小さな機械を胸に押し付けて、三条寺・都(みじょうじ・みやこ)は眠りに落ちる。
●夢(しあわせのきおく?)
夢の中、都が立っていたのは10歳まで父と母、妹の美弥子と過ごしたリビングの一室だった。
今暮らす大きいだけの辛気くさい畳の大部屋ではなくて、緑色のカーテンを翻し爽やかな風が吹き込む明るい洋室。
……もう、帰るコト叶わぬ、部屋。
「とんだ悪夢ですね」
肩を竦めた時、右手が妙に重いのを知覚する。
握られているのは真新しい、ナイフ。
より確かめようとした所で、裸足の足首にぬめりとした粘液質の感触。足下でうねっているのは緑色の不定形の物体だった。
「なんですかこれは」
試しにナイフで刺してみた。
すると不定形のぶよぶよはあっさり弾けて消えた。
現実感のない物体だからか、命を消した罪悪感は一切無い。
その内、明らかに人間らしいのが現われたけれど、
「なんなんですか、これは! あはっ」
紅爆ぜさせ命尽きても、むしろ都を煽っただけだった。
――おもしろい。
――おもしろい。
――おもしろいですよ!
生々しいぬくもりに腕が浸され、頬や寝間着越しの胸に血が染みていく。
やがて想い出のリビングに、全てを奪った者が現われた――祖母のイツだ。
「殺していいんですよね? ねぇ!!」
もはや理性の留め金が0に等しい所に置かれた都は、躊躇いなく祖母の腹を蹴り飛ばし馬乗りになった。
その憎らしい顔を潰す。
いやいや、すぐ死んじゃうとつまらない、まず手足を縫い止めじわじわ嬲り殺す。
……古き村の『あとつぎ』などというくだらないモノに自分を縫い止めたばばあにはお似合いだぁ!
「あはっあははっ、これであたしは自由です」
顔をあげれば自分そっくりの少女が怯えたように此方を見ていた。双子の妹美弥子だ。
『お姉ちゃん……おばあちゃまを殺すなんて』
「みや……こ?」
『もう、取り返しがつかないよぅ』
自分と同じ顔をした少女がぐしゃり、と情けない泣き顔に変じた。
その上で、鏡で映したように同じ手にナイフを持ち、覚悟を決めたように都に斬りかかってくる。
「……こ、来ないでくださいよっ」
あれだけ憎くて羨ましくて仕方がないはずの妹へ、都はどうしても反撃する事ができず、怯えたように後ずさる。
ごん。
仲良く姉妹で遊んだソファが都の逃亡を阻んだ、もう逃げられない。
●未来予測(ざんこく)
「ひとりでもダークネス化は防ぎたい。そうだよね?」
問い掛ける灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)の瞳は皮肉と意地が悪い何かに満ちていた――ただし其れは灼滅者達ではなく、予測する自分に向けられる、モノ。
「博多で謎の機械を受取った人が『悪夢』に囚われてるよ」
シャドウの協力を得た六六六人衆が新たな六六六人衆を生みだすべく、研修生に悪夢を見せているらしい。
「研修生の名は三条寺・都さん。彼女は望んで此の悪夢を、見てる」
望んで――予想外の状況にざわめきが起るが、続く標の言葉で更にそのざわめきは大きくなった。
「夢の中、都さんは殺人ゲームを愉しんでるよ。だから、止めて欲しい」
ソウルアクセスがなくても、都が渡された『謎の機械』を媒介に夢の中に入る事が可能なのだ。
「都さんは今、双子の妹と対峙していて戦意を喪失してるよ」
都を護りながら妹・美弥子を模した敵を斃すのが第一関門。強くないので排除は容易い。
が、
「キミ達が斃したら、都はまたゲームを再開するよ」
灼滅者達の介入は『お助けキャラ』使用、そんな程度の認識。
「だから敵を斃す前に、これ以上ゲームを続けない説得が、必要」
余程言葉を間違えなければ、一端このゲームから手を引かせるコトは可能だろう。
が、
「彼女は現実がどうしようもなく嫌で……夢の中、殺戮に浸っていた」
標は最初に見せた厭世的な笑みを再度浮かべる。
「だから此処で止めても何れまた六六六人衆の誘惑に乗る可能性は、高い。できればそれも防ぎたいよ、ね?」
三条寺都という少女は――。
跡継ぎの躾けと称して家族と引き離した祖母との息苦しい田舎暮らしの日々に辟易している。
祖母に選ばれず日常を謳歌している双子の妹への嫉妬は余りに深い。
「――そんな彼女の生きる現実を、キミ達は変えられない」
その上で、どう説得をするのか。
恫喝か、砂糖をかけたような優しい言葉か……いずれにしても、どうやって騙すのか。
それとも、
……灼滅者達はどうにかして無いはずの宝を生みだすの、か。
「ダークネス、増やしたくないものね」
苦笑混じりで標は話を締めくくった。
参加者 | |
---|---|
三兎・柚來(小動物系ストリートダンサー・d00716) |
黒路・瞬(路選ぶ継承者・d01684) |
橘・彩希(殲鈴・d01890) |
織部・京(紡ぐ者・d02233) |
千条・サイ(戦花火と京の空・d02467) |
王子・三ヅ星(星の王子サマ・d02644) |
詩夜・沙月(紅華の守護者・d03124) |
三和・悠仁(影紡ぎ・d17133) |
●
12畳のフローリングリビングにはライムグリーンのソファ。
部屋の角にはノートパソコンの置かれた書斎机、ピカピカに磨かれたキッチンは対面式。お父さんとお母さんから娘二人の笑顔がいつでも見えるように。
『どうして』
殺したの?
都と同じ唇がそう動く様は黒い背中に遮られた。
「……」
投げやりな瞳、躊躇いもなくナイフへ身を投げ出し刺された三和・悠仁(影紡ぎ・d17133)は「仕事の開始」を自己に告げ護りを周囲に放つ。
彼女は果たして自分より強いのか弱いのか? 他、今刺された部分に抱える「わからねぇ」は解かれる事はあるのか?
「――ッ」
夢に侵入し都を見つけ、すぐに表層意識をなぞった三兎・柚來(小動物系ストリートダンサー・d00716)は、呑み込まれそうな昏い憎しみに目眩を覚える。
命の危機に晒されながらも一番表は『祖母への憎悪』――確かにこれは憤懣解消に人殺しゲームに浸っても仕方がないのだろう。
(「否定しちゃだめだよなぁ」)
でもこれは、余りにも非生産的で後ろ向きで虚しい行為だと思うのだ。
「黒路当主候補・瞬! いざ参る」
寄り添うように車輪を軋ませ現われた神威を前に行かせ、後目として生まれ育った黒路・瞬(路選ぶ継承者・d01684)は、美弥子の動きを阻む領域を招いた。
行く路へ光を照らすのは、例えば友であり例えば心の強さである。それぞれ既に持つ柚來と瞬は少女の心を開く鍵を探す。
(「あんまし綺麗な殺し方やないけど」)
千条・サイ(戦花火と京の空・d02467)が都の心に一番近い場所に触れているのかもしれない。
手足を縫い止められた老婆には、嬲るような急所を外した傷が無数にある。更には潰すように何度も何度も刺された醜容な貌。
(「ほんまに鬱憤たまってたんやなー」)
……死への忌避感の薄さは類似項目。
「行こう、けいちゃん」
誰にも聞こえぬ幽かな声で織部・京(紡ぐ者・d02233)は背中合わせの『漆黒』へ誓うように口ずさむ。
みやこちゃん。
その響きは胸を掻きむしる程の愛しさを、孕む。
みやこちゃん。
そんな名前の女の子が闇に囚われかけて、いる。
「あの子を、止めよう」
双子のみやこちゃん、だから。
ね、けいちゃん。
「三和くん、大丈夫ですか?」
詩夜・沙月(紅華の守護者・d03124)の声にゆらり無事を示すように右手があがる、それを目視した時には彼女の元から神薙が飛び立っていた。
双子。
碧い目の姉は、紅い目の妹に全てを背負わせました。
碧い目の姉は、紅い目の妹に全てを奪われました。
沙月の路は都と逆さま、そんな封じた想いを零したのは愛し人へのみ。
『お姉……ゃん』
都の前に次々人が現われて壁となり妹の声を遮っていく。
「危機一髪。ゲームオーバーかと思いましたよー」
ゲームで遊んだのなんて5年前。美弥子が全然クリアできないので、ネットで敵一掃コマンドを調べて教えてやったのが最後だ。
――そう。
人生と違ってゲームはいくらでもズルができる――。
「……ごめんよ」
でも安堵は一瞬だけだった。
「お助けキャラじゃなくて」
確かに彼の影は美弥子を刻んでくれているのに。
楚々とした佇まいの彼、王子・三ヅ星(星の王子サマ・d02644)の笑みは嘆きに満ちていて、都の絶望(げんじつ)を呼び起こす。
世継ぎという檻に閉じ込められた『都/妹』のお助けキャラにはなれない。砂を咬むような悔しさがそのまま胸に落ちて灼けた。
「都ちゃん、私は貴女を殺人ゲームに勝たせる為に来た訳ではないの」
そして明眸にして無垢なる笑みがより鮮やかにつきつける。
闇色の髪で彩られた橘・彩希(殲鈴・d01890)は境界を越えたモノ。
「今ならまだ貴女は引き返せる場所にいるんだから」
美弥子の血肉が頬に跳ねても変らぬ笑みの彩希は、肉親殺しという境界を越えたモノ。
●
――優しさで何処まで押せるだろうか?
美弥子の殺意を宥めるように手首を握り逸らしつつサイは静虚な眼で状況を見守る。
「ゲームキャラすらあたしの自由を奪うんですか!」
「落ち着けよ、都」
まずは戦闘より説得を選ぶ柚來は彼女の肩を掴み押し留めた。
「ストレスをゲームで発散するのは悪い事じゃないぜ?」
三ヅ星と京も同意と首を縦に揺らす。
「でも本当に気が晴れるのか?」
「とっても」
だから瞬の問い掛けには即肯定、うっとり眇められた瞳には老婆の屍が映る。
「なら」
だが挫けず、柚來は振り払われた手で拳を作る。
「これが実際の人殺しだったらこんなにスッキリするか?」
「こんなリアルなゲームをしていてはこの景色が現実になるぞ」
すかさず瞬が畳みかけるのにあわせて自由の化身神威が美弥子へ体当たり。
「続けるなら、あんた実際に殺人鬼になるぞ?」
「どういう事です?」
悠仁の台詞で都がゲームの真実を知らないのは確定できた。
「機械を手放して、こんな夢とは縁を切りましょう」
「……」
沙月の言う意味を噛み砕くように顎に手をあて考え込む。
その間、弾むように床を蹴り彩希は光を叩き込む。ゲームの駒に関係あるかは知らないがわざと痛む部位へ、さて反応は?
びくり。
身を竦めるのを見取り京は両手を広げて傷付いた都を隠した。
「これは、ゲームですか?」
ゲームでしょ――それはまだ続く問いにて音になり損ねる。
「それとも貴女の本物の気持ち、本当の世界ですか?」
「本当の、世界?」
ぽつり。
呟く口元に現われるは下弦の月。
「本当だったら素敵ですねー」
嘯く都の視線の先には服を切り裂かれ荒い息をつく美弥子の姿。
(「……けいちゃん」)
わたしじゃだめかもしれないです。
●
「な」
埒があかない。
サイは首の疵痕をなぞる。歪な感触、都をこれと同じにしたくはない
「これ現実との区別なくす麻薬みたいな詐欺ゲーなんは説明された?」
「へ?」
にこにこと愉しげに心で携えるナイフで精神を分解する。
「ゲームでも、妹殺したないし殺されたないから手ェ止まったんちゃうん。そこでやめとき」
「私も双子の妹が居るんです」
沙月の切り出しに、双子の三ヅ星が双子だった京が耳を澄ますように一瞬硬直した。
「……後継に選ばれたのは妹ですけれど」
「妹さんをどう思ってるんです?」
都のそれは当然の興味。
「あなたと美弥子さんは双子」
でも語りたくないから沙月は都へ投影し逃げた。
「欲しいものを持っている妹が羨ましくて、でも、憎み切る事も出来なかった」
現在の想いをかきわけ過去抱いた醜い感情をつまみ上げれば語尾が震えた。だから続きは彩希が引き取り諭す。
「引き離されて寂しかったのでしょう?」
頬に跳ねた血を優雅な所作で拭った指は、破れた袖を押さえ泣きじゃくる美弥子をさした。
「泣き顔の妹を見たら反撃出来ないくらい、大切に思っているのではないの?」
刺す刹那、濃厚な感情が返るかもしれないけれど、命が途絶えてしまえば二度と見てはくれない。対価にするには余りに取り返しがつかない。
『お姉ちゃん』
「ホント美弥子ちゃんはっ」
助けを求めるように腕を伸ばす妹から目を背け都は喉を震わせた。
続く単語はなんだろう?
強い情念を他者にそして自身に向けられる都が悠仁からは本当に眩しい――だから仕事をしよう。
「……俺があんたと同じ状況になったら、多分自分を抑えられない」
殺してる。
「……その箍ってさ、あんただけのものだよ」
鈍い眼差しには惜しみない賞賛が宿る。
「箍ですか?」
「ああ。誰に強要されたわけでもない、あんただけの、な」
何となく胸元を押えれば、かしゃんと錠前が落ちた気が、する。
これが箍なのだろうか?
……これは誇れるもの?
「さっき彼が言ったように、ゲームを続ければ……」
三ヅ星は禍々しく膨れた腕で美弥子を押さえながら言葉は都へ。
「君は三条寺・都という『人』ではなくなる」
「あたしじゃ、なくなる?」
「都さんはただ家族と一緒に暮らしたいのですよね」
沙月の声にほんの僅かだが確かに都の首が傾いた。
「やっぱり、大好きだったですか」
綻ぶように微笑む京に今度はかくんと大きく揺れた。
「でも、ばばあが……」
涙声に灼滅者達は都の心が殺人鬼のゲームから離れたのを知る。
だから、
柚來はメロディを口ずさみソファの上から天井へと踏み切った。握り締めたWindmillへ軽快なリズムを流しこみ偽りの美弥子を、消す。
これで灼滅者として果たすべき役割は、終わり。
ここからは悠仁曰く――残業、だ。
●
父と離れ暮らす寂しさを知っているから苦しみの幾ばくかは分かち合えると、昏い迷路で迷う都へ柚來は手を差し伸べる。
「1人で悩んで貯め込むのが一番辛いだろっ? 俺だって友達がいるから毎日楽しいんだ」
厭世的な気配を引きはがさんと何処までも前向きに。
「俺も都の友達……までいかなくても話し相手になりたいなっ」
「無理です、だって人間関係はばばあに管理されてますし」
「それはやり過ぎだ。誰とつきあいを育むかは都が選んでいいものだ」
予想外の返事に言葉を呑む柚來に代わり、跡継ぎという息苦しさを知る瞬がすぐに対応する。けれど想像するよりずっと、都の置かれた環境は精神を蝕むモノだと頭が重たくなる。
「友達……美弥子ちゃんなら飛びつくんでしょうねー、バカですから」
憐憫、羨望、そしてなにより思慕が浮いたり消えたり。
「その場限りの甘い話、でも信じて騙されちゃうのが美弥子ちゃん」
「騙すつもりなんか……」
「へー。じゃ、あなたはどうやって今後仲良くしてくれるんです? ここゲームの中ですよね?」
都に責める色はない。むしろ「前向きになれずごめんなさい」と斜に構える瞳には描かれていた。
祖母のつくる因習という座敷牢に閉ざされ病んでしまった少女に「ずっと一緒だよ」と嘘をつけば、心から笑うかもしれない。
でも、目覚めた後に絶望に堕ちるのが目に見えているから柚來は嘘はをつけない。
今この瞬間、明るい気持ちを渡せれば救えると思っていたのに!
「同じ顔で同じ呼び名の美弥子ちゃんより何もかも上だって……」
ぴくりと眉を動かしたのは彩希だった。
「調子にのってたらこのザマです」
彩希は初めてずっと崩さなかった貼り付けたような笑みを、壊す。
――兄さんより人を殺すのが上手だったから、家族は背中を向けた。
そして兄さんを殺し、跡継ぎの座へと至った――。
(「血の臭いがしないだけで、こんなに世界は優しいの」)
彩希の口元に再び無垢な笑みが飾られる。
沙月と似た美弥子は自分より優れた都をどう見ていたのか?
「……きっとね、美弥子君は君を助けたいって思ってるんじゃないかな」
その答えは図らずも三ヅ星から語られる。
「ボクがそうだから。ボクにも双子の妹がいるんだ」
似ているねとの苦笑。妹を身代わりにしたという後ろめたさが都と向き合う度延々と三ヅ星を苦しめる。
「美弥子ちゃんにそんな力なんてないですよ」
「ならてめぇが力をつけりゃいいだろ!」
扱く当たり前の事を、京(けい)が嘯いた。
肩に掛る赤髪を弾くように後ろに流すと、京(けい)は京(きょう)の芯を通すように唇を動かす。
「ばーさんがムカつく? わざわざ殺らんでも先にくたばるだろうが!」
「あー」
「でも、まだ良い思い出が出来るかもしれない!」
「それはないですね」
速効の否定はさらりとしているが祖母への深い怨恨が滲む。
「後を継げば、力が得られます」
殺伐とした物言いを沙月が宥めるように差し替えた。
「あなたを苦しめた制度を廃止する事もできると思うんです」
「そうだ、ぶち壊せ!」
もうっと俯く京に都は初めて素直に吹きだした。
「ばばあ周りは建前の綺麗ゴトばっかですから、あなたみたいな黒い人の方がむしろ好きですよ」
都は、んーっと伸びをする、貌に広がるは晴れ間。
「やっとわかりました。ばばあを殺せば解決です」
――ハジメニモドル?
「「違います」」
サツキと京の重なる否定。そんな意図で言ったのではない、と。
「わかってますよ」
でもそうしないと現実(じごく)は続くんだもの――。
「あたし、美弥子ちゃんは好きってわかりました」
汲みあげた気持ちを忘れぬように。
「ま、親も赦します。みやこなんて同じ名前、あたし達をばばあに差し出すつもりのまるわかりですけどね」
「恨みは惨殺の免罪符にはならないし、それは本当の力ではないぞ!」
瞬は厳しく叱責する。都には正しい路を歩ける力があると、
「許されないからばれない方法を探すんです」
……信じたかったのに。
「殺したら、貴女の心と手が汚れるだけ」
優しい世界に居て欲しいとの彩希の願いに返る微笑みは鏡で見るモノに酷似していた。
「な」
ぬるり回り込んむようにサイは恐怖を浴びせにかかる。
「そのつもりやったら、俺はあんたを殺す側に回るよ」
晴れやかに壊れた笑みのサイに勝とも劣らずの笑みが花咲いた。
「もうゲームには手を出しませんよー。あたしじゃなくなるなんてあたしが嬉しくないですし」
自分で自分を縛りかつ自分すら殺したいと思う悠仁は、自分を殺したくない都が戒めを解く為に老婆を殺したいといういう思考を、知る。
老婆に縛られて狂気に陥る彼女、では自分に縛られる自分は?
「箍」
そう一言囁いて、悠仁は重たい瞼を楽にするようにおろした。
「そうか、そん時は――死ぬまで遊ぼや」
来なければいいのに、そんな時。
サイの笑みを果たして都は知覚できたのか、気づけば皆は眠る都の傍らにいた。
妹にも同じ絶望が降っているのだとしたら……三ヅ星は眼鏡を外し瞳を掌で押え込む。
「寂しさを拭えなかった」
柚來はそれっきり唇を噛みしめる。
投げかけられた「好き」は本音だ、それがわかるから京は余計にやるせない。
灼滅者達の介入で――。
三条寺・都という少女は自分の儘で居たいと気づいた。
三条寺・都という少女は三条寺・美弥子という妹を殺したくないと知った。
――だから殺人ゲームで闇堕ちする事はないだろう、絶対に。
作者:一縷野望 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年10月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 6/キャラが大事にされていた 7
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