負けられない戦いが、そこにある

    作者:小茄

    「うふっ、リョーコとっても嬉しいなっ♪」
    「え、えへへ……」
     九州随一の繁華街を擁する博多の街で、今日も闇夜に蠢動する影。
     艶めかしいバニー衣装を纏った色香漂う女が、大学生と思しき男性三人組を籠絡し、自らの駒に変えようとしていた。
    「お礼としてぇ、これ上げちゃう! リョーコに会えない時はぁ、このカードをリョーコだと思って、大事にしてね?」
    「お、おう!」「も、もちろん!」
     手渡されるのは一枚の黒いカード。男達はあざとく手を握りつつ手渡されたそのカードを、それぞれの胸に抱く。
    「あ、それともう一つ。あなた達は特別な存在になったんだからぁ、何も我慢しないで嫌いな人や目障りな人、どうでもいい人やその辺の人、好きに殺しちゃって? リョーコはぁ、いーっぱい殺人しちゃう人が好きなの」
    「こ、殺すよ! ムカツク奴なら沢山居るからさ!」「お、俺だって!」
     唇に指を当て、上目遣いで言うバニーの言葉に、男達は我先にとそう答える。
    「ちょーっと待つのですっ!」
    「「?」」
     唐突に掛かる声に振り向けば、そこには桃髪にサイドテールが割とあざとい美少女の姿。
    「そんな下品な色仕掛けでアイドルを名乗るなんて片腹痛いにも程がありますぅ! 真のアイドルを知らない可哀想な皆さん……これからは、アカリが皆のアイドルですよぅ♪」
     星を飛ばしつつウィンクするアカリ。
    「ア、アカリちゃん……?」「……結構可愛いぞ」「うん……おれロリコンだし」
    「ちょ、何なのアナタぁ? お子様は引っ込んでなさいよね。邪魔すると痛い目見るわよぉ?」
    「子供じゃないですぅ! だったらどっちが真のアイドルか、勝負ですぅ!」
     かくして、二人の自称アイドル達によるガチンコバトルの幕が切って落とされたのである。
     
    「博多でバニー服の女から黒いカードを受け取った男子達が、殺人事件を起こすと言う事案についてはご存じ? このバニー服は、フラインクバニー服を着用したHKT六六六の強化一般人である事が解りましたわ」
     有朱・絵梨佳(小学生エクスブレイン・dn0043)の説明によれば、この情報をもたらしたのは相良・太一(土下座王・d01936)。
     ただし、事件は単純ではない。
    「実は……ラブリンスター配下の淫魔が、この強化一般人にアイドル対決を挑もうとしていますの」
     彼女の目的はあくまで「どちらがアイドルとして格上かを競う」事なので、アイドル対決に勝利すれば、満足して帰って行く。
     ただ、アイドル対決に負けるとこの強化一般人を実力で倒そうとするであろうと予測される。
     周囲に被害を出す様な事はしないだろうが、アイドル対決を邪魔する者は全て敵と見做すだろう。
    「え? 具体的には何を競うかって? さぁ……それはその場のノリで決まるんじゃないかしら?」
     その場に居る第三者は灼滅者達だけであるし、灼滅者が提案した方法で勝負させると言う事も、上手くすれば可能かもしれない。
    「ちょっと煩雑な状況ですけれど、とにかく我々としても黒いカード事件を放置する訳にはいきませんわ。急ぎ博多に飛んで下さいまし」
     
     今回戦場となるのは、博多繁華街の路地裏。
     バニーはリョーコと名乗る少女だが、戦闘力としては一般的なダークネスレベルで油断は出来ない。
    「ラブリンスター配下の淫魔であるアカリも、それとほぼ同等の力を持っていると予想されますわ。間違っても、両方を敵に回すような状況にはしたくないですわね」
     逆に、より有利な状況で戦闘を開始することも十分可能だろう。
     リョーコは、この時点で手玉にしている男子3人を戦闘に参加させるとも予測される。
     
    「事情が事情だけれど、貴方達なら上手くやれますわ。それじゃ、いってらっしゃいまし。……あ、そうそう……お土産は別に必要ありませんわよ」
     にこりと笑ってそう言うと、絵梨佳は灼滅者達を送り出すのだった。


    参加者
    千菊・心(中学生殺人鬼・d00172)
    黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)
    鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)
    ディーン・ブラフォード(バッドムーン・d03180)
    西園寺・奏(想いを得た少年・d06871)
    守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)
    深束・葵(ミスメイデン・d11424)
    泉夜・星嘉(星降り・d17860)

    ■リプレイ


     福岡の街で、今宵ひっそりと、しかし激しい抗争の幕が開けようとしていた。
    「どっちが真のアイドルか、勝負ですぅ!」
    「夏も終わったっていうのに、まだ飛んで火に入る虫がいたのねぇ?」
     方や、大淫魔ラブリンスターを主と仰ぐアイドル淫魔アカリ。
     方や、フライングバニー服を纏いHKT六六六の強化人間と化したリョーコ。
     そして彼女達の戦いに介入し、悲劇を回避せんとする武蔵坂学園の灼滅者達。それぞれの思惑が繁華街の路地裏で今、交錯する。

    「で、何を争うの?」
    「えぇと、それはぁ……」
    「ちょっと待った!!」
    「「?!」」
     待ったコールを掛けたのは、守咲・神楽(地獄の番犬・d09482)。
    「そこの二人、仮にもアイドルを名乗る者がいきなりキャットファイトってのはせっかくのファン候補が逃げだすぞ」
     こちらを向いた二人に告げるのは、ディーン・ブラフォード(バッドムーン・d03180)。
     今はエイティーンを使ってやや成長した姿だ。
    「うむ、アイドル対決と聞いて黙っていられぬ! この場は僕が仕切らせて貰おう!」
    「何なのアンタ達はぁ? ……もしかして、どこかの事務所の人?」
    「だったら審査して貰っちゃおうじゃありませんかぁ!」
     プラチナチケットが彼女達に通用するかどうかはさておき、ノリでアカリの方も騙せている様なので良しとしよう。
    「さぁ。ついにやってきましたアイドル対決inHAKATA! 勝負の方法はアイドルに必要な能力、そう、アピール力、ダンス、歌唱力っ! その三つを両名に競い合って貰いましょう! アイドルとしてのプライドを賭けたこの勝負! 勝者にはその珠の肌を機能温泉浴で更に磨いて欲しい。別府温泉二泊三日旅行券!(僕の自腹)審査員席にはアイドルに精通する審査員の皆さんにお越し頂いていますっ!」
    「それぞれの得意分野を活かした接戦を期待したいです」
     と、いつの間にか用意された審査員席につきつつ、コメントする千菊・心(中学生殺人鬼・d00172)。
    「内面を重視したいと思います……」
     今回は審査員席の西園寺・奏(想いを得た少年・d06871)だが、彼もアイドルを目指している者の一人。
    「アイドルへの道は決して甘くないと言う事を知って頂きましょう。厳しく審査しますよ」
     同じく眼鏡を直しつつ、黒曜・伶(趣味に生きる・d00367)。
    「是非正々堂々と戦ってもらいたいものだ!」
    「……」
     こちらも頷きつつ言う泉夜・星嘉(星降り・d17860)と、鋭いまなざしでカメラを構える深束・葵(ミスメイデン・d11424)。
     いざ戦いの口火が切られた時、可能な限り有利な状況にしておきたい。そんな灼滅者としての思惑もあるが、余りに偏った審査をすれば説得力が失われてしまう。微妙なさじ加減が求められる所だ。
    「あわよくば味方になってくれるかもしれないし? まぁ過剰な期待は禁物だけどね」
     と、こちらも審査員席で小さく呟く鹿島・狭霧(漆黒の鋭刃・d01181)。
    「さぁ、始めましょう」
    「目にもの見せてやりますっ!」
     二人の間の火花は、もはやいつ爆発してもおかしくないレベル。黒いカードを持つ強化一般人達も、固唾を呑んで見守る。
    「「アイドルファイトォォ……」」
    「レディーーゴゥ!!」


    「最初はダンス力を競って貰います、張り切ってどうぞ!」
     流れる音楽に合わせ、まず踊り始めたのはアカリ。
     小柄な体格ながら、軽快なステップと軽やかな身のこなし、豊富な練習量を窺わせる完成度の高い踊りを披露する。
    「おおっ」
     これには観客席も審査員席からも低いどよめきが上がる。
    「素晴らしい踊りでした! では次はリョーコさん!」
     不敵な笑みを浮かべつつ、踊り出すリョーコ。
     こちらは情熱的な音楽に乗せ、その圧倒的なスタイルの良さを活かしたオトナの踊りを披露。
    「おおっ!」
     食い入るように見つめる観客。
     長い脚線美や豊かな胸元が、彼らの視線を釘付けにする。
    「セクシーな素晴らしい踊りでした! では審査員の皆様!」
    「アカリさんのダンスも悪くないんだが、やはり手足の長さがネックになってるな。これはステージだと致命的だ」
    「はうっ……」
     アニメやゲームでアイドルについて学んだだけあって、辛口のディーン。気にしている所を指摘され、涙目のアカリ。
    「でもアカリさんは、動きがとてもダイナミックで元気をもらえますね」
    「ありがとうございますっ!」
     一方心の高評価に対しては、ぺこりと頭を下げる。
    「さて結果は後で纏めて発表する事にして、次は歌唱力対決! 今も昔もアイドルと言えば歌! より多くのファンのハートを射止めるのはどちらの歌声か!」
     二種目目は歌唱力対決。
     ごまかしの利かないアカペラでの歌唱だ。
     先手のアカリは、澄んだ良く通る歌声で、明るい曲調の歌を唄い上げる。昭和から脈々と受け継がれる王道アイドルの姿と言って良いだろう。
     思わず観客達のコールも熱を帯びる。
     他方、後攻のリョーコは吐息混じりの色っぽい歌唱。確かな歌唱力と煽情的な流し目が観客のハートを掴む。
    「二人とも素晴らしい歌声でした、では審査員の皆さんいかがでしたか?」
    「何つーかこう、五十歩百歩っつーか、団栗の背比べとゆーか……どっちもどっちよねぇ」
    「どこ見てるのよぉ! こんな子供と私が一緒ですってぇ?」
     頬杖を突きつつ辛口評価の狭霧と、思わず抗議するリョーコ。
    「リョーコさんだっけ、確かに上手いとは思うがボイトレはちゃんとしているか? 声に伸びが足りない」
    「そ、それはぁ……気が向いた時にちょくちょく……」
     だが、そんなリョーコに容赦無い評価を下すディーン。
    「では最後の勝負、アピール力対決です! 張り切ってどうぞ!」
    「はーい! 歌って踊って皆さんに元気を届けたい、アカリですぅ! 特技はダンスと、前向きな所ですっ。今はまだまだ未熟だけど、いつかはラブリンスター様みたいなすごいアイドルになりたいでぇす♪」
     先手はアカリ。
     元気よく輝く様な笑顔で喋る様子は、いかにもアイドルらしい。
    「かわゆすなぁ、アカリたん……」
    「お前はどっちの味方だよ!」
    「俺は……可愛い者の味方だ!」
     これには観客席のオタク達もご満悦の様子。
    「あはははっ! ごめんなさぁい。余りに微笑ましいから爆笑しちゃったわぁ」
    「ムカッ!」
     不敵な笑みを浮かべつつ、アカリに代って前に出るリョーコ。
    「皆さんこんばんはぁ、リョーコです♪ アピールポイントはぁ、身体が柔らかい事です」
    「「おおっ!?!」」
     そう言うと、リョーコはおもむろにY字バランスを披露。そのまま180度開脚前屈と次々に軟体アピールを続ける。
     色々と目のやり場に困る。
    「ダンスと踊りも大好きで、皆さんに見て頂けると思うと、練習も全然つらくありません。一杯リョーコを見て下さいね♪」
     元々豊かな胸を腕で更に寄せ、やや上目遣いのあざとい視線を投げかける。
    「リョーコちゃぁぁん!!」「サイコー!」
    「くっ……」
     盛り上がる観客と、わなわな震えるアカリ。
    「さぁ審査員の皆さんには、これまでに行われた二種目と今のアピールを総合し、最終的な審査結果で勝敗を判定して頂きます! ……そろそろ結果が出たでしょうか? では発表に参ります!」
    「「……」」
    「勝者、アカリっ!! やはり純正アイドルは此処にいたっ!!」
    「やったぁ!!」
     結果はアカリ7票で完勝。
    「貴女の歌と踊り、一生懸命で良かった……と思う」
     内面を重視すると言った奏は、宣言通り、ひたむきなアカリの姿を評価したようだ。
    「リョーコさんは歌や踊りはそこそこで……外見だけではやっていけませんよ。その点アカリさんは単純すぎますが、これからまだ伸びる伸びしろを感じますね」
     同じく伶は、将来的な伸びしろを重視。アイドルは成長してゆく姿も重要なファクターだ。
    「ちょっと待ちなさいよぉ! なんでこんなペッタンコに私が負けなきゃいけないのよぉ!」
    「ア、アイドルは胸の大きさじゃないですぅ!」
    「何、結果が不満なワケ? そういうコトなら……」
     予想通りゴネ始めるリョーコの言葉を聞き、すっと立ち上がった狭霧。腰のナイフを抜き、掌中でクルリと順手に持ち直す。
    「ここからは実力で対決するとしましょうか。さぁ、文句があるヤツからかかってきなさい!」
    「へぇ、面白いじゃない。アンタ達! この節穴審査員共をぶっ潰すわよぉ!」
    「……アイドルたる者、老若男女全てに愛される存在でなければならない。それが掟。このままでは、生涯日の目を見ない研究生とやらの存在でしかなくなるが……いいのかな?」
    「黙りなさぁい! アイドルなんて表はどうあれ、裏は汚い駆け引きとつぶし合いの世界よぉ!」
     葵の言葉に対し、夢も希望も無い言葉を返すリョーコ。
    「ま、どっちにしてもアイドル勝負だけで綺麗に終われないんだ。悪いね」
    「チェーンジケルベロスっ! Style:Bishop!!」
     こちらもジャケットを脱ぎ捨て、元の姿に戻るディーン。神楽も力を解放し、他の灼滅者達も身構える。


    (「何の罪も無い人たちの殺意を引き出して人殺しをさせる、ですか。卑劣極まりないやり口ですね」)
     心はリョーコとその親衛隊達を見て、心中で呟く。
     彼女らとて元は罪なき一般人。一刻も早く解放してやる為、心は迷い無く地面を蹴る。
    「リョーコちゃんを守れぇぇっ!」
     その辺に落ちていた鉄パイプや果物ナイフを手に、身構える親衛隊達。
     ――ヒュッ!
     しかし彼我の速度の差は大きく、心は敵の切っ先を見切ると、逆に低い姿勢から斬りあげる。
    「し、死ぬぅ!」
    「落ち着け! 傷は浅いぞ!」
    「まさかアンタ達……最初からアタシを狙って……」
     浮き足立つ親衛隊達から灼滅者に視線を戻し、表情を歪めるリョーコ。
    「アイドルでしたら、どんな状況でも笑顔でいないといけませんよ?」
     微笑みをたたえつつ言う伶は、親衛隊の一人を影によって絡め取る。
    「アンタ達を始末してから笑わせてもらうわぁ!」
     ――キィン!
    「それは無理な話ね」
     鋭い跳び蹴りを放つリョーコと、これをナイフの腹で受け止める狭霧。
    「僕の判定はイカサマなどではなく、見て思ったままだ」
    「だから節穴だって言ってんのよぉ!」
     星嘉の言葉に対して、益々怒りを露わにするリョーコ。
    「まずは邪魔者を……行くぞ西園寺」
    「はい」
     ディーンは奏に声を掛けると、イヴィルブラッドを回転させつつ親衛隊に肉薄。奏もこれに合わせて間合いを詰めると、大剣を振るう。
    「つ、強……い……」
     奏の大剣の柄で腹を打たれ、倒れ込む男。
    「アカリ、援護を頼む。ただし殺すなよ」
    「ふぇ? ……なんでですか?」
    「リョーコも男共もダークネスじゃない、一般人だ」
    「じゃなくてぇ……アカリはアイドル対決をしに来ただけなので」
    「美しき魔闘士アカリ! 僕らのアイドル!」
    「おだててもダメですぅ」
     アイドル対決に圧勝したアカリとしては、今更リョーコ達と戦う意味は無いと言う事らしい。
     明確な同盟関係が結ばれているわけでもないので、協力を強いる事も出来ないだろう。
    「しょうがない、それにここはアタシらだけで十分だ」
    「それもそうだな……行こう!」
     葵の言葉に頷いた神楽は、燃えさかるサイキックソードを手に、男達へ斬りかかる。葵もこれに呼応し、愛用のガトリングガン「猿神鑼息」による弾幕を形成。
    「も、もうだめだぁ」
    「諦めるな!」
    「今だ、はやぶさ!」
     霊犬はやぶさと共に、追撃を掛ける星嘉。結界が形成されると同時に、斬魔刀が唸りを上げる。
    「ぎゃぁっ!」
     哀れな親衛隊員達は、折り重なるようにして倒れ伏す。
    「これに懲りたら、これからは変なことに首を突っ込まないようにして下さいね」
     心の声が届いたかどうかはさておき、残すはリョーコ一人。
    「行きますよ」
    「ちぃっ!!」
     こうなってしまえば、いかにフライングバニー服の力を得ていようとも形勢は明白。心、伶、そして狭霧と息もつかせぬ波状攻撃が襲い懸かる。
    「こんな奴らに……邪魔をされてたまるかっ!」
    「悪いが、戦闘と趣味に手を抜くほど不真面目じゃないんでね」
    「アイドルは虫も殺せない。そうやろ?」
    「ぐっ?! あぁぁっ!!」
     緋色の闘気を帯びた紅翼を振るうディーン。神楽は死角に回り込むと、リョーコにご当地ダイナミックを見舞う。
    「ど、どさくさに紛れてどこ触って……」
    「そら戦ってる時に偶然触れるんは仕方ないよなー」
     胸元を押さえるリョーコと、知らん顔で白々しく言う神楽。
    「皆さんもエッチなんですね~」
    「違います……」
     そんな様子を見て、興味深そうに頷くアカリと、必死に否定する奏。
     ともかくダメージも蓄積し、リョーコのバニー服もかなりあちこち破れて服の体を為していない。
    「よし、そろそろトドメだ! 必殺! はかたラーメンビーム!!」
    「これで、終わりだよ!」
     ガイアチャージで博多の力を九州した星嘉がご当地ビームを放つと同時に、無数の燃えさかる弾丸を放つ葵。
    「きゃあぁぁーっ!!」
     この攻撃を受け、リョーコを操っていたバニー服は千々に破れ、ただのぼろ切れと化した。


    「大丈夫ですか?」
    「な、何なのこの格好はぁ!」
     心に手渡された服で身体を隠しつつ、混乱状態のリョーコ。
    「バニー服や黒いカードについて、何か覚えていることはありますか?」
    「……いつの間にか手元にあって……良くは覚えてないわぁ」
     心は手がかりを求めて尋ねるが、リョーコの言葉から有力な情報は得られそうに無い。
    「アカリさん、仕事のお話等があればお呼びしたいので」
    「本当ですかぁ? アカリ、枕営業頑張りますっ!」
    「そう言うことでは……」
     人脈を構築しておくに越したことは無い。伶はアカリに自らの連絡先を教える。
    「しかしまぁ、何かHKT六六六とあちこちで揉めてるみたいだけど……心当たりとかあるの?」
    「そりゃアイドルですからぁ。負けられないですぅ」
     狭霧の問いかけに答えるアカリ。彼女は純粋に、どちらがアイドルとして上かを競うのが目的だった様だ。
    「アイドルは、楽しい?」
    「もちろん!」
    「僕もアイドル活動する予定なの……貴女に負けないくらい頑張るよ」
    「そうなんですかぁ? アカリも絶対負けないですっ!」
     奏の言葉に、にこりと笑いつつアカリは言う。
    「それにしてもディーン、アイドルについて語ってたなぁ」
    「別に詳しくは無い。あくまで一般論だ……」
     ニヤニヤと笑いつつ言う神楽に、そっぽを向きつつ応えるディーン。
    「一応何か解るかもしれないし、これは持って帰ろう」
    「そうだね。アイドルちゃんは二人共、黒カードの意味は分からないだろうしね……」
     黒いカードを回収してポケットへしまう星嘉。葵もそのカードを覗き込みつつ呟く。
     ともかく、無事フライングバニー服を破壊した灼滅者達は、アイドル対決に勝利したアカリや、解放された一般人が帰って行くのを見届け、自らも凱旋の途に就くのだった。

    作者:小茄 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年10月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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