「はー、最近ちょっと寒いよね?」
大きく息を吐き出し、空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が手をこすり合わせた。
確かに、風が吹けば肌寒いと感じる日も出てきた。
「それでね。私、まだコートがなくてね。買い物に行こうかなって思ってるんだよ。近くにショッピングセンターを見つけたんだ。服屋さんとか雑貨屋さん中心に専門店が並んでたよ。電気屋さんも入ってたかなー」
紺子の話によれば、中規模のショッピングセンターだということだ。
「そろそろ冬の服とか、並んでるよねー。どんなコートを買おうかなー。服を選ぶのって、アイスクリームのトッピングを選ぶのと同じくらい楽しいよね♪ ねえ、よかったら一緒に買い物行かない?」
一日かけてぷらぷらと。
コート、マフラーに手袋があってもいいかもしれない。
その他、ちょっとした暖房器具なども見て回れたら楽しい。もうすぐ冬が来る。冬支度の買出しに、よければご一緒しませんか。
●始まり
【月雲家】の三人は揃って出てきた。
螢はコーヒーセット、悠一はバイクの防寒着、彩歌は土鍋を探す予定だ。
「彩歌は自分の為に買い物をすれば良いのに」
螢が言うと、彩歌が笑った。友達も増えてきたし、鍋パーティーができるような土鍋がほしい。
「今日は一日家族で冬準備ですねっ。お兄様とお姉さまと一緒にいると、心が明るくなります」
「久しぶりに三人で、一日ぶらぶら見て回るとしようぜ」
三人仲良く、買い物に出発だ。
●洋服店にて
「へえ、このお店はコートが沢山並んでるね」
「でしょ?」
真神と紺子が入店すると、アルディマがコートを見ていた。
「やはり私も、外出用のコートは買っておきたいな」
機能性よりもデザインを重視すべきか。
「そのコートは面白いデザインですね。綺麗なラインだと思います」
そこへ優歌がやって来た。スリムに見えるが暖かいのだと言う。裁縫の参考に見て回っており、素材に興味を引かれたようだ。
「ふーむ」
頷きながら手触りを確かめる。薄いが存外暖かいのかもしれない。
すぐそばで、流希がベストを手にしていた。
「制服の上に着るのってあまり好きではないのですよねぇ……」
この後お使いの品も購入する予定だ。
さて、店内を見回して十四行が一言。
「しかし、カップル多いねぇ。ひゅーひゅー」
手にした半纏で何か企むけれど、相手が見つからない。皆仲睦まじくお買い物の様子。独り身には寒い季節である。
クリスと桃夜は揃いのコートを選んでいた。クリスが黒のファーに白の、桃夜は白のファーに黒のコートだ。
「凄くすごーく似合ってるよ……」
べた褒めする桃夜。クリスはやや照れながら、桃夜をしげしげと眺めた。
「シックで大人っぽいね。スタイルのいい君によく似合うよ」
揃いのコートを手に笑い合う。
ナディアの選んだレースのワンピースとコートを着て、かごめが試着室からそっと顔を覗かせた。
「……ど、どお?」
どーもこーも、予想外なくらい可愛い。
「俺の目に狂いはなかった!」
照れ隠しに力説する。
初めての二人きりのデートは凄く楽しくて。
「先輩ご一緒してくれてありがと」
かごめの囁く様な声がナディアの耳に届いた。
鈴音は娑婆蔵をコーディネイトしている。
「着流し姿も好きだけれど、やっぱり冬は寒そうだし」
デニムにフランネルと娑婆蔵に無縁の用語が飛び交う。
「むむっ。このやたら長いマフラー……」
お返しにと娑婆蔵が手にしたのは、二人分の長さのマフラーだった。
「いいわねそれっ。それじゃぁそれも買っていきましょっ!」
仲良く包まれそうだ。
昴と是音は照れて顔を逸らしながら、コートを選びあう。
昴が選んだのは可愛い飾りのついた白いコートだった。可愛すぎやしないかと是音。昴は慌てた様に手を振った。
「無理にこれとは……」
「……そ、それでいい」
せっかく選んでもらったものだ。是音は頬を染めそのコートを手にした。
でも似合わないなんてことはないと昴は思う。
フード付ポンチョを試着したマキナが振り向くと、秀憲が頷いた。
「おー、そのポンチョいいな。かわいい」
ミニ丈は好きかと聞かれ照れてたじろぐ。
「え、短いのて。そ、そりゃー好きやけど」
次は秀憲の革手袋。マキナがいいと言った黒を選んだ。
「お揃いのマフラーとか探してみる?」
言われてバーカとあしらってみたものの、秀憲は女性も使えそうなスヌードを目で追ってみたり。
なつみは、マントコートに一目惚れしてしまった。
「どうでしょう? 似合うかな?」
「あ、そのコート可愛い!」
似合う似合うと智。
智はチュニックを選んだようだ。できるならお揃いのものもとなつみも色違いを探す。
これで今年の冬も暖かく過ごせそうだ。
色違いのストールポンチョを選んでいるのは潤子と真琴。
「これどうかな。似合う?」
「似合います似合います、次はこっちのとかどうですか?」
二人で可愛い、カッコイイと見せ合う。試着だけでも楽しい。
真琴は緑を基調にしたチェック柄、潤子は桃色を基調にしたチェック柄を選んだ。
「貴方は全部人任せにしないで一緒に選ぶところから始めるコトを奨めますヨ」
と、ラルフ。
メルキューレは助言を貰いながらゆったりとしたトップスやボトムを選んだ。
「少しは男らしくみえますか?」
「そうですネェ、最低でも性別不詳には見えますネ」
ひとまず、目標は達成できた模様だ。
依子と煉は二人で冬服の準備に来た。
「先輩ならきっと似合います」
煉が見つけた、裾に小花柄のストール付ニットワンピ。
そんな風に言われ、嬉しくなって財布の紐も緩む。依子も上着やキュロットを煉に勧め、良い物が沢山見つかった。
「さ、お茶でもしましょうか」
依子の誘いに煉が頷く。普段よりも大きな紙バッグを抱え、二人は店を出た。
さて、ややお高い印象の店では。
「兄さんが買う服は質が良過ぎます」
依頼帰りには血濡れの事もある。割り切った品も持つべきだと織久。オートクチュールを愛用するベリザリオに苦言を呈する表情は、真剣そのもの。
(「ふふふ……計画通り」)
だがベリザリオは内心ほくそ笑む。お手軽な服を探す名目ならいけると思ったと。
結果、兄の着せ替え計画にまんまと嵌った織久であった。
小鳥は亮輔にマフラーを、亮輔は小鳥に誕生日プレゼントを選ぶ。
「亮輔くんに何かを選んで貰えるってドキドキワクワク嬉しいな」
頬を染める小鳥に、亮輔はネックレスを合わせた。
「ピンクの石には あらゆる危険や災難を守るって意味もあるらしいぜ」
真っ直ぐ見つめられ。
「俺がひめを守る、だから俺のものになれよ」
その告白にドキドキが止まらなくて息を呑んだ。
【徒然】のメンバーも洋服店にきた。
熊耳の帽子に茶色い手袋。
「くまさん!」
とアスル。頬を染め嬉しそうだ。
「とっても素敵、素敵よ!」
小鳩が瞳を輝かせる。
似合うと似合うとはしゃいだ草灯は、他のメンバーにも目を向けた。
「何か素敵なのあったかしら?」
「どれも可愛くて、目移りしてます」
由乃はストールが欲しいらしい。
これが似合うとアスルが指差したのは、赤から薄ピンクのグラデーションのものだ。
小鳩は子供用の帽子を抱えていた。青か黒か迷いに迷う。
「迷っているの! どっちが時森さんに似合うと思う?」
「青いの、良い」
アスルの言葉に、頷く。
「アタシも幾つかあって迷っちゃうのー」
草灯が掴んでいるのはモッズコートだ。黒と紺チェック、どちらが良いだろうか?
由乃が指したのは、紺チェック柄だった。
【StarGazer】のメンバーが、お互いの服を見せ合う。
銀河が選んだ凰呀の服は薄紅色のフレアロングスカート。
「着慣れないから、似合ってるのかどうかよくわかんないし!」
凰呀は落ち着かない様子だが。
「女子力アップだね!」
結衣奈の言葉通り好評のようだ。
「結衣奈はスマートでカッコイイ上に可愛い!」
黒のスリムジーンズが足を強調する。結衣奈をコーディネイトしたのは夜桜だ。
結衣奈の選んだワンピース姿の夜桜を見て、ランドセルを買ってくると言い残し、凰呀が彼方へ駆けていった。
「……ほらねー! でも元が良いから何でも似合うわね、あたし!」
「……か、可愛い!」
銀河も賞賛の声を上げる。
「銀河ちゃんは大人な感じで、胸が大主張だ……!」
結衣奈に言われ、どきりとした。今日凰呀が選んだのは、白の長シャツにダウンベスト、カーゴパンツだった。
「たまにはイメチェンすんのもいーわよね!」
夜桜が言うと皆が頷いた。
春翔と律花、筑音と翼の二組は買い物先で出会った。春翔と筑音は面識がなく紹介が済んだところだ。
律花が翼に白と黒のウサ耳ダッフルコートを当て、
「どっちが好み?」
と筑音に聞く。
「モノが良いからどっち着てもだが……白だな」
「う……うぅ……ツクずるい……」
返ってきた言葉に、翼は赤らめた顔を伏せ律花の後ろに隠れた。
「ずるいって、惚れた女がさらに可愛くなるってんなら言う事ねーだろ。朝間の旦那もそう思わねーか?」
「律花は元々可愛いと思うが、其の要因が俺なら素直に嬉しく思う」
話を振られ春翔が微笑むと、律花も真っ赤になり手にしていた服で顔を隠した。
「いやはや、朝間の旦那も言うねぇ……」
筑音が笑う。その後、春翔にも服を選んでみたり。
「言い損ねてたけど……カップル成立おめでとう」
「ありがとう」
翼が笑顔で告げると、律花が照れながらお礼を言った。
パンフレットを手にやってきた【Cc】の面々。
「お、今年流行ると噂のチェスターコート」
「これが流行……ハルは、物知り」
陽哉が手にしたコートをサズヤがじっと見つめる。
「藍っちやアイナーが着たら、めちゃくちゃカッコよさそうだなー大人の男っていうの?」
「ハルは情報通だね」
アイナーと藍が袖に手を通す。
「二人とも老けてるからね!」
さわやかな笑顔で陽哉が親指を上げた。
「老け……いや、否定はできねェが」
藍がまじまじと鏡に映った姿を見る。
「いやそこは否定しよう、よ」
アイナーが静かに突っ込みを入れると、二人を見ていたサズヤが小首を傾げた。
「……老け? ともかく……フライハイトに、似合いそう」
その後、各々アイテムを見つつ、帰りのおやつの相談など。
【赤月館】は、司と夜トの服を買いに来た。
「……舜、コートは今着てるのがあるから、いらな」
「じゃかぁしい、それ冬用じゃねーだろ」
夜トの言葉は舜に切られてしまった。確かに、最近今のコートだと寒い日があったりする。
舜は司にも沢山の洋服を薦めていた。
「あらあら、動き易そう」
筒袖の物は腕が上げづらいと聞いていたが、特にそんな風には感じない。
洋装に納得し始めた司に、花月は千鳥格子のチュニックを見せる。
「こんな感じのとか似合うんじゃないか」
プリントアウトしてきた画像を見ながら選んだ。レディースファッションには詳しくないけれど、どうだろうか。
その後、花月は男物の洋服を買い込み、最後に夜トが声をかけた。
「……おなかすいた」
舜が会計を済ませると、皆で喫茶店へ向かった。
調度品を買い揃え、服を見ていた【現の夢】のメンバーは。
「この服……、エルカさんに似合いそうですね………」
荷物持ちの一樹が呟いた事により、着せ替えごっこが加速していった。
遠慮してもいいかと言った深夜は、
「何言ってるのかな。お姉ちゃんは遠慮させないよ!」
「みんながするのですから、椛さんもしなくては。ね?」
エルカと香撫に、どんどん着せ替えられる。
深夜の着せ替えが一番楽しい。一番可愛い。と言うエルカの思いが皆に伝わったのか、場の雰囲気が一段と明るくなった。
「自分では選ばない様な服まであるのぅ、着せ替えっこは楽しいのじゃ」
王子はエルカの選んだ可愛いミニハットを頭に乗せている。
「ふふっ……楽しいですわ」
香撫の呟きが誰かに届くかどうかのところ。
(「幸せな雰囲気が漂っていたので、ボクも満足」)
深夜も満足げにそう思った。
●本に雑貨
オデットと茶子は本屋にて。
「見て! これ、表紙が花札になってるわ」
素敵な手帳を発見して、オデットが声を上げる。
「馬に跨ってる武将の水墨画イラストのとかないかなぁ?」
茶子も華やかなコーナーを見回す。その手に歴史文庫や旅行雑誌。手帳やカレンダーも買い大満足だ。
「来年も嬉しい約束でたくさん埋まりますように!」
オデットは祈るように手帳を抱いた。
雑貨屋にも、多くの生徒が訪れていた。
「このベアさん新作だ。うわぁ、欲しいなぁ♪」
耳あてと手袋を購入したカーティスが、大きなぬいぐるみを見つけ声を上げた。
「本当だ、可愛いですね」
近くにいたナインが気づき、覗き込む。
「良いものあった?」
「はい。シンプルなシュシュを見つけました」
二人の近くでは真守がキッチン用品を選んでいた。
「生活用品を探しているのですか?」
ナインが声をかけてみる。
「あとは、洗面やお風呂用具だな」
「あっちに可愛いお鍋があったよ♪」
と、カーティス。同じ店に入った者同志と、三人は雑貨屋を回った。
奏は彩華のための帽子の会計を済ませながら思う。
(「デートのつもりだと気付いてくれたら嬉しいな」)
「お待たせ。これを」
手渡された彩華は、買おうと思っていたニット帽子が出てきてびっくり。
「私からも、奏にプレゼントを……」
差し出されたのは、奏に似合いそうなマフラーだった。
奏の頬が緩む。それは姉にしか見せたことのない笑顔だった。
「虎之助に白は……似合うけどホストやな……」
白のスヌードをあてた虎之助を見て夕眞が笑う。
「夕眞、紫色似合いそうだけどな~」
「そういわれんと欲しくなるな……」
ふわりと巻かれたストールを触ってみた。
虎之助からストールを、夕眞から手袋を。お互い贈りあったものを、早速身に着けた。
せららに似合いそうだと女物を見ていた飛鳥が、改めて男物を探す。
良いと思ったマフラーは、せららがじっと見ていたものだ。
「おーい、せらら。それ、俺が買ってもいいか?」
考え込んでいたせららがぱっと顔を上げた。お互い相手のものを見ていたようだ。
飛鳥が見つけた手袋はとても可愛くて。
「お気に入りの手袋になりそう、です」
ほわり、顔が緩んだ。
「ネットだとこの価格なんだけど……学生なので余り高いのもね」
優志の炬燵について、天嶺が満面の笑みで店員に迫った。
「御子柴、お前……」
何とか笑顔で対応した優志が次に見たものは。
「紺子先輩は甘い物は苦手ですか?」
「フォンデュ? 行く!」
紺子に声をかける天嶺だった。
天嶺の意外な一面を見てしまった気がした。
●家電量販店では
ポットを買う予定の【ことりのす】だったが。
「……あれ? 雪森消えた!?」
夕陽が振り向いたときには、雛の姿がなかった。
「一壁先輩、俺あっち探しますから。こっち側お願いしますっ」
「おっけ、俺あっちね」
まさかの迷子。柳もすぐに探し始める。人ごみで目を離すのはとても危険。学びました。
合流後はマグカップ選びなど。
「今日は一緒に来てくれてありがとう!」
最後の雛の言葉に、二人は笑顔で答えた。
●終わりに
「あら、紺子さん。たい焼きの屋台があったんですけど、よかったらつき合いません?」
毛糸の入った袋を抱え、手芸屋から紗里亜が出てきた。紺子が笑顔で頷く。
「東京怖い東京怖いあれサービスとちゃうんやったんや……」
その時、ふらふらとレインが通りかかった。一体何があったのか。
「ご一緒にたい焼きを食べますか?」
「元気出して?」
紗里亜と紺子に励まされ、レインはこくこくと頷いた。
色々な店を回っていた小太郎も合流する。
「掘り出し物が色々ありましたよ」
一本足の下駄、五本指の運動靴。たい焼きを食べながらじっくり聞くとしよう。
冬支度、思い思いの品を抱え、一日が終わろうとしていた。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年11月13日
難度:簡単
参加:75人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 11
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