●クロキバさんが きたよ
イフリートのクロキバが、武蔵坂学園の校門前に現れた。
「シロノ王セイメイノアラタナ企ミガ確認サレタ。死体ヲアンデッドニスル儀式ノヨウダ」
用件はもちろん、時候のあいさつではなく――。
「申シ訳ナイノダガ、コレヲ知ッタ若イイフリートガ、事件ノ起コル場所に向カッテシマッテイル」
白の王セイメイの活動と、若いイフリート達の暴走について。
「彼ラガ暴レレバ、周囲ニ被害ガ出テシマウノデ、済マナイガ彼ラヲ止メルカ、彼ラガ来ル前ニ、セイメイノ企ミヲ砕イテクレナイダロウカ」
……この頼まれ方、定形化しつつあるのだろうか?
「ヨロシク頼ム」
そんなわけで。
『イフリートの阻止』と『アンデッド灼滅』を同時遂行するという依頼が、武蔵坂学園に降ってわいたのだった。
●アンデッド大増殖の予兆あり
「白の王セイメイが、新たなアンデッドを生み出そうとしている――それがクロキバからの情報だよ。
サイキックアブソーバーでも裏づけは取れたの。全国の病院の霊安室や通夜や葬式の席、火葬場などで、死体がアンデッド化する事件が起こるみたいだよ!」
そう言って須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は、とある村落の地図を黒板に貼った。
「今回、予知できたのは村の火葬場。亡くなったばかりの人がアンデッドになって、お葬式に来た人達をどんどん殺しちゃう。そうならないように、アンデッドを倒し事件を解決してきてほしいの!」
アンデッド化するご遺体は松倉ヨネさん、90歳。前日まで畑仕事をしていたという元気なおばあちゃんで、生前の趣味は土いじりとご詠歌。
「お葬式には孫やひ孫も含め、葬儀には親戚縁者が20人ほど参列しているよ。旦那さんとは早くに死に別れ、天寿をまっとうしての大往生だったこともあって、火葬場での雰囲気は意外と穏やかみたい」
しかし、みんなに好かれていたおばあちゃんが、葬儀の場でアンデッドになってしまったら……惨状というしかない。
「介入のタイミングは最期のお別れのまっ最中。火葬炉の前で、屋内だけど広いから、戦うことには支障はないよ。
出入り口は近いから、参列者の一般人には外に出るよう誘導してあげて。ただ最高齢95歳、最年少2歳の参列者たちだから、避難に手を貸してあげる人が必要かもしれない」
アンデッドになったヨネさんは、両手を草刈り鎌にして殺人鬼相当の攻撃を、自慢の声量でディーヴァズメロディ 相当の攻撃をするという。
「大好きな曾孫や親戚を殺しちゃうとか、おばあちゃんだって嫌なはずだよ。亡くなったヨネさんのためにも、何とかしてあげないと」
「そして、問題はそれだけじゃないんだよ。……そもそもどうしてクロキバが来たかって話になるんだけれど」
実は、血気盛んな若手のイフリートが、セイメイの悪事のにおいを嗅ぎ付けて近くまで来ているらしいのだ。事件が発生すれば、間違いなくその場に現れるだろう。
人が多い場所でイフリートが暴れまわれば、アンデッドと戦う以上に被害が出てしまうだろうし、場合によっては死人が出ないとも限らない。
「イフリートは火葬場近くの杉林を探せば、簡単に見つかるよ。名前はエンジュ。この子を説得して、ひとまず引き返してもらうか、協力して一緒に事件を解決してもらうかが……とにかく、被害が拡大しないようにしないと」
「イフリートにアンデッドと、やることがたくさんあって大変だけど。みんななら、うまくできると思う。どうかよろしくね!」
参加者 | |
---|---|
大堂寺・勇飛(三千大千世界・d00263) |
沢渡・乃愛(求愛のギルティ・d00495) |
居島・和己(さらば金欠の日々・d03358) |
シュテラ・クルヴァルカ(蒼鴉旋帝の血脈・d13037) |
法螺・筑音(出来損ないの大極・d15078) |
鍵鏡・蒼桜(天文得業生・d17890) |
曙・佐奈(桜纏う夜色の小鳥・d18986) |
深海・水花(鮮血の使徒・d20595) |
●アンデッド灼滅と、イフリートへの対応
白の王セイメイが、死体をアンデッド化する儀式を行う。そして、そのことを知った若いイフリート達が、事件の起きる場所に向かってしまう。
アンデッドを灼滅し、可能ならば、イフリートが現場の被害を拡大しないよう対処する。
そのために灼滅者達は、とある村の火葬場にやってきた。
火葬場には、棺桶を積んだ霊柩車と、列席者が分乗した車が到着している。
(「セイメイの企みは必ず阻止しましょう」)
列席者の姿が、杉林の向こうにちらほらと見える。深海・水花(鮮血の使徒・d20595)は改めて心に誓いながら、近くにいるはずのイフリートを探す。
エクスブレインの話では、ここに来ているイフリートはエンジュという。クロキバは『若いイフリート』と言っていたが、精神年齢10歳前後というから、まだ子供といっていいだろう。
「エンジュさーん。クロキバさんとこのイフリートさんはどこっすかー」
水花から少し離れたところで、居島・和己(さらば金欠の日々・d03358)の声がする。
イフリートを見つけたら事情を説明し、火葬場の避難が終了するまで引きとめておくこと。それがこの2人の分担になっている。
火葬場近くでは、列席者が入っていったことを確認後、シュテラ・クルヴァルカ(蒼鴉旋帝の血脈・d13037)が立ち上がった。
「じゃあ、行ってくるわ」
シュテラの手には煙幕の束。プラチナチケットを持つ彼女なら、怪しまれずに火葬場近くで細工ができる。
(「死者を蘇らせて使役するなんて許せない……」)
シュテラは決意を胸に、建物の裏へと回っていく。
残ったメンバーは、煙幕の煙が建物内にある程度まわるまで待機。
「死んだばっかの一般人巻き込むなんざアンデッドテロも良いトコだぜ、ったく」
「安らかに眠れるはずだったのにね。アンデッドという形で蘇生されて、戦わされるなんて、許せないよ」
法螺・筑音(出来損ないの大極・d15078)の言葉に、曙・佐奈(桜纏う夜色の小鳥・d18986)が頷いた。
「老婆も気の毒だが、それ以上に参列者がな……」
大堂寺・勇飛(三千大千世界・d00263)も同意する。
そのすぐ隣で、鍵鏡・蒼桜(天文得業生・d17890)は物思いに沈んでいた。
(「セイメイさん……、晴明さんだったら嫌だかんね」)
「蒼桜さん、どうしたの?」
蒼桜の様子に気づいた沢渡・乃愛(求愛のギルティ・d00495)が、心配そうに声をかけた。
「ううん、大丈夫だよ、乃愛お姉ちゃん。……もしかしたら、これが僕の最後の依頼かもって」
「え?」
「……何でもない。独り言」
後半の発言をごまかすように、蒼桜は潜んでいた場所から立ちあがる。そろそろ行動の時間だった。
●エンジュとの出会いと、避難誘導
杉林を歩く水花の頭上で、獣のうなり声がした。
はっとして見上げるが姿は見えない。しかしどこかから、相手はじっとこちらを見ている。
「深海、そっちのほうには……」
下生えを踏み分けながら近づいてくる和己を片手で制しながら、水花は注意深く声をかけた。
「エンジュさんですね? 私たちは、武蔵坂学園の者です」
威嚇のこもった、低いうなり声が返ってくる。
「セイメイの悪い事を止めに来ました。私たちは、クロキバさんに頼まれています」
そこまで言った時、ゆさりと頭上で木が揺れる音がした。いつの間にか、2人の頭上にヒョウに似た獣が姿を現している。イフリートだ。
クッキーを出そうと水花が荷物に手を入れると、反射的にうなり声で威嚇された。かなり警戒されている。
「エンジュさん、いてくれてよかったっす! これで俺達、勝ったも同然っ!」
軽い調子で、和己が話しかける。
「ほら、俺達って、イフリートと違ってすっごい弱いでしょ? エンジュさんならすっごい強いから! 一緒に戦って欲しいなって!」
友好的かつ尊敬してる雰囲気を心がけながら、調子よく言葉を続ける和己。それを聞いているエンジュのしっぽが、やがてぱたん、ぱたんと左右に揺れ始めた。……機嫌は悪くなさそうだ。
「今、仲間たちが……」
なおも言葉を連ねようとした時、ぴくんとエンジュの耳が立ち、顔が火葬場の方へと向いた。
――その頃、火葬場では避難指示の最中だった。
「事故が起きました。ここは危険なので避難してください」
シュテラが率先して避難を呼びかける。煙幕がうまく効果を発揮しており、建物の隅からじわじわと煙が入りこんでいた。
「おいでおいでー、こっちだよー」
乃愛の優しい笑顔に合わせて、ナノナノのイーラが子どもたちを手招く。そのお陰で小さい子どもたちもパニックにならず、興味津々でイーラについていく。
「慌てないで、落ち着いて行きましょう」
佐奈は杖をついたお年寄りに手を貸し、段差で転ばないように誘導する。
半数以上が避難したところで、火葬場のスタッフと、男性列席者が棺桶を動かすために近づいてきた。
棺桶の前に立つのは、筑音と蒼桜。
「だから、遺体は俺達が運ぶから、早く逃げろ!!」
「搬送用の台車があるんだから、そこに乗せてくれればいいだけじゃないか。なんでさっきから立ったまま、何もしないんだ」
そう返されて、筑音は言葉に詰まる。実際、棺桶を運ぶこと自体は、そう大変な手間ではない。
その時、ガタガタガタっと棺桶が揺れた。
ほぼ同じタイミングで、音量最大に設定していた蒼桜の携帯電話が鳴り出した。
「お、おい! 今、ばあちゃんの棺桶……!?」
「おいでなすったな。……わりぃが、手出しさせねーぜ? アンタにとっても不本意だろうしな」
棺桶に向けて言う筑音の横で、携帯電話に出た蒼桜が顔色を変える。
「どうしたの、和己お兄ちゃん……え!? エンジュがこっちに来ちゃってる!?」
その時、どーん、と建物全体が振動した。棺桶の揺れよりずっと大きいそれに、留まっていた一般人が顔色を変える。
出入り口で避難誘導をしていた勇飛が、一般人へと一喝した。
「いつまでぐずぐずしている! さっさと出ていけ、死にたいのか!」
「う、うわあああっ」
それが決め手となって、一般人は残らず外へと出ていった。棺桶の揺れはなおも続いているが、建物全体の振動が段違いに大きい。棺桶の異常は気のせいで済むだろう……恐らくは。
「何、この音!?」
誘導を終えた乃愛と佐奈が、戻ってきて目を丸くする。
「大変よ」
裏口の窓に一番近いシュテラが、室内の全員を見返した。
「イフリートの……あれがエンジュだと思うわ。さっきから煙幕に突撃してるの」
●アンデッド蘇生と、イフリートの乱入
エンジュは、火葬場の煙幕に反応したらしい。気が高ぶるあまり、わずかな異変に過剰反応したのだろう。
「でも、そのお陰で避難も終わったね」
蒼桜はスレイヤーカードを展開し、狩衣姿へ転じた。蒼桜の言葉に勇飛が頷く。
「結果的に、王者の風は使わずにすんだ。彼らは能動的に逃げてくれるだろう」
窓の向こうでは、お年寄りが車に拾われている様子が見える。彼らが判断力を持ったまま現場から遠ざかれるならば、それが望ましい。
勇飛は殺界形成を展開する。これで戻ってくることはないはずだ。
「お願い。炎よ、僕の願い聞き入れて!」
蒼桜の手にした魔導書、【★ Magicis Incantatores ★】から炎がほとばしる。炎に包まれた棺桶が四散し、中からアンデッドと化した松倉ヨネが飛び出した。
「セイメイサマノタメニ!」
安らかに永眠していたはずの老婆は、今では怪鳥のような声をあげなから、四つん這いで臨戦態勢を取る。
あまりにも変わり果てた姿に、勇飛が顔をしかめた。
「白の王セイメイ……この落とし前は高くつくぞ!!」
「勇飛さん、避けて!」
アンデッドに向けて構えをとった勇飛へ、シュテラの警告が重なる。
「グァルルルルッ!!」
反射的に横に飛んだ勇飛のすれすれを、豹に似た姿の獣が突っ込んた。獣は床を蹴って大きく跳躍。勢いのままに、アンデッドへと激突する。
大きな音を立てて、アンデッドとエンジュがもつれ合って転がっていく。
「おーおー派手なご登場だこって。しっかし、コレがイフリートか……」
勇飛とは反対側に飛び退いた筑音が、まじまじと乱入者に見入る。
オレンジレッドの炎が踊る。イフリートは咆哮を上げて噛みつき、後足で蹴りつけながら飛びすさる。
本物のヒョウより一回り大きい程度、それでもイフリートの中では大きくはないだろう。灼滅者とは桁違いの力を持っていることがわかる。
「裏口を開けて名前を呼んだら、あっという間にエンジュが飛びこんできて……」
シュテラがエンジュの後から駆けてくる。
「でも、私達のこと、了解してはいるみたい」
「それなら、申し分なしだ」
改めて、勇飛はアンデッドに槍の一撃を繰り出す。螺穿槍でアンデッドを穿つ勇飛を、エンジュは妨害しない。この様子なら、共闘は可能なようだ。
「子供たちの前で強がったんだから、戦いでもしっかりしないと、ね!」
乃愛は契約の指輪を掲げ、プリズムの十字架でアンデッドを撃ち抜く。
「音楽は魔法。ヨネおばあさま、勝負です!」
シュテラがバイオレンスギターをかき鳴らし、歌声を響かせる。顔を歪めたアンデッドが、がぱりと口を開けて不協和音を放つ。低音主体の旋律が、シュテラの歌を押し戻す。
そこにシスター姿の水花が、和己と共に躍り込んた。
ガンナイフを構えた水花はアンデッドの鎌と数合打ち合い、その後、互いに飛びすさって距離を取る。
「すいません、エンジュさんを止めきれなくて」
「説明の途中で行っちまって……ちょっと白い煙が見えたってだけなんだけど」
水花と和己はそう言うが、いかんせん相手はイフリート。それだけ制御が難しい相手ということだろう。
「エンジュは一緒に戦ってくれるみたいだよ。水花さん達の話、きちんと通じてたんだね」
佐奈に言われて、水花は緊張していた表情をわずかにゆるめた。和己が、エンジュに声をかける。
「エンジュさん、やっちゃってください!」
「グルルルルッ……!!」
和己の言葉に応えるように、エンジュはうなり声をあげてアンデッドに跳びかかった。
●アンデッドとの戦いと、最後に得たもの
こちらの攻撃が、思うように当たらない。
自分達の練度の程度が響いている。そう感じながらも、水花はサイキック毎の命中率を推し量り、ジャッジメントレイを放つ。
利用されただけのアンデッドへ攻撃することには抵抗を感じる、けれど。
「これは必要な事……ためらうことはありません」
何度目かの裁きの光条が、アンデッドへと深く突き刺さる。突破口は、必ずある。
「ギェーッ!」
奇声と共に跳躍するアンデッドは、鎌を振り上げ水花に跳びかかる。その水花の前に、乃愛が割りこんだ。
「させないんだから!」
「ギィエエエッ!」
鎌の斬撃が、乃愛の無敵斬艦刀を頭上へと跳ね上げる。がら空きになった乃愛の肩から胸が、X字に切り裂かれる。草刈り鎌サイズの武器だが、草を刈るようにたやすく人体を裂いていく。
「ナノー!」
ナノナノのイーラ、佐奈、シュテラがすかさず乃愛を回復する。それでも、乃愛の体に蓄積したダメージはかなり大きい。3人のディフェンダーの中で、最も重傷なのが乃愛だった。
肩で息をする乃愛に、佐奈が回復をしながら声をかける。
「乃愛さん、無理しすぎないでね?」
「ありがとう。でも、するわ、無理」
目に入る血を拭いながら、乃愛は強く言葉を返す。
「皆にだけ傷を負わせたくないから、私は前に来ているんだもの。だから、退けないの」
無敵斬艦刀を振り上げ、渾身の力でアンデッドに振り下ろす。
「悪いけど、安らかに眠りなさい!」
「頑張るねぇ、乃愛ちゃん。オレもいっちゃうぜ?」
乃愛の攻撃より一拍早く、筑音はするりと影を這わせる。無数の蛇の形へと変じたそれが、アンデッドの全身に絡みつき、引き絞る。
影の効果で動きが鈍ったところに乃愛の斬撃が入り、次いで勇飛の重い一撃が叩き込まれた。戦神降臨で威力を増した勇飛の無敵斬艦刀は深くアンデッドの体幹を折り、脊椎を砕く。
「ギィエエエエエっ!」
体を背中側に曲げながら、老婆のアンデッドは向かってくる。頭部は半ば砕け、胸には風穴があき、それでも動きは鈍らない。
「もう一度、永遠の安らかな眠りへと誘う。それが私達の役目なの」
リバイブメロディ。決意を込めたシュテラの歌声が高らかに響き、惑わされていた味方の意識をとぎすます。
「しぶといなあ、もうっ」
催眠から回復した蒼桜が、何度目かの神薙刃を繰り出した。
「吹き来る風、さながら白刃の如く!」
その一撃が深く全身をえぐった時、それまで変わらなかったアンデッドの動きが急にきしんだ。
「セイメイサマノ……タメ……ニ」
「今っすよエンジュさん! エンジュさんのマジすげぇとこが見たいなー!」
エンジュに声をかけながら、和己が黒死斬を繰り出す。黒死斬をすんでで回避したアンデッドに、エンジュが跳びかかった。全身に力を込め、広く炎をばらまこうとして――
「目標以外は傷付けないのが、一番強くて格好良いです、エンジュさん!」
――水花の声に、エンジュは炎を引っこめた。勢いは殺さず、アンデッドに体当たりをかける。
「水花さん、すごい」
佐奈が感嘆する。とはいえ、自分の言葉がエンジュに影響を与えたことに、一番驚いたのは水花自身だ。
佐奈は契約の指輪からエンジュを回復させ、援護する。傷が治ったエンジュはますます猛り、窓がびりびり揺れるほどの咆哮を上げた。
動きの鈍ったアンデッドに、勇飛のライドキャリバー、龍星号が突撃をかける。
そして。
「せめて祈ろう。汝の魂に幸いあれ……」
勇飛の閃光百裂拳が炸裂する。
「セイメ……イ……サマ……」
……その攻撃でアンデッドは粉々になり、跡形もなくなった。
「骨すら残らないんだよな……骨すら拾えねぇというべきか」
消滅していくアンデッドを、どこか遠くを見つめるように眺めて筑音が言う。
エンジュは、さらさらと粉になって消えていくアンデッドをしばらく眺めていた。やがて関心を失ったように入ってきた扉へと踵を返す。
「エンジュさん、助かったっす! また頼みます!」
和己がかけた声には、グルルル、と短くうなり声が返ってきただけだった。
――アンデッドがいなくなり、イフリートも立ち去った火葬場には、静寂が戻る。
建物自体は無事だったが、中の状態はざんざんだった。
「なんか申し訳ない気分だよ。でも、人命優先だったし、仕方ないかな?」
ぽつりと佐奈が言う。
「少なくとも、ヨネさんの大好きなお孫さんや、ご親戚の方々には被害が及ばなかった。更なる悲しみを生まなくても済んだわ」
そう言ったシュテラに、乃愛や勇飛も頷く。
そのことは今回得た、大きな成果といえるだろう。
作者:海乃もずく |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年11月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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