黒板に小気味よい音をたてて、チョークが文字をつづっていく。
日 時:10月31日
コース:学園を出発して市街地を走り、井の頭公園を抜けて吉祥寺駅前を通過。繁華街から坂道を駆け上がり、学園へと戻る全長10キロ。
ぱんと音をたてて手のチョークを払い、埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)は眼鏡のブリッジを押し上げた。
「言うまでもなく、ESPは使用不可。一般の市街を通過するコースだ、周辺に迷惑をかけることは避けてもらいたい。ま、多少の無理はきくが」
「エスケープする奴がいるって聞いたが、本当か?」
宮之内・ラズヴァン(高校生ストリートファイター・dn0164)の質問に、玄乃は眉ひとつ動かさなかった。
「エスケープ、及びコースのショートカット等不正を行う者は、魔人生徒会の協力者たちに追撃され、罰を受けることになる。具体的にはグラウンドの変わり映えのしないところをぐるぐる、コース分走らされる。私ならごめんだ」
同じ距離を走るなら、どう考えても市街地を走ったほうが遥かにましだ。
「前日は早めの就寝を推奨する。横っ腹が痛くなったらいかんから、朝食は摂り過ぎないように」
そして好天続きであることから、しっかりした水分補給も重要になってくる。季節外れの脱水症状など笑えない。暑さを理由に薄着をしないことも大切だ。
一通り説明してから、玄乃は再び眼鏡のブリッジを押し上げた。
「さて、そこで。水分はもちろん、きちんとした栄養を摂らないと身体に宜しくない。それは学園も承知しており、コースの沿道で水分・食品の購入を行うことは承認されている」
そう、市街地から商店街、駅前などでの買い食いは、行事の性質上許されるのだ。
お弁当を作ってきたなら井の頭公園でレジャーシートを広げてみんなでごはん。
ごはんの間は、魔人生徒会の協力者だってひと休み。商店街や駅前で、旬の滋養ある秋の味覚・栗やかぼちゃを満喫するのもいいだろう。糖分がたりないと倒れちゃうし、栄養や水分が足りなくなったらたいへんだからスイーツもいい。
全てはマラソン完走のためなのだ。
「諸君らは灼滅者である前に、健全な青少年だ。闇堕ちというリスクを回避する上でも、充実した青春のページの一枚としてマラソン大会を満喫してもらいたい」
玄乃っておっさんくさいよな?と呟いたラズヴァンへチョークが飛ぶのを、集まった灼滅者たちは生温かい目で眺めたのだった。
●マラソン大会、その昼のひととき
台風も綺麗に通過して、綺麗に晴れ渡った空が広がる。
学園前を出発した生徒たちは三々五々、市街コースを抜けて井の頭公園へ到達する。
そこは生徒達の大切な、栄養補給の場。
早めに行って池の見える木陰を確保すると、【料理研究同好会】の太治・陽己(薄暮を行く・d09343)は自分と水沢・安寿(花一華・d10207)のお弁当を取り出した。
陽己は刻みワカメをまぶしたお握りに瓜の粕漬け、海老真薯等。安寿は甘辛い鶏そぼろと、レタスにツナマヨの海苔巻二種、タコさんウィンナやフルーツ寒天。
「この酸っぱさが元気の秘訣よね……って」
「考える事は皆同じか」
揃って檸檬の砂糖漬けも。
オリヴィエ・オーギュスト(従騎士・d20011)は姉との合作、特製ソースたっぷりの鶏肉メイン、ツナやジャムなどのサンドイッチ。
兄や姉のような先輩たちと笑い転げて、オリヴィエはちょっぴり子供らしい。
【天文台3-G】、公園集合。一色・朝恵(忘却まじりの橙・d10752)と、紺野・茉咲(居眠り常習犯・d12002)が芝生に倒れこむ。クーラーボックスを担いでマラソンしてきた神楽火・國鷹(鈴蘭の蒼影・d11961)がお弁当を広げ、図南・雛(銀の檻と炎の心臓・d15421)が手伝った。
むくっと起き上がった朝恵が回想モードへ突入する。
「朝みんなで早く集まって、いっしょに作ったのよね!」
朝恵はちらし寿司、茉咲はたまごサンド、雛は二人を手伝って、國鷹は冷凍の唐揚げ、などを詰めたのだ。
「みんなのもいただきます!」
ちらし寿司のカニカマを頬張る茉咲、ひと息ついて國鷹もリラックス。
「皆で食事をするというのもいいものですね」
偏食を気づかれないよう参加しながら、雛も微笑む。
「また、何処か遊びに行きたいですね」
【ゼンブ】の舩坂・証(爆炎球児・d02966)が目指すのは優勝あるのみ。しかし千金楽・絶(カラクリクル・d03791)とメアリーアン・ルドヴィカ(星とハチミツ・d03931)はそっちじゃなかった。
「なんでいきなり弁当広げてんだよ! しかもすげえ美味そうじゃねえかふざけんな!」
「あかちゃんは唐揚大好物だよね?」
特製だよとお重の一段丸ごと渡し、絶はメアリーアンのベーグルサンドを賞味。絶の唐揚げに彼女も上機嫌だ。つられて食べた証が悶絶。辛酸っぱ甘塩辛い。
「皆で食べるとよりおいしー!」
絶の衿首掴んで証が絶叫。
「歯ぁ食いしばれコラァ!」
「あかちゃん、メアリのも遠慮せず食べろ、な?」
【ゼンブ】の傍らで異彩を放つ、バカ殿風衣装の紅羽・流希(挑戦者・d10975)。メイクをとり鬘は外して、お握りと玉子焼きとか詰まったお弁当をご賞味中だ。見られたくない……けど、目立ってます。
【四軒寺公園】の一同は戦慄していた。シートの上に並べられた黒いお弁当箱が二つ。
「早起きして頑張って作ったよ! これが卵焼きでーこれがグラタンでー、林檎も兎にしたんだよ!……全部焦げたけどね!!」
超イイ笑顔で朝比奈・夏蓮(夜比奈夏蓮・d02410)が報告。
雨積・舞依(思慕のプラトー・d06186)も兄に嫌いな食べ物を克服させようとしたのだけれど。
「ささみチーズロール入りお握りとトマトのオムレツ。……ちょっと焼きすぎたけどね……」
お弁当箱の中身がモノクロ。
英・蓮次(凡カラー・d06922)も言葉に詰まる。
「え、夏蓮ちゃんのだって食べようと思えば……」
所城・火華(黒髪王・d20051)がガリガリと夏蓮の弁当を削る。月村・アヅマ(風刃・d13869)には暗黒物質にしか見えない。妹の愛を避けようと、弁当をすり替えた雨積・熾(金髪王・d06187)の落胆……更にすり替えられましたね。
一応桜井・夕月(もふもふ信者の暴走黒獣・d13800)の砂糖倍量激甘南瓜パイもある。ハムも卵もなし、適当に具を突っ込んだアイスバーン・サマータイム(精神世界警備員・d11770)のサンドイッチもある。「出来はまぁ……うん」と作った本人が言う、アヅマのお握りや卵焼きもある。
あるけど。
そんな中、会心の出来の肉弁当を披露したらどうなるか、九葉・紫廉(テンション下がるとブラック化・d16186)さん。
「じゃ、お先にいただきまー……」
「九葉ちゃーん、それちょっと俺にちょうだい」
箸でレーヴァテインを出した蓮次が笑顔で強請れば、夏蓮も魔導書を繰り出す。
「ごめんね! わたし美味しいお弁当食べたい!」
「えっ、ちょ、ナーレ何言って」
「勝負だと? 上等だ! この俺に勝てるかな?」
紫廉の悲鳴を圧して本堂・龍暁(ドラゴン番長・d01802)の咆哮が轟く。彼は生肉持ち込みで今焼こうとしていたところだ。
「オリたん(の麻婆豆腐弁当)には指一本触れさせねぇぇぇぇ!」
「ジンの唐揚げ弁当は絶対にぜったいに死守するよっ!」
神終・人(カミハゲジン・d12336)とオリキア・アルムウェン(オリキアデランス・d12809)も声高らかに宣戦布告。なにこの混沌。
公園の一角でちゅどーんと火柱があがった。
あとには全部消し炭になったお弁当と、消し炭を食らう一同。いい感じに焼けた肉を賞味する龍暁もつきあった。人とオリキアはらぶらぶ食べさせあいっこで愛を深める。
火柱に巻き込まれたアヅマと、暗黒物質を食べた熾が保健室へ搬送されたことを付記しておく。
公園のベンチを陣取って、月島・立夏(ヴァーミリオンキル・d05735)はワクワクが止まらない。
「今日のお弁当は何カナー?」
恋人の望崎・今日子(ファイアフラット・d00051)が作ったお握りに玉子焼き、タコさんウィンナーとテンションアップ! ウヒョーと奇声を上げつつ頂きます!
「ホイ、あーん♪」
「ん?あーん」
こうしているのが一番幸せ。愛情は最高のスパイスです!
今年はのんびりお昼と決めた【井の頭2-桃】の葛木・一(適応概念・d01791)。アプリコット・ルター(甘色ドルチェ・d00579)はお弁当作りの早起きでちょっと眠い。天埜・雪(リトルスノウ・d03567)がスケブで『おかずの交換とか、どうでしょう?』と提案。
卵焼き、たこさんウインナー、女子のお弁当から一はついおかずを貰ってしまう。
「……美味しい、ですか?」
「家庭の味的な? 美味いじゃん♪」
雪はおばが作ったと首をぶんぶん振るけれど、凍らせた一口サイズプリンの差し入れも女子力です。
「ごちそうさまでした!」
手を合わせて、一が笑顔になった。
日当たりのよいベンチで伊勢・雪緒(待雪想・d06823)はお弁当を展開。鮭・昆布・梅のお握りに甘い卵焼きとタコさんウィンナーに唐揚げ、好物ばかりで橘・清十郎(不鳴蛍・d04169)は目を輝かせた。
「やった、待ってました!いただきまーっす!」
満腹になったら眠気が襲う。
「……はっ! 毎晩ジョギングした成果を見せるのですよ!」
重い腰をあげて、走り出す。
公園で合流した【刹那の幻想曲】は、三人で座れるベンチを見つける。
北條・薫(とうもろこし弁当の人・d11808)はツナマヨ・たまご・ハムチーズ等のミニサンドイッチ。セレスティ・クリスフィード(闇を祓う白き刃・d17444)はBLTのミニホットサンドに白桃の寒天。四季・彩華(蒼雷走る白銀の刃華・d17634)は卵焼きやサラダなど軽いおかず。
「お弁当の交換したいです!」
「四季さんの卵焼き、ふわふわしてて美味しいです」
「自然の中美少女達とお弁当なんて、マラソンも悪くないね♪」
ぱっと見、女子三人だ。彩華くん、女子体操服なんだもの。
魔人生徒会の協力者に差入れをして、夕永・緋織(風晶琳・d02007)はお弁当箱をオープン。シートを広げた海保・眞白(真白色の猟犬・d03845)は麦茶の水筒をスタンバイ。卵サンドにハムサンド、小さなオムレツもつけたのは、眞白が卵好きっぽいから。広がる卵の甘味を分かちあいたくて、眞白も未来の奥さんにあーん。
麦茶を飲んでひと休み、二人でゴールを目指す。
ピクニックシートを広げてお弁当を交換するとデートのよう。
ミツキ・シャノワ(月に愛された魔法使い・d04055)は父直伝、母とのデートで作ったサンドイッチ。ミネット・シャノワ(白き森の黒猫・d02757)は自信なげに、手製のサンドイッチを差し出して。
「料理も上達してきたんじゃないですか?」
美味しいですよとミツキに頭を撫でられるのが、ミネットは何よりも嬉しい。
タジン鍋を操る【武蔵坂Horse club】の笹銀・鐐(赫月ノ銀嶺・d04707)。香り蒸しにして玉葱マスタードのディップを添え、お握り、卵焼きやほうれん草のお浸しなどの定番も網羅。
「お鍋もあるのー!? 準備凄いっ」
驚いた蒼井・夏奈(小学生ファイアブラッド・d06596)もデザートは持参。今が旬のフルーツをカップインでゼリーにした、大事な糖分補給。
長距離走者である武野・織姫(桃色織女星・d02912)だが、今日は二人とのんびりがいい。
「何にも持ってない自分が恥ずかしい~」
でも美味しく食べる人も大切です。残り火で焼いた餅団子も満喫、後半ものんびり行きましょう。
魚沼産のお米に、具は野沢菜漬けで作ったきりざいや、鮭や梅。たくさんのお握りを用意して、小野塚・舞子(おこめっこ・d10574)は米田・空子(ご当地メイド・d02362)に振る舞った。
「わあっ! すっごく美味しそうです~♪」
「まだまだあるよ。私の分もあげる!」
空子が用意したお茶を飲んで、食休みにうとうと。
空子が妹みたいで、舞子は幸せになってしまう。
【がれ庭】ご一行、無銘・夜ト(紫眼黒獅子・d14675)が四人分の重箱弁当をシートの上に広げる。水瀬・ゆま(箱庭の空の果て・d09774)手製のお握りとサンドイッチ、義兄の好きな唐揚げとあんかけ肉団子。卵焼きに野菜の煮物と、南瓜のグラタンとコロッケ。
「運動すると腹減るよねー。運動しなくても減るけど」
神堂・律(悔恨のアルゴリズム・d09731)が、義妹のお握りに次いで卵焼きをぱくり。
「わーい、甘い卵焼きだー」
リクエストしたディートリヒ・エッカルト(水碧のレグルス・d07559)が大喜び。
「って、夜ト先輩! それ俺の唐揚げ! 食うなー!」
キビシイ生存競争。お弁当の作り甲斐がある、ゆまだった。
ばんそうこうだらけのヴィルクス・エルメロッテ(空虚なりとも端然たれ・d08235)の手を見れば、持った包みが何かは予想がつく。六文字・カイ(死を招く六面の刃・d18504)はちょっと強引にお弁当をとると、包みをあけて口へ運んだ。
「うん、美味い!」
破顔一笑の感想に息をつく手を引き寄せ、そっと囁かれ。
「ありがとう」
あっと言う間にヴィルクスの頬が赤く染まる。
さあ、一緒に食べよう。
【bonheur*】もお昼の時間。手料理をご馳走になるのだからと、時雨・翔(ろくでなし・d20588)が荷物持ちを買って出た。
「時雨くんはお弁当、持ってくれてありがとうです~」
織凪・柚姫(甘やかな声色を紡ぎ微笑む織姫・d01913)が弁当を開くと、出汁巻き卵とタコさんウインナーをリクエストした奥天竜・染(幻鏡・d00539)がにゅっと手を出した。
「あ、柚姫の唐揚げとカツサンド貰うわ。好きなんだよな♪」
黒崎・紫桜(日常を守護する葬焔の死神・d08262)も栗大福や南瓜の金団などを皆に配りだす。
卵サンド、BLTサンド、カツサンド、フルーツサンドなどを用意した結城・むつみ(確かな幸せを悟る娘・d21220)も取り分け始めて。
「腹が減っては戦ができないのだっ、そんなわけでガブリっ」
アッシュ・マーベラス(アースバウンド・d00157)がハンバーガーにかぶりつく。エリスティア・シャルティエール(倖せ奏でる唄兎・d02899)のお握りは昆布に梅干し、ツナに鶏そぼろ、のりたま。唐揚げはチーズを入れたり辛めの味付け、レモンを添えたりと多角展開。フルーツゼリーも自作だ。
「桃のゼリーは宝石を散りばめたみたいですね~」
幸せそうに柚姫が味わい、
「家の庭になったミカンもぎってきた」
「お庭からとったの? すごいじゃない!」
染の言葉にむつみが驚きの声をあげた。
木陰に陣取り、天崎・祇音(霊山の護り姫・d21021)はお弁当を開く。お握りと漬物に小さな焼き魚と、デザートは蜜柑。嬉しそうにしているのは一色・紅染(穢れ無き災い・d21025)。
焼き魚を紅染の口元へ運ぶ祇音、顔が赤いと言われると余計に照れて。
「どうかえ? 美味しいかえ?」
「すごく、美味しい、です。僕、祇音、の、料理、大好き、です」
どちらも幸せが、一番。
【夜警】集合。若宮・想希(希望を想う・d01722)は公園で足を止めた。ピクニック認定の高瀬・薙(星屑は金平糖・d04403)もハロウィンカラーの金平糖を持ってふらり。
貴族衣装のジンザ・オールドマン(ガンオウル・d06183)が梨ジュースにジンジャーティー、ショコラオレンジを繰り出す。ポークサンドに白身魚のフライとフードも抜かりなし。想希もどんと南瓜を出した。くりぬいてサンドイッチ詰めてみたご飯と、南瓜プリンを詰めたデザートの二つ。
神崎・摩耶(断崖の白百合・d05262)はもくもくと食べる。
「皆、良いお婿様になれるぞ」
「やっぱり料理上手多いんだねぇ」
彩瑠・さくらえ(宵闇桜・d02131)も幼馴染から貰ったお弁当をお裾分けしつつ、二人のご飯を満喫。炭酸クラッシュゼリーは美味しくできたから、皆に勧めて。
「周りにも振舞わないと勿体無いですね」
お腹が満ちた摩耶とさくらえがお手伝い。薙も参入、臨時喫茶開店!
天瀬・伊織(炎舞う咆哮・d00718)を待っていたサプライズ。
「……お弁当、あるんだ。……先輩の、分も」
ばんそうこうだらけの手で空屋・千太郞(静炎・d02144)が手作りお弁当を持ってきたのだ。お握り、玉子焼き、一口ハンバーグ、焼きそば。不格好だけど心のこもったお弁当。
「……いい嫁になれるよ」
嬉しそうな伊織を見て、千太郞も幸せでお腹いっぱい。
【よろず屋】はお昼の準備中。天ヶ瀬・空(焔火の姫・d11206)はオムライスお握り。桐屋・綾鷹(月華静鳴・d10144)のサンドイッチは玉子マヨ、BLT、ツナレタス、小倉マーガリンの4種揃って、甘い玉子焼と塩焼きソーセージもセット。
「じゃ、呼んでくるね♪」
空は皇・千李(復讐の静月・d09847)を、綾鷹は彩橙・眞沙希(天衣無縫の白にゃんこ・d11577)を探しに池へ。お握りを鯉に食べさせていた千李は、ジト目で空を見ながら戻ってきた。
「サンドイッチ……あまり食べないな……おいしい」
「お二人ともさすがに美味しいです♪」
眞沙希もご満悦。ちょっといびつなお握りのお弁当を食べる綾鷹が微笑む。
驚いて池に落ちそうになった眞沙希を支え、
「悪気は無かったのですが……暫くこのままで」
そう囁いたのは、二人の秘密。
阿剛・桜花(硬質圧殺粉砕オーガ系お嬢様・d07132)とランジュ・アルディリアス(氷に閉ざされし歯車・d17693)の【ゆる~くお茶会】、目的は紅葉とお弁当。
御節料理を詰めたランジュとサンドイッチを用意した桜花、当然取り換えっこがあるわけで。
「……サンドイッチ美味しいです……どうぞ」
「わ、私からも……あ、あ~ん?」
食べ終わったら、走って下さいね。
【花園】の黒岩・りんご(凛と咲き誇る姫神・d13538)、お弁当を忘れる。これはもうお裾分けしかない。
「りんごさん、お弁当ないの? それじゃ……食べる?」
おずおずと唐揚げを勧める墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)、実は力作。美味しいかどうかがとっても気になる。
同じく早起きして唐揚げを手作りした羽野・竜胆(風疾り雷迅く・d16583)も、照れて目を逸らしつつりんごに渡す。
「……そっちも唐揚げか、人気メニューだしな」
静かに火花散る、二人の対抗心。
「ん、美味しい♪」
上機嫌のりんごに差し出されたのは若葉・杏子(あんこのだらだらシンデレラ・d16586)の水筒。ダイエット中で中国茶だ。
「直接口にしていいのです?」
間接キスを指摘され、杏子は思わず真っ赤。
「えへへー。こんな事もあろうかと、いちごサンドを作ってきました!」
岩永・静香(苺魔法少女パフュームラヴァー・d16584)が高らかな宣言と共に差し出したのは、実家のいちごで作ったデザートサンドイッチ。東屋・桜花(もっちもち桜少女・d17925)もオールシーズンオンシーズンの桜餅を多めにあげる。
本場イギリス仕込みのマフィンサンドを手にりんごに寄り添ったのはスミレ・シラカワ(絡み合う三極のエス・d16787)。
「お礼なら、イチャイチャして下されば十分ですわよ……?」
反対側から香祭・悠花(ファルセット・d01386)が卵サンドをあーんしようと身を乗り出し、そのままぐらり、りんごを押し倒してしまう。
「ごめんな……うわーん! 胸の格差を感じるー!!」
このイチャイチャぶり。忘れたのわざとじゃないのかなー? なんて思う、桜花だった。
寝つけなかった咲宮・律花(花焔の旋律・d07319)が作ったお弁当はサンドイッチ。卵、ツナ、ハムにサラダにカツとたくさん。感想が気になって、朝間・春翔(プルガトリオ・d02994)から目が離せない。
「薄過ぎず濃すぎず美味しいし、塩気も丁度いい」
「紅葉、綺麗よねー」
ほっとすると照れて顔をそらす律花に、相槌をうつ春翔も気恥かしげに口元を隠す、胸騒ぐ距離感の二人。
公園までやってきた久瀬・雛菊(見習いシーアクオン・d21285)だが、一人で食べるのも味気ない。天野・白奈(血を望まない切り裂き姫・d17342)と星空・みくる(お掃除大好きわん子・d13728)、ラズヴァンが集まって、芝生の上でお昼となった。
集まれば当然、おかず交換が始まるわけで。
雛菊がタコ、エビマヨ、すじコン、穴子の明石焼き四種詰め、白奈も不安そうに作ったお弁当を出す。みくるのお弁当が自作と聞いて全員が驚いたが、
「辛ッ! うわ辛ッ!!」
一口貰ったラズヴァンがのたうち回る。
「美味しいね、ノノ」
彼と彼のナノナノは激辛好きらしい。白奈から唐揚げを貰ったら、今度は甘くてフリーズ。固まる彼へ、急いで白奈が水を持ってくる。
「すみません……!」
雛菊が貰った分は美味しかったから、当たりが悪かったらしい。思わず笑い出してしまう、思いがけないお昼の一幕。
期待に胸躍らせる住矢・慧樹(クロスファイア・d04132)に、雪片・羽衣(朱音の巫・d03814)は半分に切ったピタパンに、野菜、ハム、鶏の照焼きにツナマヨを用意。具を入れ過ぎてこぼしそうになるのも彼らしさだ。衣サクサクに揚げた竜田揚げも好評で、
「今日もおいしかった、ごちそーさま!」
そう言われると羽衣は嬉しさで笑顔がこぼれる。
【そよ風クラブ】は分担制。シートの上に並べた純白のティーセットから芳香が漂う。
「お疲れ様でした。お昼くらいはゆっくり頂きましょう」
土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)がミルクティーを淹れ、紅月・瞳(戦闘狂いの白兎・d09522)はサンドイッチを並べる。ハムやトマト、唐揚げその他。
「腕によりをかけた……とは言えんが、食べてみてくれ」
「おいしそう~♪ たまご、たまご~あるかな~?」
美味しさに疲れも吹っ飛び、風音・瑠璃羽(散華・d01204)もエッグタルトを披露する。南瓜のピューレで南瓜味とか、形も南瓜のジャックぽく。
通りかかったラズヴァンへ、有人がにこやかに声をかけた。
「やあ、お茶はいかがですか?」
「お、サンキュー。じゃあ四人分頼むよ」
お昼を共にした人たちにも、香り高いお茶が振る舞われる。
「誰も誘いに乗らなかった……」
人人は最初から飛ばして走った。
「お弁当ー♪」
一人だった。
「む、虚しい……」
豪華お重五段重ね弁当をもそもそ食べた。
「不覚、食べ過」
倒れた。
春の花見以来のお弁当を満喫中の秋篠・誠士郎(流青・d00236)と芳賀・傑人(明けない夜の夢・d01130)。
誠士郎のお弁当は小豆入り栗おこわときのこ炒め、茄子のはさみ揚げに栗金団。傑人は秋鮭フライ、きのこマリネに蒸し鶏、リンゴとハムとクリームチーズのサンドイッチだ。栗金団とリンゴのサンドイッチを交換して秋を満喫。
傑人は来年卒業だけれど、変わらぬ交誼を楽しみに。
秋風を楽しみながら走っていた蜂・敬厳(エンジェルフレア・d03965)も下宿のおば様謹製のお弁当をオープン! 旬の食材たっぷり、馴染んだ味でチャージして、後半も気合い十分。
天凶院・真夜(脳天直撃ロケットガール・d20656)も買ったばかりのバナナケースからバナナを取り出して栄養補給。ケースを買ったのはまさに運命に違いない。楽しく元気に走れそうだ。
花守・ましろ(ましゅまろぱんだ・d01240)と八重垣・倭(蒼炎の守護者・d11721)はベンチでお昼ご飯。ましろのお弁当、特にふわふわ卵焼きは自信作。倭はチキンとコールスローのロールサンドに林檎ジュース。
「はい、あーん♪」
恥ずかしそうな倭だけど、有難うな、と大きな手で頭ぽむぽむ。
お腹いっぱい、日差しもぽかぽか。二人で寝過ごして、ぎりぎりのゴールもご愛敬。
●今年も来ました買い食い大会! in吉祥寺
いえマラソン大会です。
見慣れた街も道も、皆と走れば違って見える。今日も友達と楽しく……とはいえ栄養補給も大事。【理科棟】は駅前でコースアウト、商店街へ軽やかに突撃した。
「速!皆マラソンよりスピード感あったよね今!」
ばらける仲間へ埜口・シン(夕燼・d07230)がびっくり。
秋津・千穂(カリン・d02870)が買ったのは鯛焼きだ。定番の黒餡に、カスタードとチョコクリーム、変わり種は林檎ジャムにハムエッグ。
狙っていた揚げたてミニドーナツを手に笑顔の早乙女・ハナ(諷花・d07912)。チョコにプレーンに季節限定マロン味、あれこれ選ぶのも楽しい。
海東・秋帆(デジタルノイズ・d07174)は和菓子屋へ駆けこみ、イチオシのコーヒー大福をまとめ買い。
目移りの末に月原・煌介(月梟の夜・d07908)が買ったのは南瓜入りの黄色い特製一口コロッケ。好きなお月さまのよう。
急いでシンもたこ焼きを買ってきて、皆でトレード!わけあうのは美味しさだけじゃなく、幸せも。
打ち上げの相談をしながら、また走り出す。
その怒涛の買物を目撃した転入したての御菩薩池・聖人(聖き祝福星・d21427)もつられ、大きな肉まん、栗羊羹、今日はハロウィンだし。
「パンプキンカップケーキと抹茶ラテお持ち帰りで」
【迷い子の名所】は商店街で惑わされ中だ。アルヴァレス・シュヴァイツァー(蒼の守護騎士・d02160)は目移りの果てに好きな唐揚げ。
「あ、やっぱり唐揚げ好きなのねっ♪」
ツッコむ中津川・紅葉(咲き誇れや風月の華・d17179)はカツサンドにお惣菜。ユエファ・レィ(雷鳴翠雨・d02758)のイカ焼きとモダン焼き、ダブルは空腹を刺激する魔力が絶大。
一口交換で盛り上がった後は、ユエファがおずおずとクレープの店を指す。
「甘いものは別腹……いうのは、いかがだろ……か?」
皆で食べると、いつもより美味しい魔法がかかる。
焼きそばを買った天野・白蓮(斬魔の継承者・d12848)は、お茶と栗まんじゅうを求めてさすらっていた。
「どうせ買うんだったら、隠れた場所だろうよ」
幸いお店には困らない。新規開拓だ!
迷子体質の稲荷坂・里月(迷子の殺人鬼・d13837)、細音・氷雨(万象探究・d13838)の側で駅前散策中。ルイボスティーにトマトや杏、梨のコンポートを持ってきた氷雨も和菓子を求めつつ、里月から目は離さない。
チョリソ―のホットドッグとクレープ、紅茶を買って戻った里月は早速もぐもぐ。
「氷雨君は何買ったのー?」
和菓子店で草団子と求肥。食べたら午後も頑張ろう。
下見で作った駅前甘味ガイドマップを手に、駅前制覇を目指す【星空芸能館】。
椎那・紗里亜(魔法使いの中学生・d02051)手製の地図を見て、ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)が不敵に笑う。
「まだ実は秘密の名店もあるのだよ」
とりあえず抹茶アイスの美味しい和菓子屋さんへ! 星野・えりな(スターライトエンジェル・d02158)は紗里亜の情報で、トッピングの小豆をおまけゲット。蕨田・優希(中学生ご当地ヒーロー・d20998)は迷わず。
「生き返る~冷えたわらび餅は何とも言えん~♪」
「疲れた身体もクールダウンしてくれますよね♪」
一緒のゴールを約束した人がいる紗里亜が出る前に、ファルケが食べ歩き写真に収めた。
「ポーズ取らなくていいぜ。その自然体の姿が、一番の絵になるんだからよ」
栄養補給に立ち寄った鳴神・月人(一刀・d03301)、やっぱり季節のものが食べたい。栗おこわとメンチカツを買って、南谷・春陽(春空・d17714)の口にカツを押しこむ。
「むぐ、熱っ、美味しいー」
自分のカツとおこわを完食。春陽は餡子たっぷりの鯛焼きも満喫したらお腹一杯。うとうとする彼女を背負って、月人は学園へと走る。
「学園に近づいても降ろしてやらねえからな?」
【吉祥寺3B】、育ち盛りの少年二人はメンチカツで前哨戦を飾った。倉地・悠矢(コルノ丶アンブラート・d04312)は即座にケチャップどばー。
「うまっ、これうまい~」
「恐るべし、ケチャッパー……!」
慄いたソース派の硲・響斗(波風を立てない蒼水・d03343)だが、続いて鶏の半身揚げを提案。あとは野菜ジュース飲んでおけばダイジョーブ!。
あとはまったり、マイペースで。
【銀庭】の皆を引き連れて駅前へやってきた九条・茨(白銀の棘・d00435)が拳を掲げて宣言。
「覚悟はいいな? 張り切って食べるぞっ!」
「おーっ」
「……お、おー……?」
「はい、九条先輩」
即座に呼応する久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057)、迷いながらの乙宮・立花(仮想のゆりかご・d06338)、つられて唯空・ミユ(藍玉・d18796)。
「商店街のことならオレに任せな」
平・等(眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡眼鏡・d00650)が眼鏡を光らせる。
まずは30円コロッケ。
「ボク10個で!」
「安くてうまいんだな~」
「……た、立ったまま外で食べるんですか……?」
驚きの個数を注文の仙道・司(オウルバロン・d00813)の隣で、不思議そうな織兎。媛神・まほろ(夢見鳥の唄・d01074)は人目を気にしつつ、美味しさに驚く。
等情報の豆腐ドーナツ屋へ突撃。
「ふまいな~」
「ここの列全部下さいっ!」
「店員さんオススメのドーナッツくださいっ」
もぐもぐする織兎の横で再び司、驚きの注文。ミユもフレーバーを決めかねる。
「こちらにも参りませんか? 名物の巨大餃子という訳には参りませんが、黒米あんまんや中華肉まんも中々でして」
「……わ、忍ちゃん……詳しいんだね……」
村上・忍(龍眼の忍び・d01475)、実はグルメ。立花が思わず感心の眼差しで。
「路上の屋台でピザパンもあるぜ」
等が再びレア情報を繰り出してくる。途中で迷子になりかかって、子鈴に肉まんをあげていた立花を回収。食べ続けで喉が渇いた茨がジュースを買うと絶叫。
「全員腹がたぷたぷになるまで飲むんだ!」
「駄目です、走れなくなっても知りませんよ?」
まほろがチームの理性だった。
商店街で森田・供助(月桂杖・d03292)はモンブラン風の甘いパンと揚げたて南瓜コロッケ。黒谷・才葉(鬼のようだが犬っころ・d15742)はリンゴのデニッシュとメンチカツをゲット。
腰を下ろして食事休憩中も才葉はつい目移りで。
「そっちも美味しそう!食べたい食べたい!」
「そっちのもくれ、美味そう」
食べあって補給が済んだら、学校まで競争だ。
ラーメンは断念したフィズィ・デュール(麺道三段・d02661)。平日昼間と気がつくと、代わりに人気のメンチカツへ!いつもより少ない行列に並んでゲット、飲み物を買ってまったりと味わう。
同じ行列に並んでいた謝華・星瞑(紅蓮童子・d03075)も、メンチカツを手にのんびりと歩いていた。デザートはプリンかクレープがいい。どこかにないかと食べ歩きモード全開。
【吉祥寺1B】の富山・良太(ほんのーじのへん・d18057)は首を傾げた。
店が多すぎてどこがいいかわからない。とりあえずコロッケの屋台へ。
「うむ、美味である! が……」
鬼神楽・神羅(若年寄・d14965)が喉を詰まらせてジュースの屋台へ走る! その隣にも別の屋台があり、我に返ったらだいぶ屋台を廻った後で。
「余所見程度のつもりが……!?」
「僕は友達と一緒に来れて良かったよ」
商店街で買い出し中の【柴くんち】。藤代・冴(空恋・d03399)と鈴木・昭子(グリート・d17176)はテンションマックス。お惣菜や炊きこみご飯におこわを少しずつ、たくさん購入。
「ほろほろと口の中でほどけるご飯が絶品」
とは食事ポジション・クラッシャー、袖岡・芭子(匣・d13443)のお握り情報だ。
「補習も嫌だし……仕方ないなあ」
諦観の柴・観月(サイレントノイズ・d12748)はともかく、小豆アイスは忘れない高良・美樹(浮草・d01160)はエスケープ予定中。柊・司(灰青の月・d12782)の鯛焼きとたこ焼きを交換する玖律・千架(エトワールの謳・d14098)の攻防もアツい。
途中の焼き肉屋の前で、観月の背中に熱視線が集まった。
「そう言えば重傷以上で焼肉」
「柴くんさん、奢りはぜひここに」
芭子が呟けば、昭子に駄菓子をあーんで食べさせていた千架が即提案。
そっと目を逸らしたものの、昭子の期待の眼差しときたら穴があきそうだ。
「い、いまちょっとお金が厳しいからまた今度ね」
「楽しみにしとくね」
美樹が芭子にあんまんを食べさせながらトドメを刺す。
「さて、残りの道も頑張らねばです」
昭子の一言に、千架と冴が青ざめた。もちろん司も走る気、ゼロ。
「ぐう、これ、この先歩いちゃダメかな……」
観月も食べすぎたらしい。まあそれは皆同じ。
「もう家帰って寝たいね。〆切前だし」
「南瓜のパイとか〆にどうよ」
「食べよ」
芭子と千架の結論に、異を唱えるものはいない。
東雲・悠輝(見習いヒーロー・d11402)はペース遅めにマラソンを楽しんでいた。街の紅葉がゆっくり見たい。美味しい和菓子もいいな、と思いながら、何にしようか迷いつつ。
雨霧・直人(はらぺこダンピール・d11574)は迷いなし。メンチカツ、クレープ、鯛焼き、ドーナツ、色々抱えて真顔でもぐもぐと食べつつ。なに、最後まで走ればいいのだ。
足並み揃えて走る二人の距離が縮む。
「ねえ、いばら。すごくおいしそうなクレープ屋さんを見つけたの」
花咲・つむぎ(綺羅星に夢を見る・d03149)の囁きに、弦切・いばら(レースヒェン・d02892)が手をとる。
「本当? 僕も食べたいな」
ちょっと寄り道。つむぎはシナモン香るリンゴ、いばらはの甘酸っぱい苺。たっぷりのホイップとの相性抜群。一口ずつ、幸せも交わす。
遅れて店前へ流してきた明石・華乃(スターダストメロディア・d02105)、尾崎・ひなた(干物系魔法使い・d06773)に合わせてのペースだ。折角の秋の味覚も栗とは相性が悪いので、華乃の手にはスイートポテト。
「……華乃さん、これ、食べる?」
ひなたが指さす先には、スイートポテトにパンプキンクリームのクレープ。
「わ、おいしそう」
折角だから、一口食べっこはお約束。
待ち合わせ場所に雨宮・恋(レオンハルト・d10213)がウサギの着ぐるみで現れ、榊・くるみ(がんばる女の子・d02009)はびっくり。
「その恰好で走ってたの! 脱水症状になってない?」
「だいじょーぶだいじょーぶ! わたしは、元気いっぱい、だよ!」
買い食いはクレープ屋さん。くるみは苺、恋はチョコバナナに蜂蜜トッピング。
一口ずつ交換して、同じ美味しさをわけあう幸せ。
紫芋のモンブランを前にそわそわの村瀬・一樹(叶未進紳・d04275)。通りすがったラズヴァンに声をかけた。
「マラソンの参加者だよね? 休憩時間だしケーキでも食べない?」
「お、いいな!」
一秒も考えずに並んでお買い上げ。甘さ控えめでなめらかな紫芋の滋味を秋風の中で満喫すると、互いに完走を祈って、また走り出す。
紫芋の香りに誘われ、永森・聖花(中学生神薙使い・d22113)もやってきた。目標は完走だ。モンブランと南瓜のタルトで秋を満喫。ひと息いれて、頑張りましょう。
「秋って色々だよね。取敢えず食欲の秋かな」
雪村・螢(雪割草の誓い・d22061)が呟く。駅前には美味しい誘惑が多い。
「まぁ、何をするにもいい季節なんだよ」
彼女の様子を見守りながら、サニー・マジックリンク(マイコン・d16441)は首を傾げる。それにしても随分買ったようだ。
「休憩しよう? 落ち着いて食べないと消化に悪いよ」
服の裾を引っ張る仕草も微笑ましい。
病欠予定でいた天草・水面(日本和装牧師協会工業科・d19614)、体温計の細工をオリシア・シエラ(桜花絢爛・d20189)におじゃんにされてちょっぴり不機嫌。
でもオリシアと並んで歩くのは久しぶり。ベンチにかけた彼女がリュックからお握りを出すと、たらこマヨと五目を選んで食べ始める。
素直になれないけれど、久しぶりに手を繋いでゴールまで。
星田・澄香(スターイエロー・d16114)は激辛チリドックと野菜ジュースだけ持って駅前へ突撃。たこ焼きで値切り交渉も楽しんで、デザートはどうしよう?
風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897)がレモン味の小さなアイスを食べているのが見えてきた。澄香もつられ、火照った体に沁みわたる、きゅっと甘いひとかけら。
「よっしゃーやったるでー!」
「頑張りましょうね」
大きなリュックを背負って走る佐和・夏槻(物好きな探求者・d06066)は商店街で味見に余念がない。教室でする打ち上げのお惣菜やお菓子の買いだしだ。ゴールに賑やかな顔が並ぶのが楽しみで。
皆が揃ったら、次は打ち上げ。
頑張って走りぬけましょう!
作者:六堂ぱるな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年10月31日
難度:簡単
参加:154人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 16/キャラが大事にされていた 7
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