「シロノ王セイメイノアラタナ企ミガ確認サレタ。死体ヲアンデッドニスル儀式ノヨウダ」
クロキバが武蔵坂学園に来るのもこれで二度目。
紡がれる言葉は片言であり、言い慣れていないのだろう。
「申シ訳ナイノダガ、コレヲ知ッタ若イイフリートガ、事件ノ起コル場所ニ向カッテシマッテイル」
若いイフリートが暴れれば周囲に被害が出ることは避けられない。クロキバはこの若いイフリートを止めるか、彼らが来る前にセイメイの企みを防いで欲しいと言う。
「ヨロシク頼ム」
もし、クロキバの考えが実現してしまえば暴れた若いイフリートは武蔵坂学園にいつかは灼滅されるかもしれない。そんな事は避けたいのであろう。
クロキバは精悍な体を曲げて、深く頭を下げた。
「クロキバからまた依頼が来たんだ。……みんなは、ノーライフキング達の中に『白の王』という存在がいるのは知ってるか?」
外は生憎の曇り模様。今にも雨が降り出してきそうな日だった。
教室に集まった灼滅者達に墨野・桜雪(小学生エクスブレイン・dn0168)は問いかける。
『白の王』の名はセイメイ。セイメイは各地の病院や火葬場、葬儀場といった所にある死体をアンデッドにしようとしているらしい。
クロキバからもたらされた情報を元に、調べてみれば彼の言葉が現実になろうとしていることが分かった。
「今回、みんなには葬儀場に現れるアンデッドを灼滅して欲しいんだ」
その日、ある葬儀場で幼い少女の葬儀が執り行われる。
雨が降る中で行われる葬儀。
葬儀が始まる少し前に死体はアンデッドとなる。
「死体は地下の霊安室から葬儀会場に運ばれてくる途中でアンデッドになる」
葬儀場の地下にある霊安室に大きなエレベーターがあり、そこから葬儀会場のある一階へ。そうすると、広いエレベーターホールに出る。一階エレベータホールには丁度エレベーターと対面するように大きな扉があり、そこを開けば葬儀会場に繋がっている。
「アンデッドはまず、遺体を移動させていた職員二人をエレベーターホールで襲う。次に、目の前の扉を開けて葬儀会場に出てくるんだ。葬儀会場の中にも職員が一人いる。時間が経てば経つほど、会場には多くの参列者が来るだろう」
そこで言葉を切る桜雪。
生きた人間をアンデッドは見逃すはずがない。
生前、縁があったのか愛らしいヌイグルミ達を使いアンデッドは人々を次々に襲っていくのだと、桜雪は付け加えた。
これだけならば、イフリートであるクロキバが学園に直接来て依頼することもなかったであろう。
「もう一つ、みんなに知らせたいことがある。幼いイフリートが葬儀場に向かっているみたいなんだ」
イフリートはエクスブレインの様な予知能力を持ってはいない。しかし、悪事の臭いを嗅ぎつけ、この葬儀場の近くまで、いずれは葬儀場にやって来るであろう。
もし、アンデッドとイフリートが対峙するようなことがあれば、大変なことになるのは目に見えている。
説得して、引き返させるか、協力してアンデッドを倒すのか、それとも灼滅か。選択肢はいくつもある。
イフリートをどうするのかは、みんなに任せる、と桜雪は付け足した。
アンデッドとイフリート。二つの種族が絡む依頼。やるべき事、考えるべき事も少なくはないであろう。
「……言いたいことがある。みんなが葬儀会場に急いで行ったとしても、中にいる職員はたぶん、助けることができないんだ」
遺体がアンデッドとなるタイミングは葬儀会場を準備している時になる。会場準備のため早く来たとしても建物の入口にある受付で足止めされる事であろう。
伝えるべき情報を伝え切ったのか桜雪が窓の方に視線を向けると、曇りだった空から雨が降り始めていた。
参加者 | |
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久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168) |
紫乃崎・謡(紫鬼・d02208) |
詩夜・華月(白花護る紅影・d03148) |
リオーネ・ブランシュ(運命黙示録・d04884) |
小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768) |
上柳・零(火種振り撒く観察者・d14333) |
真夏月・牙羅(中学生デモノイドヒューマン・d18170) |
宮武・佐那(極寒のカサートカ・d20032) |
●
「早く終わらせたいね」
降り続ける雨を見つめながら、リオーネ・ブランシュ(運命黙示録・d04884)はぽつりと漏らした。この葬儀で弔われる少女はリオーネと同じ年頃だと聞いている。リオーネがぬいぐるみを強く抱きしめるのを見ていた紫乃崎・謡(紫鬼・d02208)も、胸のうちに抱えるものはリオーネと似ていた。元はと言えば、アンデッドとイフリートの諍いが原因。それに巻き込まれアンデッドとなってしまう少女の為にも最小限に止めたい気持がある。
「皆さん大丈夫でしょうか……」
宮武・佐那(極寒のカサートカ・d20032)は青い瞳をそっと、葬儀場の入口へと向けた。佐那が事前に調べた限り、この葬儀場の出入り口はここしかない。先に入った仲間達を案じながら、今か今かと待つのは葬儀の入場開始時間。
「大丈夫さ。俺達は俺達で頑張ろうぜ」
「そろそろ、入場も始まりそうだしね」
佐那と同じく受付に視線を向けていた上柳・零(火種振り撒く観察者・d14333)はニヤリと浮かべた笑みを、小鳥遊・亜樹(幼き魔女・d11768)は仰ぎ見つめていた。
本来の計画であれば、零も亜樹も今頃、葬儀場の中にいる手筈であった。確かに零のプラチナチケットは受付の者に効果を発揮したのだが、二人の事を『歳の離れた兄妹で来た参列者』だと思い込んだらしい。葬儀会場がまだ準備中だから、と入場を断られ、二人は中に入る事が出来ずにいた。
灼滅者達が来た頃は、ほとんどまばらにしかいなかった受付前には、既にそれなりの参列者達が集まって来ている。亜樹の言葉通り入場時間が迫ってきているのであろう。
緩やかにこの場にあつまった者達が動き始める。受付で手続きを済ませて葬儀場の中へ。そして、この葬儀会場はしめやかに、幼い少女との別れを告げる場所になる筈であった。
だが、行かせる訳にはいかない。この場にいる者達が会いに行く少女は、セイメイの手でアンデッドとなってしまっているのだから。
セイメイの企みと己の力の無さ、波立つ感情を抑え、佐那は強い精神波を送る。
「火葬場から出火です! 爆発の恐れもあるので早く逃げて下さい!!」
同様の内容で避難を促すのは謡とリオーネ。混乱に乗じて建物の中に消えて行く亜樹と、建物内にいる人々に避難を促しに行く零の背を見送りながら、灼滅者達は騒ぎを作っていった。
●
一般人では見る事の出来ない姿となり、受付を通り過ぎた久瑠瀬・撫子(華蝶封月・d01168)達は葬儀会場の奥へ。エレベーターホールへと繋がる扉を開けた瞬間、灼滅者達が目にしたのは棺から立ち上がる少女の後ろ姿であった。
少女の腕が持ち上がれば、小さな指先が指し示すのはその前方。
そこには、目の前で起きている現実に驚きの表情を浮かべる職員が二人、
「危ないっ……!!」
エレベーターホールの扉を開いてから、そこまで、僅かな間の出来事であった。
詩夜・華月(白花護る紅影・d03148)の背を襲う衝撃は決して軽いものではない。奥歯を噛み締め、攻撃に耐える紅い瞳に映るのは、愛らしい動物達に襲われ、されるがままの職員の姿。鈍い音と共に吐き出されたのは苦しみの声。衝撃から壁に叩きつけられた体は、力なく床に伏せたきり動く事はもうない。
「命が惜しいなら、さっさと逃げなさい」
間に合ったのは華月の見せた意地があったからしれない。庇った職員の耳元で静かに言い放てば、その答えに声はなく、とん、と、力を失った体が華月の方へともたれ掛かってきた。
「済まないな、あんたを助ける為だ」
それは、真夏月・牙羅(中学生デモノイドヒューマン・d18170)であった。牙羅はそのまま気を失っている職員を抱えて扉の方へと足を向ける。
「ここは危ない。私は、この人と会場にいた人を何とかしてくる」
牙羅の考えとは違うように進んでいく状況。それを悩んでいる時間も惜しいから。葬儀会場にいたもう一人も助けるべく、牙羅はエレベーターホールからその身を消した。
「では、まずは避難が完了するまで耐えましょうか」
牙羅が立ち去ったエレベーターホールで、笑みを湛えた撫子の槍が炎を纏う。
撫子と華月。今、このアンデッドを食い止められるのは二人だけ。
仲間達が来るまでに耐えきれるのか。
僅かに生まれた不安を払拭するように、撫子は激しく燃える炎の槍を少女に叩きつける。
●
「皆さん、危険ですので外に出てください! おっと、大丈夫か?」
目の前で幼い少年が転びかけたのを、慌てて零が助けた。
作り出した騒ぎ。葬儀場にいた職員達は、零が外に出るように促し、すでに外に出てきてもらっている。
少女の葬儀であるせいか、子供の数が少々多いものの、佐那と零を中心に謡とリオーネも協力し、着々と参列者達は葬儀場の敷地の外へと移動していた。
時間は着々と進んでいる。
既に受付の付近には人はおらず、それでもまだ敷地外へと参列者達を出すには至っていない。
雨が降っているというのに、傘もささずに受付前へと幼い少女がやって来た。少女は不思議そうに葬儀場を見上げればスンと匂いを確認する。
「あなたを待っていたよ」
「?」
少女を呼び止めたのは謡の声。少女が不思議そうにあたりを見渡し、そうして謡と隣にいるリオーネへ黒い瞳を向けた。
「あなたはイフリートだね。リオ達は知っているよ」
「……アナタ達、ダアレ?」
少女は首を傾げ、けれどもその瞳は探る様に二人を見つめる。
リオーネの言葉に肯定も否定もしない少女であるが、少女からの答えは不必要であった。一般人が来ないようにすでに謡が場を整えている。ここまで来れた少女は一般人――人間ではない。
「ボク達はクロキバの頼みでアンデッドを倒しにきたんだ。今、ボク達の仲間がアンデッドを倒そうとしている」
「クロキバ様ガ?」
まるで信じられないかの様に、少女――イフリートは謡を見つめた。相手はまだ幼い。だからこそ分かるように、謡は言葉を選んでいく。
「そう。彼はあなたを大事に思い無事の帰還を願っている」
「キカン?」
「帰るって事だよ」
幼いイフリートには少々難しい言葉であったようだが、リオーネが意味を付け加えた。
「彼は心配してて、早く帰ってきて欲しいって言っていたよ」
「うん。だから急ぎ戻り、彼を安心させてほしいんだ」
丁寧な物腰のリオーネの言葉に謡が更に言葉を重ねれば、イフリートがちらりと歩いてきた方角に顔を向けた。どうしようか迷っているのであろう。
「クロキバの願いなんだ」
謡の一押し。それにイフリートはさらに悩むように小さく唸る。
「ウーン……。ココニハ、クロキバ様ノ敵、イルノ。……敵倒ス、クロキバ様ノ役、立テル。アナタ達、倒セル?」
あと一押しであった。しかしその一押しの言葉を二人は持ち合わせていない。リオーネと謡、そしてイフリートの間に流れる沈黙は重く、間を埋める様に雨音がやけに大きく聞こえる様な気がした。
沈黙を破ったのは遠くから聞こえてきたエンジン音。音の主はライドキャリバー――タチアナに乗った佐那と零。二人はそのまま謡達を通り過ぎ、葬儀場の中へと入っていく。一般人の避難が終わったのであろう。
「 ……戦う為に来たんだよ、ね」
ぽつりと、先に折れたのはリオーネであった。役に立ちたい、というイフリートの気持ちを汲み取った上で言葉を紡いでいく。
「どうしてもって言うなら……一緒に戦ってくれると心強いかな」
人に迷惑をかけない事、場を荒らさない事。謡とリオーネがイフリートに願った点はこの二つ。
「ボクらは出来るだけここを荒らしたくないから、そこは協力してほしい」
「分カッタ。アナタニ協力スルノ。早ク、行コウ!」
早く、早く。イフリートは力強く何度も頷けば、急かす様に二人の腕をとり葬儀場の中へと向かおうとする。
「ねぇ。君の名前を聞いても良いかな?」
包帯越しに握られた手は温かく、前を進むイフリートに謡は質問を投げかけた。
「サラシナ!」
嬉しげな声でイフリート――サラシナは短く答えた。
●
葬儀場の中を走る亜樹。事前にエクスブレインに作戦のことを相談しても返って来た答えは「どうなるかは分からない」というものであった。遅れを取り戻すかのように、急いで足を動かす。
亜樹が葬儀会場の中に入った瞬間、目に飛び込んできたのは、何体もの空に浮かぶぬいぐるみを引き連れ立つ少女の姿。
「これ以上先には行かせないよ」
握り締めた杖で亜樹が少女を殴れば、同時に少女の体に魔力を流しこむ。内側で爆発する魔力。少女の体が歪に震えれば、その隙を狙うかのように華月の糸が青白い肢体に巻き付き動きを封じていく。
「遅くなってごめんね。状況はちょっと良くないみたいだね」
「残念ながら。これが精一杯でした」
不死鳥の癒しで傷ついた自分自身を癒しながら、撫子が答えた。
エレベーターホールから出てきてしまった少女。葬儀会場まで出て来ては欲しくなかったが、出て来てしまったのなら、ここから最良を目指すしかない。
数体単位で襲いかかってくるぬいぐるみ達。攻撃としては単純であるが、時に炎をその身に宿し、また傷ついた少女の身を癒す盾として。その使い方は多岐にわたる。
「セイメイサマノタメニ……セイメイサマノタメニ……」
少女の死角に回り込んだ華月の耳に聞こえてきたのは、譫言の様に繰り返される言葉。生きた時間は長いとは言えなくとも、その中には多くの思い出があっただろう。それが穢されていくような気がして、華月が眉をひそめていれば、合流して来た牙羅のひと振りが少女を狙う。
亜樹の螺旋を描く槍さばき、それに華月の糸が後を追う中、撫子癒しの炎で仲間達を回復させれば、ぬいぐるみ達が灼滅者達に襲いかかる。
攻撃の手数は灼滅者達の方が有利である。しかし、少女とぬいぐるみ達が時折、攻撃を外しているにも係わらず、灼滅者達が回復を行う回数が増えていた。緩やかに攻撃の手数が減っていっている。
回復が間に合わなくなって来ている。
「セイメイサマノタメニ……」
炎を宿すぬいぐるみ達が狙うのは撫子。その衝撃は撫子の肩へとぶつかった。膝をつく撫子の身に、広がる炎はちりちりとその身を焦がそうとする。
少女に視線を向ければ、そこには表情の一つも浮かんでいない。
撫子の中に既に生まれている不安。じわりと広がっていくそれを感じているのは撫子だけではないはずだ。
「……え?」
どこからか、近づいてくる音が聞こえた。
威勢の良いエンジンの音。
音はどんどん近づいてくる。
「お待たせしました!」
ライドキャリバーに乗って来た佐那と零だ。佐那の後ろにいた零はライドキャリバーの上で既にガトリングガンの準備を整えていて、
「すまんがもう一度眠ってくれ!」
撃ち出された桜色の弾丸は数え切れぬ程。まるで桜吹雪が嵐となり、ぬいぐるみごと少女を襲っていた。
「癒しを! 紫乃崎さんとブランシュさんはイフリートの説得中です!」
佐那の声と共に撫子の元へ小さな光輪達がやってくれば、淡い光が癒しを齎してくれる。
二人の合流が、少女と戦っていた灼滅者達に弾みをつけた。
「悪いけど、ここで倒れてもらうからね」
拳に集めたオーラを亜樹はそのまま少女に叩き込む。その勢いは一度では止まらず、二度、三度、四度、数え切れぬ程の拳を、幼い身体にめり込ませた。亜樹の連撃により宙を舞う少女の体。体の落ちる先にいたのは、黒服を纏う髑髏の仮面。
言葉は何もなかった。牙羅の攻撃を受けた少女は、体勢を立て直そうとするも、その動きは歪でぎこちない。幾度も灼滅者達の攻撃を受け続けてきた身。人として曲がってはいけない方向に、小さな体の各所が曲がって来ているのだ。体勢を立て直そうにも、立て直せないのであろう。
「此処からは一気に行きましょう」
撫子の生み出した炎が槍を包み、爆ぜる火の粉は桜花の様。それを少女に叩きつければ、小さな体に炎が燃え広がる。
「まだ、立つと言うのですか……」
重い身体を引き摺る少女の顔は未だに無表情のまま。ただ、感情の無い瞳が灼滅者達に向けられると、ぬいぐるみ達は獣の様に襲いかかって来る。
佐那が生み出した響きが傷を癒し、戦いで溜まっていったエフェクトを浄化していく。
「見ツケタ!」
聞き慣れない声。
声がしたのは葬儀会場の入り口。そして、そこにいたのは見慣れぬ少女と謡とリオーネ。イフリートを説得しに行った二人と共に現れた少女。それだけで、灼滅者達は見慣れぬ少女がイフリートであることを理解する。
「げ。あのちっこいイフリートも来たのかよ」
何とも言えない調子で言葉を吐いたのは零。せめて火葬は然るべき時に、そんな思いで炎を使わずに戦っていた零にとって、炎を使い戦うイフリートの存在は少々都合の悪い存在であった。
謡が少女を殴ると同時に白い体を捕縛する霊力の網を放つ。網に絡まる少女へ、リオーネが大鎌を構えた。無数の髑髏を巻き付けた大鎌が宿す『死』。アンデッドとなった少女に再びそれ与えるのは、とても哀しい事だから。
「痛い思いをさせてごめんなの……」
祈る様に、リオーネは振り下ろす。
リオーネの横でサラシナが動くより前に、動いた影が一つ。
白銀の髪をなびかせて、少女の死角に飛び込んだのは華月であった。
「やっとあんたを、『殺せる』わ」
少女が得てしまった生。けれども、それは所詮、偽り。本来の姿に戻すのが道理である。
少女を守るぬいぐるみ達を切り裂き、華月の腕に伝わるのは、鈍くもどこか慣れ親しんだ重さ。
「 」
再び死んでいく少女の耳元で零した言葉。それを知るのは華月のみであった。
「生きてる時に会えたら、この娘とお友達になれたのかなぁ」
亜樹の前に横たわるのはアンデッドであった少女と、死んでしまった職員。亜樹は二人の体に細工をし、偽りの死因を二人に与えた。
「……そうかも、しれませんね」
答えは僅かに遅く。亜樹が隣にいる佐那を見れば、その瞳は赤くなっていた。
零を筆頭に、乱してしまった会場を整えていく中、ふと、撫子が窓の外を確認すれば心配そうに葬儀場を見つめている参列者達の小さな姿が目に映る。
「クロキバ様、待ッテイル。ウタイ、リオーネ、バイバイ」
サラシナはアンデッドがいなくなると、嬉しそうに帰ってしまった。
「次は敵か、はたまた味方か……」
どちらになるかは分からないけれど。
小さな背中を見送りながら、謡が願うのはイフリートとのまたの縁。
「さ、片付けも終わったみたいだし行こうぜ」
簡単ではあるものの葬儀会場もエレベーターホールも片付けたことを確認し、零は仲間達に声をかける。自分達が作り出した騒ぎ。避難をしている参列者達を戻してこそ、今回の事件は幕を閉じるであろう。
零が最後に見た少女は、まるで棺の中で安心して眠っているようであった。
作者:鳴ヶ屋ヒツジ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年11月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 7
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