ずっと一緒、という魔法の言葉

    作者:陵かなめ

     一家三人、虐殺。押し込み強盗の仕業か……?! 残された少女の心のケアは……?!
     新聞記事が目に入る。
     ああ、そうだ。
     あの時すべてをなくした。友達の家から帰ってみると、家の中が真っ赤で、誰も返事をしてくれなかった。お父さんも、お母さんも、お兄ちゃんも。誰も誰も誰も。生きている人なんて誰も居なかった。
     少女が、新聞記事を無造作に踏みつける。
     その時、うめき声をあげながら、ゾンビが部屋に入ってきた。
    「あ、お兄ちゃん? また遊んできたの?」
    「アァアアァァァァ」
     ゾンビは唸るばかりだ。
    「いいけど、ちゃんと帰ってきてね? お父さんと、お母さんはどこに行ったのかなー?」
     少女はうろうろと、部屋を行ったり来たりする。
     でも、外に探しにはいけない。だって、自分がここを離れたら、また誰か襲ってくるかもしれない。また家族が※※されるかもしれない。
     少女は困ったように首をかしげ、ゾンビに抱きついた。
    「大丈夫よ。りいらはずっとここに居るから。このおうち、守っているから。だから、ね。ずっと一緒だよね?」
     人気のない山の中の別荘で、少女とゾンビがひっそりと活動していた。
     
    ●依頼
     教室に現れた五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)が、説明を始めた。
    「現在、藤乃瀬・りいら(ふじのせ・りいら)ちゃんという小学生の女の子が闇墜ちしてダークネスになる事件が発生しようとしています」
     通常ならば、闇落ちしたダークネスは、すぐさまダークネスとしての意識を持ち人間の意識は掻き消える。しかし、彼女は元の人間としての意識を残しており、ダークネスの力を持ちながらも、ダークネスになりきっていない。
    「もし、りいらちゃんが灼滅者としての素質を持つのであれば、闇墜ちから救い出してあげて欲しいんです」
     そして、もし完全なダークネスになってしまうのであれば、その前に灼滅をと、姫子は皆を見回した。
    「りいらちゃんが居るのは、山奥の古びた小さな別荘です。兄と呼んでいるゾンビですが、実際は山で遭難した方です。ご家族は押し込み強盗の被害にあった後、きちんと火葬されています」
     りいらは家族の葬儀を墓を認めることができなかった。偶然発見した、死後間もない遭難者を眷属にしたのだ。
    「悲しいことですが、彼女の家族はもういない。その現実をはっきり突きつけるのか、それともやさしく諭すか、ほかの切り口から説得するかそれは皆さんにお任せしますね。いずれにしても、このまま放置すれば、りいらちゃんはダークネスになってしまい、周辺の住民を襲うようになってしまいます」
     手遅れになる前に、何とか。姫子は集まった灼滅者達を見た。
    「りいらちゃんを救うためには、戦闘してKOする必要があります。説得が彼女の心に届けば、戦いは有利になるはずです。そして、戦いになれば、りいらちゃんはエクソシスト相当のサイキック、ゾンビは殴る蹴るなどで攻撃してきます」
     皆に情報が伝わったことを確認し、姫子が最後の注意点を挙げる。
    「りいらちゃんは、再び家族が襲われることを心配しています。別荘を訪問する際も、十分注意してください」
     何か、訪問の理由も考えたほうがいいだろう。無理やり押し入るなどしてはいけない。
    「皆さん、りいらちゃんのこと、よろしくお願いします」
     姫子は話をそう締めくくった。


    参加者
    迫水・優志(秋霜烈日・d01249)
    織凪・柚姫(甘やかな声色を紡ぎ微笑む織姫・d01913)
    望月・心桜(桜舞・d02434)
    クリムヒルト・ドロッセル(蒼にして森緑・d03858)
    九重・都子(数えずの書庫・d10346)
    ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)
    グレイス・キドゥン(居場所を探して・d17312)
    アムス・キリエ(懊悩する少年聖職者・d20581)

    ■リプレイ

    ●開かれた扉
     紅葉が色づき始めていた。
    (「知った時には総て終わってるのと、どっちがしんどいんだろうか」)
     幼少期の自分のような境遇の者とでは、どちらが――?
     迫水・優志(秋霜烈日・d01249)は細い山道の先に見える小さな別荘を見つめた。
    「今までずっと一緒にいた大事な家族が、急に奪われたら、不安で恐くて、悪いことばかり考えてしまいますよね」
     それも、凄惨な形で家族を奪われたのだ。
     歩きながら、織凪・柚姫(甘やかな声色を紡ぎ微笑む織姫・d01913)が言う。
     誰でもそれはとても悲しい。
     九重・都子(数えずの書庫・d10346)は柚姫の言葉をかみ締めるように頷いた。
    「独りぼっちの辛さも悲しさも、私は良く解ります。でも、だからこそりいらさんを助けたいんです」
     自身の境遇とも思いを重ね、都子はりいらの事を思う。
    「凄惨な出来事から目を逸らしたくなっても仕方ありませんわ」
     かの少女はまだ小学生なのだ。事実を受け止めきれず、遭難者をゾンビに変え兄と呼ぶ。
     ベリザリオ・カストロー(罪を犯した断罪者・d16065)はそれでも、と、顔を上げた。
    「けど見過ごすわけにいきませんの」
    「せやな、悲しいのは分かるが………」
     グレイス・キドゥン(居場所を探して・d17312)は言う。
    「忘れることは正しいことやないやろ……」
     家族の死を忘れて、人気のない別荘にこもりきり。それは、家族も悲しむ。
     気づけば、道が開け小さな別荘が目の前まで来ていた。
    「少し小屋で休ませてほしいと、頼んでみましょうか」
     アムス・キリエ(懊悩する少年聖職者・d20581)が言うと、ベリザリオが頷いた。
    「わたくしは身長もありますから近付くと威圧感があるかもしれませんし、お願いしますわ」
     望月・心桜(桜舞・d02434)とクリムヒルト・ドロッセル(蒼にして森緑・d03858)を見る。
     あらかじめの取り決め通り、まずは二人が別荘に近づいた。
     古びたドアを、遠慮気味にノックする。
     しばらく待っていると、少しだけ扉が開かれた。
    「……だれ……?」
     消え去りそうな小声だ。
     ドアの隙間から、少女――藤乃瀬・りいらの顔が見える。
    「サークルの先輩方と紅葉狩りに来たのじゃが、道に迷ってしまったのじゃ」
     心桜が声をかけると、りいらは不安そうな表情を浮かべ、心桜の背後に目をやった。
     そこには、地図を広げる優志と柚姫。それを覗き込むグレイスに道を調べるふりをするベリザリオの姿。アムスや都子も控えている。仲間全員がりいらの視界に入るよう努め、できるだけ威圧感を与えないよう配慮している。
     りいらと都子の視線がかち合うと、都子はにこやかに微笑み返した。
    「そう……道に……。この山、時々、そういう人いるよ」
     襲いに来たのではないと安心したのか、りいらがもう少しだけ扉を開く。
     中から何かが徘徊するような、重い足音が聞こえてきた。
    「電話貸してください」
     クリムヒルトが言うと、りいらに迷いの表情が浮かんだ。電話を貸すということは、他人を家の中に入れるということ。さすがに、すぐに頷きはしない。
    「ちょっと寒くて疲れてしもうてのう。電話がだめでも、もしよければちょっとだけ、中で休ませてもらえんじゃろうか」
     実際、ここは少し肌寒い。心桜が自分の両腕を抱えるようにして見せた。
    「それに、暗くなってきて、外がちょっと怖いのじゃ」
    「そう、ね。怖いのは、嫌だよね」
     最後の一言に、りいらがこくりと頷いた。

    ●違うモノ
     ソファが一つあるリビングに通された。
     やはり警戒しているのか、りいらは一定の距離を保ち灼滅者達を注視しているようだ。
    「まだ少し早いかなって思ったのですが、山の紅葉は素敵でしたよ。……道に迷うほどには目を奪われましたし。私は九重都子です。……ええと?」
    「藤乃瀬りいら……だよ」
     穏やかに都子が話しかけると、訥々とした言葉が返ってきた。
    「りいらさんは、ご家族と紅葉狩りに行かれましたか?」
     家族について切り出した途端、りいらの顔色が変わった。
    「……っ。まだ、山の中は行ってない……」
    「そういえば、ご家族はいらっしゃらないのかえ?」
     心桜が部屋の中を見回す。
    「あ、お父さんとお母さんは……お出かけ、してて。あ、あのっ。お兄ちゃんならいるから!!」
     必死の形相でりいらが呼ぶと、リビングにゾンビが姿を見せた。
     着ている服は擦り切れ、肉は落ち、人間とは違う異形。
     分かっていたこととはいえ、目の前に現れたゾンビに対して、緊張が走る。
    「ァ……オオオォォォォォッ」
     ゾンビは灼滅者を見ると、腕を振り上げ攻撃の姿勢をとった。
     特にゾンビに気を配っていたグレイスは、すぐにでも足止めをせざるを得ないと考える。
     だが、ゾンビの動きを見て、りいらが叫んだ。
    「お兄ちゃんっ!! やめて!!」
     そして、ゾンビに飛び込み、抱きつく。
    「あのっ。違うの……。お兄ちゃんは、……ちょっと……神経質になっているの……そうよね?!」
    「……」
     ゾンビは何も答えない。
     ただ、主であるりいらには逆らえないのか、一旦攻撃の姿勢をやめた。
    「んー。お兄さんは、どんな人? 社会人?」
     クリムヒルトが聞くと、りいらは首を横に振る。
    「違うよ? お兄ちゃんは、中学生だよ。だって、学校の途中まで、一緒に登校するもん」
     ゾンビの擦り切れた衣装の裾をぎゅっと握り締め、りいらは言う。
    「そのお兄さん。大人に見えるですょ」
    「……それはっ」
     確かに。
     ゾンビは優志やベリザリオよりも背が高い。見るからに、大人だった。
     りいらは何か言葉を捜し、おろおろとゾンビを見た。
     家族が理不尽に襲われたのは同じ。しかし、自分の場合は家族は無事だったから幸せなのだろうか? クリムヒルト自身は、生死の境をさまよい、覚醒しなければ死んでいたのだけれども。
     そんな思いを抱きながら、クリムヒルトは目をそらさずじっとりいらを見た。
    「しっかり、お兄さんを思い出してください」
     姿も、形も、きっと違うはずだと、都子は優しく語りかけた。
    「……」
     りいらは黙り込む。
     ふと足元を見ると、くしゃくしゃに丸められた新聞の切れ端が目に留まった。
     優志はそれを拾い上げ、内容を確認する。りいらの家族のことが書かれた記事だ。
    「あ、そ……それはっ。違うの!!」
     慌てたように、りいらが駆け寄る。
    「知らないうちに家族がいなくなるなんて、信じたくないよな。認めたくないよな」
     優志の言葉は、軽いものではない。
    「俺もそうだった……!」
     搾り出された言葉に、いかほどの思いがこめられているのか。
     りいらは、思わず足を止めた。
    「でも、藤乃瀬……お前、本当はちゃんと判ってるだろう? どうして、ここにお父さんとお母さんが居ないのか。お兄ちゃんがお前の名前を呼んでくれないのか……」
    「だ、だから、違う……。そんなこと、嘘だもん。みんないないなんて、うそだもんっ」
     ぎゅっと、スカートの裾を握り締め、りいらは立ちつくした。
     家族が消えたこと、本当は何があったのか。りいらは分かっていて、自分を騙し、なかったことにしようとして無理をしている。
     そんな風に感じられた。

    ●忘れないで
    「……目の前に広がる赤……いくら呼んでも返事がない家族、自分の声だけが響く静まり帰った部屋……。とても恐くて……辛かったですよね」
     柚姫が切り出す。
     優しく、目線を合わせるように跪き、ゆっくりと言葉をかけた。
    「泣いてしまうと現実だと思い知らされるようで泣けなくて、頑なに拒絶していませんか?」
    「……」
     りいらは泣かない。慌てることはあっても、涙は見せなかった。
     それが気になったのだ。
     もし泣いてしまえば、悲しいことが現実にあったのだと、分かってしまうから。
    「ここに閉じ籠っても辛いままですの。いずれ耐えかねてそちらの方のようにご両親を求めますわ」
     ベリザリオが命令通り攻撃をやめたゾンビをちらりと見た。
     ここで堕ちてしまえば、りいらはやがて多くの眷族を生み出してしまうだろう。その中には、きっとりいらの本当の家族も含まれる。家族を眷属に変えてしまうことは、彼女にとってどんな悲劇を生むのか。家族を手にかけるということがどういうことなのか、ベリザリオは良く知っていた。
    「このまま闇に身を委ねては、あなたはご家族を奪った者と同じです。どうかご家族の無念をこれ以上増やさないで下さい」
     アムスもまた、訴える。
    「あなたの中のご家族の記憶を汚さないで下さい」
    「私の……家族」
     はっと、りいらが顔を上げた。
    「家族を失って悲しいのは分かる。辛いのも分かる。……だけどな、お前が忘れたら誰が生きてたことを証明するんだ!」
     グレイスの主張に、りいらは驚きの表情を浮かべる。
    「お前に忘れられたら家族は悲しむぞ!」
    「悲し……い」
     りいらは、目を見開き呆然と立ち尽くした。
    「ずっと受け入れずに生きていくのは難しいってちゃんと判っているんですよね?」
     確認するように柚姫に言葉をかけられて、りいらはぐっと言葉に詰まった。
     そして。
    「だって……っ! だって、……わ、私の、お兄ちゃんは、お父さんは……お母さんは」
     ざわりと、ざらつく感覚。
     戦いの気配を感じ、灼滅者達はりいらから距離をとった。
     りいらが降臨させたのは、輝ける十字架。
    「……じゃあ、ここにはもういないって、そんなこと……っ」
     叫ぶりいらに呼応するように、光線が降り注ぐ。
    「辛いってことはようわかる。でもなあ、辛い悲しい認めないって叫んでいるだけなら一歩も前に進めぬし、それはりいら嬢が幸せになれぬってことじゃ」
     光線を受けながら、心桜は言う。負うダメージは、それほど高くはない。攻撃しながらも、りいらに迷いがあるのが良く分かった。負ったダメージは、すぐにナノナノのここあが癒す。
    「あなたまで犯人の犠牲になってはご家族が悲しみますわ」
     辛くても、希望のある生き方をと、ベリザリオ。
     器用に光線を避け、シールドを広げた。
    「……本当のお兄ちゃんや家族を忘れ続けるって……そのほうが悲しいよ……」
     自らの守りを固めながら、クリムヒルトも言葉をかける。
    「お兄ちゃん……。お父さんも、お母さんも、悲しいの……?」
     りいらの顔がゆがむ。
     攻撃の勢いが弱まった。
     だが、その時。
    「オォォオオオオオオオオッ」
     戦いが始まったことを悟り、ゾンビが突撃してきたのだ。

    ●一人じゃない
    「待って……! お兄ちゃん?!」
    「アァァァァァァァ」
     りいらが叫ぶが、間に合わない。
     ゾンビが大きく腕を振り上げ、グレイスに向かってきた。
     そこに柚姫のビハインド・翡晃が滑り込み、グレイスをかばう。
    「お前の家族はどんな人だった? 優しかったか? 格好良かったか? 綺麗だったか?」
     ゾンビを足止めするように攻撃しながらグレイスが声を張り上げた。
    「……お父さんはね、優しくて大きい。お母さんはね、綺麗で楽しい。……お兄ちゃんは、いつも一緒にいてくれて、いつも私の言うことを聞いてくれたよ……」
     りいらの攻撃の手が緩んだ。その様子を見ながら、グレイスがもう一声、今度は落ち着いた声で語りかけた。
    「……そう思える家族なら、忘れるなんて勿体無いだろ?」
    「ずっと一緒に居るなんて無理だって、本当は判ってるんだろう?」
     優志もまた、諭すように声をかける。左手から放つ護符が、傷を負った仲間を癒していった。
    「……っく」
     りいらは俯き、小さく嗚咽を漏らした。
    「お母さん……。お母さん。いないの。どこにも。お父さんも……っぅ」
     再び顔を上げたとき、その瞳には涙が見えた。
    「主よ、導きたまえ」
     仲間の傷を癒し、守る力を高めながらアムスが言う。
    「ご家族の無念を癒し、魂の安らぎを祈れるのはその死を悲しむあなたなんです」
     自分は戦いの傷を癒すことができる、だが、りいらの家族に安らぎを与えることができるのは、他ならぬりいらだけなのだから。
     ぽろり、りいらの涙が零れ落ちる。
     思わず駆け寄り、都子はりいらを抱きしめた。
    「ご家族の体は無くなっても、存在の証はここに居るじゃないですか。貴女が闇に落ちたら、その証すらなくなってしまうんですよ」
    「私が……証……う、ぅ」
     嗚咽を漏らすりいらを見て、都子も涙をにじませる。
     背後では、ベリザリオがゾンビの攻撃をひきつけ、グレイスと共に足止めしていた。
    「こんなやつが兄だと? 良く見ろ! お前の兄はこんな顔だったのか?」
     グレイスが叫ぶ。
    「そのようなまがい物を兄と呼んでおるのなら、天国のご家族も悲しんでいると思うのじゃ」
     心桜も必死に訴えた。
    「お兄ちゃん……お兄ちゃん。お兄ちゃん。……がう。違うの。ごめんなさぁぁい」
     攻撃を受け悶えるゾンビを見て、りいらは声を上げて泣いた。
     一人であてもなく彷徨っていた山の中。見つけたのは男性の死体だった。りいらはずっと一緒にいてくれる誰かが居ると良いなと願った。すると、死体だと思っていたのに動き出したのだ。
     一人じゃない。
     たった一つ、その思いは、りいらを襲った辛い真実をねじ伏せてしまった。
     けれど、やはり、間違っていたのだ。
    「……まだ難しいですが……ゆっくり私達と一緒に前へ進んでいきましょう、ね?」
     柚姫が武器を構えた。
     りいらを闇から連れ戻すため、狙いを定める。
    「煌くは緋、輝けり蓮」
     緋色のオーラを宿した武器が、振り下ろされた。
    「うん」
     りいらは、小さく頷き、攻撃を受け止める。
     倒れこんだ体を、都子がしっかりと支えた。
    「私を、貴女のお姉さんにして下さい」
     一人ぼっちの辛さも悲しさも、よく分かる。だから、一人にはさせない。
    「おねぇ、ちゃん……」
     小さな手が、確かに、伸ばされた。
     もう、大丈夫。
     心桜もまた、りいらを優しく抱きしめる。
     りいらの穏やかな表情が、皆に見えた。
    「これで、終わりですょ」
     それを見て、クリムヒルトがゾンビに攻撃を仕掛ける。
     続いてベリザリオがシールドで殴りつけ、グレイスが斬り刻むと、ゾンビは跡形もなく消え去った。

     りいらの事を仲間に任せ、ベリザリオとアムスは外へ出た。
    「遭難した方を供養してあげませんと」
     ベリザリオの言葉に、アムスが頷く。
    「遭難者の方に祈りを捧げましょう」
     二人は、消えていったゾンビの供養へと向かった。

     闘いの傷が回復したりいらの前には、皆が持ち寄ったお弁当やケーキが並んでいた。
    「お前さ、ウチの学校来いよ。同じような境遇の子も多く居るから、お前の気持ち、判ってくれる友達も出来ると思うぜ?」
     優志が声をかけると、りいらはもじもじと都子の背中に隠れてしまう。
     都子はにこにこと笑いながら、りいらの肩を抱いた。
    「本当に、紅葉が綺麗ですね」
     柚姫の言葉に、皆が空を見上げる。
     少し傾いた日と色づき始めた紅葉は、赤々と皆の胸に残った。
     こうして灼滅者達は、藤乃瀬りいらを伴い学園へと帰った。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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