芯から溢れ出すロシアの味

    作者:泰月

    ●新潟ロシア化計画
     新潟には、醤油タレカツ丼と言う、カツを卵で閉じずに甘辛い醤油ダレに潜らせたカツ丼がある。
     そんな醤油タレカツ丼を提供している一軒の食事処で、ある異変が起きていた。
    「こ、これは! 挽肉か。それだけじゃない……中にバターが入ってる! 熱々に溶けたバターが溢れ出して、肉の旨味を引き出してやがる……!」
     カッと目を見開いて、今食べた揚げ物を実況し始める店主。
    「それこそがロシア料理が一つにして我が象徴、コトレータ!」
     そんな店主を満足げに見下ろす、一人の謎の男。
     店主が食べている揚げ物を差し出したのは、この男だ。
    「こんな美味えカツがあったのか……負けたぜ、ロシアの」
     コトレータを食べ終えた店主は口元を拭い、自ら敗北宣言。
     そもそも勝負だったのかこれ。
    「製法を教えてやる。今日から、この店の看板メニューはコトレータ丼にするが良い」
    「い、いいのか!?」
    「構わん。我はその為に来たのだ……新潟をロシア化させる為にな!」
     謎の男と店主は、がっちりと手を組んでしまった。
     まあ、一番の異常は、謎の男の頭部が大きなコトレータと言う事なんですけどね。

    ●ロシア化の危機
    「新潟の危機が来てしまったぜ!」
     開口一番、神崎・ヤマト(中学生エクスブレイン・dn0002)が告げる。
    「実は淳・周(赤き暴風・d05550)から報告があったんだが、新潟でロシア怪人の動きが活発化しているらしい」
     今夏、季節外れの流氷に乗って現れたロシアン怪人。
     その多くはアンブレイカブルに迎撃されたが、どうやら迎撃されずに上陸を果たしたロシアン怪人もいたらしいのだ。
     そして、彼らは辿り着いた。新潟に。
     新潟ロシア化計画は、既に動き始めている。
    「その一人、コトレータのロシアン怪人を見つけた」
     コトレータとは、ハンバーグの様な牛挽肉のタネにパン粉をまぶして揚げるロシア料理である。
     牛肉以外にも、魚や鶏肉など豊富なバリエーションがあるのだが、中でもこの怪人が得意とするのは、タネの中にバターを入れた、ポジャルスキー風コトレータと呼ばれるものだ。
    「そして奴の狙いは、新潟のタレカツ丼だ」
     タレカツ丼を出している店に現れ、店主をコトレータの虜にする事で、タレカツ丼に変わってコトレータ丼を普及させようとしている。
    「奴が次に現れる店は判った。お前達は、怪人が店主にコトレータ調理指導をしている所に突入してくれ」
    「正面からでいいのか?」
    「ああ。奴が店の中で仕掛けて来たり、店主や周囲の人を人質に取る事はない。サイキックアブソーバーが俺にそう告げた」
     ヤマトは自信たっぷりに断言する。
     怪人の目的は『新潟ロシア化』である。
     その為にはコトレータ丼を食べる場所、食べる人が必要になる。
    「戦いになると判れば、奴の方から裏手の駐車場で戦おうと言い出す筈だ。乗ってやれ」
     サイキックはご当地ヒーローと同じもの。
     加えて、火傷する程熱いコトレータと何故か爆発するコトレータを弾丸の様に撃ってくる事もある。
    「あと、配下の強化一般人が一人。怪人のコトレータの虜になった店主の一人のようだ」
     彼は攻撃はせず、パン粉を夜霧隠れの様に使ったり、高温の油をかけて怪人を回復支援する。
     怪人を倒せば元に戻るので、先にKOしてしまっても問題ない。
    「何故新潟なのか、それは判らない。だが、このまま奴らの好きにさせていたら、新潟は次々とロシア化されてしまうだろう」
     グリュック王国の再来になる可能性もないとは言えない。
    「お前達がいる限りロシア化なんてさせないと、思い知らせてやれ。頼んだぜ」
     握った拳を突き出して、ヤマトは灼滅者達を送り出すのだった。


    参加者
    雨月・ケイ(雨と月の記憶・d01149)
    峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705)
    中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)
    松田・時松(女子・d05205)
    アーナイン・ミレットフィールド(目に見えているものしかない・d09123)
    鎌北・桜湖(いるまのヒロイン・d10260)
    大和・呉葉(秘密のヒロイン・d21319)

    ■リプレイ


    「俺達は駐車場にいるから」
    「何かありましたら、連絡を。突入しますので」
     レイシー・アーベントロート(宵闇鴉・d05861)と、アーナイン・ミレットフィールド(目に見えているものしかない・d09123)は怪人のいる店内に向かう仲間達を見送る。
    「此方は此方で、準備を整えておこう」
     峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705)も仲間達を見送ると、灯油缶を手に歩き出す。
     戦闘開始が遅い時間になった時に燃やして明かりにする為、ゴミを集めておこうと思っての事だが。
    「……綺麗な所だな」
     見える町並みは実に綺麗であった。

    「臨時休業のところ申し訳ありません」
     鎌北・桜湖(いるまのヒロイン・d10260)が断りを入れながら、「本日臨時休業」と張り紙のある扉を開く。
    「バターの量を間違えるな。多すぎても少なすぎてもいかん」
    「おう!」
     そっと中に入ると、厨房の方から聞こえてくる声。
     見れば、人影が3つ。その内一つは、頭がとてもでかい。
    「奥にいるな。指導中みたいだ」
    「ん? 君達は?」
     中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)がの声を聞きつけて厨房から中年の男性が出て来た。
    「店長さんですか? 私達、タレカツ丼を食べたいのですが」
     雨月・ケイ(雨と月の記憶・d01149)が申し出ると、相手は困ったような顔になった。
    「おいおい? 表に張り紙してあったろ?」
    「此処のタレカツ丼が美味いって聞いて、是非食べたいんだよ」
     それでも、松田・時松(女子・d05205)が食い下がる。
    「そう言ってもな……他に行ってくれないか」
     しばし考えてから小さく頭を振って、店主は背中を向けて厨房に戻ろうとした。
     灼滅者達が「タレカツ丼を食べに来た」と言っているのは、怪人の調理指導を聞いてみたいからだ。
     それこそが、全員で入ってそこまでだ! とやらなかった理由である。
     が、そんな思惑を知らない店主にしてみれば、臨時休業を出してるのに押しかけて来た客、になる。
     良い顔をされないのも、仕方ない事だろう。
    「まあ待て」
     しかし、助け舟は意外な所から出された。
    「お前のコトレータ、彼らに食べて貰えば良かろう。お前も、客がいた方が張り合いが出るだろう?」
     厨房に戻ろうとした店主を遮り止めたのは、なんと敵であるコトレータ怪人だ。
    「それもそうだな」
    「そう言う事だ。お前達。座って待っていろ。すぐにロシア料理、コトレータを食わせてやる」
     ちらりと揚げ物の頭を覗かせて告げる。
    「味は、ロシアから来た我が保証しよう」
    「本場の味って事ね。気になるけど、その指導って私達も受けられないかしら?」
    「うちの厨房はそんな広くねえよ」
     大和・呉葉(秘密のヒロイン・d21319)の提案こそ断られたが、追い出される事は避けられた。
     怪人の目的はコトレータを広めてロシア化を進める事。
     それには、コトレータの作り方を教えるだけでは足りない。食べる客が必要である。
     そこまで彼らが読んでいたのかはともかく、灼滅者達の興味と、怪人の利害が一致した結果であった。


     5人の前に並んだ、ご飯の上にやや丸みを帯びた揚げ物が乗った丼。
    「これがコトレータですか。うん、カツレツとはちょっと違いますね?」
     形状や気づいた点をメモに取ってから、桜湖がペンを置いて箸を取る。
     そして一口。
    「あら、これは……」
    「旨いね」
     同じくメモを取っていた時松と、顔を見合わせる。
     これは新潟の美味しいお米と調和するのか――そんな彼女の疑問は、この一口で払拭された。
     ご飯とバターの相性は、結構良い物だ。
     怪人は、敵だ。でも、旨いもんは旨いのだ。
     しばし、5人は無言になって食事を続けるのだった。
     一方、その頃。
    「新潟には何もないって思うだろ? 地味に色々あるんだぜ」
     新潟について語り始めるレイシー。
    「水と米と魚が美味いし酒も美味いらしいし、知られざるラーメン激戦区だし漫画家たくさん輩出してるし、サッカーのサポーター動員数はすごいし大きな水族館あるし。えーとそれから……」
     思いつく限りをまくし立てる。
     『調理指導聞いてる(^0^)b☆』との時松からのメール以降の連絡がない為、ぶっちゃけ、やや暇だった。
    「ふむ。甘いものはないのか?」
     辺りの枯葉を綺麗に拾い終えた清香が、尋ねる。彼女は甘党だ。
    「甘いものなら、笹団子お勧め。俺も帰りに買って帰るつもり」
     レイシーが思いついたのは、お土産にするつもりだった品。
    「まあ、うん。なんか知らないけど好きなんだよな、新潟。俺、ご当地ヒーローじゃないんだけど」
     2人の会話を、アーナインは微動だにせず黙って聞いていた。
    「……」
     風にコートの裾が揺れても、彼自身は彫像の如く動かない。
     今はまだ、動くべき時ではない。

    「これは素晴らしいですね! すぐに新潟を代表するグルメになりますよ!」
     食べ終えたケイが口元を拭いながら、賞賛の言葉を口にする。
    「ですが……先生。なぜ新潟を選んだのですか? 特別な理由があるとか?」
     賞賛は、おだてる事で探りを入れる為だ。
     気を良くさせて口を軽くさせようと言う目論見である。
     だが。
    「それは新潟に……待て。何故、我が新潟を選んだ事を気にする?」
     途中まで言いかけた所で一転、怪人がケイに疑いの視線を向ける。
     予想外の形で返され、ケイが言葉に詰まったその時。
    「これは、これで確かに美味しいけど……やっぱり、カレーの方が美味しいわね」
     呉葉の一言が怪人の注意を逸らした。
    「タレカツと、そんなに大差ないんじゃない?」
    「大差ない、だと……」
     続いた言葉に、怪人の声が怒りに震える。
    「確かにコトレータは美味い、だがタレカツ丼にはタレカツ丼の良さがあるだろ」
     そこに、銀都がさらに追い討ちをかける。
    「これじゃダメだ。肝心なものが抜けているぜっ!」
     銀都がビシリッと指を突きつけた直後、店の外から扉が勢い良く開かれる。
    「ソコまでで御座います、ロシアン怪人」
     桜湖と時松の送信したメールを見て、突入してきたアーナインだ。
    「そうか……お前達敵であったか」
     ここに至って、灼滅者達を見る怪人の目に、明らかな敵意が浮かんでいた。


    「やっぱり夕方近くなったか……」
    「ようやくだな。狩ったり狩られたりしようか」
     それぞれの殲術道具を手に、駐車場で待ち構えていたレイシーと清香が怪人と配下を迎える。
    「周囲を巻き込むのは我々も本意では御座いません。人払いを致しますが、よろしゅう御座いますね?」
    「好きにするが良い」
     アーナインの言葉に鷹揚に頷き返す怪人。
    「改めて名乗ろう、平和は乱すが正義は守るものっ! 中島九十三式・銀都だっ」
     名乗りを上げると同時、人を寄せ付けぬ殺気を放つ銀都。
     あまり平和も乱さない方が良いと思います。
    「ロシアン怪人が一人、コトレータ怪人」
    「教えてやるよ、真の美味しさが何であるかを」
    「それは楽しみだな」
     怪人も名乗り返し、灼滅者達と睨み合う。
    「日本の生命線と言える米所の新潟に目をつけるとは、さすがロシア怪人。一味違いますね」
    「おだてた所で何も喋らんぞ」
     ナイフを手にケイが進み出て、戦場の音を遮断する能力を発動する。
    「遠い北の地から遥々いらしたお客人ですから。丁寧におもてなしをしなくては」
     ニッコリと笑みを浮かべて、桜湖が槍を手に進み出る。
    「異国の料理を取り入れるのはいいさ。でも、新潟の風土から生まれたタレカツをあっさり捨てるべきじゃない。ボクはタレカツに代わって戦う。怪人は許さん!」
     簡単にロシアに染まらず逆に食う程の熱い新潟ソウル。
     そんな期待を胸に、時松も得物を構える。
    「看板メニューを変えた程度で征服できるとは、思えないんだけど」
     呉葉が小さく嘆息混じりに呟く。
     まあ、怪人のやり方とか理由が良く判らないなんて、良くある事だ。気にしちゃダメ。
    「なんにせよ、人のご当地を否定する者に……ご当地を愛する資格なんてないわよっ!」
     敗北を恐れぬ意思を宿したオーラを纏い、言い放つ。
    「何と言おうと我はロシア化計画を止めはせん……ゆくぞ!」
     その言葉の直後。
     ふわり、と。
     巨体に似合わぬ身軽さで跳躍した怪人が、頭上から次々とコトレータを降らせる。
     ばら撒かれたコトレータの爆発が、次々と灼滅者を飲み込んでいく。
    「お前の相手は――」
    「こっちよ!」
     爆発の煙が収まりきらぬ中から、銀都と呉葉が着地した怪人の前に躍り出る。
     仲間が配下を倒すまで、怪人を抑えておくのが2人の役割。
     銀都の足元で影が蠢き、触手となりて怪人へと伸びる。
     しかし、怪人は影に絡みつかれたまま、跳び上がった。オーラをまとった呉葉の拳は空を切る。
    「どうした。我に教えるのではなかったのか?」
    「切り札って、必要な時まで隠しておくものなのよ?」
     背後に降り立った怪人の余裕の言葉に、振り向いて言い放つ。
    「配下の方、手早く倒してしまいましょう」
     ケイが間合いの外でナイフを振るう。刃が風を斬り、渦巻く風の刃が放たれ配下を斬り裂く。
    「冷たくなった揚げ物って……悲しいよな」
     レイシーの魔法が空間から熱を奪い、配下も怪人も凍りつかせる。
    「コトレータは冷凍食品には不向きそうですよね」
     桜湖の槍から放たれた鋭い氷の牙が、配下を痛烈に貫く。
     アーナインは無言で枯れ木のように細い腕を上げ、配下へ向けた指で十字を切る。
     指の動きに一瞬遅れて出現した赤い逆十字が、配下を引き裂く。
     さらに清香が響かせる神秘的な歌声が、配下の脳を揺らし精神を揺さぶる。
    「ぐっ……これしき!」
     重ねられた攻撃にふらつきながらも、配下は慣れた手つきで怪人にラードをかける。
     配下となる前から染み付いた料理スキルが、見事に発揮されている。
    「てか、爆発するってもう料理じゃないよ」
     思わずツッコミを入れながら、時松はブリザードビームを放とうとし――直前で考えを変えた。
     実際に食べた彼女には、コトレータの恐ろしさと旨さ(要するにダメージ)が想像ついていた。ならば、回復の方が有効だ。
     優しい風が吹き抜け、前に立つ仲間達を癒していく。
    「これ以上はさせぬよ」
     清香のウロボロスブレイドの刃が伸びて、配下に巻きつき切り裂く。
    「これで」
    「終わりです」
     レイシーが圧縮した魔力を矢とし、ケイの両手からオーラが放たれる。
     2つの光に貫かれ、配下はゆっくりと崩れ落ちていった。


    「とっておきの技を見せてあげるわ!」
     消え切らぬ炎に顔をしかめながらも、呉葉が間合いを詰める。
    「大和ダイナミック!」
     正面から怪人を抱え上げ、投げ落とす。衝撃と爆発が、怪人についたラードの盾を削ぎ落としていく。
    「それが切り札か?」
     しかし、怪人は跳ね起きる勢いを乗せた強烈な飛び蹴りを呉葉に叩き込む。
     その威力に、呉葉の意識が一瞬途絶える。
     倒れる寸前、意志の力で踏みとどまるが、これまでの戦闘で蓄積したダメージは多い。
     早々に配下を倒した灼滅者達だったが、1人になっても怪人は的確に攻撃を当て、粘り強く戦っていた。
    「回復はボクに任せてくれ」
     その精緻な攻撃は、時松が癒しに専念していなければ、誰かが倒れていてもおかしくはなかった。
    「埼玉にはゼリーフライと言う揚げ物がありまして」
     桜湖は微笑を浮かべながら、槍の穂先をピタリと怪人に向ける。
    「おからコロッケです。美味しいですよ」
     放たれた氷の牙が、怪人の放ったコトレータを相殺する。
     撃ち落として食べられないのは残念、なんて思っているのは内緒だ。
    「ちっ……おからがなんだ。我は新潟以外の揚げ物に興味などっ!?」
     舌打ちした怪人が、突如仰け反る。
    「愉しゅう御座いますか? アーナインめは、愉しゅう御座いますよ」
     高速移動で背後に回り込んだアーナインが、表情を変えずに手刀で怪人の衣を剥いでゆく。
     口では戦いを愉しいと言いながら、今のアーナインはそれだけではない。
     戦いを愉しむだけでなく、戦って生きて帰らなければ、と言う意志を抱いていた。
    「計画の邪魔をされて楽しめるか!」
    「そうか? 中々良い闘争だと思うぞ」
     吐き捨てるように言う怪人に、清香は炎を纏い笑みを浮かべる。
     闘争の中に生の実感を感じながら、巨大な斬艦刀に炎を纏わせ、叩きつける。
    「新潟にコトレータを広めるなら、ロシアにもタレカツ丼を広めなきゃフェアじゃないんじゃないか?」
    「我が求めるのは共存にあらず!」
     説くレイシーを、怪人の放ったビームが貫く。
     痛みに顔をしかめながら、レイシーは鴉の羽を思わせる漆黒の刃を鞘から抜き放つ。
    「俺は今の新潟が好きだ。ロシア化なんかさせるかよ!」
     刃を高く構え、一気に振り下ろして斬りつける。
    「タレカツ丼がロシアの尖兵に屈するなど我慢なりません!」
     複雑に変形したナイフを手に、ケイが駆ける。
    「……まあ、タレカツ丼食べた事ないですけど」
     ポツリと付け足して、駆け抜けざまに、仲間が付けた傷をなぞる様に斬りつける。
    「約束通り、教えてやるっ!」
     不敗の暗示を自身に掛けた銀都が見据えるは、敵の向こうに見える勝利。
    「俺の正義が深紅に燃えるっ! 美味しさの秘密を語れと無駄に叫ぶっ」
     体から炎を噴出させながら、駆ける。
    「くらいやがれ! 必殺、料理に必要なのは愛情だーっ!」
     叫びと共に、炎を纏わせた逆朱雀を思い切り叩きつける。
    「トドメです。彩フォース・スーパーダイナミック!」
     間合いを詰めた桜湖がふらつく怪人を抱え、突き立てた槍を蹴って怪人を投げ落とす。
    「……さらば、ロシアの同胞よ」
    「御馳走様でした」
     手を合わせる桜湖の後ろで、コトレータ怪人が爆散し消滅していくのだった。

    「あー……お腹すいた」
     元に戻った配下の人を見送った後の、レイシーの第一声。
     お昼過ぎから待機して戦い終わったらもう夕方。お腹も減るというものだ。
    「調べておいたタレカツ丼のお店に行くつもりだけど、一緒に来る?」
    「タレカツ丼を食べて行くなら、私もご一緒します。折角なので」
     呉葉の提案にレイシーが頷くと、ケイもそこに同行を申し出る。
    「カツレツに紫蘇くらいならともかく、バターはどうなんだろうな」
    「美味しかったですよ?」
     清香の呟きに、メモを開きながら答える桜湖。
     そんな中、時松は突如、地元シックに陥っていた。
     北海道帰りたい。
     北陸の冷たい風は、彼女に故郷を思い起こさせる。
    「俺は、新メニューを開発する!」
     銀都はそう意気込んで、まだ臨時休業の張り紙のある扉を再び開く。
     怪人を倒しても、まだ店主がコトレータを作っているのか――なんて事まで深く考えなかったようだ。
     その背中を見送りながら、アーナインは小さく呟く。
    「いずれ調べてみませんとねえ。ロシアン怪人の拠点の在処を」
     だが、今は帰ろうか。自分を大切に想ってくれる人の元へ。
     こうして。
     新潟ロシア化計画の一端は灼滅者達の手によって潰えたのだった。

    作者:泰月 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 9
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ