……先に千切れたのは、ロープではなかったらしい。今も彼の上では、環状のままのロープが垂れ下がり、時折湿った風に揺れている。
彼は既に完全な白骨死体となっていた。されこうべには這う虫すらおらず、眼窩は樹海の闇が凝り集まったかのように暗い。
「恨みに満ち満ちし自死せし屍よ」
声が、響いた。同時に、太陽の輝きとは違う白い光が、されこうべを照らし出す。何も残っていない頭蓋骨の裏側が、この時初めて明らかにされた。
「その身に宿す業をこの私に見せるのです。さすれば、その身に不死の力を与えましょう」
声は続けて響く。と、されこうべに降り注ぐ光が、次の瞬間何か大きな遮蔽物によって遮られた。
その遮蔽物の正体は、彼の首から下の体である。体はされこうべを拾って自身に接続すると、ナットを締めるようにぐるぐると回した。
首の据わりが良くなったとみると、彼はむき出しの歯を数度鳴らす。そして彼は、八つ当たりでもするかのような唐突さで、手近な木を素手で叩き折ってしまった。
倒れた木を踏み越え樹海の深くへと向かう彼は、もはや白骨死体などではない。朽ちかけた学生服を着た、一体の恐るべきアンデッドなのだ――。
長月・紗綾(暁光の歌い手・d14517)が掴んだ情報によれば、富士の樹海に強力なアンデッドが続々と現れているのだという。今回、鷹取・仁鴉(中学生エクスブレイン・dn0144)がアウトプットした予知も、この事件のものだ。
「紗綾様の予測が正しければ、その犯人は『白の王セイメイ』……。羅刹佰鬼陣の戦いで遭遇した、あのノーライフキングですわね。セイメイによって力を与えられた死体は、ダークネスに匹敵するほどに強力なアンデッドとなり、樹海のどこかに潜んでいるようですの。
これらが今すぐ別の事件を起こすという事はないでしょうけれど、セイメイが強力な配下の数を増やしてしまうのは阻止しなければなりませんわ。まずはこのアンデッドの捜索と灼滅を、皆様にお願いいたしますわね」
このアンデッドは樹海の奥地へと移動を続けているため、現在位置はおおよそにしか掴めていない。だが、生前の彼がその命を終えた場所は判明しているので、まずはそこを中心に探索を始める事が推奨される。彼の移動方向に沿って何らかの遺留品や痕跡が残されているはずなので、それらは大きな手がかりとなるだろう。
首尾よく彼を見つける事ができれば、その場で戦闘となる。彼には配下として巨大なネズミ型のアンデッドが3体付き従っており、それらは『ディフェンダー』として『解体ナイフ』に似たサイキック攻撃を行ってくるだろう。彼自身は『ビハインド』に相当するサイキックを『ジャマー』の位置から繰り出してくるが、その威力はサーヴァントであるビハインドを大きく上回っている。
特記事項として、彼は『自分を見て騒ぐ者』に対して強い害意を抱くだろうという予測がある。これは生前の彼に由来する性質であると考えて間違いはないだろう。戦いに利用するならば、エフェクト『怒り』に頼らずともある程度は攻撃をコントロールできる、ということになるだろうが……。
「……敵アンデッドの発見まで、ある程度時間が掛かるかもしれませんわね。樹海内で夜を迎えてしまう事に備えて、寝泊まりができるような準備を整えておく事をお勧めしますわ。
ともあれ、不気味な場所での作戦となります。無事のご帰還を、お祈りしております」
参加者 | |
---|---|
宗谷・綸太郎(深海の焔・d00550) |
竜胆・藍蘭(青薔薇の眠り姫・d00645) |
不知火・隼人(蒼王殺し・d02291) |
霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621) |
弥堂・誘薙(万緑の芽・d04630) |
桔梗寺・織姫(星逢・d19900) |
笹原・ササクレ(向上心・d19912) |
遠野・十八(ポストガール・d21871) |
●トラッキング・タイム
「うわーお、木が……」
鬱蒼とした樹海――という変化の無い景色の中に、それは明らかな異物として横たわっていた。目印となる倒木を発見した霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)は、思わず口を開く。
この、幹を途中からへし折られるという異常な倒れ方をした木は、見渡す限りには他にない。明らかに何者かの力が働いた結果だ。
「自然を大切にしないアンデッドは、自然に還さねばならんようですな!」
刑一は憤懣やるかたないとばかりに、腰に手を当てて立つ。不知火・隼人(蒼王殺し・d02291)も、錆びたナイフを拾い上げて言った。
「ああ……そうしてやるのが、生きていく俺らのしてやれる事だろう」
おそらく、探しているアンデッドが生前持っていたものであろう。お守りだったのかもしれないと、歪みのない刀身を見ながら思う。
その他に見つかった痕跡は、生徒手帳とロープだけであった。こんなに寂しい場所での終わりを選んだ彼を思い、弥堂・誘薙(万緑の芽・d04630)は瞼を伏せる。
「生前は、どんな境遇だったのでしょうか」
考え込む誘薙を、霊犬・五樹が短く吠えて前を向かせた。桔梗寺・織姫(星逢・d19900)も、地図を広げて首掛けのライトを点ける。行く手を見据える。
「――今は、わたくし達に出来ることを致しましょう。おいで夏彦」
霊犬・夏彦を呼んだ織姫は、折りたたんだ地図を取り出した。広げてみると、『スーパーGPS』のマーカーが現在位置を示している。
この場所を最初の足がかりとして、灼滅者たちは探索を開始した。手筈としては、お互い目視できる範囲内でツーマンセルを散開させ、何かを発見したら仲間を呼ぶということになっている。
その度ごとに数人が『アリアドネの糸』を更新し、探索へと戻っていく。万が一の遭難を未然に防ぐための方策だ。
「――綸太郎?」
顔を上げた竜胆・藍蘭(青薔薇の眠り姫・d00645)が、確認のために周囲を見回した。すこし探すと、宗谷・綸太郎(深海の焔・d00550)がしゃがみ込んでいるのが見える。
「ああ、竜胆か。足跡らしいものを見つけた。確認してくれ」
綸太郎が指差す先に、人の足の大きさにえぐれた土があった。ぬかるんでいた所を偶然、アンデッドが通りがかったらしい。
「……僕もそうだと思いますよ。では、皆さんを呼んできます」
藍蘭が仲間たちの所に行く間、綸太郎はチョークで近くの木に目印をつける。と、たまたま近くにいた笹原・ササクレ(向上心・d19912)が、藪を抜けてこちらにやってきた。
「ああ、そっちも手がかりが見つかったッスね! どんな具合ッスか?」
中腰でのぞき込むササクレ。間を置かず来た遠野・十八(ポストガール・d21871)は、足跡より先にササクレに目を留めた。
「ササクレ姉ちゃん、まーた服汚したんだな。んじゃきれいきれいにするぜー」
「あー! 遠野さん、それはしなくていいって言ったッスよ! 自分、男ッスから!」
ササクレの異議を無視した十八は、肩をぱんぱんと叩き『クリーニング』を発動させる。
「いやいやササクレ姉ちゃん。持ってると使いたくなるもんなんだぜ、これが」
答えた十八は、ついでに集まってきたほかの仲間たちもクリーニングしていった。
●樹海の夜
こうしてアンデッドを追い詰めていった灼滅者たちであったが、日没後はさすがに身動きを取ることははばかられた。かろうじて新たな倒木を見つけた時点で、この日の捜索は打ち切りとなる。
見つけ出してきた痕跡は、奥へ入るにしたがって真新しいものへと変わっていることが明らかになっていた。追いつくのは時間の問題だろう。
倒木の上に立った誘薙は、その場で『巣作り』を展開した。半径30メートルの範囲に、彼の服から出た糸が敷き詰められていく。
「それでは、木のこちら側が女子のスペースで、反対側が男子という事でお願いします。十分広いですけどね」
こういう時は条件反射的に男女を分けるのが、真面目な小学生としての習わしだ。特に反対する理由も無く、皆左右に分かれて自分の場所を定めていく。
ただ、中々決まらない者は一人いた。
「じゃー自分はこっちッスね……って、駄目ッスか? 自分無害ッスよ?」
「二重三重の意味でダメダメダメですよ! ササクレは俺が男女同席の罪で異端審問に掛けられてもよいと仰るのですか!」
「言ってる意味がわからないッス!」
「あの恐ろしさは身にしみて理解しているんです! 自分がやってることですから!」
というように、ササクレと刑一は微妙にかみ合わない会話を続けている。眺める誘薙はどうしたものかと困ると同時に、少し楽しそうだなあとも思っていた。
「しょうがない、今回は自分が潔く譲るッス! 理由はよくわからないッスけど」
「ああ、それは助かりますね~。俺も少しエキサイトしすぎたようで、面目ないことです」
どうやら合意に達したらしい。それを見届けた織姫が枝にライトを掛けていると、寝袋を抱えた藍蘭が側によって来た。
「織姫。ここ、いいですか?」
万が一の事を考えれば、安んじて横になれる場所は限られているのだ。振り向いた織姫は、巣の床に正座して視線を合わせる。
「はい、竜胆様。ご一緒させていただきます」
藍蘭は無表情に頷くと、織姫から少し間を空けて寝袋を広げた。織姫もまた、ひざ掛けの毛布を荷物から取り出す。
「照明、まぶしくはないですか?」
「いえ、大丈夫です。……ありがとうございます、わざわざ」
寝る必要はないのだが、夜明けまでは長い。樹海を眺めていた藍蘭が、口を開く。
「こんな時に言うべきではないでしょうけど、キャンプみたいでわくわくしますね」
「――ああ、そうだな。なんだ、藍蘭もこういうの結構わかる人だったんだな」
その言葉には、木の上の方から答えが飛んできた。そこからすとんと飛び降りてきたのは、十八だ。
「よっと。私は寝ずの番をするんで、見晴らしのいい所を探してたんだが、どうにも難しいな。暗いぜ」
十八は傾いだ帽子を直すと、手を振って別の方向へ歩きだす。見送った織姫は、そして藍蘭の問いに答えた。
「ええ。こういう夜を過ごせる事は、きっと素晴らしいことでしょう」
見上げた空の星明りは、しかしほとんどが葉に遮られて地に届かない。照明器具を借りた綸太郎は、木に背中を預けて手帳をめくり始めた。
「ああ、宗谷が持ってたんだな。例のアンデッドの」
装備の手入れをする隼人が、横目でそれを見とがめる。綸太郎は霊犬・月白を一撫ですると、悲嘆の溜息をついた。
「……ひどいこと、するもんだな」
ぽつりと呟いた綸太郎に、隼人は歩み寄って手帳を確認する。――持ち主の名前は、赤く塗り潰されていた。
持ち主本人が、身元を分からなくさせる為にしたということはありえない。ならば最初から持ち込む必要はないし、どこかで捨ててしまっても構わないのだから。
(「最期の瞬間までこれを持っていた理由は、黒幕に目をつけられたからには恨みか」)
住所を控えた綸太郎が手帳をそっと袋にしまうのを、隼人は止めなかった。これ以上、見る必要は無い。
●即発の出会い
払暁を待って、灼滅者たちは巣から出発した。
朝もやの中を身を屈めて歩き回っていると、どこからか大木が倒れる音がする。八つ当たりの音だと、全員が直感した。
しかし慌てて走り出すようなことはせず、彼らは確実に距離を詰めていく方法を取る。開けた場所に出た彼らは、果たしてアンデッドと対面することとなった。
アンデッドの周囲を、三体の大柄なネズミが付かず離れず守っている。『彼』はネズミの王のようにそこに佇んでいた。
「探したよ。随分な姿だな」
「…………」
綸太郎の声に反応してか、骨をむき出しにしたアンデッドの指がゆらゆらと彼を指差した。次の瞬間、赤黒の光弾が綸太郎の額に向けて射出される。
「ワウッ! ――ウゥウウッ!」
それを体で止めた月白だったが、あえなく打ち倒された。しかし気丈にも、月白は駆けだした主を追い立てるように吠え始める。
「悪いがすこし騒がしくするぜ、『骨男』ッ!」
綸太郎は意図的に語気を荒げ、WOKシールドでアンデッドの胸板を打った。肉のない、骨だけの体を撃つ感触に、綸太郎は眉を歪ませる。
「さあ、どうなさいました! わたくしはこちらです!」
織姫はアンデッドの背後を跳躍すると、ビームを放つ手を振り払った。光条は振り仰いだ敵に直撃し、ジリ、という擦過音を立てる。
されこうべの顎が、カタカタと鳴った。アンデッドの表情は機械仕掛けに似て、感情を読むことは出来ない。
(「どうか、聴かせてください。あなたの声を……!」)
織姫は祈りながら身を引いた。その間隙の奥に、両腕を広げて立つ藍蘭がいる。
開いた目が、アンデッドを射抜いた。
「貴方はもうこの世に居てはならない者……。ここで灼滅します」
藍蘭は何かを奉げるように両腕を上げると、その場で高らかに歌を歌い始める。存在を直に揺さぶる歌声が、鼓膜のないアンデッドをも震わせた。
「死んだ後ぐらいは、せめて安らかに眠らせてやるべきだな。灰は灰に、塵は塵に……ってね」
天に向けて掲げられた隼人の左腕が、鬼神変の力を受けて脈打ち始める。それは彼の装備『強化外骨格“烈火皇”』ごと巨大化し、破城槌めいた変形を成立させた。
「乾坤一擲!」
アンデッドの体を、振りぬいた豪腕が強かに打ち据える。ガード上から踵を沈ませられたアンデッドの横を、配下のネズミたちが駆け上がってきた。
「ヂィヂィヂィヂイイイィィッ!」
統率の取れた突撃だ。ネズミたちは灼滅者たちの肌を的確に裂き、確実に毒を流し込んでいく。
「厄介なのはネズミもだぜ……。待ってな、すぐに私が止めてやるぜ」
ネズミたちの動きを事細かに観察していた十八が、縛霊手を展開した。ばくんと開いた手甲から甲高い音を響き、同時に結界を敷く。
「除霊結界――へへっ、私でもうまく当てられるもんだな」
言葉の通り、ネズミたちの脚に結界の網が絡んでいた。ほぼ同じタイミングで、ササクレの呼んだ風が灼滅者たちを包み込んでいく。
「こんな雰囲気じゃ、返すに返せないッスね……」
ササクレが握り締めているのは、小さなカフスボタンだ。昨日の探索で見つけた、このアンデッドの痕跡――。
「回復は任されたッス! クラッシャーの人は攻撃に集中をお願いするッスよ!」
「心得ましたよおっ!」
すると刑一が生き生きと飛び出していった。手にした『処刑人の槍』を、今日はネズミ退治の為に振り回す。
「鼠は夢の国へ帰るんですね! せい!」
刑一の重い踏み込みと共に、穂先が螺旋を描いて突き出された。脳天から背後にまで達する一撃を受けたネズミは、速やかに灼滅され消えてゆく。
「ウウウウゥゥゥゥ!」
不機嫌に唸り続けている五樹へ、誘薙は支援指示を出す。そして彼は、己の影業に別の『影』の層を纏わせた。
「ごめんなさい……」
トラウナックルの効果は、悪夢を繰り返させるのに等しい。誘薙は罪悪感を小さく呟くが、己の速度と力を容赦なく全て引き出し、殴りつけた。
そうするわけにはいかないからだ。
●葬送
「癒しの光よ、かの者を助けてあげて下さい」
藍蘭の招きに、暖かな光が樹海を抜けて織姫に降り注いだ。加えて夏彦からも回復を受け、織姫は重い息を吐いて構えを取り直す。
もう誰も彼もが、戦いに傷を負っていた。取捨選択を過たぬよう、藍蘭は深呼吸で己を静めていく。
「僕一人が焦った所で、どうにもなりませんからね……」
「……お手数を」
短く答えた織姫は、妖の槍『crepusculum』を回して空気を払う。穂先の軌道上に、いくつもの氷刃が配置された。
「この力は、無限の哀しみを断ち切る刃。その後に、希望と幸いを織り成しましょう。――して、みせますから」
織姫の氷刃が、続々とアンデッドに突き刺さっていく。よろめいたアンデッドは、ふと自分のこめかみに指を突き当てた。
その行為を、誰もが自己回復だと一瞬考える。しかし次の瞬間、逆の側頭部から赤黒の光弾が突き抜けていった。
「――催眠効果だな。やれやれ、どうにも好都合だと言いにくい気がするぜ」
頭を振った十八は、契約の指輪を一撫でする。すると指輪は禍々しく輝いて、呪いの力を放出し始めた。
「名前分からなくてごめんな、兄ちゃん。私も頑張るから、もう少しだけ痛いの我慢して欲しいぜ」
十八のペトロカースがよどみなく発動する。動きを鈍らせたアンデッドを、綸太郎のレーヴァテインが正面から突き抜けた。
炎剣を持つ手が、アンデッドの腹に当たる。乾いた骨のひびまで見える距離で、綸太郎は思いの丈をぶちまけた。
「お前がしたかった事って、そんな姿になることだったのか……?」
「…………」
「違うだろッ! お前は――」
「退いて下さい、綸太郎!」
叫ぶ刑一もアンデッドも、敵に対する攻撃姿勢を取っている。綸太郎の離脱を確認すると、刑一は溜めた力をマテリアルロッドで炸裂させた。
「リア充じゃなくてもアンデッドは爆発するべし!」
フードに顔がくっきりと浮き出るほどの爆発を、アンデッドは両手でも受け止めきれない。吹き飛んだアンデッドに、誘薙が追撃を仕掛けた。
「撃ちます! 撃って……助けます!」
誘薙は身の丈を超えるバスターライフルを器用に回し、膝を落として射撃姿勢を取った。ライフルの外装が淡く輝き、誘薙の表情を逆光に隠していく……。
絶好のタイミングで放たれた光線が、アンデッドの正中を穿った。弾き飛ばされ、樹海の木に叩きつけられるアンデッド。
「…………」
剥き出しのされこうべが、カタカタと鳴った。震えて立ち上がろうとするアンデッドを、厳然と立つ隼人が見下ろす。
右腕の武装『射突機甲杖“蒼王破”』は、既にスタンバイ状態だ。隼人はアンデッドを斜めに突き上げ、蒼王破で宙吊りにする。
「コイツが俺の切り札だ……ぶち抜け、蒼王破!」
炸薬連射式の鉄杭が、逃げ場のないアンデッドを打ち貫いた。白煙を上げて、アンデッドの体は樹海の土に落ちる。
これが致命傷となったらしく、アンデッドは四肢の末端から崩れ落ちていった。ササクレは仲間たちの治療を急ぎ終えると、アンデッドの元へと駆け寄っていく。
「ま、待つッス待つッス! これ――」
カフスボタンを握らせようと思っていた手は、しかしもうそこにはなかった。仕方なく胸の上に置くと、その部分も崩れて沈んでいく。
アンデッドの体は学生服の厚さだけになって、土に還って行った。と、首から外れて落ちたされこうべが、かた、と大きく顎を開く。
「笑った……ッス」
ササクレは呆然と、その表情を例えた。そうであればよいと、溶けたような微笑を浮かべて、見送る――。
作者:君島世界 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年10月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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