簡素なベッドに、大学生頃と見られる一人の男が横たわっている。
彼の胸の上には新書サイズの機械のようなものが乗っており、そこには稼働中であることを示すようにランプが灯っていた。
男の部屋は、この年頃の一人暮らしにしては整理整頓が行き届いていたが、綺麗とは言いがたい。
何故なら部屋の壁や天井には隙間無く、一定の嗜好を窺わせるポスターやブロマイドやイラストが貼られていたからである。
「うっひょー! これが噂のオレTUEEEEってヤツですかァ!?」
男はゴキゲンに剣を振るう。
手にあるのは、ファンタジーゲームによく出てくるようなロングソード。
持ったこともなかったそれは、しかし弱い敵を相手に戦ううちに手に馴染み、今では軽々と振るうことが出来るまでになった。
その度に飛び散るのは、赤黒い血液。
子供の頃から慣れ親しんだゲームの中のモンスターを軽々と屠っていくのは、男を恍惚とした気分にしてくれた。
だがゲームと違うのは、剣が肉を切り裂き、叩き潰す感触。
噴き出る血も、はじけ飛ぶ肉片も、ゲームでは味わえない実感を伴っていた。
最初こそ戸惑ったものの、今ではその感触すら男を興奮させるものでしかなくなっていた。
「このまま魔王とか倒しちゃう系? それとも王様ブッ殺して国のっとってハーレムとか! うははは!」
歪んだ笑みを浮かべる男が今切り捨てたのは、人間。
戦士然とした相手を現実味を伴った感触と共に切り捨てても、男はもはや躊躇をみせなかった。
だが――。
「な、に……!?」
新たに立ち塞がった『敵』に、男の剣が動きを止める。
ソレはゆっくりとした足取りで男に近づき、手にしたナイフを掲げて、にっこりと花のような笑みを浮かべた。
ソレを見た男の手が震え、握っていた剣が落ちる。
近づいてくるソレに、男は震えながら後ずさり、激しく首を左右に振った。
「ひっ……。む、無理だ! オレには、オレにはできねぇよおぉ……」
情けなく涙さえ流して男は叫ぶ。
「この世の宝、幼女を殺すなんてできねぇええええええ!」
割とどうしようもない理由を、声の限りに。
●
「博多で謎の機械を受け取った人が、悪夢に囚われるっていう事件が起きてるんだ」
須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)はそう切り出すと、黒板に『六六六人衆』、『シャドウ』、『HKT六六六人衆』と三つの単語を書きだした。
「シャドウの協力を得た六六六人衆が、悪夢を見せた人間を新たな六六六人衆として闇堕ちさせようとしてるみたい」
悪夢を見ているのはHKT六六六人衆の研修生で、名を天成・強(テンセイ・ツヨシ)。
彼は自ら望んで悪夢を見ており、夢の中で殺人ゲームを行っている。
「ちょっと困った人みたいだけど、闇堕ちさせられようとしてるのは見過ごせないから、この人の夢に入って殺人ゲームを止めてほしいんだ」
今回はソウルアクセスがなくとも、この謎の機械を媒介として悪夢に入ることができる。
なお、男が目を覚ますと、機械は停止するようだ。
「皆が辿りつくのは、強さんが5~6歳くらいの女の子と対峙した頃だよ。強さんは小さな女の子が好きみたいなんだけど……」
好きがいきすぎて神聖視しており、遠くから愛おしく眺めたり妄想するのはよくとも、決して手を触れてはいけないと己に掟を課しているらしい。
Yes幼女、Noタッチがポリシーで、オッサンや成人女性は躊躇いなく殺せても、幼女を殺すことだけは出来ないのだという。
「そんなわけで、強さんを守りながら幼女ちゃんを倒してもらいたいんだ。幼女ちゃんは現実そのものな存在感と感触を持ってるけど、それほど強くないよ」
ただ、ひとつ問題がある。と、まりんは続けた。
幼女を簡単に倒してしまうと、強はそれを都合良く解釈して、そのまま殺人ゲームを続けてしまうのだ。
「それを防ぐために、幼女ちゃんを倒す前に、強さんを説得してほしいんだ」
強は幼女を前に既に戦意を喪失しており、とりあえず幼女への愛だけは本物のようなので、その点を踏まえて説得すれば難しくはないだろう。
「できれば、二度とHKT六六六人衆の誘惑に乗らないように誘導してあげると安心だね」
彼の嗜好を踏まえて説得すれば、これもそれほど難しくないと思われた。
「あと、これは『もしかしたら』程度の話なんだけどね。悪夢に囚われた強さんを救出したことを察知した六六六人衆が、現れる可能性があるみたい」
強を救出した時点で既に目的は達しているので、無理に戦う必要はない。
「どうするかは、皆の判断次第だけど……無理だけはしないでね?」
目的はあくまで、夢の中の殺人ゲームを止め、強を救出し、二度と同じ過ちを繰り返させないことなのだから。
そう念押しして、まりんは灼滅者達を送り出した。
参加者 | |
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朝山・千巻(スイソウ・d00396) |
葉山・一樹(ナイトシーカー・d02893) |
病葉・眠兎(年中夢休・d03104) |
木嶋・央(黄昏を守護する処刑刀・d11342) |
ルコ・アルカーク(騙り葉紡ぎ・d11729) |
エイダ・ラブレス(梔子・d11931) |
セレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444) |
風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897) |
●
夢の中に入ると、エクスブレインから聞いていた通りの光景が目の前にあった。
ロングソードを携えて動きを止めた男と、そちらへ向かって歩を進めようとしている幼い少女。
「ひっ……。む、無理だ! オレには、オレにはできねぇよおぉ……」
男が震える手から剣を落としたのとほぼ同時に、灼滅者達は二人めがけて走り出す。
二人の他は、男――天成・強(てんせい・つよし)がこれまでに切って捨てた無数の骸が横たわるのみ。
障害物のない草原を駆け抜け、まず幼女の眼前に立ち塞がったのは、朝山・千巻(スイソウ・d00396)に病葉・眠兎(年中夢休・d03104)の二人と、主と同じ名を持つエイダ・ラブレス(梔子・d11931)のビハインド。
幼女の抑えに回った二人と一体の後ろで、風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897)が強に駆け寄り、彼の安全を確保した。
「な、なんだぁ!? おまえら一体……」
突然の乱入者に驚いた強は、無意識にか腰の辺りを手で探る。
人間を殺すことにさえ禁忌を感じなくなっていた強は、己を庇うように現れた灼滅者達さえも倒すべき敵に見えたのだろう。
だが取り落とした剣は既にそこになく、指は虚しく空を掻いた。
「強い力は、大切に思うモノも傷つけてしまうかも知れません。それでも、そんな力が欲しいのですか……?」
そんな強に向けて問いかける眠兎の服は、中学生ながらに小学生女子冬服。
小柄なだけに違和感はなかったが、どうやら強の好みにはあと一押し足りなかったのか、彼の表情に大きな変化は見られない。
どうやら対象年齢がかなり低い真性らしいと判断した眠兎の視線が氷の如く冷え冷えとしたものになる。
「剣は、なし……ですよ。そんな、こと、ばっかり……して、たら。あの子も……きっと、怖がって、あなたの、こと……嫌いに、なっちゃい、ます……から」
そんな真性の強にも、エイダのこの一言は効いたようだ。
「そうだそうだ! このか弱い幼女ちゃんが悲しんでもイイのかー?!」
広く展開した盾で幼女の攻撃を受け止めながらの千巻の茶々入れもグサリと刺さったらしく、強は幼女と剣との間で幾度か視線を揺らしたものの、剣を求めて彷徨わせていた手を止める。
「確かにこの世の宝、幼女を斬るなんてオレには出来ない! そしてどんな宝石にも勝る幼女の笑顔を曇らせることも、オレには出来ん……っ!」
地面にガクリと膝を着き、両の手を握りしめて嘆く強。
その肩に、そっと乗せられる手があった。
「その気持ち、俺にもよく分かる」
何もかも分かったような笑みを浮かべた、木嶋・央(黄昏を守護する処刑刀・d11342)である。
「俺には小4の義妹がいるんだが、とにかく可愛い」
「幼女の、義妹、だと……ッ!?」
央の発言に、強が物凄い勢いで食いついた。
「そうだ。しかも無口であまり感情を表に出さないタイプなのに、俺に対しては結構感情を出してくれてな。それが可愛くて仕方ない」
「義兄だけに見せる、幼女の一面!」
何かが胸を打ったのだろう。強が心臓の辺りを抑える。
「しかも俺と一緒に居られることを、やたら喜んでくれるんだ。周りからロリコンだのシスコンだの言われるが、俺は可愛い義妹が幸せならそれだけで満足だ」
「分かる、分かるぞ!」
「そうだろう。お前だって、幼女が笑顔でいてくれるのが何よりの幸せのはずだ。なのに何故、お前は幼女の笑顔を奪う?」
「なッ。俺は幼女の笑顔を奪ってなどいない!」
共感を示していた強は央の問いかけに反発したが、央は首を横に振って否定。
「いいや、奪っている。幼女にだって家族はいる、その家族を殺めて幼女が悲しんだらどうするんだ!」
「……ぐはぁっ!?」
指を突きつけ力強く指摘した央の言葉に、強は大ダメージを受けてのけぞった。
そこへ一歩前へと歩み出るのは、セレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444)。
優しげな瞳に悲しみを滲ませ、衝撃のあまり呼吸を乱している強に向けて語りかける。
「このまま続ければ、そうしたことも起こり得ますよね? それでも貴方はいいのでしょうか? 親が殺されることは勿論、それによって生活環境が変われば、更に悲しい思いをするのではないでしょうか」
ちょっと変わっていても、守りたいと思う心が少しでも残っているなら、助けたい。
その思いから、こんなことは貴方の精神にも良くないと語るセレスティの声音は真摯で、幼女以外に興味がない強の心にも僅かに響いた。
「……俺は……俺は……っ」
越えてしまった殺人への禁忌と、覚えてしまった殺戮の快楽。
それらと幼女への愛が、強の中でせめぎ合う。
だが、嵐に翻弄される木の葉のように揺れる強に、投げかけられる声があった。
「よう、同志」
声の主は強に背を向けたまま、襲いかかる幼女のナイフを受け止めている。
傍らにビハインドのユリを伴った、ルコ・アルカーク(騙り葉紡ぎ・d11729)だった。
●
語りに入ったルコの言葉を聞きながら、葉山・一樹(ナイトシーカー・d02893)は代わりに攻撃を受け止めるべく幼女との間に割って入る。
強を中心に繰り広げられている特殊な嗜好は、一樹にはイマイチ理解できないものだったが、優先すべきは強の闇堕ち阻止と、全員が無事に帰還すること。
己の宿敵たる六六六人衆が絡んでいるという点も気になりつつも、そこは割り切って幼女を牽制する為の攻撃を放つ。
ワンピースを翻し躱す動きや、受け止めたナイフの威力を見ても、情報通りさしたる強さはないようだ。
一番の難題は、幼女を簡単に倒さず苦戦するように見せかけることかもしれなかった。
「幼い子供を傷つけたくないという気持ちは人として当然の心理、それを実行すれば外道なる」
強は、既に大きく道を踏み外している。
最後の一欠片で人の道に踏みとどまれるかどうかは、仲間達の説得と――その間に幼女を押しとどめる一樹達にかかっていた。
「うわ、ようじょつよい」
あえて大きく吹き飛ばされたフリをした千巻の、棒読みの声が聞こえる。
大仰に庇ってみせた浅い傷に飛んでくる防護符は、エイダが放ったものだろう。
主と同じ名を持つビハインドは、説得を行う仲間達に幼女が近づかないよう、一樹達の位置の穴を埋めるように細やかに動いていた。
現状、作戦通り順調に推移している。
それを確認した一樹の目の前を過ぎっていくのは、眠兎の小柄な体だった。
苦戦を演出する為、サイキックによる有効打を封じている彼女の表情には、そうした演技とは別の隠しきれない本心が現れ出ている。
つまりは、心の底からドン引いている表情が。
「うわぁ……」
とでも言いたそうな、これが平時だったならば500メートルくらいは遠ざかってしまいそうな表情の理由は、一樹にも簡単に予想がつく。
それは――。
「俺も小さい女の子に興奮を覚えてしまう人種だ」
という、ルコの衝撃的な告白や。
「幼女、即ちこの世の宝。その笑顔や輝きは、国宝級の宝石!」
本当にこれは演技なのかと疑いたくなる、熱の篭もった物言いのせいだろう。
「しかし! それも磨かなければ輝けない! 磨く者が居なければならないのです!」
眠兎の冷たい眼差しに気付くことなくルコは絶好調に演説を続け、ふと声のトーンを下げた。
「先程殺したその男性も、女性も。もしかしたら幼女の家族……宝石の磨き手だったのではありませんか? 守らなければいけない笑顔を、輝きを。あなたが曇らせていいのですか?」
「……!?」
ルコの演説に聴き入っていた強は、再び衝撃を受ける。
殺人衝動に身を任せ快楽さえ得ていた記憶が、途端に罪悪感と恐怖に塗りつぶされていった。
「俺は……ッ、なんということを……!!」
地面に膝をついた姿勢のまま、頭を抱え地に伏す強。
脳裏に、己が殺めた数々の人が支え、磨き、育て、慈しんでいたかもしれない、数多の幼女の笑顔と泣き顔が浮かんでは消えていく。
「よかった。あなたはまだ思いとどまれるのですね」
嘆く強の背をそっと撫でるのは、幼女の攻撃が強にきた場合に備えて傍らに控えていた優歌だ。
あのまま殺人ゲームを続けていれば、強は殺人衝動と無感動に塗りつぶされ、本当に人の心を失っていただろう。
そうなれば……。
「あなたも、もうすこしであの子を平気で殺せるようになっていたでしょうね」
優歌の言葉に、強は涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげた。
「悪かった……。オレ、もう人殺しなんかしねぇ。オレTUEEEもしたいとか思わねぇよ」
腕で乱暴に涙を拭うと、強は己に大事なことを教えてくれた灼滅者達を見回す。
「全ての道は幼女に通じ、幼女は一日にしてならず、だな。甘かったぜ……。幼女の為なら、オレ……これから老若男女問わず、大事にしてみせるさ!」
そして――高らかに宣言した。
老若男女大事にするのは良いのだが、その理由が『幼女万歳』なのはどうなのだろうか。
眠兎の視線はやはり冷たいままだったが、闇堕ちしなくて良かったとしておくべきだろう。
所詮、変態の心の内など常人には理解できないのだから。
●
ともあれ、これで強が再び同じ過ちを繰り返す心配はなくなった。
あとは幼女を灼滅するだけである。
灼滅者達は互いにサッと目配せしあうと、速やかに対幼女の配置をとる。
「ここは私たちがなんとかします。だから……もうこんなことはやめてくださいね」
そして優歌は、何事かと怪訝な顔をしている強に背後からそう囁くと、闇を纏った状態で彼に当て身を食らわせ気絶させた。
幼女を愛する彼に、幼女を攻撃する姿を見せない為に。
戦闘に巻き込まぬよう強を庇う位置に優歌が立てば、もう遠慮する必要はどこにもない。
「さて、さっきの仕返しです……」
怯んだ様子の幼女に向けて飛び込んだ眠兎が、その幼い体めがけて放つのは渾身のボディーブロー。
吹き飛ばされる軌道さえも読んで待ち構えるのは、優歌からの支援を受けた一樹だ。
ロケットハンマーを軽々と振り回せば、そこから伸びた影が幼女を絡め取り捕らえる。
優歌が送った狙いを定める力は一樹の集中を研ぎ澄まし、常以上のダメージを幼女に与える結果となった。
「……っ」
可愛らしい顔を憎々しげに歪めて舌打ちした幼女は、絡みつく影を手にしたナイフで切り払いながら前進。
一樹めがけてナイフを振りかぶるが、刃は翻る三つ編みさえ捉えることなく、ルコが掲げた盾に阻まれた。
「さすが兄さん、ロリコンの鏡」
幼女と至近で睨み合うルコにからかいの言葉を飛ばすのは央で、手にした処刑刀たる巨大な刃で、幼女を横合いから殴るように斬りつける。
「残念だったな。ここにはお前を助けてくれるロリコンはいねぇ、さっさと死にな!」
義妹じゃないロリに用はないとばかりの攻撃の横で、ルコが「ちょっと弟、私ロリコンじゃないですから」と言っているが、央はあえて聞こえてないフリだ。
そんな和やかなロリコン義兄弟を余所に、美しい金の髪を靡かせセレスティが裁きの光を幼女へと降らせる。
回復の必要もない今、エイダもまた己のビハインドと息を合わせて漆黒の弾丸を放った。
苦戦の演技を捨てた灼滅者達から怒濤の攻撃をくらい虫の息となった幼女に、とどめの一撃を撃ち込むのは千巻。
「いくら可愛くっても、悪い子にはおしりペンペンだよ!」
自動追尾の弾丸は、おしりは叩かないまでもキツイお仕置きとなって幼女の胸を撃ち抜き――殺人ゲームのエネミー『幼女ちゃん』は消え失せたのだった。
●
「六六六人衆は来なかったねぇ」
「ええ……」
悪夢から出て強の部屋へと戻ったことを確認した千巻の言葉に、反応したのはセレスティだ。
もしも現れたなら、いつか戦う時の為せめて顔くらいは見ておきたいとの思いがあった為、吐息には残念そうな響きもわずかに滲む。
「よかったと、言うべきなのでしょうね」
「ん……。そうかもしれません」
いざとなれば闇堕ちも覚悟していた眠兎も、セレスティの言葉に眠そうな目を擦りながら頷いた。
その姿からは、先程のロリコン達を氷のような目で見ていたことなど想像もできないだろう。
だがこの場において、いつもの眠兎は長続きしなかった。
何故なら――。
「ところでこの部屋、凄いですね。見習ったらどうですか弟。私はロリコンじゃないからしませんけど」
「いやだな、俺のはロルコン兄さんと違って単なる演技だから、するわけないだろ」
様々な幼女の写真やイラストが張り巡らされている部屋を見ての、ルコと央のにこやかな攻防が始まってしまった為、冷ややかな視線が復活してしまったからである。
そんな二人に窘めるような声をかけるのは優歌だ。
「幼い女の子を愛でる……それは自制があるなら、悪いことではありません。その気持ちを昇華させた人もいますから」
彼女が胸に抱くのは、兎に導かれ不思議な世界に迷いこんだ少女の物語。
「いやいや、私そういうのじゃないですし。あれはあくまで演技ですよ」
「真性疑惑のある兄さんはともかく、俺のは100%演技だから、そういう心配は無用だ」
「二人とも、その辺で」
「そうそう。早く帰らないと、目を覚ましちゃうよぉ?」
眠兎の視線が突き刺さる中で繰り広げられた弁明合戦を止めた一樹と千巻は、皆を促して少々特徴的すぎる強の部屋を後にする。
「もう、ダメ……ですよ……? こんな、夢の……強さを、求めたら……」
去り際、眠る強の額にそっと触れたエイダは、おまじないのように願いを呟きとして残していった。
灼滅者達によって強の闇は払われ、幼女の為であっても彼は他のものを大切にすることを決めたのだ。
きっとエイダの願い通り、もう今回のような過ちは犯さないことだろう……。
作者:江戸川壱号 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年10月23日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 15
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