カストロバルバの空を描いて

    作者:那珂川未来

     大きなキャリーバックを空港の手荷物カウンター預けたあと、サバリオ・メローニは大きなあくびをした。
     日本での滞在を終えて、これから故郷のイタリアにもどるところなのだが、ここ数日どうも頭がしゃきりとしない。
     日本の景色を描くのはとても新鮮で楽しかったのだが、慣れない国と長い滞在で、やはり疲れも出たのだろう。
     どうせ寝るなら、飛行機の中で眠りたい。故郷イタリアまでのフライト時間を考えても、そうする方がいいのはわかっている。
     出発までまだ時間もある事だし、少しコーヒーでも飲んで目を覚まそう。
     サバリオは、手近なカフェの中へと滑りこむと、スケッチブックを広げて。
    「眠気覚ましに、絵でも描こう」
     描き始めるのは、地元の空。
     恋しいカストロバルバの空。
     
    「シャドウが国外脱出を企んでいる報告は聞いている人もいると思う」
     今回仙景・沙汰(高校生エクスブレイン・dn0101)が依頼する内容は、それ。
     日本国外は、サイキックアブソーバーの影響で、ダークネスは活動することはできないことは周知の通り。
     しかし、何故かシャドウは、日本から帰国する外国人のソウルボードに入り込み、国外に出ようとしている。
     それらを試みているシャドウの目的は現時点でわからないが、この方法でシャドウが国外に移動できるかどうかも未知数である。
    「その想定できる未知数の結果で最も最悪な結末が、日本から離れた事でシャドウがソウルボードから弾き出されて、国際線の飛行機の中で実体化してしまうことだろうな」
     その場合、飛行機が墜落して乗客全滅という可能性もありうるので、そうなるのを未然に防ぐため、国外に渡ろうとするシャドウを日本国内にいるうちに、撤退させるのだ。
    「皆が接触してもらう外国人は、サバリオ・メローニという男」
     二十代の若者で、絵描きさんだという。
    「彼はローマ近くの山中にある集落の、カストロバルバっていう所に住んでいる」
     ソウルボードにアクセスすると、そのカストロバルバの集落に出るらしい。
     石畳の階段や急なスロープ、石造りの家が密集している、昔ながらのヨーロッパの香り漂う迷路みたいな町。
     このソウルボード自体に何か事件が起こっているわけではない。
    「ソウルボード内の集落自体は、サバリオの自宅周辺半径100mといったところだ」
     ESPを駆使して探せば、探索だけで時間を割いてしまうことにはならないだろう。中にはシャドウしか居ないから、人目を気にすることもない。
    「シャドウは、大きな蛾の形をしていて、シャドウハンターのサイキックとヴェノムゲイルを使ってくる。見つかると空に舞い上がるから、班に分かれるなりして探索した場合、ある意味こちらの発見の合図になるかもね。飛行状態だけど、力はそれほど強くないし、劣勢と見るなり撤退するからよっぽどのことがない限り、苦戦はしないと思う」
     それよりも一番の問題は、サバリオにどうやってソウルアクセスするか、だ。
     沙汰は空港の見取り図で店の場所を示しながら、
    「サバリオには、ここのカフェへいけば接触できる。ガラス張りの店内の、この場所でコーヒー飲みながら、ノートに地元の風景を描いている」
     時間帯的に店にそれほど人はいないという。隣のテーブルは空いているから、接触も容易。日本語も難しい言葉を使わなければ通じる。
    「サバリオは絵が好きだし、子供も好き。変わった風景とかも好き」
     サバリオはもともと、日本の独特の文化や景色を感じたくてきている。
     それらを話題にして近づいて、どうにかカフェを離れる方向へ話を持ってゆき、ソウルアクセスしやすい場所へ誘うのがいいかもしれない。
    「シャドウがさほど強くないからって、眠らせるまで時間がかかったり、探索に手間取ったりすると――最悪飛行機が墜ちるかもしれない」
     だから決して油断なく、頑張ってほしいと。
    「どうか、よろしく頼むよ」


    参加者
    勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)
    裏方・クロエ(双塔のマギカ・d02109)
    函南・ゆずる(緋色の研究・d02143)
    神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)
    赤秀・空(死を想う・d09729)
    ヴェイグ・アインザッツ(明日を呪う・d10837)
    穗積・稲葉(いたずらバニーさん・d14271)
    白鳥・悠月(月夜に咲く華・d17246)

    ■リプレイ


     展望デッキへの階段を上って。薄青の空が広がり、少し冷たい風が肌を撫で、離陸前の飛行機のエンジン音が耳に届く。
     時間帯的に、飛行機の発着が少ないようだが、出国・見送り・撮影と、様々な人たちが二十人前後。
     短時間とはいえ占領せねばならない罪悪感を覚えながらも。しかし迫る未知の危険を回避するためならば、ささやかな罪さえも、ここに在る証なのかもしれないと。
    「すいません。特別清掃の要請がはいったので」
    「一時間程度閉鎖させていただきます。申し訳ありませんが、ご協力お願いします」
     用意した清掃員っぽい制服を纏い、穗積・稲葉(いたずらバニーさん・d14271)と赤秀・空(死を想う・d09729)はプラチナチケットを使い、お客さんたちに声をかけて。出来る限り穏便に、低姿勢でお願いして。
     運よく難癖付ける様な客もおらず、ターミナルビル内へと戻ってゆく。
    「ふー。なんとかなったー」
     稲葉は息をつく。しかし清掃中の立て看板は、まだ立てられない。これ見たサバリオが入れないと判断してしまう。
     勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)はこの状態を維持するため殺界形成を展開しようとしたのだが――エプロン内をしきりに動き回る人や車の存在に、みをきははっと気づき、それを思い止まった。
     確保することばかりに気がいっていたが。殺界形成で場所を確保しておき、サバリオが来たあとに眠らせ、立て札にて人の立ち入りを禁ずるという状況は無理だと気付いて。何故なら、サバリオも一般人。いくら女性に優しい人とはいえ、殺界形成というESPの力には勝てるはずもない。ここから逃げ出したい衝動にかられてしまう。
     そして効果範囲は制御できないため、空港内にも効果が及ぶ。もちろんここで戦闘が発生しているなら、四の五言っていられないだろうが。
    「ここは連絡しときましょう」
     こういう時のハンドフォン。もともと接触班に事前連絡は入れるつもりでしたからと、裏方・クロエ(双塔のマギカ・d02109)はすぐに神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)へと電話をかけて。
     ひとまず、連れ出し成功した時点でハンドフォンをワンコールしてもらえば手間もなく合図できるだろうと、即席の打ち合わせ。頃合いを見て立て看板撤去、そしてデッキ入場後再び設置でなんとかなるでしょうと。
     全員との電話番号交換、そしてハンドフォンによる緊急時の対応を予定していたことが、プラスに働いた。
     そのへんのフォロー的な事は完全に任せきりで、何も考えていなかったとヴェイグ・アインザッツ(明日を呪う・d10837)は申し訳なさそうに頭を垂れて。
     ひとまず待機となり、白鳥・悠月(月夜に咲く華・d17246)は淀みない空を見上げ、思いに耽る。
    (「シャドウが国外脱出を企んでいると聞いているが、一体何が目的なのか……」)
     一体ならまだしも、密やかに続いている事実。なんらかの組織的な目的が必ずあるはずなのだ。
    「さてと」
     ひとまず封鎖するため。空は立て看板を手に、デッキ入口へと。
    「この看板だけが、頼りか……」
     強制力の一切ない物品を見つめ、空は呟く。この作戦、時間がかけられないものであることは確かであると。


     カフェの中にもお客はまばら。摩耶と函南・ゆずる(緋色の研究・d02143)は、件のイタリア人、サバリオ・メローニの隣のテーブルに腰掛けて。
     いきなり話しかけるのも怪しすぎるから。お客らしく、ひとまずお茶の一杯くらいは注文を。
     当たり障りない会話を日本語で行いながら、横目でちらとスケッチブックを盗み見て。鉛筆ですらすらと描く街並みは、昔ながらの欧州の香り。これから入る世界は、こんな感じなのだと、ゆずるは見たことの無い空に思い馳せる。
     その時、摩耶が待機組からの連絡を受け取って。あまり時間はかけていられないと、摩耶はゆずるへ携帯の新規メール画面に展望デッキの情報を記し、伝え、すぐに接触を開始する。
     失礼は承知で。しかしお話のきっかけ作りのため。
     ゆずるはじーっとスケッチブックを見つめていれば、向こうも気になり自然と視線が交差して。
    「じっと見ちゃって、ごめんなさい。とっても綺麗な、空だった、から」
     あえて英語で話しかける。様々な人種のいる国際空港で、狙った様にイタリア語で話しかけるのも怪しいものであるから。
    「あはは、こんな可愛いお嬢さん方に褒められると嬉しいね」
     サバリオは別段気分を害する事もなく、人懐っこい笑顔で返してきた。英語もそこそこ話せるらしい。絵を描くため他の国も旅行している可能性もあるし、不思議ではない。
    「絵を描かれる方ですか?」
     自己紹介し合ったあと、摩耶も神秘的な微笑を湛え、落ち着いた雰囲気で会話を繋げる。
    「そう。これは、イタリアの空さ。本物を見せてあげたいくらい」
    「お住まいはイタリアなのですか?」
    「うん。これから帰国するところ。君たちはこれから何処へ行くんだい?」
    「学校の交換留学で、アメリカに行く、の。その前は、ヨーロッパに、留学行ったことも、あるの、ね。その時、イタリアにも旅行で、行ったことも、あるんだ、よ」
     とりあえず、制服で高校生二人でお茶している理由もそれなりに融通聞くのではとゆずる。過去にヨーロッパ留学の経験を生かした回答。
     話では大いに盛り上がり、どこか親近感にも似たようなものが湧いたように思えた。またイタリアに来る機会があれば是非案内したいなと盛り上がるサバリオは、自分の故郷こそ一番景色が綺麗だと自負していると。
    「では、これは故郷の空なのですね。山と空と――街並みもとても素敵な所ですのね」
     摩耶はスケッチブックの空に、優しく目を細める。褒められて、自分のことの様に喜ぶサバリオ。
    「ここ(空港)からでも、日本の霊峰FUJI-YAMAが見えることがあるそうです」
     実は正月前後の時期限定。それでも話のきっかけとしては申し分ないだろう。見えなかったら見えなかったで、残念でしたねで済む。
    「へぇ、それは初耳だなぁ」
    「日本の秋空は透明で美しい。ここでお話しできたのも何かの縁ですし、よろしかったら一緒に見に行ってみませんか」
     ゆずるは好奇心を刺激する様に摩耶の提案に相槌打ちながら、「展望デッキ、からなら、いい空、見れそー」
    「そりゃあ可愛いお嬢さん方の誘いは断れないよ」
     二つ返事で了承するサバリオ。気分よく誘うことに大成功。費やした時間も想定範囲だろう。
    (「それにしても……国内に何があるというのだ? シャドウボードの中は、安全だろうに……」)
     何か目的があるはずなのだ。しかしそれがまったく見えない焦燥感。摩耶は淀みない微笑と、少し甘えた様な口調でそれを隠し。
    「サバリオさん、行きましょうか?」


     悠月の白雪の様な指先から放たれたそれは、安息を運ぶ。
     普段の寝不足のせいもあったのだろう。サバリオはあっという間に眠りに落ち、すぐさまみをきは支えに入った。
     みをきは待機中に、すでに死角となる場所を見つけている。植え込みの陰にあるベンチに寝せ、咄嗟に見つからないための配慮も問題なく。
    「石畳と空の街、か…………少し、楽しみだな」
     優しく胸元に触れる摩耶の指先を見つめながら、みをきは独りごちた。

     ソウルボードへの扉が開く。
     降り立った場所は、石畳の階段と、石造りの民家が連なる様に建ち並ぶ。古い町並みにそよぐ洗濯物や、鈍色に光る窓格子と窓枠に並ぶ観葉植物。田舎独特ののどかな風景は、異国でありながらも、ほっとさせるような穏やかな色合いをしている。
    「素晴らしい……」
    「空が好き……か。なんかこの人はボクに近いのかな」
     白い漆喰の軒並みの向こうに広がる綺麗な青空を見つめ、空はぽつりと呟いて。景色が夕焼けに染まる様はきっと綺麗だと想像し、これは護らなければと決意を新たに。
     クロエはソウルボードで写真撮影できないのがちょっぴり残念で。本物はリアルに旅行した時に取っておいて、今はただ憧れの気持ちと共に心に記憶して。
     稲葉は馴染みのない迷路のような場所に興味深げ。
    「こんなにも鮮明に思い出せる程、この人は故郷を大切に想ってるんだろうな……」
     稲葉はこの手に届きそうなほど近く感じる空に、実家を思い出してしまったり。
     早速班分けをすることになったのだが――仲間たちの能力やポジションを見て振り分けてゆくのだが、ディフェンダーとハンドフォンを持っている人を一人ずつ組ませて――といっても、さすがに適当に組むというわけにもいかない。バランスや他の人のポジションとの兼ね合いも見ながら分けるのはそれなりに時間がかかるものだ。
     事前に明確な班分けをしていないことは、タイムロスに繋がりかねない。確かに相手は強くないと明言されているものの、今回は、サバリオの出国の時間、つまりリミットも決まっている依頼なのだ。悠月によるポジションとESPによる振り分けの指針はあるものの、やはりはっきりとしたチーム分けを提示しておくのも必要。
     事前に決められることは、はっきりと決めておくべきである。
     ひとまず、ディフェンダーを振り分け、ハンドフォン持ちの灼滅者のポジションと残るメンバーとの兼ね合いを見て班を作る。
     ヴェイグと悠月とゆずる。稲葉とクロエと空。みをきと摩耶と残るサーヴァント三体、三班に分けてシャドウの捜索に当たることにする。
     ゆずるはダブルジャンプで、まずは一足先に屋根へと。そしてぐるりと見まわし、
    「あの家から、なら、登れそう、だよー」
     民家には人もいないから、家屋侵入も問題ない。しかもこの街は、山にある、急なスロープがあるような斜面のある場所。そのため、屋根に上がるのは、特にESPが無くても身体能力だけでいけなくもない。
     屋根へと登り上がれば、眩しい青がみをきの瞳に写る。ますます近くなる空。街並みに緑も多いせいか、景観は素晴らしい。
    「……壮観だ、が、余り見とれるわけにはいかないな」
     先行して、路地から捜索する摩耶たちに追い付くよう、みをきは屋根瓦を蹴る。
     迷路の様な街並みから、件のシャドウを見つけ出さなければならない。
     入り組んだ路地を、摩耶は注意深く覗きこむ。上と下、みをきと互いに死角になる位置をカバーし合いながら、時にはサーヴァントたちの力も借りて。
     別班の空は、稲葉と左右を分担して。壁の色合いに紛れたりしていないか目を凝らし、見落としの無いように建物一つ一つを観察していると――細長い建物の庇の部分に、隠れる様に存在する何か。
    「あれは……」
     もしやと空が確認をする間もなく。侵入者に発見されたそれは、砂色の翼を広げた。
    「皆さん、シャドウを見つけたのです!」
     上昇してゆく姿を目で追いながら、クロエは声を張り上げると同時に、前もって用意していた発見メールを一斉送信。
     天高く舞い上がったその姿は、この美しい青空に酷く場違いで。ひときわ異形な姿は、遠くにいてもわかるほどに。
     まるで蜂の顎の様な奇妙な口をカチカチ鳴らしながら、デッドブラスターをクロエへとぶっ放す。
    「見つかった。急ごう」
     ハンドフォンの着信と同時に、悠月は禍々しい一撃を稲葉が受け止める姿を見つけて。
    「こっちです、よ」
     ゆずるは高い位置にいる利点を生かし、最短への道を指差しながら、屋根の上から先導する様に走りだす。
    「もしかして国外に出る行為自体に意味があるのかな? 例えば……何処まで灼滅者に察知されるか調べてるとか」
     クロエはシールドリングを飛ばしながら、質問を投げかける。何か一つでも情報を零せばもうけものだと。
     しかしシャドウは返事の代わりに、ヴェノムゲイルを撒き散らしてくる。蛾の形をしているからといって、喋れないわけではないだろう。無視する理由があるに違いない。
    「キミの相手はオレだよ!」
     広い空を自在に舞うシャドウを捉える、稲葉の一撃が怒りを及ぼす力を刻んで。
     みをきが合流を果たすなりワイドガードを展開し、ヴェイグは照準をしかと向け、
    「オイコラ、シャドウの分際で海外旅行とか洒落てんじゃねーか。させねーよ羨ましい」
     撃てば、どんと吹き上がる火柱。一拍置いて連なる様に攻撃を仕掛けるゆずるは――高い位置を舞うシャドウへと、初撃を斬影刃へと変更して。
    「しまださん、一緒に攻撃しよ」
    「ナノナノー」
     ふわりと舞う幻想的なしゃぼん玉。その中を跳ねあがれば、ゆずるのつま先から伸びる刹那の闇が、シャドウの体を真一文字に切り裂いてゆく。
     ナノナノの鏡・もっちーとビハインドが主の攻撃を補佐する様に攻撃を繰り出すが――飛行している相手に、サーヴァントは遠距離対応のサイキックが一種類しかないのが辛いところ。弱いとはいえ、まき散らす毒も厄介。
     しかし、勝てない相手ではないのは、打ち込まれてゆく攻撃に、シャドウの飛行が次第にふらりとしてきていることからもわかる。
     シャドウが打ち込んできたトラウマを刺激する一撃を、摩耶がしかと防ぐ。
    「墜ちるのは、そちらだ」
     そして悠月が、空と合わせ放つ、螺旋描く風の一撃が、薄青の空を突き抜けてゆく。
     先に加えた魔氷がオーラに反応した様に、がしりとシャドウの体へ食い込んで。
    「こちらも時間が無いからな、そろそろ片付けさせてもらうぞ」
     正直、班分けのタイムロスが響いている。
    「逆十字に抱かれて堕ちろ」
     みをきの指先が描くのは深緋の陰影。稲葉の朧月の鏡盾が書に秘められた力を最大限解放し、シャドウが纏う力を崩壊させて。
     衝撃によろめいたシャドウは、これ以上ここにいるのは得策ではないと判断し、一瞬にして霞みの如く消え去った。
    「急ごう、名残惜しいけど」
     刻々と迫り来る出発の時間に、稲葉は歯ぎしりした。


     イタリアへの飛行機は、すでに搭乗を開始していた。
     摩耶とゆずるはすぐにサバリオを起こし、一緒に急いだけれど。間に合わず、頭を抱え、大きく息を突くサバリオ。
     摩耶とゆずるは懺悔する様に目を閉じ、只管申し訳なさでいっぱいになっていた。
    「いやいや。君たちのせいじゃない。僕が迂闊にも寝ちゃったからね……次に振り替えてもらったから、大丈夫だよ」
     実は最近眠れなかったものだから、眠りが深くなってしまったねと。君達に時間を告げていなかったから、責めることはできないと。
     楽しくお話できたのも事実で、そして搭乗まで必死になってくれたことを感じ取っていたから。
     けれど、直前キャンセルによって、彼に何かしら損害があったはずなのだ――。
     君たちもそろそろだろうと、ソラリーに浮かぶアメリカ行きの表示に目をやって。
    「お話しできて楽しかったよ」
     気を付けてと、手を振ってくれた。
     飛行機に間に合わなかった要因は、こちらにあるのだと言えない事実。
     でも。
     シャドウは間違いなく彼のソウルボードから消えて、世界の空に危険が及ぶことは防いだことも事実。

    作者:那珂川未来 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年11月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ