新潟にある酒屋。立ち飲みも出来る店では昼間から大勢の人が酒を楽しんでいた。そんな中一人のロシア人が幾つもの酒を飲んでいた。
「こちらの日本酒は魚沼産コシヒカリで作った大吟醸酒となってます」
店主が差し出す酒をロシア人は豪快に飲む。
「ごく、ごく、ごく、ぷはぁ。何だこれは? こんな薄い酒があるか!」
そう言って赤ら顔の男がコップをテーブルに置く。そこには既に飲み干した酒瓶が何本も置かれていた。
男が懐から出すのは透明な液体の入ったビン。それを開けると強烈なアルコール臭が周囲に漂う。
髭面の男はそれをラッパ飲みでぐいっと飲み干す。
「ぷっはー。やはり酒はウォッカに限る。ふん、仕方ないヤポンにも我が国の酒を広めてやるとするか」
男は傍にある酒を勝手に開けて飲み始める。
「何をするんですかお客さん! 困ります!」
止めようとする店主に口から透明の液体を噴出す。
「なにを……おおぅあ?」
店主は目を回して崩れ落ちる。その顔は真っ赤に染まっていた。同じように店にいた他の客達も透明の液体を吹き掛けられる。
「どうだ、美味かろう。ぬっはっはっはっはっ」
男は笑いながら店に置いてある酒を次々と飲み干していった。
「さて、では一仕事するかな」
男が着ていたコートを開ける。そこには巨大なウォッカのビンがあった――。
「ううん、あれ? 俺はどうして寝てるんだっけか?」
目を回していた店主は起き上がる。頭を振り、喉の渇きを覚えてテーブルの上に置いていた水を飲もうとする。
「ぶはっげほっげほっ。なんだこれは!?」
コップの中に入っていたのはウォッカだった。店主は可笑しなことに気付く。店の景色がいつもと変わっていたのだ。
「何がどうなってるんだ?」
見れば店に置いてあった日本酒のビンが全てウォッカに置き換えられていた。
そして店に居た客達は全員ウォッカを手に、赤ら顔で痛飲しているのだった。
「やあみんな、集まってくれてありがとう」
能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が灼滅者に声をかける。
「以前起きたロシアのご当地怪人の事は覚えてるかな?」
頷く灼滅者に、誠一郎は話を続ける。
「淳・周(赤き暴風・d05550)からの報告があったんだけど、ロシア怪人が新潟で活動を始めているようなんだ」
北海道で迎撃された怪人達が、新潟に流れ着いたようなのだ。
「彼らは新潟のロシア化を目的にしているみたいでね、このままだと新潟が制服されてしまうかもしれない。みんなにはそれを阻止してもらいたいんだ」
ロシア怪人の行動に大勢が迷惑を被るだろう。その前に怪人を退治してしまいたい。
「怪人は博多の商店街にある酒屋に現われるよ。そこのお店にあるお酒を全て飲み干して、ウォッカに変えてしまうみたいなんだ」
お店の広さはそこそこある。時間は昼間で商店街の客足も多少はあるようだ。
「更にはお客さんをウォッカ漬けにして、手下にしてしまうみたいだね」
既に他の店で配下にした部下を4名程連れている。戦闘力は高くないようだが、邪魔になる前に対処した方がいいだろう。
「唯一の救いは、ロシア化の為に行動していて、一般人を傷つけたりはしない事だね。逆に一般人の安全には気を付けているみたいだよ」
戦闘になれば極力一般人を巻き込まないよう、怪人は人の居ない場所に向かうだろう。
「あまり悪い相手には思えないかもしれないけど、放っておくとどんどん敵の配下が増えてしまうんだ。その後一体何をするかも分からないからね。何とか灼滅して来て欲しいんだ。お願いするよ」
誠一郎は複雑な表情で何とかして欲しいと、灼滅者達に頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
艶川・寵子(慾・d00025) |
九条・雷(蒼雷・d01046) |
御幸・大輔(イデアルクエント・d01452) |
峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705) |
マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828) |
藤平・晴汰(灯陽・d04373) |
森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363) |
小野塚・舞子(おこめっこ・d10574) |
●新潟の酒屋
赤い顔の男達が騒ぎ、飲み、笑う。陽気な声が響く。
酒屋にある立ち飲みで、男達が昼間から浴びるほど酒を飲んでいた。
その中心にいるのは、コートを着込んだ大きな体のロシア人だった。蓄えた立派な髭が酒に濡れている。
「さあ飲め飲め、ウォッカは最高だろう? いくらでも飲むといい。ぬっはっはっはっはっ」
そんな様子を店の外から灼滅者達が呆れたように見ていた。
「うわ、明日が心配になるぐらいですね」
森沢・心太(隠れ里の寵児・d10363)はへべれけになるまで飲んでいる男達を見て、心配そうに呟いた。
「私はまだ年齢に達していないけれどお酒はイイわね」
楽しそうに飲む男達を見て、艶川・寵子(慾・d00025)はお酒に興味ありそうに眺める。しかし、家の神酒がウォッカになっちゃうのは困ると、被害が広がる前に怪人を倒そうと決める。
「この間は上陸したてのロシアンティ怪人ぶっ飛ばしたけど、日本でもロシアでも、ご当地怪人って変なの多いね……」
でもネタ的にはオイシイと思い、マルティナ・ベルクシュタイン(世界不思議ハンター・d02828)はこっそりと笑う。
「臭うな……」
その強いアルコール臭に峰・清香(中学生ファイアブラッド・d01705)は顔を顰めた。
「酔っ払いって嫌ァい、夜の駅前とかでよく絡んでくんだよねェ。というか日本酒ってその味とか匂いとか楽しむもんじゃないの?」
未成年だから飲んだ事はないんだけどと続けながら、嫌そうな顔で九条・雷(蒼雷・d01046)は酔っ払い客を観察した。
「日本の良さを馬鹿にするだなんてひどいことするもんだね」
日本の酒を貶してウォッカを広めようとする怪人に、御幸・大輔(イデアルクエント・d01452)は腹を立てる。
灼滅者は店内に足を踏み入れる。むわっと漂うアルコール臭の中、ロシア人に近づいた。
「なんだー? ここは嬢ちゃんたちが入ってくるような店じゃねーぞー」
「子供はけぇんな! ここは男の社交場なんだからよ!」
未成年追い返そうとする酔っ払いの間を、一陣の風が吹き抜ける。
「あ? ねむぃ……」
絡もうとした男達はふらりと崩れ落ちると、そのまま寝てしまった。
「無駄な争いは好まないの、酒精とともに良い夢を」
寵子は一瞥をしてすぐに注意をロシア人に戻す。
「ちょっと顔貸してもらうわよ。そこの小麦党のおじさん」
怪人に向かい小野塚・舞子(おこめっこ・d10574)が腕を組んで睨みつける。
「んん? それはワシのことか?」
機嫌よく飲んでいた男が振り向く。近くで見ればその巨体が良く分かった。樽のような体は大人3人分程の幅があった。
「魚沼産のコシヒカリの良さを教えてあげるわ! 表出なさいよ!」
「そうだそうだー! うちのおばあちゃんも、日本酒が一番好きって言ってた!」
舞子の啖呵に、藤平・晴汰(灯陽・d04373)は囃し立てるように合いの手を入れる。
「ほう、ワシに対する挑戦ということか。いいだろう、我がウォッカの偉大さを見せつけるのに良い機会だな」
ロシア人はコップを置くと出入り口へと向かう。その背後には飲んでいた日本人の客4人がふらりふらりと付いてくる。
「そら、邪魔の入らない場所でやろうじゃないか」
そう言うと、ウォッカのビンをラッパ飲みして不敵に笑った。
●ロシアン怪人
ロシア人と配下を誘導してやってきたのは、雑草の生えた空き地だった。
「ここが戦場か」
「一般人に迷惑かけたくないからね」
周囲を見ながら問う男に、舞子が頷いて答える。
「そうか、なら戦うとするか! 掛かってこい!」
男がコートを広げる。そこにある体は巨大なウォッカのビンの形をしていた。ロシアン怪人としての正体を現し、配下の4人の男がビンやコップを手にした。
同時に灼滅者も戦闘態勢に入る。
「それじゃ行くよ!」
先陣を切ったのは雷。全身に蒼い稲妻の如きオーラを帯びて踏み込む。配下の男がそれに対してビンを手に迎え撃つ。
雷の拳はビンを砕き、そのまま腕を引き寄せて体を崩すと首筋に手刀を叩き込んだ。一瞬にして意識を刈り取られる男。
その雷に向かって配下の男達はウォッカのビンやコップを投げつける。それを舞子がエネルギーの障壁を展開して受け止めた。
「ロシアのお酒にデレデレして……。この、わさっ子がー!」
更に続けて投擲しようとしたところへ、接近した晴汰が槍の石突きで鳩尾を突く。男は前屈みになるとコップを落とした。
「コップは投げるものじゃないよ!」
晴汰は飛んでくるコップを槍で打ち払う。続いて大輔も仕掛けた。
「ごめんなさい。少し痛いけど、すぐに終わらせるから」
前屈みになっている男に、オーラを纏った大輔は回し蹴りを放つ。足は男の顎を捉え、崩れるように前のめりに倒れた。
「ほう、なかなかやりよる。では次はワシの番だ!」
怪人は口から刺激臭を発する透明な液体を放出する。
「狩ったり狩られたりしようか」
剣を手に清香がその前に出る。剣を鞭のように伸ばし、その刃で自らの周りを包み盾とする。
だが勢いを弱めたものの、液体は隙間から降り注ぎ清香の体を焼くように熱くする。そのまま液体を浴びせ続けようとする怪人に、横から心太がエネルギーの盾を構えて突撃する。
怪人は液体を横に薙ぐように放つ。心太は被弾しながらも勢いを弱めずに怪人に盾を叩き込んだ。怪人は巨体を僅かによろめかせながらも踏ん張ると、丸太のような腕を大きく振るい心太を吹き飛ばした。
透明な液体に侵食され、清香と心太の顔が赤く染まっていく。
「どうだワシの神水は旨かろう?」
そんな2人を見ながら、怪人は腹を叩いて自慢気に笑う。
「……気分が悪いですね」
刺激臭に顔を顰め、ふらりとバランスを崩す心太に配下の男がビンを振り上げる。だがその手が振り下ろされる前に、腕を異形化させた寵子が拳を叩き込んだ。腹に重い一撃を受けた男は悶絶して膝を折る。
「うん、うん、敵の意に染まらぬステータス異常でめろめろめろんになっちゃうなんて、視聴者にはご褒美以外ナニモノでもないわよね!」
顔を赤くする2人の様子を、寵子はドキドキしながらちらりと見た。
「ウォッカかぁ。馬の方思い出した……」
マルティナの言葉に首を傾げる霊犬の権三郎。マルティナは腹を押さえて座り込んだ男に杖を振り抜く。頭を打ち抜かれ、男は顔から地面に倒れ込み意識を失う。同時に、権三郎は心太を視界に納め、その浄化の力で神水の影響を打ち消す。
残った最後の男が清香にビンを投げる。その時、舞子の霊犬が清香の体を浄化する。酔いから抜け出した清香がそのビンを斬り捨てると、中から激しい酒の臭いが漏れ出る。
「頭が痛い」
清香は動いた振動で頭痛がすると、二日酔いのような症状に襲われる。
「大人しく寝てな」
雷が男に蹴りを放つ。爪先が男の鳩尾を貫き、男は泡を吹いて倒れる。
残るは怪人だけ。灼滅者は怪人を取り囲むように武器を構えた。
●燃えるウォツカ
「まったく役に立たん連中だ。やはりヤポネは弱い酒ばかり飲んでいるからひ弱なのだ、ウォッカを飲めウォッカを」
倒れている配下を一瞥すると、怪人はウォッカのビンを手にぐびぐびと一気に飲み干し、ぷはぁと酒臭い息を吐き出した。
「ばあちゃんが丹精込めて作ったお米のお酒を馬鹿にするなんて」
声を震わせて舞子が前に出る。
「許せねぇ! ごーぎおごったわもー!」
怒りと共に放たれたビームが怪人を焼く。
「この程度か? ふん、所詮は米の力だな。ウォッカの力を見せてやるぞ!」
怪人が大きく息を吸うと、口から刺激臭を放つ液体を放射した。舞子、心太、清香が仲間を庇うように攻撃を受ける。だが防ぎ切れなかった液体が雷、大輔、マルティナにも付着した。
空き地に刺激臭が漂う。液体が触れた部分は焼けるような痛みが奔り、体が中から熱くなっていくと酩酊感を覚える。
「そらそらどうした!」
「よくもこんなに水を掛けましたね、びしょ濡れじゃないですか」
顔を真っ赤に染めた清香が剣を振るう。だがまどろむ目は怪人と間違えて仲間を狙う。大輔はその一撃を咄嗟に身の仰け反らせて躱す。
「うわ! 危ないよ!」
「あ! 申し訳ありません!」
驚く大輔の姿を見て、清香は味方を攻撃した事に気付いて頭を下げる。
足元が覚束ない灼滅者に、怪人は両腕を振り上げて迫る。
「その可愛い姿をもうちょっと見ていたい気もするけど、残念ながらそうも言っていられないわね」
寵子は皆の酔っ払うような姿を心に録画すると、優しい風が仲間の間を吹き抜け、その身に宿る熱を浄化する。それと同時に2体の霊犬も浄化の瞳で癒しを掛け、仲間達の酔いは覚めていく。
心太は振り抜かれる怪人の腕を受け止めた。金剛不壊と書かれたお守りから放たれるエネルギーが怪人の怪力を押し留める。
「なんだと!?」
「? 何を驚いているんですか? お酒じゃないんですから、酔うわけ無いでしょう?」
簡単に押し切れると思っていた怪人の驚く顔に、心太は冷静に告げると押し返す。
そこへマルティナが飛び込むと、オーラを纏わせた拳でその腹を殴りつける。
「ウォッカって、寒い土地で体を温めるのに飲むんじゃないの……? 日本だとあんま関係なくね……?」
「ぐぉっ」
拳の連打が硬い胴体を殴り続けると、体にひびが入る。
「うっとおしいわ!」
怪人は口から液体を霧状にして吹きつける。そして手にしたライターで火をつけた。霧は一瞬で燃え上がりマルティナを包み込む。炎に巻かれて吹き飛ばされるマルティナに、権三郎が駆け寄りすぐさま治癒を施す。
更に火を噴こうとする怪人に、晴汰は魔力の弾丸を撃ち込む。ライターを持つ腕を貫き、魔力は腕を侵食し麻痺させると、怪人はライターを取り落とした。
「お酒は用法・飲量を守って楽しくお飲み下さいっ!」
晴汰は続けて魔弾を撃つ。怪人はそれを腕で弾きながら攻撃しようと口を開けた。
「そうはさせないよ」
液体が放たれるよりも速く大輔は近づくと、槍を突き出した。腹に食い込んだ穂先を捻ると、大きく開いた割れ目から勢い良く液体が溢れ出る。
流れる液体が地面を伝い灼滅者達の足元を塗らした。
「良くもやってくれたな……ならば奥の手を見せてやるぞ! ヤポン酒では出来ぬ技よ、とくと味わえ!」
怪人は大きく息を吸い吐き出す。それは強烈な刺激臭を伴う吐息だった。怪人は落ちたライターを拾い上げ火を付けた。炎が空を奔る。怪人が口から吐いたのは気化した液体だった。それが爆発的勢いで燃え、地面に流れる液体に引火して燃え広がり、爆炎が灼滅者達を襲う。
清香、心太、舞子が仲間の盾となるべく炎に対する。一瞬、炎は勢いを弱めた。しかし炎は勢いを増していく。だがその一瞬の間、閃光の如く炎を貫く稲妻があった。
「日本の美酒にケチ付けようったァ良い度胸じゃないの」
炎を突っ切った蒼い稲妻を纏った雷は勢いを乗せて拳を打つ。拳は怪人の腹にめり込み大穴を開ける。どばどばと流れる液体の臭いに雷は嫌そうに眉を寄せた。
「やァん、お酒臭ァい! 止めてよね、そういうアルハラなオッサンとか会社に居たら女子社員からハブにされること受け合いだよ」
「酒の味も分からぬ小娘が!」
悪態を吐く雷に怪人は腕を振り下ろす。だがその一撃は炎を纏った剣に防がれた。
「水のような酒が嫌なら工業用アルコールでも飲めばどうだ。お前のお国じゃよくあることだろう」
清香が剣を振り抜き怪人の腕を斬り裂く。邪魔した相手を見て、炎で焼いたはずと怪人が視線を向けると、既にかなりの炎が鎮火されていた。
「さあ、全部消しちゃうわよ。わんちゃん達手伝ってね」
寵子が風を起こし、2体の霊犬も手伝い、火傷した仲間の傷を癒して炎を消し飛ばしていた。
「残念だけど、ウォッカは日本じゃ流行らないよね」
マルティナは振りかぶった斧を叩き下ろす。刃は振り上げた怪人の右腕を断ち切り肩から切断した。
「ぬがぁ」
怪人は咆えてマルティナを残った左腕で投げ飛ばす。
「新潟ろしあ村。聞き覚えはありますか?」
その隙に心太が懐に潜り込んで質問を投げかけながら拳を胸に叩き込む。
「知らん、な!」
心太の腕を受けながら、怪人は口から液体を吐く。心太は咄嗟に地面を転がるように避けた。
「おこめキーック!」
舞子が大きく跳躍して蹴りの軌道に乗る。しかし怪人はそれを撃ち落とそうとライターを手に口を開いた。
「お灸を据えてあげるね」
晴汰の放った呪いが怪人の顔を石化させ、吐き出そうとした液体が口から零れる。そこへ舞子の靴裏が顔面を捉え吹き飛ばした。落ちたライターが火花を散らし、液体に火がつくと塗れた怪人の顔まで燃え上がる。
「おおおおお! ウォッカが! 顔が熱い!」
「日本の酒には趣があるんだ。花を愛で、月を見上げ、移りゆく季節の傍らで静かに杯を傾ける。その情緒を理解せずに無理矢理だなんて、許さないよ!」
火に巻かれる怪人の胴へ、大輔は蒼き杖をフルスイングする。硝子が砕ける音と共に怪人の体は砕けた。
「ロシアンはお呼びじゃないんだよ」
崩れ落ちる怪人の顔に雷の拳が迫る。一筋の稲妻が怪人を貫いた。
「馬鹿なこんなところでワシが……ウォッカがヤポネに負けるなんて……」
「楽しい戦いでした」
心太が敬意を持って言葉を告げると、全身に火が引火して怪人は燃え上がり爆散した。
●お酒は二十歳から
空き地には焦げた臭いとアルコール臭が混じり合う。
「権三郎さん、なんか良く分からない透明な液体ぶっかけるとか、絵的にちょっとヤバい敵だったね」
マルティナの言葉に権三郎も同意するように頷いた。
「大丈夫? 魚沼産のお酒の方美味しいわよね?」
倒れた男に舞子が揺すって尋ねると、男はうーんうーんと唸りながら、揺すられた振動で顔を縦に振った。
「やっぱり! 魚沼産が一番よね!」
舞子はそれを返事と受け取って嬉しそうに笑った。
「みんな酔っ払ってるだけで、無事みたいだね」
「でも、明日は飲みすぎで苦しくなりそうですね」
赤ら顔の男達を調べた大輔はほっと息を吐く。心太は二日酔いの薬を横から男達の傍らに置いた。
「なんだか変な感じだ、二日酔いってこんな感じなのか?」
最も多く敵の攻撃を受けた清香は、頭に残る鈍痛に顔を顰めた。
「お酒、お酒かァ……あと2年で二十歳になるし、美味しくお酒が飲める大人になりたいもんだねェ」
「そうね、飲んでみないとウォッカもどんな味なのか分からないものね」
雷と寵子はお酒が飲めるようになったら一緒に飲んでみようかと話す。
「ウォッカも日本酒もまだ飲めないけど、成人したら両方飲んでみたいなぁ」
晴汰も美味しそうに飲んでいた大人達を見て興味津々に話に入る。
「魚沼産の日本酒が最強だよ!」
力説する舞子に、それじゃあいつか皆で飲もうと、灼滅者達は大人になった自分達を想像して約束するのだった。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年10月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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