木更津デモノイド事件~ウェイリング・ロード

    ●Wailing?
     千葉県木更津市。
     東京湾に面する古き良き港町は、夜の闇に包まれようとも眠る事はない。
     幾つもの小さな宝石を散らしたような街灯り。その一つ一つから、木更津で生活する人々の存在が感じられる。
     ありふれた風景。然れど、何よりも安らかな一日の終わり。
     今宵も何事もなく帳は降ろされ、また陽が昇る――はずだった。

    「な、なんだありゃ……!? そんな、バケモ――――」
     突如、愛車を跨いだ大きな影。
     それに気を取られた男は、電信柱へ激突してしまう。
     その衝撃でフロントガラスが砕け散り、運転手である男も頭部を強く打ちつけた。
     爛れる脳漿。薄れゆく視界。やっとの思いで頭を起こし、男は目撃する。

     ――暴れるように街中の車道を進み行く、蒼き巨躯の『バケモノ』を。

     事故……否、惨劇に巻き込まれたのは、どうやら自分だけでは無いようだった。
     衝突し合う多数の車。窓を突き破り、地面に倒れ伏す人々。出血量からして、殆どが既に死体と化しているのだろう。
     そして今もなお、『バケモノ』のその巨大な腕に叩き潰されている者も居た。
     
     遠くから聞こえる悲鳴や喧騒を耳にして、ああ、と男は声もなく溜め息を漏らす。
     此処だけでなく、他の至る所で『バケモノ』が蔓延っているという現状に。

     絶望しかない。一瞬にして、木更津は地獄と化した。

     それを悟りきったのち――男は恐怖に震えながら、愛車のハンドルを抱えるようにして息を引き取った。
     
    ●Warning!
    「やあ、学友諸君。……まったく不愉快極まりない事件が舞い込んできやがったぜ」
     苛立ちを抑えた低い声音で、白椛・花深(高校生エクスブレイン・dn0173)は話を切り出した。
     苦虫を噛み潰したような――と形容して差し支えない程に、眉を顰めてしまっている。
     未来予測で得た情報と光景が、平凡な日常をこなよく愛する彼にとってよほど気に食わなかったのだろう。
     しかし、エクスブレインとしての仕事を全うするべく、再び口を開く。
    「新たに力をつけたソロモンの悪魔のハルファス勢が、アモンの遺産を利用して千葉県木更津市でデモノイド工場を作っていたのさ。
     工場自体は、朱雀門高校のヴァンパイア共が破壊したんだが――結果として、多くのデモノイドが街中に放たれちまったんだよ。
     このままじゃあ、街一つが壊滅しちまう。お前さん達にゃあ現場へ急行して、デモノイドを灼滅してきて欲しいんだ」
     武蔵坂学園の灼滅者が協力し合えば、きっと被害を食い止めることができるはずだ、と。
     焦りを募らせながらも、エクスブレインの目には確かな信頼が宿されていた。
    「お前さん達が木更津へ到着した時点で、既にデモノイドは街を彷徨ってるぜ。
     ただ幸いなことに、一般人に手は出していない。すぐに戦闘を始めれば、被害は最小限に抑えられるだろうさ。
     とは言っても、場所は市街地のド真ん中だ。巻き込んじまう一般人への対応も考えとかねえとな」
     現場に出くわしてしまう一般人達は、大半が乗車中の者ばかりだ。
     彼等をデモノイドの魔の手から護る為には、誘導の統一も必要になるだろう。
     肝心のデモノイドについてだが、連携した灼滅者8人と同等の戦力を擁していると花深は語った。
     しかし、一度倒してしまえば凌駕の心配は無いという。
    「こういう大規模な事件にゃあ、多少の犠牲はつきものになっちまうよな……。
    『全てを救え』なんて無茶は言わないさ。今、救える者を救えばいい。
     それを終えたら――必ず、武蔵坂に帰ってきてくれよな」
     かつて起きた事があるという、デモノイド達による大規模な『地獄』。
     以前に読んだその凄惨な記録を思い出しながら、エクスブレインは言葉を結んだ。
     ただ願うのは、一刻も早い事件の終幕と――白紙の未来を紡ぐべき学友達の、帰還。


    参加者
    彩瑠・さくらえ(宵闇桜・d02131)
    埜々下・千結(満ちる杯中に沈む六札・d02251)
    ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)
    火室・梓(質実豪拳・d03700)
    六連・光(リヴォルヴァー・d04322)
    流鏑馬・アカネ(紅蓮の解放者・d04328)
    リリー・アラーニェ(スパイダーリリー・d16973)
    吉備津・彦吉(討鬼戦士ソウジャマン・d21116)

    ■リプレイ

    ●Welcome to the Wailing Road.
     一日の終幕が訪れようとも、木更津市は眠らない。眠ることができない。
     街の至る所で激しく生じる、日常とは程遠い喧騒が続く限り。
    (「ヴァンパイアによる陽動……なのかしらね」)
     仲間と共に現場へ急行する最中、リリー・アラーニェ(スパイダーリリー・d16973)は思考する。
     朱雀門高校の連中はハルファス勢から逃れる為に、洗脳し切れなかったデモノイドを街中にバラ撒いたのだろう。
    (「――それが目的だとしても、喜んで乗せられてあげるわ」)
     リリーの美しき紫眸が、決意を秘めて熾烈に輝いた。
     八人の灼滅者達は国道を真っ直ぐに辿る。目にも止まらぬスピードで車を追い越し、前へ、前へと。
     やがて視界の奥に、日常とは明らかに異質な『蒼』が浮かび上がってくる。
     「地獄の尖兵ども、ノシをつけて地の底に叩き返して差し上げます」
     六連・光(リヴォルヴァー・d04322)は長い黒髪を払いのけ、射るような眼差しでその蒼き異形を睨まえた。
     あれは間違いなく――灼滅者達が退けるべき存在、デモノイドだ。
     奴は丸太のように無骨な脚でゆっくりと、国道に向かって歩を進めている。
     このままでは、走行中の車が次々と踏み潰されてしまう。
     灼滅者達はその人並み外れた脚力でデモノイドの行く手を阻み、臨戦態勢を整えた。
    「さて、デモノイドを倒しに行きましょうか」
     灼滅開始。凛と微笑んだ火室・梓(質実豪拳・d03700)が、デモノイドの懐へと飛び込んでゆく。
     地を蹴り、跳躍。デモノイドの顎めがけて、梓は稲光を宿した拳で打撃を叩き込む。
     先手を取られて狼狽するデモノイドの背後には、気配を潜めた彩瑠・さくらえ(宵闇桜・d02131)が回り込んでいた。
     黒と紅――彼が背負う闇と罪を体現した拳銃『紅蓮』の刃が、デモノイドの踵骨腱を斬りつける。
     ひるんだ隙を見計らい、さくらえは流鏑馬・アカネ(紅蓮の解放者・d04328)と吉備津・彦吉(討鬼戦士ソウジャマン・d21116)に呼びかけた。
    「作戦通り、二人は車の避難誘導をお願い。ここはワタシ達が――!」
    「任せといて! さ、デモノイドを釘付けにするんだ。頼んだよ、わっふがる」
     相棒の霊犬『わっふがる』の赤毛を優しく撫でてながら、アカネは指示を出す。
    『わっふ!』
     元気よく応えたわっふがるは、デモノイドを抑えつける仲間達の元へと駆けて行った。
    「それじゃ……行ってくる!」
     頼もしい相棒の背を見送りながらそう言い残し、アカネも直ぐさま行動に移す。
     彼女が取り出したのは、誘導棒と反射チョッキ。それぞれ2人分だ。
     彦吉は頭上にスレイヤーカードを掲げ、高らかに封印解除の決めゼリフを宣言する。
    「変! 身! ――よし、これで一般人を誘導させるぜ!」
     彼の全身から光が放出され、討鬼戦士ソウジャマンへと変身したのだ。
     スーツの上からチョッキを羽織り、手には誘導棒。
     彦吉はアカネと共に、パニック寸前の一般人達への避難誘導に努め始めた。
    「しっかし、朱雀門高校様も工場潰すついでにこいつもきっちり処理してくりゃいいものを……」
     ダークネス同士が潰し合おうとも、結局は後始末をこちらが背負わされる。何とも傍迷惑なことだ。
     ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)は溜め息を漏らし、サングラスの奥の灰眸を眇める。
     照準を定め――引鉄をひく。魔力の光線は真っ直ぐな軌跡を描き、デモノイドを撃ち抜いた。
    『ガ、ァアアア……!!』
     度重なる連撃に負けじと、咆哮するデモノイド。その豪腕を肉厚な刀に変え、大きく振るう。
     刃が狙うのは、前衛の護りを担う埜々下・千結(満ちる杯中に沈む六札・d02251)だ。
     デモノイドの強大な膂力が、彼女の華奢な身体を薙ぎ払った。千結は派手に地面を転がる。
    「…………ッ……!」
     全身に走る激痛に思わず顔を顰める。普通の人間ならば、この一撃で命を落としていたことだろう。
     しかし、千結は諦めなかった。ここで力尽きてしまえば、力なき人々をこの手で救うことができない。
     今、自分に出来る事は――灼滅者として、全てを救うことだけ。
    『ナノっ!』
     友たるナノナノ『なっちゃん』からの癒しを背に受け、ふらつきながらも立ち上がる。
    「絶対……絶対に、行かせません――!」
     精一杯に声を張り上げ、凛と目を見開く。演算能力を活性化させ、渦巻く葛藤を押し殺して。
     不安に沈んだ彼女が僅かに見い出した、己の存在意義。
     その答えが正しいか否かは――この戦いの結果に、かかっているのだろう。

    ●noisy.
     崩壊してゆく国道を舞台に、繰り広げられる抗争。
     デモノイドが猛り狂うたび、道路は地割れを起こして陥没する。
     コンクリートの所々に、灼滅者達が流す鮮血だろう。
     奴は攻撃手法が乏しいものの、その代わりに繰り出す一撃が致命傷に至るほど重々しいのだ。
     わっふがるやなっちゃんの回復支援が無ければ、今以上の苦戦を強いられていたに違いない。
    「落ち着いて! こっちだ!!」
     一方、アカネは明滅する誘導棒を大きく振り、迂回を促していた。
     背後をちらりと覗うと、彦吉も順調に車を避難できている様子でいる。
     ESPだけでなく、道具や呼びかけにも工夫を凝らした事で、一般人達は安全に戦場から脱出できていたのだ。
    「あともう少しで避難も完了するぜ! 皆、もう少し耐えてくれ!」
     今もなおデモノイドを牽制する仲間達へ、彦吉は現状を伝える。
     避難を終え、自分達が加勢することができれば――デモノイドの灼滅も、一気に佳境へ迎える事ができると信じて。
     ジャマーによる妨害も、着々と効果をあらわしているようだ。石化や麻痺などの呪いに冒され、デモノイドの攻撃頻度が減少し始めている。
    「どうか悪く思わないで。これ以上、あなたを暴れさせるわけにはいかないの」
     月光を帯びて青白く輝いたのは、リリーの指先に絡んだ鋼糸だ。
     寄生体の蒼き皮膚と融合させたそれを、瞬きさえ許さぬ素早さでリリーは手繰る。
     ひゅん、と夜風を鳴らし、鋼糸はデモノイドを幾度も斬り裂いた。
     その美しくも確実に相手を仕留める様は、獲物を捕らえる蜘蛛の糸を彷彿とさせる。
    「その巨躯……死角を突かせて頂く」
     静かに宣告するは光の声。赫槍『大紅蓮』……地獄の名を冠す戦槍は、血潮の如き紅の刃でデモノイドの急所を狙う。
     初手にさくらえが斬撃を見舞った踵骨腱、そこの僅かに開いた傷口目掛けて――!
    『グルゥ……ァアアアアッッ!!』
     穿撃。その瞬間、夜天を引き裂くように哮り立つデモノイド。
     ダン、ダン、と道路を砕いて暴れ狂いながら、灼滅者達との距離を僅かに引き離した。
    (「これ以上、被害を広げるわけにはいかないっす……!」)
     蒼き異形を捕縛するべく影を這わせたと同時、千結の脳裏に蘇ったのは、かつて救うことができなかったデモノイドの姿だった。
     手のひらから零れるように、目の前であっけなく溶けて消えた生命。
     勿論、心から後悔を抱いた。然れど、今は迷ってはいられない。『全てを救う』為にも――!
    (「鶴見岳に、阿佐ヶ谷――ああ、確か前回も街中で大量発生しやがったんだよな」)
    『地獄』とも呼ばれたあの大規模な事件を、ジュラルはふと懐う。
     こんな市街地のド真ん中でなく、もっと人目の少ない場所でならば楽に処理ができるというのに。
     いやはや、と首を振るジュラル。その手に構える銃器はガトリングガンである。
     発射と共に、幾度も響き渡る轟音。魔の炎を宿した大量の銃弾を撒き散らし、デモノイドを爆発に巻き込んだ。
    『グゥウ……!!』
     身体に広がった炎により衰弱しだしたデモノイドへと、果敢に突撃するのは梓だ。
    「やっぱり楽しいですね、強い相手と戦うのは。強い相手を、殴り倒せるのは!」
     まるで彼女自身の闘志を体現するかのように、炎をまとって燃え上がる拳。
     力の限り、ひたすらに殴りつける。梓の藍色の瞳は、至極楽しげに爛々と輝いていた。
    『ガウ……ゥウウウウッッ!!』
     しかし、デモノイドとて黙ってはいない。侵食する幾多ものバッドステータスに抗い、蒼の右腕を砲台へと変化させる。
     鮮烈な光が蓄積される。デモノイドが砲口を向ける先には、さくらえが居た。
    「(ワタシは逃げはしない。眼前の敵あろうと、己の内なる闇であろうと)」
     だが、彼は動じることはなく――寧ろ、不敵に笑っていた。
     細められた紅い瞳には、揺るぎない覚悟が宿されている。
     得物を構える。いつでも発射できるよう、引鉄に指を宛てがって。
     しかし、先手を打ったのはデモノイドの方だった。毒を孕んだ死の光線が、さくらえに目掛けて降り注ぐ――!

     ――かと、思われた。彼にダメージは無い。
     何故ならば。
     ディフェンダーとして加勢した流鏑馬・アカネが、その一撃を肩代わりしていたのだ。
    「お待たせ! 全員の避難、やっと完了したよ」
     その身に毒を浴びながらも、彼女は力強く、微笑んでいた。

    ●Slay.
     避難誘導班が合流し、灼滅者達はさらにデモノイドを追い詰める。
    「切り裂け……鬼の爪」
     デモノイドの懐へと潜り込んだ光。大きく振りかぶったその腕は、服の袖を突き破って赤黒く硬質化した肌をあらわにしていた。
     鋭く伸びた爪の先が光り、一閃。蒼の肉片を抉り取るように引き裂いた。
     掻き出された腹を手で抑え、ぐらりと足を踏み外したデモノイド。
     それを見計らい、肉薄するのはリリーだ。
     丈の短いキトンの裾を揺らし、その手で紡いだ燃え盛る蜘蛛の巣を――蒼の肌膚に叩きつける。
    『ッグオオォォ……!!』
     唸るデモノイド。己の身体を焼き焦がす炎は決して消えることはない。
    「次はオレに任せとけ! コイツをぶち込む!!」
     マスクの奥で得意げに笑い、彦吉は弓をひいた。箒星の如き矢は美しい軌跡を描く。
     しかし、デモノイドはその身を起こして間一髪でかわす。
     次第に減速する矢は地面へ向かって下降し、敢え無くコンクリートへと突き刺さった。
     どろり、と生々しい音を立てて焼け爛れる異形の巨躯。もはや雄叫びを上げる気力すら持っていないようだ。
     デモノイドは刀と化した右腕を前衛に向けて振るおうとするが、石化に阻まれ空振りに終わる。
     ――灼滅の時は、近い。アカネは反撃として、片手に携えたガトリングガンを砲火させる。
    『エターナル・フレイム』――地獄の業火とも喩えられるその威力は伊達ではない。
     またもや全身に炎と弾丸を浴びるデモノイド。最早、二足歩行すらままならぬ状態だ。
     膝をつき、腕をつき、四つん這いで灼滅者達を睨まえる。
     その眼光だけは、傷ついてもなお鈍ってはいない。
     満身創痍なデモノイドを見据え、さくらえは思い返す。
     出発前、エクスブレインもぼやいていた――『全てを救うだなんて無茶だ』という言葉。
     その通りだろう、と思う。それはこの木更津事件に限らず、これからにだって当て嵌る。
     然れど、救えるものは確かに存在することを、さくらえは知っていた。
    「この魂に賭けて――まだ、負けてやるわけにはいかないんだ」
     今も、これからも。この現実にも、自分自身に潜む『闇』にも。
     デモノイドを指差したと同時、指輪に飾られた宝石が閃いた。
    『グ……!? ガ……ァ……!!』
     最期の遠吠えすら許されぬまま、鮮やかな蒼の躯は石化の呪いによって色を失ってゆく。
     両脚が、腹が、両腕が。そして、頭部が。
     灼滅され逝くバケモノは、暴虐の限りを尽くすことなく――灰燼に帰し、消え失せた。

    ●傷歎の道途
    「道路……ボロボロになっちまったな」
     彦吉の呟きを耳にし、灼滅者達は周囲を見渡す。
     広々とした国道に、八人の少年少女達。崩壊したコンクリートに、散らばる血痕。
     ダークネスという異質な存在は、この木更津市に大きな爪痕を残してしまった。
     それは逃れられない、現実。
    「……でも、良かったっす。誰の犠牲を出さずに、デモノイドを灼滅できて」
     街の復興も時間がかかってしまうだろう。――しかし、人の生命には変えられない。
     まずは死傷者を防げたことにほっと安堵の息を溢し、千結は目を伏せた。
     先程までデモノイドの亡骸が残されていた場所に、リリーは真っ白なスパイダー・リリーを手向け花として添えていた。
    「デモノイドヒューマンにもデモノイドロードにもなれず、ただただ利用されて……可哀想」
     花の香りが、静かに零れるリリーの涙が、秋の夜風に浚われ霧散する。
     一方、街路灯にもたれかかる一人の影がある。ジュラルだ。
     トマティストたる少年は、普段のようにトマトジュースを味わっていた。
     仕事終わりの一服として。口に広がる酸味を感じながら、ふと、木更津の街並みを眺める。
    (「デモノイドなぁ……工場産の奴だけは、なんとかできんもんかねぇ」)
     自分達の目標の灼滅は完了した。しかし、今もなお別の灼滅者達はデモノイドと交戦しているのだろう。
     あちこちから聞こえる喧騒は――到着時に比べれば静まってはいるものの、未だにデモノイドの咆哮は街中に響いている。
    「他のチームの討ち漏らしなどがあるかもしれませんね」
     見回りに参りましょうか、という梓の提案に灼滅者達も首肯した。
     どうやら夜は、未だ更けそうにないらしい。負傷した者を肩で支えながら、灼滅者達は国道を引き返す。

     ――その直前、立ち止まったアカネは拳を強く握り締める。
     血が滲もうとも構いやしない。
     心に沸き上がる怒りが、我慢ならなかったのだ。夜空を仰ぎ、声を振り絞る。
    「許さないよハルファス……朱雀門もだッ!!」
     木更津市の人々を地獄の一端に巻き込んだ、全ての元凶達。
     傷歎の未来は消し去った。――しかし、これから灼滅者達が往く道途には、再び恐ろしい運命が待ち受けているのかもしれない。

    作者:貴志まほろば 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年11月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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