もう一度、みなに教鞭をふるいたくて

    作者:智葉謙治

     武蔵坂学園は再び震撼した。
     校門に立つ黒いジャケットの巨体。彼の名はクロキバ――イフリートである。
    「シロノ王セイメイノアラタナ企ミガ確認サレタ。死体ヲアンデッドニスル儀式ノヨウダ」
     太い牙が覗く口元から放たれたのは、敵意の無い相手への対話。
     ダークネスから人への依頼だった。
    「申シ訳ナイノダガ、コレヲ知ッタ若イイフリートガ、事件ノ起コル場所ニ向カッテシマッテイル」
     クロキバは、まるで青年のような困惑の表情をする。
    「彼ラガ暴レレバ、周囲ニ被害ガ出テシマウノデ、済マナイガ彼ラヲ止メルカ、彼ラガ来ル前ニ、セイメイノ企ミヲ砕イテクレナイダロウカ」
     ずい……と巨体が傾げた。クロキバが礼を示したのだ。
    「ヨロシク頼ム」

    「クロキバがまた来たよ。みんなにお願いがあるんだって」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が落ち着いた様子で語るのは、灼滅者たちに余計な心配をさせたくないからだ。
    「あの白の王セイメイがまた動いてるの。今度は、死亡したばかりの人間をすぐにアンデッドにするみたい。私たちにも予測されてるから間違いないよ」
     どうやら全国の病院や葬式場で、死体がアンデット化する事件が起こるらしい。新たに生まれたアンデッドがその場にいる人々に襲いかかれば、更なる悲劇は免れない。
    「そんなの絶対に阻止しなきゃだめだよね。今回、みんなには葬式の会場に行き、セイメイの力で蘇ったアンデッドを灼滅して欲しいんだ」
     現場となるのは田んぼに囲まれた斎場だ。
     午後6時の通夜開始の直後に死体はアンデッドと化す。
    「亡くなられたのは初老の理科教師みたい。当日に参列する人たちは学生を含めておよそ100人前後と予測されてるの」
     死者が動き出せばパニックは免れない。灼滅者達の助力が無ければ、一体どれほどの人数が犠牲になってしまうのか。
    「なので、みんなの的確な指示が必要だね。どうにかしてアンデッドに襲われる前に会場から逃がしてあげられれば、周りは何もないから安心だと思う」
     役割分担を明確にした避難計画を立てる必要があるのかもしれない。
    「アンデッドは普通のより強力になってるよ。生前に愛用していた差し棒から、氷や雷を撃ってくるみたいなの」
     とはいえ眷属1体。油断しなければ負ける事は無いだろう。
    「ただ、一つ問題があって……」
     ここで冒頭のクロキバの依頼が出てくる。
     それは現場に向かっている若いイフリートの対処であった。
    「セイメイの悪事のにおいを嗅ぎ付けて、近くまで来ちゃってるみたい。予知はできなくても、事件が発生したら、たぶんその場に駆けつけてきちゃうと思うの」
     暴れまわるイフリートによって甚大な被害が出るのは明白。
     もし死人が出るような事にでもなれば、悪意の無い相手でも灼滅せざるを得ないだろう。
    「そうならないように、周囲を徘徊する若手のイフリートを探し出した後、引き返すよう説得するか、もしくは被害が出ないように協力してもらうかが必要だよ」
     状況によってはイフリートを足止めしてる間に、先に解決してしまう方法もあるだろう。
    「説得に失敗すると無駄な被害が出るだけじゃなく、せっかく友好的な関係を築いた彼らとの間に、亀裂が入ることになっちゃうよ。そんな事にならないように、みんな、大変だと思うけど頑張って!」


    参加者
    久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057)
    聖・ヤマメ(とおせんぼ・d02936)
    中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)
    化野・周(ピンクキラー・d03551)
    アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)
    柴・観月(サイレントノイズ・d12748)
    日影・莉那(ハンター・d16285)

    ■リプレイ

    ●PM17:45
     来客者たちは皆、沈痛な面持ちをみせていた。
     ぐるりと農地に囲まれた霊園の中の、巨大なセレモニーホールだ。昼間も静かなこの場所で、今はただ、微かにすすり泣く声のみが響く。
     その中に、せわしなく動く気配だけがあった。
     死者の魂ではない。灼滅者、日影・莉那(ハンター・d16285)である。
     闇を纏った影が葬式会場の中を駆けた。
    (「あと半分、間に合うだろうか……、いや、間に合わせる!」)
     斎場の見取り図は暗記済み。想像よりもスケールが大きいのが誤算だったが、当初の予定に合わせ擬装が効果的に見える場所へと次々に設置を終えていく。
     彼女の手際の良さをラシェリール・ハプスリンゲン(白虹孔雀・d09458)は視界の隅でとらえていた。
     それは通路にひしめき立つ遺族たちの間を、すり抜けて走る風のよう。ラシェリールは彼女に全てまかせることに決めて、予備として持っていた発煙筒をそっとしまう。
    「……うっ、まだ増えるのか……?」
     入口からは、次々に学生を乗せたマイクロバスが到着するのが見えた。
    「百人は多いよ。でも、護れるのは俺たちだけだから」
     フォーマルを着た柴・観月(サイレントノイズ・d12748)が浮かない顔で言う。
    (「死んだあとに生徒を襲うだなんて……。こんな復活は当人も皆も望んじゃいないね」)
     知らずに集う生徒たちに、観月は悲しく呟く。
     人の波に紛れて入ってきたのは化野・周(ピンクキラー・d03551)たち。
     桃色の髪が目立つ彼の足元で、アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)が憤りの表情を見せている。
    「亡くなった方を……、まるで玩具みたいに扱うなんて……私っ!」
    「そだなあ、ホントに。セイメイ野郎、マジろくなことしねーな」
     背後から、聖・ヤマメ(とおせんぼ・d02936)が優しく手を伸ばした。
     暖かな手のひらを頭に乗せられて、アリスは冷静さを取り戻す。
    「なんとしても、避難を成功させましょうね。これ以上の悲しみは、誰も味わいたくないですわ」
     ヤマメは、煌びやかな祭壇の前に鎮座する桐の棺を見た。あれが動きだすまであと少しだ。

     斎場へ向かうバスが横を通り過ぎる。
     薄暗くなった田んぼの中央で、久篠・織兎(糸の輪世継ぎ・d02057)たちが声を上げていた。
    「おーい! スソモモー! どこだー!」
    「俺たちは敵じゃない! 話を聞いてくれーっ!」
     中島九十三式・銀都(シーヴァナタラージャ・d03248)に、焦りの表情が浮かぶ。
    「織兎、こうなったら無理やり誘き寄せて……んっ!?」
     首元にじりりと熱を感じる。
     二人が振り向くとそこには四足で立つ燃える獣がいた。
    『アヤシイニオイ……オマエタチ、ニンゲンカ?』
     若いイフリートは鋭い牙をむいて威嚇した。
     そこへ織兎は無造作に歩み寄っていく。
    「怪しくなんてないよ。スソモモ、今日はよろしくなー!」
     思わず飛び退き、短い角を向けてくるスソモモ。
    『グゥゥ……ナンデ……ナマエ』
    「クロキバから言われてきたんだ、俺たち。一緒に戦おう。協力したいんだ!」
    「そうだぜ! お前の敵は、俺らにとっても憎むべき相手だ。そう、敵の敵は味方だろっ!?」
    『……ミカタ……ナカマ?』
     単語に、敏感に反応を示す。
    「そうだよー。あそこには壊しちゃいけない相手がたくさんいるんだ。戦うのは止めないけど、気を付けながらじゃないとダメだよ。君も、トモダチが傷つくのは嫌だよねー?」
     もう一度、無抵抗で近寄る織兎。
     顔に焼けるような熱を感じながら、イフリートと視線を合わせて説得する。
    「俺たちが力を合わせれば出来る! スソモモ、共にセイメイの野望を阻止しようぜっ!」
    『……ゥゥ!?』
     ピクリを鼻を鳴らして、霊園の方角を向くスソモモ。
     目の色が変わり、タテガミのように桃色の炎が噴き出した。
    『テキノニオイ……ゥヴォオオオオオオッ!!』
     イフリートの遠吠えは空気を震わせた。

    ●PM17:58
     猛ダッシュするスソモモにしがみ付くしかない二人。
     銀都は振り落とされまいと、二の腕のバンダナを互いに結びつける。
    「ぐううっ! 熱っ……くなんて……ないっ!」
    「銀都くん!」
     文字通り、熱く触れ合う肉体から、相手の熱情が伝わってきた。
     ――それは仲間を思う心の形。
    「その気持ちは、俺も知っている。だがな、一人で突っ走るのは勇気とは言わないんだぜ。今、お前を止めたい仲間もいるって事を、忘れるなスソモモ!」

     返信がこないケータイに、ヤマメは不安を隠せなかった。
     こちらの偽装工作は成功し、式場の中はすでに煙が充満している。
     二人の事を心配する余裕はあまり無さそうだった。
    「……落ち着いて素早く移動ですのね! わかりましたの! それでは皆様、こちらから出ましょう、ですの!」
     怯える生徒を引き連れ、彼女は率先して避難をうながす。
     姿は隠したまま莉那は、最後に残った発煙筒の煙をたいた。残るは生徒を避難させるだけ。
     出口へ向かうヤマメと目が合うと、彼女はこっそり首を振った。
    「……最悪の場合、私たちだけか。まあいいさ、やってやる」
     莉那はそう言って、先ほどからカタカタと揺れる棺を睨みつけた。
     棺から一番遠い、メインの入口には生徒たちが殺到していた。
    「はーい、こっちですよ。押さないで順番にですよ。みんな、安心して下さいねー」
     スタッフとしての役目を果たそうとがんばる観月。
     生徒たちの悲鳴で耳が痛いのを我慢しながら、身ぶりを交えて誘導を続ける。
     そこへ、押されて倒れてしまう女生徒が見えた。
     駆け寄ろうとする観月だが、人の流れに阻まれてしまう。
    「ちょ、ちょっと、どいて……、危ないから、……あ」
    「怪我は無いか? 大丈夫そうだな。さあ、逃げるんだ」
     列の向こう側に、女生徒を抱き上げるラシェリールの姿があった。
     目をハートマークにして立ち去る女の子。観月は、何かが不公平だと思った。
    『――ガアアアッ!』
     ボカンッ!!
     叫び声と炸裂音が響き、棺の蓋が空高くはじけ飛んだ。
     土気色に黒ずんだ手が棺のふちを掴み、ゆっくりと死体が起き上がる。
     ――ホール内が悲鳴で包まれた。
    『サイゴノジュギョウヲ、ハジメヨゥ……』
     事故の影響で体のあちこちがぷらぷらと不安定なゾンビ。その手の、使い古された教鞭が、再び生徒たちへと向けられた。
    「先生、ちょっと」
     教鞭の先端で集中する魔力が放たれる寸前、周が敵へと突っ込んだ。
    「――俺らの相手してくださいよ。参列者さんを傷つけさせるわけにはいかないんで」
     はじいた周の腕が、電撃の熱で真っ赤に腫れあがっていた。
    「出番だ、ライラプス!」
     堅い教鞭が彼の脳天に突き刺さる所へ、ぎりぎりで莉那の刀が間に合う。
     両者が睨み合う隙に、霊犬が周の腕の腫れを治していった。
     ――避難は滞ったままだ。
     腰を抜かす生徒や参列客に必死に声をかける観月とラシェリールだが、反応は鈍く思うようには動かない。
     敵に対しても、二人では防戦するしかない様子だ。
     そこへ一人、中心に立つ少女がいた。
    「これはきっとただの悪夢、心配ありませんよ……」
     アリスの体が光に包まれていき、みるみるうちに大人の、お姫様のような美しい女性へと変貌した。
     呆気にとられる人々。
    「皆さん、慌てず落ち着いて、こちらの方へ避難して下さい……」
     パニックにパニックを重ねられて、生徒たちはふらふらと後を追って出ていった。
     しかし――。
    『セイメイサマノタメニ!』
     ゾンビが放つ氷の幕で足を止められる周と莉那。頭上には巨大なつららが生まれていた。
     殲術道具を構えて走るヤマメ。一歩、二歩、と地を蹴るが、……ここからでは、あと数歩足らない。
     老教師だったモノは薄く笑い、二人へビシッと教鞭を向けた。

    ●火炎と死体
    『――グォオオオッ!!』
     背後から突き飛ばされて、ゾンビが空を飛んだ。
    「はぁはぁ、みんな、待たせてすまないな。……はぁはぁ、な、中島九十三式、銀都、……参上!」
    「ふー。正面から突っ込もうとして、危ない所だったよ。話聞いてくれないし。でも……」
     裏口から駆け込んできた銀都と織兎。敵を大きく吹き飛ばし、満足そうな顔のイフリートが振り向く。
    「もう大丈夫。さあ、俺たちも戦うよ!」
    『……コノ、ヤマダ、コウナイボウリョクニハ、ケシテマケヌ!』
     90度に曲がった首をぽきりと戻し、立ち上がる山田だったモノ。
    「やまだ先生様、授業ならわたくしどもがおききしますのね!」
     凍結した莉那へ清めの風を送るヤマメが、瞳を闇色に輝かせる敵を睨み返す。
     最後の一人が出ていくのを確認して、ラシェリールは愛用の槍を握り直した。
    「これで思う存分戦えるな! 行くぞっ!」
     切っ先を向けて突進した。白虹の後ろ髪が長くたなびき、その場に残像を残す。
     教師の肩口が赤い槍にえぐり取られる。だが、かろうじて繋がる腱で、折れている腕を振り回した。
    「なんだと!?」
     受け止めた体ごと飛ばされるラシェリール。
     ガラス戸が目前に迫り、空中で体を反転させて槍を床へ突き刺した。
     地面を削って勢いを殺し、出口の寸前で止まる。
    「見てな、スソモモ。これが俺達の戦い方だっ!」
     銀都の神薙刃が教師へ降り注いだ。
     だが敵は風をまともに受けつつ、灼滅者へと接近する。
    「そうはさせない! くらえっ!」
     織兎の鬼の腕を、教師の細腕がつかんだ。鬼神変の膂力で敵の骨が歪んでいくが、握る力は更に増すようだ。
    『グァアアアッ!』
     地を舐めてせまる炎を、飛び退いて避ける教師。
    「スソモモ! 助かるよ!」
    『イヌハ、ガッコウニ、ハイルナァ!』
     教鞭が振るわれると、きん、とした冷気が辺りを覆う。纏う炎が凍り、スソモモが悲痛な声を上げた。
     そこへ、轟雷が敵へ落ちた。まともに電撃を受け、教師の体が焦げる。
    「だめだよ、それ以上は。……もう死んでるんだから」
     マテリアルロッドを向けた観月が呟く。
     更に敵を襲う、白銀の閃光。
    「このヴォーパルの剣で……どうか、安らかに……」
     アリスの祈りが宿る剣げきに、教師の体は切り裂かれてしまう。
     ふらふらと揺れる敵に向けて、灼滅者たちがたたみかけた。
     だが――。
    『ナゼ、ヒトトダークネスガ、キョウトウスル!?』
     怨嗟の叫びと共に教鞭から雷撃が放たれた。
     爆ぜる落雷を、全身を使って避ける莉那。
    「哀れだな、無理矢理起こされた挙句望まぬ事をさせられると言うのは」
     彼女の足元から伸びた影が、敵を捕らえていた。
     その影を伝わって莉那へと電撃が届いてしまう。だが、敵を捕らえている力は衰えない。
    「だから――もう一度眠らせてやるよ」
     教師を包む影から、ボキボキと骨を粉砕する音がした。
     電撃に全身が痺れ、ぐら、と上体を傾げる彼女に、霊犬が駆け寄った。
     浄霊眼の癒しを受けて踏み止まる莉那。だがそこへ、折れた腕から再び向けられる教鞭。
    「くっ!?」
     棒の先に集中する魔力が、バチバチと溢れて、轟音と共に彼女へ撃ち出された。
     そこへ飛び出したのは周。
    「いってぇ。やっぱ俺、理科は苦手っぽい」
     受け止めたチェーンソー剣が帯電して火花を散らした。
     すぐにナイフで反撃する周。右手は雷撃で痺れてしまっていた。
     そこへヤマメのエンジェリックボイスが届く。
    「しゅう様、わたくしの歌を! 誰もたおさせませんのね!」
     癒しを受け、両手の刃で教師の身を削る。
     死者の体に残る霊力は、あとわずかだ。
    「俺の正義が深紅に燃えるっ! 新たな教育示せと無駄に叫ぶっ! くらえ、必殺! 黄泉路の教鞭、期待してますっ!」
    「……えっと、フォースブレイクっ! ていっ!」
     銀都のレーヴァテインに包まれた敵は、燃える腕を振り回す。織兎はひらりとかわして、マテリアルロッドを叩きつけた。
     彼の魔力が杖の先端で破裂し、胸元から煙をあげ、ぐらりとその体が傾いた。
    「ジャバウォックさん、お願い……!」
     薔薇の蔓のようなアリスの影が、その体に巻きつく。
     身動きが取れなくなった教師の前に立つのはヤマメ。
    「ご授業、ありがとうございましたの」
     鬼神変で吹き飛ばされて、敵は棺の中へと落下した。
     微かに教師の、教鞭を持つ手が震えていた。残る霊力がその先端に集まり暗く光る。
     そこへ2本のロッドがぴたりとつけられた。
    「させんよ。もう終わる時間だ」
    「――良い旅を」
     ラシェリールと観月の魔力が弾け、ようやく死体の動力が全て奪われた。

    ●護れた魂
     炎に包まれていく棺の蓋を、周はそっと閉じた。
    「今度こそ安らかに眠ってください、先生」
     戦闘時は気にしてなかったが、たちこもる煙はおさまり、代わりに実際の炎がくすぶっていた。
     延焼は止めたものの、棺の周りだけはどうしても消化できそうにない。
    「でも、これで良かったのかもしれませんのね」
     傷ついた遺体を見せるのは忍びない。だったら燃えてしまった方が誰も傷つかないだろう。
     燃えていく棺を見つめるヤマメ。
    「うん。俺も、そう思う」
     観月が答えた。
     死者の魂を弄ぶ悪事はもう終わった。あとは再び、知り合いたちの為の、安らかなお別れの時間を。
     
    「今回は阻止出来たが、白の王セイメイ、何を企んでいる……」
     さらに、敵対するクロキバの動向もまた、ラシェリールの頭を悩ませる。
     その隣で、アリスが棺に向かって黙とうを捧げていた。
    「この先生……生徒さん達に慕われてたんでしょうね……。安らかに眠って下さい……。そうだ、スソモモさん、一緒に戦って下さって、有難うございました、……スソモモさん?」
     先ほどまでいたはずのイフリートを探すアリス。
     スソモモはすでに、裏口から田んぼの中へと飛び出していた。
    「スソモモのおかげで助かったよ! またなー!」
     織兎が叫ぶ。
     後姿を眺めながら、莉那はこっそり呟いた。
    「いずれ狩り尽くす必要がある相手になるのは見えているというのにな。……ま、強い奴は嫌いではないが」
     別れの挨拶を交わせずに、悲しそうなアリス。
     そんな彼女に、銀都は笑みを向けた。
    「……大丈夫! きっとまた会えるさ!」
     去りゆくスソモモの腕には、『正義』のバンダナがはためいていた。

    作者:智葉謙治 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年11月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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