと響かせる大音声を発した。
    「シバリングッ!」
     ヒーローの力を帯びた声が翁縁に叩きつけられ、紳士は思わず腕を交差させそれを防ぐ。敵の攻撃が止まった隙を突き、灼滅者達は素早く体勢を立て直し始める。
    「バトンタッチだよ、仙花。無理せず一旦下がって」
    「ちょっと動かないでくださいね。癒しの矢、行きますよ!」
     一旦後方へ下がる仙花に声を掛けながら、姉の梗花が場所を入れ替わる。そうして下がった仙花へ有栖が狙いを付ける。放たれた矢は痛みではなく癒しを与え、傷口を塞いでいった。
    「おやおや、射撃がお得意では?」
    「たまには、接近戦も悪くはない」
     先端に銃剣を取り付け、梗花は狙撃銃を槍の如く振り回しながら翁縁へ白兵戦を仕掛ける。円を描く動きで繰り出される刃が、翁縁の服をズタズタにしてゆく。布地が飛び散り、純白の服に朱が滲む。
    「ふむ……これは少々、不味いですねぇ」
     たらりと、頬を汗が伝う翁縁。いかに強力なダークネスと言えども、灼滅者達の巧みな連携の前に徐々に追い詰められていた。
    「ですが、ここで取り乱すなどもってのほか。最後まで……私らしく、行かせて貰いますよぅ!」
     ぴしっと背筋を伸ばし、ステッキの石突きで床を叩く翁縁。その全身から迸るオーラを次々と凝縮させるや、雨あられと撃ち出し始める。灼滅者は勿論、床や天井、本棚に流れ弾が命中し、破壊してゆく。
    「さぁ、一人でも二人でも共に堕ちて貰いましょう!」
     追い詰められながらも、不敵な笑みを浮かべる翁縁。だが直ぐさまそれは驚愕に取って代わられる。何故なら、前衛へ進み出たオリシアが弾幕を掻い潜って肉薄してきたからだった。
    「さて宴も闌ではございますが……」
    「むぅっ!」
     ステッキを手に迎撃しようとする翁縁。だが、今までの攻撃で蓄積したダメージがそれを許さなかった。
    「貴方とのお遊戯はここでおしまいです!」
     結果、紅色に染まった無数の影が翁縁を貫くこととなった。瞬く間に炎に包まれ、灼滅されてゆく老紳士。
    「敗れましたか……全く、忌々しい。ですがまぁ、お見事と言っておきましょう」
     そう言いながら、消滅する翁縁。最上階に残ったのは八人の灼滅者だけであった。

    ●動けばお腹が空くもので
    「か、勝ちましたね……」
    「みたい、ね」
     ぺたんと座り込むオリシアに御凜が手を差し伸べる。戦いの終わりと共に、彼等の緊張も解けていた。
    「怪我している人は居ませんか、手当てしますよ?」
     有栖は仲間達に声を掛けながら、傷を治療してゆく。勝利したとはいえ、無傷とは言えなかった。しかし、重傷を負った者が居ないのは幸いだった。
    「……ま、ブレイズゲートがどうなるかはまだ分からないけどね」
     窓の外を眺めつつ、飛鳥はそう静かに独りごちる。ブレイズゲートが健在である限り、再び灼滅者達が館へ足を踏み入れることになるだろう。
    「そんなことよりも、さっさと帰って飯にしねぇか?」
    「動いたら、余計に腹が……料理も食いそびれたし」
     そんな中、ぐったりとした表情を烈也と礼二が浮かべる。その腹からは虫の鳴く音がしきりに響いていた。
    「ふむ、それじゃ、帰ったらみんなで食事に行こうか」
    「……う~、お姉ちゃんの肉じゃがも捨てがたいのです」
     わいわいと言葉を交わし合いながら、地下の船着き場へと歩いてゆく『まんぷく食堂武蔵丘支店』の灼滅者達。こうして彼等は島を後にするのであった。

    作者:月見月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月10日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 9/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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