闘丸

    作者:魂蛙

    ●鬼コーチ
    「どうしたオルァ! 根性出さんかい根性!」
     ドスの効いた声に、契葉・刹那(響震者・d15537)が足を止めて振り返った。
    「ラグビー部……でしょうか?」
     学校のグラウンドの一角で、ひたすらうさぎ跳びをし続ける生徒達。そこにコーチらしき男が竹刀を振り回しながら発破をかけている。
     遠目にもかなりガラの悪そうな生徒達に見えるが、コーチの迫力はそれ以上だ。
    「ボールがねぇからってサボれると思ったら大間違いだ! そこ、ヘばってんじゃねぇっ!」
    「凄い気迫ですね……」
     刹那は思わず呟き、しばしシゴキとも呼べそうなその光景を眺めてから、また歩き出す。
     刹那からコーチの立っている所までは距離があり、刹那が気付くことはなかった。怒号を発するコーチの額に、黒曜石の角が生えていることに。

    ●多分楕円形だから
    「ある高校に、体育教師兼コーチとして不良の生徒達をまとめあげてラグビー部として活動させている羅刹がいるんだ。その羅刹と配下のラグビー部員が、事件を起こすんだよ」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が、教室に集まった灼滅者達に事件の説明を始める。
    「街でもよく問題を起こす不良って事もあって、ラグビー部の評判はあまりよくないんだ。部費も満足に回してもらえないから、用具も全然揃ってないみたい」
     一応練習らしきことをしてはいるようだが、これもラグビーの為というよりも、徹底的にシゴくことで羅刹コーチの支配力を高める、という目的の方が大きい。
    「遂にはボールまでなくなっちゃったみたいで、ボールの代わりになる物を奪ってこようと事件を起こすんだ。そこでボールの代わりとして白羽の矢が立ったのが、冬瓜なんだ」
     言ってから、まりんは小首を傾げる。
    「……何で冬瓜なんだろう」
     灼滅者に聞いても仕方なかろう。
    「とにかく、みんなにはこの羅刹コーチの灼滅をお願いするよ」
     まりんは盛大に溜息をこぼしつつ、苦笑を浮かべた。


    「犯行は深夜2時。実際に倉庫を襲撃して冬瓜を盗み出すのは、強化された部員を含む10人の部員達で、羅刹コーチとその側近の部員は学校のグラウンドで待機するんだ。みんなには部員達が襲撃に出た後で、グラウンドに乗り込んで羅刹コーチ達に戦いを挑んでもらうよ」
     側近は3人。盗みに出た部員達よりも個々の戦闘力は高く、油断できない相手だ。
    「実際にグラウンドに乗り込むのは2時15分。羅刹コーチは盗みに出た部員達を呼び戻そうとするから、部員達が戻る前に羅刹コーチを灼滅して欲しいんだ」
     部員達に戻ってこられると、勝ち目はなくなるだろう。
    「部員達が戻ってくるまで、15分くらいかな。時間との勝負になるから、そのつもりでね」
     ボスである羅刹コーチを倒せば、配下も気絶する。作戦次第ではあるが、必ずしも全滅させる必要はない。
    「羅刹コーチはスナイパーのポジションから、神薙使いの鬼神変と神薙刃、無敵斬艦刀の森羅万象断と戦神降臨に似た4種のサイキックを使うよ。配下の側近部員は3人ともクラッシャー、使用サイキックはバトルオーラのオーラキャノンと閃光百裂拳に似た2つのサイキックだよ」
     配下は側近も盗みに出た部員達も、羅刹コーチを倒せば気絶して力を失う。罪なき善人とは呼べない連中ではあるが、羅刹の影響下になければ、その対応は学校や警察の仕事だろう。
     なお、まりんの指示通りに戦闘を開始したならば、部員達は倉庫を襲撃せずに戻ってこようとすることになる。そちらの心配は無用だ。

    「食べ物を粗末にさせるわけにはいかないからね。そうでなくても周辺の人達に迷惑をかけてばかりの人達だし、みんなが懲らしめてやってよ!」
     胸の前でぐっと拳を握ってみせ、まりんは灼滅者達を送り出した。


    参加者
    風音・瑠璃羽(散華・d01204)
    巨勢・冬崖(蠁蛆・d01647)
    上條・和麻(社会的底辺の男・d03212)
    桃之瀬・潤子(神薙使い・d11987)
    水無瀬・旭(瞳に宿した決意・d12324)
    雛本・裕介(早熟の雛・d12706)
    契葉・刹那(響震者・d15537)
    府頼・奏(純愛ラプソディー・d18626)

    ■リプレイ

    ●2:15
     深夜の高校のグラウンドから、ラグビー部員達がリアカーをガラガラと引きながら出発してから、間もなく15分が経過しようとしていた。残った羅刹コーチと側近部員の動向を、物陰から灼滅者達が見張っているが、今のところ動きはない。
    「さてと……乗り込むか。皆、準備はええか?」
     腕時計に目を落とした府頼・奏(純愛ラプソディー・d18626)がにっと笑みを浮かべると、桃之瀬・潤子(神薙使い・d11987)が頷き意気込む。
    「深夜だからお昼寝はしっかりしてきたよ!」
     潤子はタイマーを取り出し、10分にセットする。潤子がタイマーをスタートさせると、同時に灼滅者達が飛び出し、フェンスを乗り越えグラウンドに突入を開始した。
    「止まれ! 誰だてめぇら!」
     侵入者にいち早く気づいた羅刹コーチが声を張り上げ、グラウンドに転がっていたサッカーボールで暇を潰していた部員達も警戒態勢に入る。
     コーチの勘の良さに一瞬驚かされたが、元より隠密行動に拘る理由はない。灼滅者達は持ってきた照明でコーチ達を照らした。
     灼滅者達を一目見ただけで何かを察したのか、コーチが舌を打つ。
    「おい、出て行った奴らを呼び戻せ。今すぐだ」
    「は? こんな奴ら、俺達だけでも――」
    「――五月蝿ぇっ! とっとと呼び戻しやがれ、このグズが!」
     コーチは訝しむ部員を遮り怒鳴る。部員が慌ててケータイを取り出すと、残りの部員とコーチが並んで前に出て壁を作った。
    「時間がないからね。速攻で行かせてもらうよっ!」
     風音・瑠璃羽(散華・d01204)がウロボロスブレイドを抜刀して前へ出ると、水無瀬・旭(瞳に宿した決意・d12324)と巨勢・冬崖(蠁蛆・d01647)がその左右について走る。
    「……配下は俺に任せて。抑えきってみせるさ」
     瑠璃羽に声をかけた旭が一気に加速して、縛霊手を装備した左腕を部員に叩きつけるように振り下ろす。
     同時に、冬崖ももう1人の部員に肩をぶつけるようにタックルをかまし、そのままがっしりと組み付いた。
    「ラガーマンの誇りを穢した、そのツケは払ってもらうぞ!」
     それは怒りなどという安い物ではなく、ラグビーを愛する者達を代表した義憤だ。
     冬崖は突進の勢いのままに押し切って部員の体勢を崩し、一気に薙ぎ倒す。
    「……アメフトもそうだけど、直にぶつかり合うことが認められているって、凄いスポーツだよなぁ……」
     勇猛果敢に挑む冬崖に感嘆しながら、しかし旭は目の前の相手への集中を切らさずに抑え込む。
     そうして2人がこじ開けた道を突破して、瑠璃羽が一直線にコーチに飛びかかる。迎え撃つコーチは鬼の本性たる異形に形を変えた右腕で、その巨腕に見合う大振りの竹刀を背中から引き抜き様に振り下ろした。
     見た目に違わぬ重い一撃を、ウロボロスブレイドを盾に真っ向から受けた瑠璃羽の足が地面に沈む。
    「てめぇのその下らん企みもここまでだ!」
     コーチの背後から急襲をかける上條・和麻(社会的底辺の男・d03212)が日本刀を振り抜くと、その剣圧が風の刃と化してコーチを襲う。
     踏み堪えようとするコーチに、更に契葉・刹那(響震者・d15537)がディーヴァズメロディで追撃をかける。
     コーチの力が緩んだその一瞬の隙を突き、瑠璃羽は軋む両脚に喝を入れて竹刀を撥ね退け、バックステップで間合いを取る。離れつつもウロボロスブレイドを伸ばし、うねる斬撃で竹刀を振るうコーチと斬り結ぶ。
    「風音、無理はするでないぞ!」
    「うん、大丈夫!」
     後退する瑠璃羽の援護に駆けつけた雛本・裕介(早熟の雛・d12706)が、瑠璃羽にジャッジメントレイの回復を施す。
     灼滅者達がコーチを囲むように広く展開し、連絡を終えて戦線に加わった側近を含めた3人が、コーチを守るように遊撃の態勢を整える。
     睨み合いをしている暇などない。戦況は、加速の一途を辿ろうとしていた。

    ●2:20
    「バラけるな! 1人ずつフクロにしろ!」
     奏と和麻を同時に相手にしながらコーチが部員に指示を飛ばし、応えた部員は刹那に狙いを定める。
    「寄ってたかって女の子に襲いかかるなんて、格好悪いんだ!」
    「……同感だ」
     潤子と旭が祭壇を展開した縛霊手を地面に突き立てる。噴き出す光の柱が地を走り、部員達を飲み込む。
     2方向から来る光の柱から何とか逃れた部員が、刹那に迫る。
    「大人しく潰されろやァ!」
    「うぅ、こういう男の人は特に苦手です……でも!」
     横隔膜を最大限に使った部員の怒声に、刹那は一瞬怯みかけるもすぐに気合いを入れ直して迎え撃つ。
     右、左と力ませに振るう部員の拳打を刹那はウィービングで躱し、懐に潜り込み掌打で部員の体勢を崩してその脇を駆け抜ける。狙いはあくまでコーチだ。
     刹那は両の掌を突き出し、コーチ目掛けてオーラキャノンを放つ。
    「そんな豆鉄砲でっ!」
     コーチは竹刀の豪快な一振りで奏と和麻を追い払い、振り返りガードを上げて刹那の光弾を受けた。
    「豆鉄砲なら、鬼退治にはピッタリやろ!」
     コーチの背後に回り込んだ奏が、構えたガトリングガンのトリガーを引く。数瞬のアイドリングの直後、銃口が無数の鉛玉を吐き出す。
     振り返ったコーチは被弾に構わず竹刀を背中に納め、異形の腕をアンダースローで振り抜いた。その凄まじい風圧が大鉈と化し、地面を抉り弾幕を切り裂き奏に迫る。
     そこに突っ込むは冬崖。冬崖は交差した腕にWOKシールドを展開して風の刃に飛び込み、刃にシールドを叩きつけて踏ん張り受け止め、腕を振り抜き刃を粉砕する。
    「よっ! さすがラグビー部部長っ!」
     奏は合いの手を入れつつも、更に分厚く弾幕を張る。流石に退避するコーチを、和麻が追走する。
    「逃がさん!」
     和麻の日本刀を電撃が這う。その踏み込みは雷光の如く、剣撃がコーチを袈裟懸けに一閃する。
    「調子に乗るなよ小僧共っ!」
     半歩退くもそこで踏みとどまったコーチが、竹刀を高く振り上げた。渾身の力で振り下ろされた竹刀が土砂を巻き上げ、土煙を引き裂いた衝撃波が地を割り灼滅者達の間を駆け抜ける。
     弾き飛ばされながらも受身を取って立ち上がる灼滅者達を、柔らかな風が撫でる。灼滅者達の傷を癒していくのは、裕介の清めの風だ。
    「儂が支えておるでな。そう簡単に、崩させはせんぞい」
     態勢を立て直すや否や、前に出たのは瑠璃羽だ。突っ込んで止めにくる部員を跳び越え、瑠璃羽はウロボロスブレイドの切先3節を残して連結を解除、伸ばした刃を振り上げる。
    「今のご時世、不良よりPTAの方が怖いんだから!」
    「この俺に怖いモンなんざありゃしねぇなァ!」
     鎌首をもたげるように伸びたウロボロスブレイドを瑠璃羽が振り下ろし、瑠璃羽の意を受けた切先は生きているかの如く、鋭い放物線を描いてコーチに迫る。
    「だらぁっ!」
    「それならPTAの代わりに私が――」
     コーチが竹刀を振り上げ、ウロボロスブレイドの切先を弾き飛ばす。
    「――お仕置きしてあげるっ!」
    「ちぃっ?!」
     瞬間、切先の連結を解いた刃がうねり、再度コーチに襲いかかった。
     フォロースルーで動けないコーチにウロボロスブレイドが巻き付き、刃で喰らいつき締め上げる。
     コーチの動きが止まった一瞬を見逃さず、潤子が渦巻く風を一条の刃へと練り上げ、撃ち放った。
     鋭い風切り音を響かせ、刃が飛翔する。コーチはウロボロスブレイドが全身を切り裂くのにも構わず力技で拘束を解き、交差した両腕で風の刃を受け止め、なんとか致命傷を避けた。
    「この程度で、やられはせんわァっ!」
     吼えたコーチを、禍々しく燃えるようなオーラが包んだ。オーラを喰らうコーチの体はみるみる傷を塞いでいく。
     態勢は立て直されたものの今の一瞬、灼滅者達は羅刹の力の底を微かに見た。

    ●2:25
    「てめぇらもちんたらやってんじゃねぇ! 根性出さんかオルァ!」
     コーチに発破をかけられ、部員達が雄叫びを上げながら突っ込んでくる。
    「……その根性を、何か別の事に使えばいいものを」
     旭は嘆息しながら、ウロボロスブレイドを振るう。連結を解かれたウロボロスブレイドはとぐろを巻くように旭の周囲に展開し、突進してくる部員を弾き返した。
    「……ぶつかり合いの流儀に付き合うつもりはない」
     怯んだ部員を冬崖が体当たりで薙ぎ倒し、そのままコーチに向かって一直線に駆ける。
     迎え撃つコーチの竹刀の唐竹割りを、冬崖はWOKシールドで強引に受け流しつつコーチの懐に飛び込んだ。
     ここまで踏み込まれては馬鹿デカい竹刀では取り回しが効かない。コーチは背中に竹刀を納め、足を止めての殴り合いを選択する。
    「ぬァああああっ!」
     咆哮と共に振り下ろされるコーチの巨腕を、冬崖は交差した腕でがっしりと受け止め左フックを返し、踏み堪え飛んでくるコーチのストレートに右フックを重ねて捩じ込む。
     クロスカウンターをまともにもらって、それでもコーチはまだ怯まない。クロスレンジに踏み止まってあくまで冬崖と打ち合う。
     と、その時、潤子のタイマーがアラームを鳴らす。それは、戦闘開始から10分が経過したことを告げるものだ。
    「みんな! タイムリミット5分前だよ!」
     導眠符を飛ばして部員を牽制しつつ、潤子が仲間達に声をかける。
    「5分もかからず、1人残らず叩き潰してやらァ!」
     コーチは半歩後退でスタンスを広く取ると同時に上体を捻って振りかぶり、同時に烈風を纏う。凄まじい風が冬崖を押し退けつつコーチの巨腕に巻き付き集束していく。コーチが巨腕を振り抜き放つ風の刃で狙ったのは、裕介だった。
     裕介は奇襲にもたじろぐことなく風の刃を引き付け、日本刀の鞘たる黒鞘・鏨を振り下ろし――、
    「ぬぅんっ!!」
     ――粉砕する!
    「簡単には崩せんと、言ったであろう?」
     裕介は日本刀を腰に納め、眼光鋭くコーチを睨めつける。
    「時間もないし、一気に行くよ!」
    「合わせるで、瑠璃羽さん!」
     同時に飛び出す瑠璃羽と奏の前に、部員達が並んで壁を作る。そこに先行して突撃をかけるのは冬崖だ。
    「邪魔させるか!」
     冬崖は振りかざした龍砕斧を部員に叩きつけ、
    「ラグビーを舐めんなよ!」
     逆水平に振り抜いて薙ぎ倒し、
    「あと――」
     地面ごと抉るように振り上げ、
    「――食べモンを粗末にすんなァッ!!」
     部員達をブッ飛ばす!!
     冬崖がこじ開けた道を抜けて、瑠璃羽と奏がコーチに迫る。
     コーチは巨腕を振り回し、風の大鉈を飛ばして2人を迎え撃つ。奏が高く跳んで刃の上を越えると、コーチがそこに風を飛ばして狙い撃ちにする。
    「……っと、させへんでっ!」
     奏は虚空を蹴って更に跳躍し、捻りを加えて舞い上がり刃を躱す。
     その時既に瑠璃羽はコーチを間合いに捉え、ウロボロスブレイドを伸ばしていた。のたうつように風を切り裂き、ウロボロスブレイドが鋭い弧を描きながらコーチを完全に包囲していく。
    「奏さん!」
    「任せとき!」
     上空の奏が地面から噴き出すガイアパワーを吸い上げ、両の掌に集めて束ねる。膨張する光の塊に組んだ拳を叩きつけ、奏はご当地ビームを眼下のコーチ目掛けて拡散発射する。
     流星群の如く降り注ぐ光はコーチを全周包囲するウロボロスブレイドに当たって反射に次ぐ反射を重ね、全方位からコーチを撃ち抜く!
    「まだまだ、行くよ!」
     瑠璃羽がウロボロスブレイドでコーチを捉え、そのまま一気に引き寄せつつ自身も飛び出す。瑠璃羽は連結させて剣の形を取ったウロボロスブレイドを左手に持ち、更に黒龍雷刃剣を右手で抜き放ちコーチの懐に飛び込んだ。
    「はぁああああっ!」
     瑠璃羽は旋転からウロボロスブレイドを逆水平に振り抜き、間髪いれず逆手に握った黒龍雷刃剣を振り上げる。夜闇を斬り裂く剣閃が紅の逆十字を刻み、コーチを吹き飛ばした!

    ●2:30
     コーチが吹き飛ばされながらも受身を取って立ち上がったその時、既にそれは完成していた。
     刹那と旭の影が寄り集まり刃を成し、潤子と裕介と和麻が束ねた風の刃を纏う。影と風の巨大な刃が、二重螺旋を描いて天を衝いていた。
     竜巻が如く荒れ狂う影と風の刃を見上げ、さしものコーチも戦慄を隠せなかった。
    「こんなガキどもに、この俺がっ……!」
    「これで、ゲームセットですよ……!」
     刹那が静かに宣言し、そして巨大な刃が振り下ろされる。
     刃は空を割り、地面を抉り、そしてコーチを圧し潰し――、
    「ぬぁああああああっ!!」
     ――粉砕した!
     コーチが灼滅されたのを見届け、安堵の息をついたのは瑠璃羽だった。瑠璃羽は仲間達を振り返り――、
    「皆、お疲れさ――」
    「あ、瑠璃羽さん!」
    「――きゃうん?!」
     ――足元のサッカーボールを踏んでステーンとコケた。
    「瑠璃羽さん、だいじょぶっ??」
     奏が慌てて駆け寄り、照れ笑いを浮かべる瑠璃羽に手を差し出して引き起こす。
    「皆、無事なようで何よりじゃ」
     裕介は深々と頷きつつ、刹那が様子を看ていた気絶した部員に歩み寄る。
    「こんな所で寝ていたら、風邪をひいてしまいそうですね」
    「盗みに出ていた部員達も、近くで気を失っているんじゃないかな?」
     ふと思い出したように顔を上げたのは旭だ。
    「そうですね。そちらも一緒に、どこかに移動させておいた方がよさそうです」
     刹那の言葉に頷きつつ潤子が歩き出す。
    「それじゃ、部員達を探しに行こっか!」
    「うむ。だが、その前に……」
     潤子を制して裕介が部員達に手をかざすと、改心の光が穏やかに照らす。
     彼らが元々不良であることに変わりはなく、改心の光の効果ももって数日だ。このままではその場凌ぎに過ぎない。だが、それでも。
    「後は此奴ら次第であろう」
    「今度こそ、ちゃんとした教師に導いてもらえたらええねんけどな」
     奏の言葉に、しみじみと頷く灼滅者達であった。

    作者:魂蛙 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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