ふわもこ「カルマクィーン見習い」佐藤・優子の決闘!

    作者:志稲愛海

     博多ポートタワーから臨む博多湾を行き交うのは、水上バスやクルーズ船や旅客船。
     博多埠頭と呼ばれるこの場所には2つの旅客ターミナルがあり、ターミナルに併設された施設「ベイサイドプレイス博多」には、外食店や雑貨店などが軒を連ねていて。施設内には名物の円形型巨大水槽・アクアリウムがあり、そのすぐ傍には日帰り温泉施設もあるという、観光客にも地元民にも親しまれている憩いの場である。
     そんな、ベイサイドプレイス博多で。
    「こんばんはぁっ、何しよーと? 私は地元密着系アイドル『伯方・にわか』よ♪ 好きな食べ物は、マンハッタン☆」
     何故かバニー服を着て営業活動に勤しむ、ちょっぴりいかがわしい雰囲気を醸し出すアイドルの姿があった。
    「地元密着系アイドル『伯方・にわか』?」
    「わ、かわいい……っ」
    「ドォーモ、ありがとー♪」
     そして、ぴょんぴょんぴょん、ばきゅーん☆ と。
     色目と大きな胸という女の武器を駆使した決めポーズで、多感なお年頃の少年達の足を止めさせた『伯方・にわか』は。
     あざといアングルで微笑み、何かを手渡しながらも、こう付け加えたのだった。
    「ファンになってくれたあなたたちには! じゃーんっ、この黒いカードをあげるけん、欲望のまま人を殺して回るとよ♪ ちかっぱおうえんしとーけんねっ♪」
     だが――その時だった。
    「ちょっと待ちなさい! そうはさせません!」
    「誰!?」
     ぴよーっと、颯爽と現われたのは!
    「え……ひよこ??」
    「す、すごく、ふわもこだ……!」
     すごくふわもこな、ひよこさんッ!?
     いえいえ!
    「私はラブリンスター様配下の淫魔アイドル、『モフって踊れるふわりんスター!』よ!」
     そう、彼女こそ!
     『モフって踊れるふわりんスター!』こと、カルマクィーン見習い・佐藤・優子であった。
     過去に路線変更を試み、きぐるみアイドルとして生まれ変わった彼女。
     その涙ぐましい特訓の甲斐あってか、ふわもことは思えぬほどのキレッキレなアイドルステップを踏みながらも。
    「アイドルはファンのみんなを幸せにすることが使命。だからあなたのような人に、アイドルを名乗る資格はないわ!」
    「ふん、博多っ子はね、地元愛が強いとよ? やから、いくら他所もんアイドルが出てきたってね、地元密着系アイドルの私には勝てんとよ!」
    「やってみないとわからないわ、じゃあどっちがアイドルとして格上か、勝負よ!」
     優子は、にわかの邪な営業活動を阻むべく。
     海風にふわもこ毛並みを靡かせながら、アイドル対決を挑むのだった。
     

    「みんな、『モフって踊れるふわりんスター!』こと「カルマクィーン見習い」佐藤・優子って覚えてるー?」
     そんな飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)の言葉に、ふと首を傾ける灼滅者達。
     「カルマクィーン見習い」佐藤・優子は、ラブリンスターの元で他のカルマクイーン達と共に不死王戦争を戦い、その後、売れっ子ふわもこアイドルを目指し特訓中にソロモンの悪魔に襲われたところを武蔵坂の灼滅者達に救われたことがある、ラブリンスター一派の淫魔である。
     アイドルもバラエティをこなす時代だと、そのニーズにこたえるべく、きぐるみアイドルに路線変更した彼女であるが。
     そんな彼女が、博多に現われたのだという。
     では何故、優子は博多に赴いたのか。
    「HKT六六六から黒いカードを受け取った少年たちがさ、殺人事件を起こそうとする事件が起こっていたのは知ってるよね。そしてこの黒いカードを少年たちに渡していたのがね、フライングバニー服を着用したHKT六六六の強化一般人である事がわかったんだ。今回カードを配ってるのは、HKT六六六の研究生『伯方(はかた)・にわか』っていうバニー強化一般人だよ」
     相良・太一(土下座王・d01936)からの情報によると、大淫魔ラブリンスター配下の淫魔達が、フライングバニー服の強化一般人にアイドル対決を挑もうとしているというが。優子もその一人として、博多にやって来たのだろう。
    「優子たちラブリンスター配下の淫魔はね、アイドル対決を行う事が目的だから。アイドル対決に勝てば優子は満足して帰っていくし、アイドル対決に敗けたらフライングバニー服の強化一般人に戦闘を挑むんだけど、周囲に被害を及ぼすような事はしないみたいだよ。でもアイドル対決を邪魔しようとすれば、いくら過去に助けてもらった武蔵坂の灼滅者達でも、アイドルの敵とみなして攻撃してくるだろうから、注意が必要だよ」
     何だか予想外の状況ではあるが。
     黒いカードを配っているフライングバニー服の強化一般人を、放置する事は出来ない。
     なので皆には博多に向かってもらい、事件を解決してきて欲しいというわけだ。
    「それで、優子とにわかなんだけど。ベイサイドプレイス博多ってところにあるアシカのオブジェの前にいるから、そこでアイドル対決とか戦闘をすることになるよ。オブジェはあるけど周囲はそこそこ広くて障害物とはないから、戦闘には支障はないんじゃないかな。そしてフライングバニー強化一般人のにわかはね、ダークネス並みの戦闘力があって、得物はバイオレンスギターと、あざといぴこぴこハンマー風のロケットハンマーだよ。アイドル対決は、まだ何で勝負するかは決めてないみたいだから……うまく対応して誘導すれば、優子と共闘できたり、優子との連戦でバニーの体力が消耗した状態から戦闘できたりとか、有利になる展開が作れるかもしれないね」
     どう彼女たちと接触するかによって、戦闘の状況も違ってくるというわけだ。
    「それにしてもアイドル対決とか、アイドルって色々大変なんだね……」
     遥河は一通り説明を終え、そうパラパラとアイドル雑誌をめくってみた後。
     気をつけて行ってきーねーと、にわか博多弁で灼滅者達を見送るのだった。


    参加者
    七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703)
    仙道・司(オウルバロン・d00813)
    長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536)
    羽守・藤乃(君影の守・d03430)
    桃地・羅生丸(暴獣・d05045)
    文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)
    皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)
    鈴木・レミ(データマイナー・d12371)

    ■リプレイ

    ●乱入!
     玄界灘の潮風薫るウォーターフロント『ベイサイドプレイス博多』。
     そんな海沿いのスポットで繰り広げられようとしているのは!
    「どっちがアイドルとして格上か、勝負よ!」
     プライドを賭けた、着ぐるみとバニーのアイドル対決!
     だが、勝負と言っても何をするか。
     ちょっぴりカメラ小僧達を意識したアングルで、優子とにわかが、ぴよっ、ぴょんと。
     アイドル的困り顔で首を傾けた――その時だった。
    「ちょっとまったぁ!」
     二人の間に、新たな乱入者が!?
     海風に三つ編みを靡かせ言い放った仙道・司(オウルバロン・d00813)の声に、同時に二人は顔を上げて。
    「その勝負ッ!! 我等が仕切らせてもらおう!!」
     そうビシイッと続くのは、七鞘・虎鉄(為虎添翼・d00703)。
     そして司や虎鉄は、こんな勝負を提案するのだった。
    「折角のアイドル対決、盛り上げて行かないと社会的損失ですっ! ボクに良い考えがありますっ」
    「勝負方法は簡単。それぞれこの博多のご当地アイテムを選出し、それをPRしてもらうっ。そして観光客により多く購入してもらった方の勝利だ」
     それは、お土産売り上げ勝負!
    「アイドルとしての目利き、観光客へのPRが試され、地元にも利益が還元される、偶像……アイドルによるアイドルとしてのアイドルらしいバトルだ!!」
    「素敵なお土産で皆を幸せにするか、地元愛が勝つか、待ったなしの一本勝負、どげんですかっ!」
     プラチナチケットを駆使した灼滅者達は、何かのイベントスタッフかと思われたのだろう。
     その勝負内容に、おお! と野次馬達も賛同の声を上げて。
    「アイドルたるもの、訪れた土地の良さを見抜いて盛り上げねばならない!!」
    「私は地元密着系アイドルやけんね♪ 勿論、よかくさ!」
    「着ぐるみアイドルとして、私も負けられません!」
     虎鉄の言葉に、にわかも優子もすんなりと頷く。
     そして気合充分の二人の前に、すかさず躍り出たのは。
    「勝負するなら審判が必要ですよね!」
    「ワゴン2つに、台車2つ、現地の土産物屋から博多銘菓各種も用意させてもらったぜ!」
     紛う事なき第三者の私達が相務めましょう、と審判を買って出た羽守・藤乃(君影の守・d03430)や。
     勝負に必要なものを事前調達してきた、クロネコ・レッドこと文月・直哉(着ぐるみ探偵・d06712)や皇樹・零桜奈(漆黒の天使・d08424)。
    「一般人への手出しは御法度、一発レッドカードです」 
     藤乃がそう、二人に重々注意した後。
    「アイドルらしく爽やか晴れやかに……始めましょう」
     激しいバトルの幕開けを告げるべく、虎鉄が高らかに声をあげる。
     いざ、アイドル勝負の始まりです!
    「アイドルバトルぅ……ファイトっ!!」

    ●アイドルバトル!
     まずは数多くの銘菓の中から、売る品を選ぶ二人。
     アイドルとしての目利きが試されます!
     優子はきょろきょろ並ぶ土産を見回して。
    「これって、東京銘菓ですよね?」
     ひよこ着ぐるみ姿な自分に似た、ある銘菓を手に、ぴよっ? と首を傾けるも。
     大きく首を振るのは、福岡県のご当地ヒーローであるクロネコな直哉。
    「優子、それは福岡では禁句だ……! その銘菓は元々福岡が発祥地で、福岡県民はそれを誇っているからな。福岡はそんな地元愛に溢れた、義理と人情の街なんだ」
    「はわ、そうなんですかっ。気をつけます……!」
     ぴよーっと慌てる優子に、さらに彼女に似た関連商品を見つけてきては声を掛ける虎鉄。
    「ふわりんに似た銘菓、沢山の種類があるな」
    「あ、本当ですね!」
     ふわりんスターとの親和性のアピールも、抜かりなく。
     長姫・麗羽(高校生シャドウハンター・d02536)も、蛇の着ぐるみで優子を応援!
     つぶらな瞳のゆるカワ系な蛇さん姿で、にょろにょろ彼女をサポート。
     優子が勝負に勝つべく、協力を惜しまない灼滅者達。
    「例えばこの博多名物辛子明太子。こっちは柚子の香りが効いていて、こっちは昆布の味わいが深い。同じ様に見えても店毎に味が違うんだぜ」
     地元ネタや、福岡土産物の特色や歴史的背景を、分かり易く優子に解説してあげる直哉。
     それを一生懸命聞いている彼女を、藤乃はふと見つめて。
    (「以前ふわりんス……いえ、佐藤さんを助けた身としては、やはり佐藤さんに勝って頂きたいですわ。ふわもこは……癒しですから仕方な……いえいえ、ごほん」)
     その魅惑的なふわふわ毛並みをじーっと見つめつつも、ひとつ咳払いを。
     そして藤乃は、わたわたしつつも頑張る優子の姿に、微笑まし気に藤色の瞳をそっと細めた。
     佐藤さんをふわりんスターと呼ぶのは、見習いが取れてから、かしら……と。
    「明太子でも、色々あるんですね」
     そう興味深くメモメモする優子の言葉に、直哉は頷いて。
    「アイドルだってそうだろう? 皆それぞれに個性を伸ばして頑張ってる。その頑張りが伝わるからこそ応援したくなる。だから俺も優子を、ふわりんスターを応援してるぜ!」
     ぐっと、ふわもこ肉球サムズアップ!
     そんな彼の声に、優子はパッと笑顔を宿すと。
    「はいっ、頑張ります!」
     ぴよっと返す、ひよこサムズアップ!
     そして各々がアピールする銘菓を選び終われば。いざ、売り子開始です!
     とはいえ、優子ばかり応援していたら不公平だと言われるかもしれないと。にわかのサポーターのフリも、抜かりなく。
     アイドル対決と聞いては黙ってられねえぜ! と。
     うさみみとうさしっぽを付けた桃地・羅生丸(暴獣・d05045)は、ノリノリで歌ってダンシングッ☆
     一緒にぴょこりと跳ねたにわかの、大きく揺れたおっぱいに釘付け!
     ……いえ、これも作戦。決して下心なんて、これっぽっちもないですよ?
     ぶっちゃけどちらも応援したい気分ではあるし、露出度の高さではバニー服の方だったりするけれど。
    (「ふわりんスターの健気な頑張りを支持しないわけにはいかねえな」)
     あざといバニーの谷間をガン見しながらも涙を飲みつつ、優子に勝って貰うために。
     にわかを応援する素振りをしつつも、こっそりふわりんの援護射撃を!
     羅生丸は怪しまれぬよう、ぴょこぴょこうさぎダンスを踊りながら。
     にわかのおっぱいに誘われた男子達に、さり気なく睨みを利かせて。
    「……え? なんで逃げるとよ!?」
     そんな強面なウサギさんにガンつけられた一般人達は、速攻で回れ右するのだった。
     そして、客を逃がしてぷんすかするにわかに。
    「やっぱりお土産ならお子様に訴えるべきっす!」
     やはりうさ耳をぴょこりとさせた鈴木・レミ(データマイナー・d12371)がギターを抱えつつ、そうアドバイス!
    「こっちなら色気でめろめろきゅんです!」
     胸はちょっと残念だが、男子が女装している風に化粧をしたバニー姿の司も、大きくぴょんっと頷いて。
    「手が滑りましたー!?」
     にわかのお手伝いという名の邪魔を!!
     ……いえ、今のはちょっと普通に躓いたとか、秘密です。
     天然ドジっ子を、フルに生かします!
     仲良く出来るのならばしたいし、ふわもこ好きなので。優子を、全力ばっくあっぷ!
     だがそこは、あざといバニー。
    「あーん、お土産くずれたとよぉっ」
     崩れた品を拾うべく屈み、谷間アピール!
     羅生丸をはじめ、野郎共の視線が一点に集まる。
     でも、灼滅者もめげません!
    「ダンスで人寄せしてはどうでしょう!」
    「BGMなら、任せるっす!」
     子供や家族連れが多いスポットへとにわかを誘導し、そう提案する司やレミ。
     そしてギターをいい感じにかき鳴らすレミの演奏に合わせ、セクシーダンスを披露!
    (「しかし着ぐるみとは縁が……ともあれ個人的にはふわりんスターを応援するっす。今のところ無害ですし、頑張ってバックアップするっすよ!」)
     レミは何気に優子や直哉たち着ぐるみーずをちらりと見つつも、最初は真面目な曲を弾いていたが。
     次第に、過激なダンスを誘発するお色気系の曲へと旋律を変えて。
     それに合わせ艶っぽく踊るセクシーすぎるにわかの動きに、思わず子供の目を塞ぐ親達。そして、そそくさと立ち去り始める。
    「もぉっ、誰もいなくなっとーやん!」
     にわかは、遠巻きにいる野郎以外の客がいなくなった事に気付き、再びぷんすかして。
    「ごめんなさい、効果的だと思ったんですが……」
     そんな彼女に瞳をうるうる潤ませ、謝る司。どじっ子具合だけでなく、あざとさも負けません!
    「お、おぉ……バニーに合うと思ってつい……!」
     レミもそう誤魔化しつつ、てへぺろ☆
     そして勝負の審判を務めつつも、そんなにわかを眺めた後。
    (「どっちが……勝とうが……興味……ないけど……敵は……倒さないとね……」)
     今度は、ふわもこ可愛いひよこさんの優子をじーっと見つつ。
    (「一般人に……殺戮を……させて……楽しいのかな……?」)
     HKT666達の行動に、そう首を傾ける零桜奈。
    「名産品の売上勝負ですから、あくまで名産品をアピールしなければ、ね」
     藤乃も、お色気に対しては厳しい目でジャッジ。
     その間に優子は数組の家族連れを、ふわもこひよこボディーで惹きつけて。
     キレッキレな、ふわもこステップ&ダンスを!
     クロネコ・レッドのバックダンスも冴えています!
     麗羽はその間、ふわりんがアピールした土産品を買いに来た子と、同じ目線に屈んで。商品を渡しながらも思う。
     アイドルというのは、皆に夢や希望を与える存在で。
     そういうアイドルを使って悪意を振りまくことは、少し気に入らないかな、と。
    (「だって、それってアイドルじゃなくても良かったってことだし。可愛らしい仕草や素敵な歌声で人々を魅了し、ひと時の幸せを与える」)
     そして、その幸せが誰かの為になるというのならば。
    (「オレは喜んで協力させてもらうけどね」)
     目立たぬように立ち振る舞いながら優子を手伝いつつ、ふわりんのダンスを楽しげに眺める人々の姿を見つめた。

     そしていよいよ海沿いの遊歩道で、結果発表!!
     アイドル勝負の勝者は、どちらなのか……!
     ドラマッチックな演出をと、灼滅者達がドラムロールっぽい効果音を口ずさんだ後。
     審判の零桜奈と藤乃が、口を開くのだった。
    「勝負の……結果を……発表するよ……」
    「売上勝負の勝者は、佐藤さんです」
     ――勝者・ふわりんスター!!
     バニーの色気は手強かったが、灼滅者達の邪魔が良く効いていて。
     観光客の家族連れをターゲットとした優子が、僅差で勝利したのである。
    「わ、ありがとうございます……! これでラブリンスター様にも喜んでいただけます!」
     優子は笑顔でぺこりと、まんまるボディーで何度もお辞儀して。
     灼滅者達とハイタッチやハグを、もふもふした後。
     では失礼します! と、ぴよぴよ満足気に帰って行ったのだった。

    ●バニーさんの解放!
     優子を見送った後、麗羽と羅生丸が殺界形成を発動させて。
    「負けたのは、あんたたちのせいやけんね!」
     虎鉄や皆と共に、キレ気味にぴこぴこハンマーを握るにわかを逃がさぬよう、取り囲んだ刹那。
     ソノ死ノ為二、対象ノ破壊ヲ是トスル――そう紡いだ零桜奈の、偽翼と同調するかの如く燃え上がった蒼き炎が、にわかへと叩きつけられて。
     麗羽も前線へと躍り出つつも守りを固め、敵の逃走経路を断つべく位置を取る。
    「地域の人の健康と幸せを願ってこその地元愛だろ。博多の街を愛してるならHKT六六六なんて辞めちまえ!」
     直哉は、福岡県のご当地ヒーローとして、そうにわかに声を投げながらも。強烈なもふもふビームをお見舞い!
     司も掲げた指輪から眩い魔法弾を放って。続いた虎鉄も、福岡のご近所である肥後同田貫の剛刀を、兜を割らんが如く振り下ろした。
     そして、歴戦の跡が刻まれ染みこんでいる武骨な斬艦刀に、雷を纏わせて。
    「アイドルごっこはこれで終いだぜ、バニーちゃん!」
     顎を跳ね上げる強烈なアッパーを打ち出した羅生丸の打撃に、思わずよろけるにわか。
    「お出でなさい、鈴媛」
     その隙に、君影草揺れる銀の大鎌を呼び出した藤乃も、護りを固めるべくワイドガードを展開すれば。
    「たまにはサンソルっぽい所魅せるっすよ!」
     ぴこぴこハンマーの震撃で足の鈍った仲間へと、レミの立ち上がる力をもたらす響きが奏でられる。

    「く……!」
     勝負に負けた精神的なショックもあってか、動きに精彩を欠くにわか。
     そんな彼女を、HKT666という鎖から解き放つ為に。
     攻撃の手を緩めない灼滅者達。
     バニー服に憑かれたにわかを正気に戻す方法、それは!
    「こんなかわいこちゃんを手に掛けるのは忍びねえが、バニー服を破れば全て終わる」
     豊満で柔らかなおっぱいを覆っているバニー服を、破らなければいけません!
     そう思うと、俄然やる気が漲ってくるももちー。いえ、決して下心なんてないよ……!
     男の欲求に忠実に……いえ、にわかを解放するために。
     羅生丸はバニー服を断ち斬るべく、強烈な『鏖し龍』から繰り出した一撃を叩き付けて。
    「Let's Dance♪ さあParty Time Now!」 
    「私のギターに聞き惚れろー!」
     レミのかき鳴らすギターの音波に合わせ、舞うように司が戦場に糸を張り巡らせれば。
    「ひゅー、いかすぜレミっち!」
     直哉も二人と同時に着ぐるみステップを踏んで、もふもふダイナミック!!
     音撃に痺れ、糸に斬り裂かれ、福岡と着ぐるみへの愛を叩きつけられて。
     その衝撃に思わず耐えられず、にわかは大きくふらついて。
    「アイドルたるもの、どんな時も美しくあらねば……潔くお覚悟を」
     蒼き炎を纏い二種の武器から繰り出された零桜奈の斬撃と、鈴媛に宿りし藤乃の赤き炎の衝撃を、モロにその身に受ける。
     そして――どさりと倒れた彼女の胸元から、ぽろりしたのは。
     黒い1枚のカードであった。

    ●ふわりんのアイドル道!
     無事、戦闘が終わった後。
     意識を取り戻したにわかは、直哉から渡された衣装を身に纏う。
    「どう、かな?」
     それは、もっふもふ兎着ぐるみ!
    「アイドル対決の時も可愛かったし、着ぐるみも似合ってるよ」
     麗羽はそう、まだ疲労感が抜けない彼女に、物腰柔らかに声を掛けて。
    「殺せと唆しているならば、何か反応したりはしないでしょうか」
     藤乃と零桜奈は、黒いカードをそっと回収して手にした。
     そして、黒猫に蛇に兎、ふわもこ着ぐるみ達や他の皆を見回した羅生丸は。
    「博多観光を満喫しようぜ!」
     賑やかな博多の街へと、いざ皆で繰り出すべく、歩き出したのだった。

     ――その頃。
    「今回のアイドル勝負は、何とか勝てたけど……もっと沢山の人達にアピールできる何かを見つけないと、トップアイドルにはなれないわ……」
     ベイサイドプレイスから天神へと歩く道すがら思案する、ひよこぐるみの姿が。

     トップアイドルを目指す「カルマクィーン見習い」佐藤・優子の挑戦は。
     これからもまだまだ……続きそうである。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年11月3日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 4
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