漆黒斬りし光明

    作者:幾夜緋琉

    ●漆黒斬りし光明
     深夜の刻……漆黒の闇に包まれた山梨県は青木ヶ原の樹海。
     自殺の名所とも言われるこの樹海には、時折捜索の時があるとも言う。
     しかしながら、森の中は深く広い……その結果、幾度の捜索でも見つからずに、白骨化してしまう死体もあるとの噂。
     ……そんな森の一角、遊歩道からも離れた、まず人が訪れるような事は無い様な所にも、長い間発見されずに白骨化してしまった骸が……二つ、折り重なるように地へ臥せている。
     ……最早、見つかるはずの無かった骸。が……そこに。
    「……恨みに満ち満ちし、自死せし屍よ。その身を宿す業を、この私に見せるのです。さすれば、その身に不死の力を与えましょう」
     どこからともなく響いてきた……その声。
     そして、その白骨死体に対し、空から真っ白な光が降り注ぐ……そして光に包まれた白骨死体は、ガタガタ、と形を取り、そして……人型へと代わる。
     そして……人型の骸は。
    『ウゥゥ……』
     獣の唸り声の様な、呻き声を上げるのであった。
     
    「みなさん、集まって頂けた様ですね? それでは……説明、始めさせて頂きます」
     五十嵐・姫子は、集まった灼滅者達を一旦眺めると、早速説明を始める。
    「今回、みなさんに行って頂くのは山梨県は富士河口湖町と、鳴沢村に渡っている青木ヶ原の樹海、いや……富士の樹海に向かって頂きたいのです」
    「何故向かって頂くか……それは、長月・紗綾(暁光の歌い手・d14517)さんが、この樹海で強力なアンデッドが現れている、という情報を掴んできたのです。紗綾さんの予測が正しければ……この事件は、白の王セイメイの仕業でしょう」
    「セイメイの力を得たアンデッドは、ダークネスに匹敵する戦闘力を持つ事になります。そしてこのアンデッド達が、富士の樹海の奥深くに潜んでいる様なのです」
    「今回……みなさんが相手にするアンデッドは、十年近く前に、恋愛を認められずに心中してしまったカップルの様です。恋愛が認められず、その心に抱いた恨みの炎はかなりのものです。皆さんには、急いで準備を整え、樹海に趣、その奥に居るアンデッドを倒してきて頂きたいと思います」
    「樹海の奥に居る故に、今すぐ彼が事件を起こす……というものではないでしょう。しかし白の王セイメイが、強力な配下を増やしていくのは阻止しなければなりません」
    「強力なアンデッドは二体……二体合わせて、皆様とほぼ互角……という位の戦闘能力です。基本は男性のアンデッドが前に出て、殴りを主体にした攻撃、対し女性のアンデッドは男性のアンデッドをサポートするようなエンチャントを付加すると共に、状況によってはバッドステータスの攻撃も嗾けてくる様です」
    「当然ではありますが、周囲は灯りも殆どありませんので、足場は悪いです。また……どうやらこの二人のアンデッドに加え、この周囲で死んでしまった、余り恨みを持っていない、そこまで攻撃力が高くは無いアンデッドが2体居る模様です」
    「つまり……強力なアンデッド2体と、通常のアンデッド2体……合わせての4体が相手となります。配下のアンデッド達は、前に、前にと出て接近戦を常に攻撃してくるようなので、こちらにも一応の注意はしておいて下さい」
     そして、最後に姫子は。
    「……深い恨みを持ったアンデッドと対峙する事は、厳しい戦いになる事は間違い在りません。ですが皆さんならきっと……勝利を収めて頂けると信じています。皆さん……頑張ってきて下さいね」
     と、優しい微笑みを浮かべるのであった。


    参加者
    枷々・戦(膾炙する焔遣い・d02124)
    神座・澪(和気愛々の癒し巫女・d05738)
    水城・恭太朗(おでん・d13442)
    狩家・利戈(無領無民の王・d15666)
    浅木・蓮(決意の刃・d18269)
    三澤・風香(森と大地を歩く娘・d18458)
    北条・葉月(エモーションサウンド・d19495)
    鎌鼬・このか(永遠に続く罰・d21358)

    ■リプレイ

    ●富士に眠るは
     山梨県は富士河口湖町と鳴沢村に渡る巨大な原野、富士の樹海。
     姫子に話を聞いた灼滅者達は、バスから降りた樹海の入口へと降りる。
    「ここだね……富士の樹海。いや、青木ヶ原の樹海、と言う方が良いんだっけ?」
    「ん……まぁ呼び方は色々あるから、別に深く考えなくても良いと思うよ。とは言えクリス君、富士の樹海にそんな装備で来ちゃダメだよ。街に近いと言えども、ここは中々に厄介な所だからね。ほら、これ持ってきてあげたから着替えておきなよ、ね?」
    「……そうなの?」
    「そうだよ。秋はただでさえ落ち葉が多いし、火山岩や木の根のせいで動きづらいからね。光源用の照明も、手持ち式じゃなくてハンズフリーの方がオススメだよ? それに日が堕ちると寒くなるし、防寒対策も必要だね。何にせよ、ESPだけに頼ってると、その人が倒れちゃった時に困るから準備しておくにこしたことはないんだよ」
     と、クリス・ケイフォード(小学生エクソシスト・dn0013)の服装、装備に、いろはが細かくアドバイスをしていた。
     確かに富士の樹海……大変着やすい場所にある、都会に近い秘境。
     しかしながら富士の樹海を訪れ……自殺してしまう人も多いのが現実。
     余り近付きたくない……そんな雰囲気が漂う場所に、浅木・蓮(決意の刃・d18269)と鎌鼬・このか(永遠に続く罰・d21358)が。
    「富士の樹海に強力なアンデッド、と……なんか色々縁起が悪いよね。祈願でもしてくれば良かったかな?」
    「そうね。この富士の樹海でアンデッドと戦うなんて、キリがなさそう……早く終わらないかしら……」
     二人の言葉……そしてこのかの雰囲気にクリスが。
    「……大丈夫? 怖いの?」
    「……そうよ、怖いのよ……悪い? ……ていうか、貴方は平気なの?」
     このかにクリスは、僅かにクスリと笑いながら。
    「うん……怖さが無いか、と言われればあるけどね。でも……ノーライフキングを倒すのは、僕の使命だから……これ位で、怖がってる訳にはいかないんだ」
     ……そう、そんな自殺者達を利用しようとしていると予測されるのが、白の王セイメイ……。
    「しかし眠っている死者を起こすとか、許せねえな……」
    「そうですね……セイメイが、裏で手を引いているんですね……厳しい戦いになりそうですから、いつも以上に気を引き締めて行きたいものです。例え……誰かが闇墜ちする事になったとしても……」
    「……そうだな。いつかはセイメイともケリをつける日が来るんだろうけど、まずは一仕事、してくるとするか」
    「ああ。死者にはちゃんと、引導を渡してやらねーとな!」
     北条・葉月(エモーションサウンド・d19495)、三澤・風香(森と大地を歩く娘・d18458)、狩家・利戈(無領無民の王・d15666)らの言葉、それに枷々・戦(膾炙する焔遣い・d02124)が。
    「被害者達は、きっと悔しかっただろうな……」
    「そうやね……でも、一緒に死んでまうのを選ぶ気持ちの強さがあるなら、一緒に頑張って生けたやろうに……」
     ぐぐっ、と拳を握りしめる神座・澪(和気愛々の癒し巫女・d05738)。それに水城・恭太朗(おでん・d13442)は。
    「でも、自分で死を選ぶ? そういう奴って俺、嫌いなんだよね。死ぬくらいなら何か出来た筈。恋人を守る事が出来ずに心中なんて、一番だせぇ。事情とかしるかってんだ。男なら全部ぶっ飛ばして護ってやれよ、ってな」
    「そや、その気持ち、そのらぶを利用するセイメイは、ほんと許さへんで……!」
    「眠ってたはずの二人の魂をセイメイは利用している。だから俺達で止めなきゃ! ちょっと我慢してくれよ、すぐに助けてやるから!」
    「そうだな……でも、あんまり気張りすぎんなよ?」
    「え……?」
     突然の声、振り返ると、高明、治胡、康也の姿。
    「はは。ま、危なっかしい後輩の面倒を見てやんのが、先輩の務めってな♪」
    「え……あ、そう。サンキュ」
     照れ隠しする様にぶっきらぼうな言葉……そして、三人と一緒にやってきた瑠理は、きょろきょろ、と参加者を見渡し……クリスを発見すると。
    「くっくっくー、呼ばれて無くてもジャジャジャジャーン☆ 魔砲少女・真剣狩る☆土星(マジカルサターン)推参ですよー! さぁ、クリス君! 望みを三つ土星に向かって言うがいい! さすれば、私が出来る限り、気が向いたら、暇だったら叶えるかも~♪」
    「……ん、と……今の所は、何も無いかな……」
     額に汗を浮かべるクリス……と、気を取り直して。
    「ま、ともかくあんまりここでうだうだしてても仕方ないし、そろそろ行かねえ? てゆうかアンデッドか……」
     と恭太朗はポッケからティッシュを取り出し、鼻に詰め込む。
    「てゆか怖く無い? 骨ならいいけど、腐ってたら触りたくないなぁ」
    「……そうだね、確かに触りたくは無いね……でも、やらないといけないしさ」
    「んー……あ、そうだ。ファイアブラッドのクリエイトファイア、自分の意志で燃やしたい所に火をつけられるんだよね? アンデッド出たら、そこらへんに火をまいちゃえば楽じゃねーの? 暑さはフリージングデスで何とかすればさ」
     蓮と恭太朗に、戦が。
    「……まぁ、燃やすことは出来るかもしれないが……でも、傷口の大きさに炎の大きさは比例するぜ? 攻撃できる様なレベルにすると、それはそれで大怪我な気がする」
    「そっか……しゃーないな」
    「ま、灯り程度なら大丈夫だろうさ」
     戦の言葉に、納得した風に頷き、そして治胡も一言加えつつ、灼滅者達は樹海の奥地へと向かうのであった。

    ●安らぎは求め得ぬ
     そして樹海へと足を踏み入れた灼滅達。
     近くにある富士山から遥か遥か過去に噴出した火山岩や、木の根が色々と転がっており、歩きにくいことこの上無い。
     そしてその山中を歩く中……登を始め、皆が四方八方を手分けして観察し、不意打ちを打たれないように注意を重ねる。
     とはいえアンデッド達が何処に居るかは解らない訳で……物音、動く気配を耳を澄ましながら確認、警戒しながら奥へ、更に奥へ……と。
    「しかし……何処にいるんだろうな……?」
    「そやねぇ……まぁ、ウチらの声が聞こえれば、きっと彼らの方から仕掛けてくる筈やけどね」
     と、葉月と澪が会話をしていると……。
    『……う、うぅ……』
     遠くの方から聞こえてくる、呻き声。
     苦しむ呻き声に、ぞぞぞぞ、と背筋に冷や汗。
    「……」
     このかが一層無言になったのは、怖さの為……それはある意味自然な所。
     とは言えアンデッド達の呻き声は、ある意味地獄からの招待状。
     その鳴き声を聞きつつ、声の元へと向かい、歩く。
     ……そして、周りが一層、鬱蒼とした木々に包まれた所に、足を踏み入れた時。
    『……ウゥゥゥ……』
     今迄より、一層強く、大きな鳴き声が響く……そしてその鳴き声に続けて、周りの木々がガサガサと動く。
    「おいでになった様ですね……皆さん、構えて!」
     風香が声を上げて構える……そして次の瞬間、一挙に森の中から現れるアンデッドの群れ。
     四体のアンデッドは、とりあえず目の前に立ち塞がる戦に殴りかかろうとするが……咄嗟に葉月が庇うを発動。
     そして攻撃を受け止めながら。
    「さぞかし恨みや憎しみが溜まってんだろうな……いいぜ。全部受け止めてやるから掛かってこいよ!」
     ニヤリと笑みを浮かべながら、葉月は言い放つ。
     そして、このかも。
    「本当、早くここから帰して欲しいわね……いくわよ、覚悟なさい! クリス君、回復、一緒にお願いね!」
    「うん、解ったよ」
     このかに頷き、スレイヤーカードを解放すれば、周りの皆もスレイヤーカードを解放。
     そして、戦の声に続けて澪、利戈、瑠理が。
    「そうや。向こうが恨みの力で襲ってくるって言うなら、ウチらはらぶの力で対抗するダケや!」
    「ああ。テメェの相手はこの俺だ! いくぜ、痺れちまいな!」
    「まったく汚らわしい亡者共! クリス君に触れちゃ駄目ですよ。そんな奴らは土星に代わってオシオキDEATH!」
     先制を取った利戈が制約の弾丸でパラライズをぶっ放すと、葉月がヴァンパイアミスト、澪が防護符で防アップを付与。
     更にその動きに応じて、優歌がクリエイトファイアで照明を補助、そして。
    「さぁ、行くぜ!」
     戦が威声を上げると、それに合わせて治胡、高明、康也も連携。
    「まったく、亡骸を無理矢理たたき起して使役するなんざ趣味の良い事じゃねーなァ、オイ。コイツ等だって、静かに眠っときたかっただろうによ」
    「全くだよな! さぁガゼル、動き回るぜ!
     治胡がワイドガードで範囲にBS耐性を付与すると、続けて高明もライドキャリバーのガゼルを、戦場で動き回らせ、アンデッド達を攪乱する。
     そして攪乱した後に、まずはターゲットを定める……その狙いは、一番前に出て、攻撃してくる、強力ではない方のアンデッド。
    「よーし、まずはこいつから行くよ!」
     恭太朗が……ティアーズリッパーで攻撃を穿つと、それに戦が螺穿槍。
     そしてそんなクラッシャー陣に続けて、康也、瑠理も、クラッシャー効果をもってして攻撃を叩き込む。
     流石にクラッシャーの攻撃力を以てすれば、普通のアンデッドはかなりのダメージを喰らう。
     とは言え、そのアンデッドの後方に居る、一際強力な気配を纏ったアンデッド二体……男と女の、ペアになったアンデッド達が動く。
     女のアンデッドが、何かの力を男アンデッドに付与すると、男アンデッドがその力を受けて前進。
     そして次のターン、男アンデッドは、庇った葉月に拳を振り上げて……強力な一撃を叩き込む。
    「ぐ……っ」
    「大丈夫? すぐ、回復するよ!」
     蓮が即時ヒーリングライトで回復を施すが、それでも全開にはならない位の高攻撃力。
    「中々な攻撃力か……でもよ、それだけじゃ俺達にゃ勝てないぜ? さぁ……!」
     と利戈は不敵に笑みを浮かべ、そして雷撃。
    「ひゃっはー! 風穴開けてやんよ!!」
     と、全力の攻撃を食らわせる……が、男アンデッドはその攻撃を回避。
    「中々素早い奴らだな……て、男アンデッド、隠れられたら攻撃が当てられないか」
    「そうやね。ならばまずは立ち塞がる方を先に倒すだけやね。頼むで、らぴらぶ♪」
     澪に、彼女のナノナノがくるくる廻り、たつまきを放出。
     たつまき後は、戦、恭太朗、風香に利戈が。
    「皆、ともかく前線に立つのを集中攻撃するぜ!」
    「了解!」
     戦が頷き、彼のフォースブレイクに続けて恭太朗の閃光百裂拳、風香の影喰らい。
     それら攻撃で、やっと……通常のアンデッドを一匹灼滅。
     残るは後三匹……そして続く敵を、もう一匹のアンデッドにシフト。
     連携攻撃で以て、大ダメージを短時間で叩き込み……更に2ターン程で、もう一体のアンデッドを倒す。
     そして残るは、強力なアンデッド夫婦。
     灼滅者達の実力を認識はした様だが……でも、恨みの籠もったアンデッドの体勢は変わる事は無い。
     ただ、灼滅者達も、そんなアンデッド達に。
    「ったく……恋人を守れなかった奴が、一丁前に人を逆恨みしてんじゃねーよ。死ぬより先にすることがあっただろうが」
     そんな言葉を吐き捨てる恭太朗……でも、アンデッドはうぅ、うぅ、と呻き、威嚇、そして……強力な攻撃の応酬。
     とはいえ、ディフェンダー陣がディフェンスする事で、後衛陣にダメージを通さない。更にこのか、クリス、蓮の三人が。
    「大丈夫よ、心配ないわ!」
    「傷の回復は、任せて」
     と、メディックの三人、更に木々の後ろから、もう一人誰かが回復を飛ばしてくる事で、ディフェンダーに集中したダメージをしっかり回復。
     そして無論、高明、康也のクラッシャーや治胡もディフェンダーに立って動き廻る。
     ……ほぼ一進一退の戦況が暫くの間続いていくのだが。
    「潰し、穿ち、ぶち壊す! 我が拳に砕けぬものは何もない! 三途の川の向こうまで、叩き返してやんよ!!」
     と言う風な利戈の声に続き、灼滅者達も猛攻で、男アンデッドに猛攻。
     女アンデッドが、ダメージを喰らい続ける彼を回復するのだが……僅かながらも、ダメージが回復を上回っていた様で、少しずつ疲弊していく。
     ……そして、十数ターン経過した所で。
    「そろそろ、トドメ行くぜ!」
     葉月の号令一下……このかも。
    「邪魔しないでよ、蹴るわよ!」
     と、叫びながらのデスサイズで攻撃に、戦、恭太朗、風香のクラッシャー攻撃……大ダメージが、男クラッシャーを灼滅。
     残るは後、女アンデッドのみ……だが、支援主体の彼女は、直接的な攻撃力はそこまで高く無い様で。
    『ウゥゥ……』
     そんなアンデッドの呻き声の中。
    「これでトドメだ。さぁ、あの世に帰りな!」
     利戈が叩き込んだ縛霊撃が、女アンデッドを縛り上げて……生じた隙に戦の閃光百裂拳が叩き込まれると、女アンデッドは断末魔の叫び声と共に倒れたのである。

    ●漆黒の闇森に
    「……ふぅ、みんな、お疲れ様」
     クリスが皆に労いの言葉を掛ける……そして澪が。
    「そやね。えへへ、かまちん、これでちゃんと教室に帰れるな♪」
     笑顔を向ける……と、それにこのかは。
    「……うん、お疲れ様……ねぇ、さ、さっさと帰りましょう! こんな所に長居したくないし、ね!」
     このかはそう言うと共に、クリスの手を握りしめる。
    「え? あ……ちょ……」
     反論を聞かぬまま、さっさとその場を後にするこのかと……引き摺られる様にクリスと、瑠理もその場から離脱。
     そんなこのか達を、苦笑と共に送り出した後。
    「……しかし、四人とも……折角眠っとったのに、ゴメンな……? 今度こそ、ゆっくりおやすみなさいや……」
     と澪は倒した亡骸の、夫婦をぴったりと寄り添わせ……その手をしっかりと握らせる。
     そして握らせた手の所に、持ってきたスプレーマムの花束を一つ置いて……魂鎮めの風を使用し、供養。
     爽やかな風が、森の中に優しく吹く……そして、その風の中、葉月も。
    「ま、自己満足かも知れないけどな……気が済んだのなら、ゆっくりと眠っとけ。おやすみ」
     と、鎮魂歌を唄う。
     風と唄が、亡骸に……優しい慈愛を与える……そしてその中、戦と蓮、恭太朗が。
    「きっと天国で、一緒になれたよな……」
    「……そう願おう。俺に出来るのは、せいぜいこれ位だからな……」
    「ああ。可哀想だから供養くらいはしてやるよ」
     と、祈りを捧げて行く。
     ……他の参加者も又、祈りを捧げ、アンデッド達を供養。
     そして供養し終え、亡骸を穴を掘り埋めると共に。
    「しかしセイメイ……道具とかなしでこんな事出来んのかな……ちょっと調べてみるか」
     恭太朗はそう言うと共に、周りを探索する。
     ……しかし、白の王セイメイの痕跡は何一つ残ってなく、時間だけが過ぎゆき、空が完全な闇間に堕ちる頃。
    「そろそろ帰ろうぜ? 余り長居しすぎると、俺達が遭難しかねないしな」
     利戈の言葉に頷き、灼滅者達は富士の樹海を後にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月13日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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