樹海の漣

    作者:志稲愛海

     ざわりざわりと、風に煽られた群葉が、一斉に波立つ。
     そしてその漣の下……樹海の闇は、深く濃く。
     鬱蒼とした静けさは、侵入した者を飲み込まんと息を潜めているようだ。
     だが――そんな濃厚な漆黒にふいに降り注いだのは、白き光。
     同時に、彼の者の『声』が響く。
    「恨みに満ち満ちし自死せし屍よ。その身に宿す業をこの私に見せるのです。さすれば、その身に不死の力を与えましょう」
     刹那、朽ちて白骨と化した骸が、導かれるように蠢きをみせて。
     深淵の闇に潜み、その漆黒に溶け込むように。
     再び声が降る時を待つのだった。
     

    「一歩入ると出られない……って言われている富士の樹海だけどさ。実際はキャンプ場とかもあるんだって」
     飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)は、集まってくれてありがとーと灼滅者達にへらりと笑んだ後。察知した未来予測を語り始める。
    「白の王セイメイのことはみんなも覚えてるよね? 羅刹佰鬼陣の時に出現したダークネスなんだけど。そのセイメイが密かに動きをみせていることが分かったんだ」
     長月・紗綾(暁光の歌い手・d14517)が掴んできた情報。
     それは、富士の樹海に強力なアンデッドが現れているというものであった。
     そして裏で糸を引いているのは、あの白の王セイメイなのだという。
    「セイメイの力を得たアンデッドはね、ダークネスに匹敵する戦闘力を持っていて、富士の樹海の奥に潜んでいるんだけど。今回判明したアンデッドはね、右腕が大きな鋏のように異形化しているよ。みんなには、樹海の奥にいるそのアンデッドを倒してきて欲しいんだ」
     アンデッドは、今すぐ事件を起こすわけではないようであるが。
     セイメイが強力な配下を増やしていく事は阻止しなければいけないだろう。
     急ぎ、富士の樹海に向かい、アンデッドを退治して欲しい。
    「まずは樹海に入って、その大きな鋏のアンデッドを見つけるべく探索して貰う必要があるよ。とはいえアンデッドの大体の居位置は分かってるから、あとはしっかり準備して、マッピングとか迷子対策とったりして臨んでね。発見するのに手間取っちゃうと、下手したら富士の樹海で一夜を過ごすことになるかもしれないから。そして見つけた後、戦闘になると、大鋏のアンデッドは、ノーライフキングのサイキックに加えて、鋭利な刃で斬り刻んできたり、突き刺してきたり、殴りかかってきたりしてくるんだ。あと、鋭い牙や爪で襲い掛かってくる野犬の配下が4体、一緒に現われるよ」
     樹海の中は薄暗く、足場も良好とはいえないものの。
     灼滅者が動くには支障のない程度だという。
    「それにしても、片腕が大きな鋏のアンデッド、か……生前、美容師とか仕立て屋とか、鋏に関係することをやってた人なのかな」
     アンデッドとなったのは、富士の樹海で自害し眠っていた人の骸だというが。
     このアンデッドが人間であった時のことや命を絶った理由は、もう分からない。
     呟きを零した遥河は、ふと複雑な表情を浮かべるも、すぐにいつも通りの笑みを宿して。
    「危険な任務だし、広い樹海の中を探索するのは大変だろうけど。みんななら大丈夫って、オレ信じてるから」
     いってらっしゃい、と灼滅者達を見送るのだった。


    参加者
    蒼月・悠(蒼い月の下、気高き花は咲誇る・d00540)
    村雨・嘉市(村時雨・d03146)
    ピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)
    蓬莱・烏衣(スワロー・d07027)
    オリキア・アルムウェン(オリキアデランス・d12809)
    上土棚・美玖(中学生デモノイドヒューマン・d17317)
    綾河・唯水流(雹嵐の檻・d17780)
    大豆生田・博士(小学生ご当地ヒーロー・d19575)

    ■リプレイ

    ●漣の底
     暗く静かだった群樹の海が、ふいにざわりと音を立て、大きくうねる。
     その漣の中心――深い樹海の底を歩くのは、蒼月・悠(蒼い月の下、気高き花は咲誇る・d00540)。
    (「樹海ってこうイメージが怖いですよね」)
     隠された森の小路を発動させ、波立つ樹々の間を仲間達と共に進みながら。
     出来れば近寄りたくないです、と、昼だというのに異様に薄暗く感じる周囲を見回した。
     ――やって来たのは、富士の樹海。
     その雰囲気はどこか不気味で、重く澱んだ空気が静かに満ちている気がする。
     悠の思うように、好んでこの場所にやって来る人は少ないだろう。
     だが、この地に眠る骸がダークネスと同等程度の力を持つアンデッドとなり、樹海の何処かに潜んでいることが察知されたのだ。
     放っておけばどのような事態を招くか知れないアンデッドの退治。それが、今回此処に赴いた目的である。
     しかしそのためにはまず、倒すべきアンデッドを探さなければならない。
    (「それにしても行くのもいいんですが帰るのも大変そうですね。実は行きはよいよい帰りは……なんて展開になる可能性もあるんです」)
     くいっと伊達眼鏡を無意識に触りながらも、蒼き月の如き色を湛えた瞳をふと細める悠。
     エクスブレインの未来予測から大体の位置の目星はついているとはいえ。
     富士の樹海といえば、迷宮のイメージが強い。
    (「うっかり迷子になってる余裕はねえし、迷子になってもこんなとこじゃ助けに来てもらえねえだろうしなあ」)
     不用意に足を踏み入れたら最後……樹海の波のうねりに、あっという間に飲み込まれてしまうかもしれない。
    「しっかし、富士の樹海ってほんと広いのな。ESPがなけりゃとっくに迷ってそうだ」
     木の幹にビニール紐をくくりつけ、目印をつけた後。村雨・嘉市(村時雨・d03146)は、永遠に続くのではないかと思ってしまうほど深い樹海の底を、リング式スイッチで慎重に調光つつ懐中電灯で照らして。周囲に注意を配り、敵の姿がないかを探す。
     そして地図を広げ、現在地をしっかりと確認するのは、蓬莱・烏衣(スワロー・d07027)と大豆生田・博士(小学生ご当地ヒーロー・d19575)。スーパーGPSの効果によって示されたマーカーの位置を確認し、迷わぬように歩みを進めて。
     地上からだけでなく、空飛ぶ箒に跨ったピアット・ベルティン(リトルバヨネット・d04427)と綾河・唯水流(雹嵐の檻・d17780)が上空からも索敵する。
     青い空から見下ろす、鬱蒼とした樹木の海原。
     樹海の探索は冒険隊になったみたいで、最初こそちょっぴりわくわくしたが。
    「思ったより、見通しが悪いですね……べ、別に怖いわけじゃないですよ?」
    「見てて気が滅入る風景ばっかなの、可愛い動物でもいれば良かったのに……」
     そう仄暗い樹海を見下ろす唯水流と、どうせならもっと景色が良い所を探索したかったなぁと、木にぶつからぬよう気をつけつつ双眼鏡を覗き込むピアット。
    「やっぱ涼しいし静かだな」
     山対策も万全、少しだけハイキング気分で都会とは違うひやりとした空気を感じつつ、秋の色に染まった落ち葉を踏みしめる烏衣も。
    「けど、はぐれねーように気を付けねぇとな!」
     再度、現在地を把握すべく地図へと視線を落とした。
     博士も皆と固まって歩き、引き続きスーパーGPSを発動させながらも。
    「セイメイって、あの安倍晴明と関係あるんだべか? にしても樹海は不気味な感じがするべ……」
     そう、ふと呟く。
     今回の事件に関わっていると予測されたのは――白の王セイメイ。
     以前にも灼滅者達の前に現われた、強大なノーライフキングである。
     そのセイメイが、秘密裏に行動を起こしているらしい。
    (「自殺した魂使うとか相当性質悪いな。くだらねぇ企みとかぶっ壊してやるぜ」)
     セイメイが蘇らせたアンデッドの討伐は勿論。出来れば情報も持ち帰りてぇ所だな、と烏衣も双眼鏡で周囲を警戒して。
    (「死者を冒涜する行い、許すわけにはいかないよ」)
    (「相手がセイメイだろうと何だろうと思い通りになんて絶対にさせないわ」)
     オリキア・アルムウェン(オリキアデランス・d12809)と上土棚・美玖(中学生デモノイドヒューマン・d17317)も、ダークネスの目論見を打破すべく確りと前を見据える。
     毎年、日本で自殺者は数万人にも及ぶといわれており、この富士の樹海で見つかる亡骸は多数だという。
     美玖はふと少し離れた場所に目を向け、哀しい事実よね、と。
     秋色の瞳をそっと、一瞬伏せるも。
    (「自ら命を捨てる事は、けして良いことじゃないわ。けれど死者をしてなお利用し冒涜し続けるなんて絶対に許せない」)
     近くの木に赤い紐で目印をつけ、地図にこの場所のメモをしておいた。
     ノーライフキングによる死者への冒涜。それは特に、エクソシストである者にとっては許せない行為だろう。
    (「たくさんの人が命を失くした場所……そう思うと少し肌寒いな……」)
     薄浅葱の三つ編みを結ぶリボンを小さく揺らし、双子の兄・ビハインドのリデルを伴いながらも、オリキアは腕を抱えるように擦りつつも。
     安心して眠らせてあげないと……そう、樹海の底を踏みしめながら静かに黙祷を捧げる気持ちを抱き、歩みを止めない。
     それから、樹海の澱んだ空気に心を飲み込まれないようにと。
    「珈琲や今川焼き持ってきたんだけど、よかったらみんなで食べない?」
     そう携帯食や水を入れてきたアイテムポケットからオリキアが取り出したのは、つぶあんやこしあんや白餡、カスタードにチョコ味の甘い今川焼きと。ブルーマウンテンがベースの、美味しいオリキアブレンド珈琲。
     暗い気分ばかりにならぬよう、暫し一休みの提案を。
     そんなオリキアからお菓子を受け取り、少しだけ表情を緩めた後。
     悠は、宿敵・ノーライフキングへの複雑な思いを胸に。
    (「お願い、私に力を貸して下さい、お母様、お父様」)
     黒の群葉の隙間から零れる、高い高い空の蒼を見上げた。
     ――その時だった。
    「あっ、あそこに何かいるみたいなの!」
    「もう少し距離はあるようですが……皆さんに知らせましょう」
     何者かの存在にいち早く気がついたのは、上空にいたピアット。
     唯水流もフードを手で抑えつつ、すぐに一旦地上へと降りて仲間に異変を知らせて。
     烏衣や博士が地図を確認すれば、そこは、未来予測された敵の居場所のすぐ近く。
     悠が進むべき道を作り、新しい目印を木に結んだ嘉市がその道を照らして。
     これまで辿った道に伸びる、赤きアリアドネの糸。
     美玖は己の足に結ばれた赤い糸を一度、振り返った後。
    「! この方向で間違いなさそうね」
     そう顔を上げ、闇の先へと視線を向けた。
     常時DSKノーズを発動していた彼女が、微かに『業』を嗅ぎ取ったのだ。
     まだアンデッドが蘇ったばかりであるためか、それは極仄かな匂いであったが。
     敵のいる方向や大体の距離をはかる情報としては充分。
     灼滅者達は息を潜め、頷き合って。ざわめく樹海の奥へ向かう足取りを、ぐんと速めた。

    ●寄せる風波
     シャキン、シャキン……そうはっきりと耳に届く、刃の鳴る音。
     その傍らには、鋭利な刃の犠牲になったらしき野犬が4体。
     自らの手で人生の幕引きをしたはずの彼は今、アンデッドとなって、樹海を彷徨う。
     そして徘徊しながら待つのは、樹海に迷い込んだ人間か……はたまた、自分を蘇らせた白き王か。
     だが、彼の間近に迫るのは、そのどちらでもない。
     灼滅者達はまだ自分達の存在に気付いていないアンデッドに静かに近づきながら、迅速に陣を成して。
     視線を交わし合い、一気に地を蹴った。
    「テメェに何があったか知らねぇが。躊躇わねぇぜ、ぶっとばしてやる」
     こっちの企みの為だ! と烏衣が勢い良く地に叩きつけた衝撃が、不気味なほど静かであった樹海に轟音を鳴らして。
     大鋏アンデッドを中心に、野犬数体をも巻き込んで大気を振るわせる。
     さらに彼と同時に動いたのは、嘉市。
     このアンデッドが生きていた時に、何を考えていたかは、もうわからないが。
    「脅威な存在である以上本来あるべき姿に戻ってもらうぜ」
     眼光鋭き瞳で捉えた敵へ、燃え盛り渦巻く赤き炎の一撃を叩き込む。
     そして戦場と化した樹海の底を泳ぐように舞うのは、悠の投じた心惑わせる符。
     たとえ乱心する頻度が低くても、動きを阻害できれば、雑魚を倒すまでの足止めになる。
    『うウぅぅ……ガアアア!!』
     不意をつかれたアンデッドは、重ねられた攻撃に思わず数歩後退るが。漸く灼滅者達の存在に気付き、耳を劈くほどの雄叫びをあげた。
     だが、それで怯む灼滅者達では勿論ない。
    「生前の貴方をボク達は知らないけれど、せめて静かに眠れるように……!」
     霊撃を放つリデルを前へと送り出しつつも、ダークネスに近い能力を持つという敵を相手に万全を期すべく、自らに暖かな光を降らせるオリキア。
     そして仲間が大鋏を引きつけている間に、残りの皆で1体ずつ攻撃を野犬へと集中させていく。
    「まずは数を減らさないと」
    「吠えたり噛んだりする犬は大っきらいなの!」
     美玖の利き腕が巨大な刀に形を変えた刹那、果敢に地を蹴り、野犬へと見舞われる斬撃。
     昔噛まれた思い出から犬に苦手意識を持つピアットも、かき鳴らしたギターの音波を同じ野犬に見舞い、同時に己のジャマー力を高めれば。
    「悪いけど、ここに君たちの留まる場所はないよ」
     ――龍撃振破! 来い、タロウマル! ジロウマル!!
     その声と同時に唯水流の手に握られたのは、青と白の巨大斧と壮麗なロッド。そして雷宿す一撃が、天へと突き上げられる。
    「大鋏のアンデッド、鋏がすんげえ強そうだあ。ちょん切られねえようにしねえと」
     博士が強敵との戦いに備え、脳の演算能力をより活性させると同時に。けたたましいエンジン音を鳴らし、主や仲間達の盾となるべく敵目掛け突進する、しもつかれ。
     そんなたたみこむような奇襲に、完全に不意を突かれたアンデッド達であったが。
    『ガアア、ウォオオオ……!!』
     灼滅者達を斬り裂かんと、鋭利な刃や爪を大きく振り上げる。

     奇襲を成功させた灼滅者が、優位に戦いを進めている戦況。
     ……だが。
     嫌な予感がする――そう得体の知れぬ不安が拭えぬ唯水流。
     彼の懸念は、大鋏のアンデッドなどではない。その背後にいる、白の王セイメイ。
     そして、静かで深く重い空気を孕む、この富士の樹海。
    (「事態はもっと深刻かもしれない……なんだろう、落ち着かない……集中しなくちゃ……」)
     とはいえ、気になることは多々あるが。まずは、目の前の戦いを制してからだ。
     皆で無事、帰る為にも……。
    「綾河唯水流、出ます!」
     唯水流は改めて気を引き締め、強烈な斧の一撃で野犬1体を真っ二つに粉砕する。
    「自由にはさせねえべよ」
     野犬を仲間達が殲滅するその間、邪魔はさせないと。
     確りと狙いを定め、大鋏へと見舞った博士の魔法光線としもつかれの機銃掃射が、鋭利な鋏を振り上げていたモロにアンデッドの身を貫けば。
    「危ない時の援護射撃だべ。良かっただ」
     博士が大鋏を抑えている間、烏衣の魔力宿す強烈な殴打がさらに1体、野犬を地に還して。嘉市の紡ぎ出した破壊の禁呪が、弱った残りの野犬を纏めて一掃した。
     これで残りの敵は、大鋏のアンデッドのみであるが。
    「……ッ!」
     刹那、唸りを上げ突き出されたのは、灼滅者の身を穿たんとする鋭き刃。
     これまで目の前で抑えていた博士へと、容赦なく飛んできた一撃。
    「今、治しますね!」
     だがその傷を塞べき動いたのは、悠。
     伊達眼鏡に触れた後すかさず放たれる、癒しの力を宿した守護の符。
     霊障波を放つリデルと連携し、さらにオリキアの飛ばした影の刃がアンデッドを切り裂き、敵に施された強化を無に返した。
     しかし相手は、ダークネスと同等の能力を持つアンデッド。
     集中砲火を見舞っても、そう簡単に討ち取るまでにはまだ至らない。
    「!」
     逆に、輝く十字架を成し、前衛の灼滅者達を纏めて薙ぎ払わんと光線が繰り出されて。得物の攻撃力を奪いにかかる。
     それは複数攻撃ながらも、強烈な威力を誇っていたが。
    「もう大っきらいな噛む犬もいなくなったし、任せるの!」
     状態異常ごと打ち消す、立ち上がる力をもたらす響きを奏でるピアット。
     そしてアンデッドは、そんなピアットがこれまで付与してきた氷や毒の衝撃に悶え、呻き声を上げた。
     美玖は回復を担ってくれたピアットに、ありがとうと礼を言いながら、携えた盾を広げて前衛の護りを固めて。
    「どのような怨みがあろうと、死者は土に還ってください」
    「必殺! ご当地富士山ビ~~~~~~ム!」
     雷を帯びた唯水流のタロウマルとジロウマルが唸りを上げ、アンデッドの顎を大きく跳ね上げた刹那。ガイアチャージで吸収したご当地パワー全開、博士の必殺技が炸裂する。
     そして、その衝撃に思わずよろけたアンデッドの隙を決して見逃さずに。
    「セイメイの手下ってんなら強いんだろ? もっと楽しませろよ!」
    「業火に沈め!」
     烏衣がぶん回した金属バットの魔力を秘めた強打が、敵の身体にモロにめり込んだと同時に。
    『! ガァッ……アアアァアアッ!』
     嘉市の叩きつけた激しい炎の衝撃が敵の全身を駆け巡り、その仮初の命を燃やし尽くしたのだった。

    ●深海の入口
     無事にアンデッドを撃破した灼滅者達。
    「ピアにはこれくらいしかできないけど、安らかにお眠り下さいなの」
     ピアットはオリキアと共に、眠っていたところを起こされたアンデッドや犠牲になった野犬へと黙祷を捧げて。
     因縁のある宿敵への複雑な思いを、改めて胸に抱きながら。
    (「まだ奴の手の平の上でしかない。でも、いつか届いて見せる、そして、その首を……!」)
     うっすら色を変え始めた空を見上げる悠。
     そして烏衣は再びスーパーGPSを活用すべく、地図を広げた。
     しっかり充分な対策を取って来た為、これから帰れば、迷わず樹海から抜け出せるだろう。
     ――だが。
    「富士山へ向けて探索してみませんか? なんでもいいからセイメイの手がかりを追いたいです」
     勿論、仲間の同意を得られなければ無理はしない。
     だがやはりどうしても気になり、そう皆に提案してみる唯水流。
     そんな彼が特に気にかけているのは――樹海の先にある芙蓉峰・富士山。
     皆も、もしかしたら何かがあるかもしれないと、唯水流の声に耳を傾けるが。
     だがしかし……もしかしたら危険が伴うかもしれないし。逆に何もなく、ただの徒労に終わるもしれない。
     アンデッド討伐という目的は、無事に果たせた。
     富士山の探索へと赴くか、それとも、とりあえず一旦戻るか。
     これからの事後、どう行動するかを……灼滅者達は、それぞれ考えてみる。
     静けさが戻ってきた、樹海の漣の下で。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月15日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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