ちらりとぽろり

    作者:陵かなめ

     夕暮れの繁華街にて。
    「私、アイドルのぽろろん。私の踊り、見てくれた?」
     激しい踊りでズレた衣装からいろんなものがぽろぽろと見え隠れしている。
     胸の部分を見せ付けるように手直ししながら、ぽろろんは踊りを見ていた少年達に迫る。
     少年達は、口々にぽろろんを褒め称えた。
    「ありがと。じゃあ、この黒いカードあげる。みんな、人を殺してきて? お・ね・が・い☆」
    「ふんっ。あざとさがミエミエで笑っちゃうわ!」
     その時、屋根の上から嘲笑するような声が聞こえた。
    「誰?!」
     ぽろろんが見上げる。そこには短いプリーツスカートとようやく胸が隠れるかどうかのトップスを身に纏った少女が腕を組んで立っていた。
    「あたしは地良・りずみぃ(ちら・―)。ラブリンスター様配下の淫魔アイドルよ! さぁぽろろん、そんなあざとい真似をせず、あたしと勝負しなさい」
     言うと、りずみぃは飛び上がり、大袈裟なポーズで繁華街に降り立った。カートはめくれ上がり、トップスは翻り、色々なところがチラチラと見える。
    「くっ。アイドル勝負ね。挑まれたからには、受けてたつわ!!」
     ぽろろんは、ズレた衣装のお尻の部分を指で整えながら、りずみぃをにらみつけた。
     
    ●依頼
     HKT六六六から黒いカードを受け取った男子達が殺人事件を起こそうとする事件を知っているだろうか。この黒いカードを少年達に渡していたのは、フライングバニー服を着用したHKT六六六の強化一般人であることがわかったと言う。
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は説明を始めた。
    「この情報を調べてきてくれたのは、相良・太一(土下座王・d01936)さんなんだけどね。事件は一筋縄ではいかないみたいなの」
    「どんな感じで?」
     話を聞いていた空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が質問した。
    「実は、大淫魔ラブリンスター配下の淫魔が、フライングバニー服の強化一般人にアイドル対決を挑もうとしているの」
    「……え、うん」
     アイドル対決とは一体……? 紺子は当惑の目をまりんに向ける。
    「ラブリンスター配下の淫魔はアイドル対決が目的のようだね。勝てば満足して帰っていくし、負ければフライングバニー服の強化一般人に戦闘を挑むよ」
     周囲に被害を及ぼすような事はしないようではある。
     だが、アイドル対決を邪魔しようとすれば、敵とみなして攻撃してくるので注意が必要だろう。
    「何か、いきなりだね」
    「うん。予想外の展開だけど、博多の少年達に黒いカードを配っているバニー服の強化一般人は放置できないよね」
     というわけで、事件解決のため博多に向かってほしいと説明された。
    「あ、フライングバニー服の強化一般人はぽろろん。ラブリンスター配下の淫魔は地良・りずみぃね。で、二人の対決はその場のノリで決まるみたいだし、うまく提案できたら、対決内容を指定できるかもね?」
    「対決内容かぁ……。うーん。えーと。要相談?」
     紺子とまりんが曖昧な笑みを浮かべる。
    「アイドル対決にりずみぃが負けたら、一緒にぽろろんと戦うこともできるかも」
    「それって、すごく戦闘が有利になるよね?」
     紺子の言葉にまりんが頷いた。
    「うん。でも、配下の淫魔がアイドル対決で負けたってことになれば、ラブリンスターの機嫌は悪くなるかも」
     戦闘になれば、強化一般人ぽろろんはサウンドソルジャー相当の強力なサイキックを使ってくる。
    「ぽろろんは、ダークネス並みの戦闘力を持っているんだ。りずみぃと互角か、少し弱いくらいなの。だから、見た目に惑わされないで、油断しないでね」
    「そっか。そういえば、場所は繁華街なんだよね。じゃあ、通行人もいるってこと?」
    「うん。夕暮れ時だからね。通行人は普通にいるし、人払いや戦いに巻き込まない工夫は必要かも」
     なるほど、頷きながら紺子はふと思いつく。
    「あ、そうしたら、もしかしてアイドル対決の観客が全員妁滅者ってことになるかも……?」
     盛り上がるもよし、観察するもよし、それはそれで楽しい……のだろうか?
    「えー、アイドル対決って言うのはよくわからないけど、とにかく健闘を祈るね」
     最後に、まりんは教室に集まった灼滅者達を見た。


    参加者
    姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)
    笙野・響(青闇薄刃・d05985)
    坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)
    香坂・天音(アムネジアバレッツ・d07831)
    テレシー・フォリナー(第三の傍観者・d10905)
    雨松・娘子(逢魔が時の詩・d13768)
    河内原・実里(誰が為のサムズアップ・d17068)
    高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)

    ■リプレイ

    ●真のアイドル?!
     りずみぃとぽろろん。向かい合う二人の間に、香坂・天音(アムネジアバレッツ・d07831)が割り込んだ。
    「その勝負、ちょっと待った!!」
     突然の乱入者に、りずみぃが表情を曇らせる。
    「何なの? あたし達の対決を邪魔する気?」
     不機嫌そうな声に、殺気が漏れ出た。
     邪魔? とんでもないと天音は首を横に振る。
    「あたしもアイドルに憧れたりしたけど、ルックスで諦めたのよ。そんな一般人の審査の下で勝負する気はない? 真のアイドルなら断れないはずよ」
    「し、真のアイドル」
     りずみぃがごくりと喉を鳴らした。
    「そうね。真のアイドルとして、その提案、受けてもいいわよ?」
     ぽろろんも、真のアイドルという言葉に心を奪われたようだ。
     天音が提案したのは、かの大淫魔の曲を課題曲として、歌唱とダンスの対決だ。
     ところがぽろろんはこれに難色を示した。
    「そんな曲、聴いたことも無いしぃ。それに、私、歌よりも踊りで見てほしいなぁ」
    「おまえならやれるって、まじ、その才能に嫉妬するわ」
     すかさず、テレシー・フォリナー(第三の傍観者・d10905)がぽろろんをおだてる。
    「アイドル対決として決着をつけるのに相応しい、んじゃないか?」
     DancePerformanceも歌も重要なfactorの一つ。だからそこ、と坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)。
    「そ、そうかな」
     おだてられ、まんざらでもない様子でぽろろんが迷い始める。
     その頃、高柳・一葉(ビビッドダーク・d20301)の放った殺気によって、人払いが始まっていた。
     殺気を避けるように、商店街から一般人の姿が消えていく。
    「これでアイドル対決という名の戦場は、アイドルな2人と、私達灼滅者のステージになるわけだ」
     楽しませてもらっちゃおうか♪ と、一葉。
     手助けをするように、紺子や柚羽、ハリーも避難の誘導を行う。
     気づけば、付近に居るのはアイドル2人と灼滅者のみとなっていた。
    「何だかんだ言っても、アイドルはダンスや歌がなってないとね~」
     それに、ダンスや歌で対決するのなら一緒に盛り上がるにも最適だと思う。
     一葉が言うと、皆が頷いた。
     周りは歌とダンスの対決を望む声ばかりだ。
    「やっぱり、歌って踊れる女子って素敵だよね。男から見たら」
     河内原・実里(誰が為のサムズアップ・d17068)が言うと、りずみぃが妖艶な笑みを返した。アイドル対決を意識して、男子を取り込む算段だろうか。
    「あたしは別にイイけどぉ。真のアイドルとしてはこれくらいの勝負、ね。くすっ。貴方、自信が無いのねぇ」
     身体をくねらせ、ぽろろんを挑発する。どうでもいいけれど、真のアイドルという言葉がよほど気に入ったようだ。
     するとぽろろんは慌てたように声を上げた。
    「何ですって?! 私こそが真のアイドルだからって、貶めるつもりね。そうはいかないわ。わかりました。この勝負、受けてやろうじゃないの!! 歌だって、踊りだって、負けないんだから」
     びしりと指差し、ポーズをとる。
    「じゃあ、決まりだね」
     笙野・響(青闇薄刃・d05985)が手をたたく。
    「俺達は、しっかり観戦させてもらおう」
    「そうですね。見守らせていただきます」
     雨松・娘子(逢魔が時の詩・d13768)と姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)が観戦できるような場所に落ち着くと、紺子をはじめサポートのメンバーも二人の対決を見ようと集まってきた。
     未来の用意したCDプレイヤーにCDがセットされる。軽快でポップな曲が流れ出した。
     ぽろろんとりずみぃは、お互いにらみ合い、火花を散らす。
     灼滅者が見守る中、アイドル対決が始まろうとしていた。

    ●対決☆
    「これは見逃せませんなぁ。最前線で楽しませてもらわないと」
     さんざん持ち上げておいてなんだが、アホとアホの戦いキタコレ!! とテレシー。
     まず前に出たのはぽろろんだ。歌は並という感じだけれど、ダンスはそれなりに上手い。曲に合わせながらの軽快なステップが目を引いた。だが、踊りが激しくなるにつれ、衣装がズレて色々なものがぽろぽろ出始める。
    「あぁん。この衣装、ちょっとキツイかもぉ」
     顔を赤らめながらのアピールだ。しかし、観戦しているのは大半が女子。正直、ぽろりアピールばかりでは盛り上がりに欠ける。
    「さて、依頼はこなさないとね」
     今回は淫魔関係に加え男子一人の状態。正直言うと嬉しいが、浮かれずにいこうと思う。
     実里は対決が始まると、観戦していた男子――ハリーに近づき声をかけた。
    「直接見るよりも、程よく見えない方が想像力を掻き立てられるよね」
     と、さりげなくりずみぃを押す。うん。大丈夫。不正じゃないよ、たぶんね。
    「そう言うものでござるか。ではこれを使って盛り上がっっていくにござるよ!」
     ハリーが実里に手渡したのは、うちわに鉢巻、ライトなど。そばにいた優歌も加え、3人は並んでうちわを振り、りずみぃを応援する。
     曲の加速。その時を狙い、りずみぃが前へ出てアピールを始めた。
    「おお~」
     一葉が歓声を上げる。ぽろろんの激しく軽快なダンスもそれなりだったが、りずみぃのダンスは手足を大きく動かす、大胆なものだ。短い衣装がちらちらと揺れ、今にも何かが見えそうだ。
    「人は簡単に見れる物(ぽろり)より、隠された物(ちらり)に惹かれる。後少しで見えると思えば尚更、な」
     未来が至極冷静に語り出した。
    「りずみぃはさながら、幻を魅せるFataMorgana……ファタ・モルガーナ、か」
     って、何故こんな事を大真面目に解説しているのか。
     何となく落ち着かない様子で隣を見ると、セカイが頷きながらりずみぃを応援していた。
    「そうですわね。地良さんの純粋なアイドルに向ける熱意は、敬意を覚えます」
     もっとも、と。色々見えそうで見えない部分を見ながら控えめに笑う。
    「あのようなえっちさだけは真似できませんが」
     りずみぃが大きく手を上げた。
    「LOVEリ・ズ・ミィィ!」
     あわせるように手拍子をし、テレシーが声を上げる。
     響もそれに続いた。
    「リ・ズ・ミィィ!」
     ミッドナイトブルーのドレスに身を包み、きらきらと応援する響の様が輝いて見える。
     髪をかきあげコールすると、りずみぃが答えるようにウィンクを返してきた。
     娘子や天音も皆に合わせりずみぃを応援する。
    「ふうん」
     アイドルなんてチャラけた顔のイイ女がなるものだなんて、先入観ね、と天音が呟いた。
     今はりずみぃを応援するけれど、二人とも命を弾けさせて燃やして踊って声を挙げる。見ていると、自分まで動きたくなるような感覚だ。
     ともあれ、決着はつけなければならない。
     サポートするメンバーの声援も相まって、りずみぃコールで曲が終了した。
     アイドル対決の結果は歴然としている。
    「……っく。ま、負けた……。まだ、見せ方が足りなかったというの……」
     悔しさに顔をゆがめ、ぽろろんが膝をつく。
    「あはっ☆ みんな、声援ありがとぉ。あたしの勝ちねっ」
     対して、りずみぃは悩ましげなポーズで勝利のアピールを行った。
    「さ。それじゃあ、帰るわ。ふふふっ。あたしが真のアイドルね☆」
     真のアイドルという言葉にうっとりと酔いしれ、りずみぃがきびすを返した。
    「もう帰るのか。じゃあ、ラブリンスターに宜しく」
     娘子が声をかけると、りずみぃはふわりと振り向き、小首をかしげる。
    「単なる勢力争いの一環なのかもしれませんが、貴女方にとってアイドルというモノは穢す事を赦さない貴いものなのですね。できればこれからも良好な関係でありたいものです」
     セカイは彼女の労を労い、今後のことを含めて握手を求めた。
     けれど、りずみぃはくすりと笑いを漏らすだけで、その手をとらない。
    「あたしの気が向いたら、そういうこともあるかもねぇ」
     娘子とセカイの言葉にはっきりと答えるわけでもなく、りずみぃは去っていった。

    ●バニー服、行きます
     さて。
     皆に囲まれるようにしてうずくまるぽろろんは。
    「私はただファンを増やして、活動していただけなのに。ちょっと皆に人殺しをしてもらおうと思っていただけなのにっ。酷いわっ。あなた達が邪魔さえしなければ、ぽろりで武道館も夢じゃなかったかもしれないのに!! 許さないんだからぁ」
     がばりと起き上がり、憎悪の目を向けてくる。
    「いい感じで逆ギレきたわー」
     あと、武道館とかないからと、テレシー。
     戦いの気配を感じ取り、皆ぽろろんから距離を取った。
    「任務の手段としてアイドルを名乗る貴女と、純粋にアイドルというモノに憧れ、日々鍛錬して夢に近付こうと頑張る地良さん……アイドル勝負において貴女が勝てる道理もありません!」
     最初にセカイは癒しの矢を仲間に向けて放った。
    「なによぉ。こぅなったら、あなた達だけでも、メロメロにしちゃうんだからぁ」
     ぽろろんが腕を振り上げる。
     間合いをつかむための軽い一撃のつもりだろうか。それほど重くなさそうな殴打だ。
     最初の一撃をひらり避け、娘子がスレイヤーカードを構えた。
    「逢魔が時、此方は魔が唄う刻、さぁ演舞の幕開けに!」
     開放した姿は、まさしく変身と言うにふさわしい。男性的な雰囲気を一変させ、和風をアレンジしたような妖怪衣装を身に纏う。くるりと踊ればひらりひらりと縞々尻尾が飛び上がった。
    「今宵の聴衆はあいどるの方々! 小さな箱にございますけれどこのにゃんこ! 一生懸命唄いますれば!」
     バイオレンスギターをかき鳴らし、音波をぽろろんにぶつける。
    「や、は、ぁぁん」
     まともにダメージを受け、ぽろろんは苦しげに呻いた。震える身体を見てみると、自然と零れ落ちる大きな胸がゆさりと揺れている。
     その様を、ギリッと歯軋りして凝視するのは未来。
    「……胸なんて所詮飾り、だ」
     ぼそりとつぶやき、どす黒い殺気で敵を覆い尽くした。
    「なんなのぉ。皆、怖い顔しないで、私の踊りを見てぇ」
     殺気を振り払い、ぽろろんは立ち上がる。軽快なステップを踏み、ウサ耳を揺らす。しっぽもふりふりとバニー服の魅力をすべて引き出し、踊り始めた。
    「あなたは、きっと一般人に戻れば、本気でアイドルを目指せるような娘なのかもしれないね」
     あたしとは違って、と。小さく言い、天音がシールドを広げた。傍らにはライドキャリバーのハンマークラヴィアも控えている。
    「楽しませて貰った後で悪いけど、倒させてもらっちゃうよ!」
     同じくシールドを広げるのは一葉だ。
     二人のシールドが近くの仲間を守り、癒す。
    「ちゃんと私の事かばいなさいよね」
     ビハインドのフォルスを従え、テレシーが踏み込んでいった。殴りつけながら網状の霊力でぽろろんを縛り付ける。
    「きゃぁぁん。これ、きっつぅい」
     もたもたと絡みついた霊力と格闘している様子を見て、響が煤竹の小刀を構えた。
    「名前も『ぽろろん』さんだし、服破り、狙っていこうかなっ」
     言うと同時に、死角に回り込む。
     そのまま流れるような動きで、ぽろろんをバニー服ごと切り裂いた。
    「アイドル対決に『ぽろり』はお約束、よね?」
     さらりと髪をかきあげると、目の端に痛みをかみ締めるぽろろんが写った。
     そこへ、畳み掛けるように実里が迫る。
     ライドキャリバーのスロットに騎乗し、ガトリングガンを構えた。もう片方の手にはバスターライフルがある。
     暴れるスロットを器用に操り、連射でぽろろんを撃ち抜いた。
     たまらず、ぽろろんは後方へ吹き飛んだ。

    ●さよならバニー
     仲間の攻撃の手は多いが、ぽろろんは意外に打たれ強かった。バニー服も、簡単に破けそうでなかなかなくならない。
     トラウマを増やすべくテレシーがジグザグスラッシュを放てば、ぽろろんは妖しく身体をくねらせた。
    「ふぁあん。みえちゃうぅ。あぁ、見ないでぇ」
     悩ましげな美声を、まっすぐ実里にぶつけてきた。
     この美声、言っている内容はともかく何故か激しくダメージを負ってしまうのだ。
    「いや、敵味方はわかっているつもりだよ……?」
     そう言いながら、実里はくらくらする頭を不安げに振った。このままだと、仲間に銃口を向けてしまうかもしれない。
     すぐにセカイが癒しの歌声を実里に向けた。触発されたのか、先ほどのアイドル勝負の曲目を口ずさむ。
     隙を見せまいと、ハンマークラヴィアを突撃させ、天音自身も炎をたたき付けた。
    「……っく。私の……バニー服が、あぁ」
     ぽろろんの動きが鈍くなってきた。
     だが、まだ攻撃の意思があるのか、手足を伸ばし踊りを仕掛けてきた。
     手刀が鋭く迫ったが、一葉は身体を大きく後方にのけぞらせ後方へ跳ぶ。手をつき軽々と回れば、綺麗に着地して見せた。
    「大きな口で、飲んじゃうよ!」
     同時に、影を大きく伸ばし敵を喰らう。
     襲い来るトラウマに動きを止めたぽろろんを見て、未来と響が武器を構えた。
    「ここで動きを止めるねっ」
     まず響が跳ぶ。
     するりと死角に回り込み、敵の急所を的確に断ち斬った。
     続いて、未来が執拗にバニー服を切り刻む。
    「一つ言っておく……あたしはノーマルだからな?」
    「ふぇえん。バニー服が、なくなっちゃうよぉ」
     切り刻まれたバニー服の欠片を必死にかき集めるぽろろん。もう、見えるとかぽろりとか、そう言う状態ではないけれども。
     そこへ、ひらりと娘子が舞い降りた。
    「さあさ、終幕でございます! 皆様どうぞ、うまくできましたら拍手ご喝采を!」
     唄うような口上と楽しげな踊りでぽろろんを翻弄する。
     最後に一つ蹴り上げると、バニー服はビリビリに破け去り、消えていった。
    「Rest in peace,Bunny」
     未来の呟き。
     バニー服が消え、ぽろろんはその場にぱたりと倒れた。

    「う……うーん?」
     すぐにぽろろんは目を覚ました。
     さすがにそのままではまずいので、響の用意していたワンピースを着せ、未来の用意した服を羽織らせる。
     ぼんやりとしているぽろろんに響が問いかけた。
    「バニー服を手に入れた時のこと、覚えていたら聞かせてほしいな」
    「え……? バニー服? ごめんなさい、よく分からないわ……」
     返ってきた答えはあやふやなもので、ぽろろん自身の困惑が伝わってくる。
    「カードの出所とか、覚えてない?」
     天音の問いにも、首を傾げるばかりだ。一葉も一緒にカードを探したが、正気を取り戻したぽろろんは何も持っていなかった。

    「何にせよ、りずみぃ達のお陰でHKTの動向が掴めたんだ。感謝しないと、な」
     未来が言うと、響はあいまいに頷いた。
    「HKT六六六か。目的が分からないうちに、変な展開になってきたわね……」
     なぜアイドル対決だったのかは分からないけれど、取り合えずHKT六六六の目的を探るのは続行だろうか。
    「なにはともあれ、お疲れ様。依頼は無事完了かな」
     皆の無事を確認し、実里がぐっとサムズアップをしてみせる。
     仲間達は頷き、帰路へついた。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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