ほとばしれ妹力!

    作者:るう

    ●とある街角
    「クックック……やはり妹とは、人類の宝である!!」
     デレデレと変態――おっと失礼――幸福そうな顔をして道を行く青年は、何か萌え萌えな本を読んでいたせいで、そこに誰かがいた事に気付かなかった。
     ドンッ!
    「ご、ごめんなさいお兄ちゃんっ!」
     軽い衝撃と共に、少女の甘い声がする。
     声の主を見た瞬間、彼は電撃的に理解した! 涙目で見上げる女の子こそ、彼が長年希求して止まなかった妹であると!
    「お兄ちゃん……大丈夫? 今日は私がお料理するから、念のためゆっくり休んでね?」
     何という押し掛け妹か! だが青年は、それが異常な事であるとは何ら思わなかった。そして、家に帰り着いた二人は……。

    ●武蔵坂学園、教室
    「妹はかわいいって、先入観だと思うんだよね」
     その話は置いといて、と、須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は事件の説明に戻る。
    「現れた淫魔は、十歳くらいの女の子。自分のことをチカって呼んでるみたい」
     が、可憐な見た目に反してその性格は狡猾。自らを妹と称して兄とする標的(もちろん、赤の他人だ)の家に潜り込んだら、標的を誑かして近親相姦という背徳を楽しむのだ……近親って言葉の意味わかってますか?
    「とにかく、今回はその淫魔が狙った大学生のトシユキさんって人が……えーと、ちょっと変人だったおかげで、上手く淫魔を罠にかけて灼滅できそうなの!」
     ダークネスの灼滅は灼滅者としての宿命であるとはいえ、少し落ち着いて聞いて欲しい。

    「トシユキさんは、妹や、妹好きの同志を常に探しているみたい」
     彼は一人暮らしだが、十人程度が過ごせる大きさの部屋を借りている。それは、対外的にはたくさんの友人を招けるようにという事になっているが、本当は、いつ(実在しない)妹たちが自分の前に現れてもすぐに同棲できるようにという、イタい妄想の産物だ。
    「だから、みんなも妹として乗り込めば、きっと歓迎して貰えると思うの」
     ちなみに男の場合、同志として訪問すれば歓迎してくれる。上手くやれば『男の娘』な妹として押しかけても大丈夫だろうが、それをやるかどうかは君次第だ。
    「けれど淫魔の方は、歓迎どころじゃないみたい。妹が増えれば兄から貰える寵愛が減ることになるし、兄が増えれば一人を誑かすためにかけられる時間が減っちゃうから」
     そこで、怒って攻撃してきたところを返り討ちにしてやれば一件落着。トシユキもついでに眠らせておけば、全て夢だったとでも思ってくれるだろう。
    「事件を解決し終わったら、みんなも全部忘れちゃった方がいいと思うよ」
     トシユキにいろいろ言いたいこともあるだろうが、まあ、そっとしといてやるのがお互いのためな気がしなくもない。


    参加者
    東雲・夜好(ホワイトエンジェル・d00152)
    錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)
    檜・梔子(ガーデニア・d01790)
    海堂・月子(ディープブラッド・d06929)
    九葉・紫廉(影の狼と天の狗・d16186)
    三澤・風香(森と大地を歩く娘・d18458)
    アナスタシア・ミルキーウェイ(中学生ダンピール・d18556)
    夜久・葵(闇夜の黒猫・d19473)

    ■リプレイ

    ●その出逢いは唐突に
    「お兄ちゃん……」
    「チカ……」
     見つめ合う二人の頬がほのかに紅を帯び、次第に近づいていった……その時!

    「待ったぁ!」
     ばたんという音と共に、部屋の扉が勢いよく開く!
    「お、お兄ちゃんが私以外の妹と仲良くしたって、べ、別に寂しくなんてないんだから!」
     セーラー服の裾をもじもじと弄りながら顔を赤らめる夜久・葵(闇夜の黒猫・d19473)。トシユキの顔を正面から見ようとするが、気恥ずかしくて思わず視線が逸れる。
    「ツンデレ妹……だと……?」
     雷にでも撃たれたかのように呆然と、トシユキが呟く。実際に姉のあった正真正銘の妹たる葵としては複雑な気分だが、その戸惑ったような態度は商業化された『ツンデレ』とは無縁な本物感をトシユキに見せつけていた!
     思わず葵に歩み寄ろうとするトシユキの前に、扉の影から別の一人が飛び出してくる!
    「アニキーっ! 会えて嬉しいっす! アニキ、アニキっ♪」
     男子制服姿のアナスタシア・ミルキーウェイ(中学生ダンピール・d18556)に、弟はお呼びでない……と言おうとしてトシユキは気付く。
     や・わ・ら・か・い!
     トシユキに頬擦りしていたアナスタシアのロシアン胸が、それを抑えつける制服に抗ってトシユキを責めていた。何ということだ、アナスタシアは弟ではなく妹だったのだ!
     ……何? 純日本人たるトシユキに、金髪の白人妹がいるわけがないって? ちっちゃいちっちゃい、そんな事気にしちゃダメだよ。
     さらに、未知の感覚にぼうっとしているトシユキの頭を、何者かが掴んだ! 頭は、その細い指に見合わぬ力で後ろへと反らされ……がら空きの首に腕が絡まる!
    「だ……誰だ!?」
     完全にスリーパーホールドを決められたトシユキの目が、謎の覆面女の目と合った。戸惑いを見せるトシユキの目に、悲しげな瞳だけが映る。
    「兄さん……覚えてくれてないんだね。ボクだよ、妹のクッシーだよ」
     技を解いて視線を逸らし、憂いを見せる覆面女こと檜・梔子(ガーデニア・d01790)。
    「え? ……ああクッシーか。覆面をしてるからわからなかったよ。さあ、素顔を見せて」
    「素顔は……まだ恥ずかしいから秘密だよ」

     何言ってんだこいつら……。
     トシユキが何故、ESPを使ってやるまでもなくこの状況に即応できているのか。九葉・紫廉(影の狼と天の狗・d16186)は呆れたがすぐに考えるのをやめた。何故なら彼には……もっと考えるべき大切な事があったからさ!
    「こ……この子は……なんて妹力だ! これはまさに、俺の求める妹像の具現! YesロリータNoタッチ!」
     空中を泳ぐかのように淫魔チカへとダイブする紫廉に、兄を取られ不満げだったチカは、表情をころりと変えてはにかむ。
    (「おのれ……実年齢がどうかは知らないがロリ淫魔め! 兄の妹愛を弄ぶとは……」)
     紫廉が精神的に撃沈されていた頃、トシユキもまた物理的に轟沈していた。

    ●妹は続々と
    「……はっ!?」
     いい香りに鼻をくすぐられ、トシユキは目を覚ました。
    「おはようございます、兄さん。お目覚めですか?」
     はち切れんばかりの海堂・月子(ディープブラッド・d06929)の胸はブレザーの中に納まり切らず、しかし清楚であって淫靡なところがない。プリーツスカートと黒のストッキングがその清楚さに拍車をかける。そして蠱惑的な唇は艶やかで、一方でその柔らかな微笑みは媚びるわけではない自然な気品に満ちている!
     これほど矛盾に溢れた性質を平然と湛える存在を、果たして妹と呼んでもいいものだろうか? 断じて否! これは妹ではない。完璧な妹である!
     衝撃を受けて呆然としていたトシユキの頭を、白ロリ姿の東雲・夜好(ホワイトエンジェル・d00152)がそっと撫でた。
    「お兄……ちゃんッ♪ 前はお兄ちゃんが夜好に、こうしてくれたよね♪」
     困り顔で記憶の糸を探るトシユキがそんな糸が存在するはずもないことに気付くよりも早く、夜好はさらに畳み掛ける!
    「お兄ちゃん……もしかして夜好のこと……忘れちゃった? 夜好が風邪を引いた時のことだよ……」
    「そ、そんな事ないさ! あの時は……ええと、怖い夢を見てたんだっけな?」
    「よかった……ちゃんと覚えててくれたんだ♪」
     記憶捏造、完・了。この男の娘、そこらの淫魔よりもよっぽど性質が悪い。

     妹は、まだまだ増え続ける。
    「折角の感動の再会だけど……お兄ちゃん」
     腰に手を当てた錠之内・琴弓(色無き芽吹き・d01730)の声には、多少の呆れが含まれていた。
     部屋の中をぐるりと見回して、大きく溜息。
    「いくら私たちが兄妹でも、この部屋はちょっと汚いんだよ。お世話に来て正解だったんだよ」
     部屋の隅には脱ぎっ放しの洗濯物、床もよく見れば埃が溜まっている。そんな事もあろうかと、バッグに割烹着と三角巾を入れておいて正解だった。瞬時に琴弓は、世話焼き妹の仕事着に完全武装!
     ……何で赤の他人の妄想に付き合って部屋の掃除までしてやらにゃならんのかとか、我に返っちゃダメだ。頑張れ琴弓、負けるな琴弓!
    「それじゃあお兄ちゃ……兄さん、あの……」
     気恥ずかしくて以前みたいに『お兄ちゃん』と呼べなくなりました風にもじもじと様子を覗う三澤・風香(森と大地を歩く娘・d18458)に、琴弓に隅っこに追いやられたトシユキが顔を寄せる。妄想癖のダメ大学生とはいえ年上の異性に至近距離まで近付かれ、顔を真っ赤にして俯く風香。勉強を教えて……その一言が、言い出せない。というか演技抜きで、一人っ子の風香にはこういうのは刺激が強すぎる!
     鞄から教科書とノートを半ば取り出したままでぼーっとしている風香に、トシユキが声をかけた。
    「なんだ、勉強を教えて欲しいなら最初からそう言えばいいのに。それと……呼び方は『お兄ちゃん』でいいぞ?」
     風香はもう、しきりに頷くことしかできなかった。

    ●兄妹たちのカオス
    「グラフの交点の数と方程式の解の数は対応しているから……」
     他の妹たちもいると机では狭すぎるということで、風香は布団の上でトシユキに数学を教わっていた。
    「おーい……聞いてる?」
     けれどそれらは、ほとんど頭に入らない。心配そうに風香の顔を覗き込もうとしたトシユキだったが、不意に月子の声に呼び止められる。
    「兄さんこそ、ちゃんと聞いていますか?」
    「……っと済まない、今そっちに行く。公式通りの式変形はできたか?」
     案外真剣に勉強を教えるトシユキの顔を、至近距離からまじまじと見つめる月子。さり気なく髪をかき上げると、その下に秘められた耳の形が露になる。
     思わずドキッとするトシユキ。唇から漏れる甘い呼び声が何と言っていたのか、最早高ぶる気持ちを抑えつけるのに精一杯だったトシユキの記憶にはない!
     月子に気を取られたトシユキの腕を、反対側から風香が引っ張った。
    「兄さんと……折角一緒の……時間……なんだもん……」
     だがその折角の時間は、唐突な闖入者によって妨げられる!
    「勉強ばっかりじゃ体に悪いよ、とりゃー!」
     梔子の両腕両脚がトシユキに絡みつき、とってもイイ感じに関節を締め上げた! 年頃の女の子との密着といううらやまけしからん状況にもかかわらず、トシユキにそれを楽しむ心の余裕はない!
    「いたた……何だ何だ一体!?」
    「ボク、兄さんを守るために格闘技習ったんだ!」
    「だったら防衛対象に技をかけるなー!」
     バンバンと布団を叩きギブアップ宣言するトシユキ。そこに今度はチカが突撃しようとするが……。
    「あ、チカちゃん、そこ、埃残ってるんだよ?」
     あからさまに嫌そうな顔のチカに、澄ました笑顔で釘を刺す琴弓。
    「ほら、しっかりやれば、お兄ちゃんに何でもご褒美ねだれるよ?」
     そんな自分は、部屋の片隅から発掘した下着に顔を赤らめつつも洗濯機にポイ。祖母や母から受け継いだ家事スキルに、幼馴染&その妹で培った世話焼きスキルを兼ね備えた彼女は将来、いいお姑さんになるんじゃなかろうか。
    「えー? 葵お姉ちゃんは行ってもいいのー?」
    「べ、別にお兄ちゃんが心配で様子を見に行くわけじゃないんだからね!」
     うん、どっちかっていうと実際気恥ずかしいので、トシユキよりも和気藹々する他の仲間たちの方に目がいっちゃうんだけど。みんな格好からして気合入ってるし。
    「おっと、この辺もそろそろ掃除するのか」
    「おおおお兄ちゃんの顔が見たかったなんて、そんな事ないんだよ!」
     否定しつつもトシユキに促されると黙って傍に座り込む葵と自分を見比べて、チカもそろそろかなり不満が溜まってきている。
    「ほらほらチカ! お兄ちゃんの膝の上に来ないか? 暖かいぞぉー?」
     チカを誘う紫廉の、神々しいまでに幸福そうな笑顔。返事も待たずに抱きかかえてチカを膝の上に乗せると、さらなる一言。
    「お兄ちゃんは、チカの愛妹手料理が食べたいぞおおおお!!! その後は、一緒にお風呂に……いや何でもない」
     流石に恋人持ちとしては、そこは辛うじて自重したらしい。チカ以外の妹の視線もそこはかとなく冷たかったし。

     そうこうしている間にも、チカの神経を逆撫でする盛宴は続く。
    「あー! 胸が苦しいっす!」
     ネクタイを外すばかりか、無防備にワイシャツのボタンを外し胸を扇ぐアナスタシアに、さすがのトシユキの視線も泳ぐ……待て、まだそういう時間には早いぞ!
     まあアナスタシアの額を見れば大粒の汗が滲み出ており、どうやら誘うつもりも何もなく、本当に胸が苦しかっただけっぽいけど。
    「むぐぐ……私もお兄ちゃんを……」
    「はいチカちゃん、今度はお料理作ろ?」
     琴弓……恐ろしい子!

    ●手料理を召し上がれ!
    「「いっただっきまーす!」」
     数々の料理を妹たちと兄たちが囲み、夕食の時間が始まった。
    「お兄ちゃーん! チカ、お兄ちゃんのために頑張ったんだよ……?」
     先手を取るのはもちろん、今まで我慢に我慢を重ねてきたチカだ! ……が!
    「ほらアニキ! アーンするっすよ?」
     おーっとアナスタシア選手、割り込んだー! しかも愕然とするチカをよそ目に、今度は唐揚げを咥えた夜好がトシユキに迫る!
    「んなっ!?」
     唇が触れ合わない程度にトシユキを焦らして餌付けを終えた夜好が、チカに場所を譲る。
    「次、チカちゃんもやってみる? チカちゃんも、お兄ちゃんのこと大好きなんだものね、夜好と一緒だわ☆」
     だが妹力を持つ者には見えたであろう。その気遣いの奥に秘められた圧倒的なオーラを。
    (「どう? 男の娘に淫魔の存在意義を奪われるのはどんな気分?」)
    「うぐぐ……夜は、お兄ちゃんは私のものだからねっ!」
     そう言ってチカがトシユキに抱きつくと……トシユキは意識を失ってごろりと倒れる。そう、まるで睡眠薬でも盛られていたかのように。
    「ふ~ん……みんな、どうしてもチカの邪魔をするんだね……」
     ゴゴゴゴゴ……。
     アンブレイカブルもかくやというどす黒いオーラが立ち上り、チカの口元が引き攣ったように持ち上がる。チカも睡眠薬入りの料理を食べてるはずだが、バベルの鎖と沸き上がる怒りで薬は効果を発揮しない! ……ま、それは灼滅者たちも同じなんだけどね☆
    「さ、遊びはおしまーい。トシユキちゃんはチカちゃんには渡せないわ♪」
    「べっ、別にお兄ちゃんが好きなわけじゃないけど!」
     決して間違ってはいないのだが、何か名状し難い雰囲気を醸し出す夜好に、慌てて弁解する葵。当のトシユキが寝てる以上、別に演技を続ける必要もないんだけど、まあきっといろいろテンパってるんだろう。
    「わ……私も、かなり恥ずかしかったんだから!」
     怒りを込めた風香の影が、チカの未発達な肢体を空中に繋ぐ。なんか半分くらい八つ当たりに見えるのはたぶん気のせいだと思う。
    「どうして!? チカ、お兄ちゃんのお婿さんになりたいだけなのに……」
    「あら? なかなか可愛い夢ではあるけれど、ホントはその気がないのに弄ぶのはよくないわ?」
     くすくすと笑う月子にチカが、自分だって、と言い返せなかった時点でほぼ勝負は決まっていたといってもいいだろう。月子の放った花弁のような闇が、その下の柔肌ごとかわいらしい服を切り裂いた。
    「お……お兄ちゃーん!!」
     チカは必死にトシユキを叫ぶ……が。
    「このためにこの制服着てたみたいなもんっすからね!」
     アナスタシアの着る中学男子冬服につくESPは『サウンドシャッター』。そしてトシユキは今や蚊帳の外すなわち戦場外! つまりチカの呼び声は決してトシユキには届かない!
    「うそ……そんなのアリ!?」
     だが安心してほしい。チカ、君にはもう一人お兄さんがいたはずだ!
    「うおーチカぁぁぁ!!!」
     全身に兄力(と言う名の雷と化した闘気)をみなぎらせ、暑苦しくチカに抱きつく紫廉!
    「もう離さないぞぉー!」
     あの、お宅の不幸なキャリバーさんが攻撃できなくて困ってるんですけど。葵は上手く紫廉だけ避けてるけれど、一緒に殺っちゃっても怒られなかったと思う。
     ……というわけで、いつも暴走気味の影業を抑える必要もないんで、琴弓先生、ぶっ飛ばしちまって下さい!
    「それじゃあチカちゃん、覚悟してね?」
     影絵の化け物が鉤爪を伸ばし、チカ+αに斬りかかる! ちっ……αめ、躱しおったか。
     そして満を持して梔子、もとい覆面レスラー、ガーデニアの登場だぁー! 無意味に派手な側転、天井蹴り、そしてαからチカを剥ぎ取り……。
    「必殺、ガーデニアバスター!!」
     地獄の投げ技が炸裂し、チカの体が壁に叩きつけられる!
    「お兄ちゃんも、お姉ちゃんも……馬鹿ぁーーー!!!」
     最後、チカはあらん限りの声でそう叫ぶと……。

     ちゅどーん……妹は、爆発した!

    ●祭り終わって
    「さあて……後は、散らかったこの部屋を片付けてから撤収!」
     梔子が宣言するよりも早く、琴弓は既にてきぱきと掃除の準備を始めていた。さすがは未来の姑。
    「この人がどうしてそこまで妹に執着してたのかはわからなかったけど……偶にはこういうのも新鮮だわ」
    「何かを好きだと思う気持ちは素敵ですけど……付き合う方は恥ずかしすぎです」
     何気ない月子の一言に異を唱えつつ、風香は首を振って自分の記憶の抹消を試みていた。もちろん無理だ。
     そして記憶といえば……。
    「最後にお兄ちゃんの記憶、貰っちゃわないとね♪」
    「それじゃ、いくっすか!」
    「え……もう寝てるし、意味ないんじゃ……」
     吸血に気の進まない葵が異議を唱えるが、夜好とアナスタシアに向かうところ敵なし! お前ら、必要性とかじゃなくて完全にノリで血吸ってるだろ!
    「ご馳走様♪」
    「ごちそうさまでしたっすっ!」

     そんな妹たちを眺めながら、紫廉はぼーっと何か考えていた。
    (「妹って、スゲー可愛いんだな……帰り道にでも、どっかに落ちてないかなー……」)
     にへりと笑う紫廉。
     だがそんなモノ……そうそう落ちててたまるか!!

    作者:るう 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年11月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 11
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