木更津デモノイド事件~犬と猫の命~

    作者:相原あきと

     木更津市にあるとある大通り、転々とした街灯が明かりを灯し、時に通る車のヘッドライトが帰宅を急ぐ仕事帰りのサラリーマンを光に浮かび上がらせる。
     そんなサラリーマンの1人、40代過ぎの男性がふと足を止める。
     車はあまり通らないこの道で、今何かうなり声のようなものが聞こえたような……。
    「ああ、ここはペットショップか……」
     シャッターの降りた店に近づいてみると、犬やら猫やらが何かを威嚇するような怯えているような、一様にうなり声を出しているのがわずかに聞こえる。
    「ふぅ、脅かすーー」
     ボギギッ!
     聞こえた音が自分の背骨が折れる音だと、サラリーマンは気がつかずに絶命する。
     男の命を奪ったのは蒼い巨体のデモノイドだった。
     デモノイドは絶命した男の死体をトドメとばかりに何度も何度も殴り続け、やっと飽きたかデモノイドは殴るのを止め目の前のシャッターを強引に引き裂く。
    『ウウウウッ』
    『フーッフーッ』
     店内から犬や猫のうなり声が大きく聞こえ出すも、それが苛立ちの元だったと思い出したデモノイドは、小さな命たちを大きな蒼い拳で次々と奪っていったのだった。

    「みんな、ハルファス勢力って聞いて覚えてるかしら?」
     教室に集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(小学生エクスブレイン・dn0064)が皆に聞く。
     ハルファス勢力、それは美醜のベレーザを筆頭とするアモン残党を吸収したソロモンの悪魔ハルファスの軍勢の事だ。
     珠希はみなが理解しているのを確認すると話を続ける。
    「実はそのハルファス勢力が、木更津市にデモノイド工場を作っていたらしいの。ただ、その工場自体は朱雀門高校のヴァンパイアによって破壊されたみたいなんだけど……結果として、多数のデモノイドが木更津市に解き放たれちゃって……このままじゃ木更津市で大変な被害が発生するわ」
     つまり、今回の依頼は解き放たれたデモノイドの処理、朱雀門高校とハルファス勢力の後始末と言う事だ。
    「正直、どっちにも一言言ってあげたいところだけど、まずは目の前の被害を止めて欲しいの」
     そう言うと珠希は今回集まったみなに行ってもらいたい予測場所を説明する。
    「場所は市内のとあるペットショップ前よ。夜も遅いし車通りもまず無いんだけど、その前を通るサラリーマンがデモノイドに狙われるわ。サラリーマンがお店の前を通るのはちょうど22時よ」
     ペットショップ前に22時ちょうどに行けばデモノイドに出会えるという事だ。もちろんサラリーマンの男性もいるので避難させるなら人を裂く必用があるだろう。
    「それと、そのデモノイドだけどサラリーマンがいなくなったら、ペットショップに突入して犬や猫を狙うみたいなの……うなり声がいやなのか、その程度の理由だと思うけど……なんとか、気を引いてそうならないようにして欲しい、の」
     もちろん、最後のは珠希の個人的な希望であり、依頼の正否とは関係は無い。もっと言うならサラリーマンの生死も依頼の正否とは無関係であり、デモノイドを灼滅する事、それが灼滅者に与えられる全てだった。
    「えっと……みなが戦ってもらうデモノイドは本気になると片手が巨大な大剣みたいに変異させてくるわ、もちろん防御より攻撃が得意って感じの戦い方をしてくるみたい」
     サイキック的にはデモノイドヒューマンと無敵斬艦刀に似たものを使ってくるらしい。1体で灼滅者8人分程度の戦力がある。
    「全てを救おうとするとかなりキツイ戦いになるわ、でも、みななら何とかしてくれるって信じてる。お願いね」


    参加者
    霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)
    グロード・ディアー(火鷹の目・d06231)
    月雲・螢(線香花火の女王・d06312)
    鴨宮・寛和(ステラマリス・d10573)
    塵屑・芥汰(お口にチャック・d13981)
    秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)
    三葉・林檎(三つ葉のクローバー・d15609)
    七代・エニエ(吾輩は猫である・d17974)

    ■リプレイ


     木更津市にあるその町の大通りを8人の灼滅者が駆け抜けていく。
    「犬猫、特に猫に手出しってのはホント勘弁。とっとと片して終いにしよ」
     じゃなきゃ猫も犬も怖がるし……とは特徴的なマスクで口元を隠す塵屑・芥汰(お口にチャック・d13981)だ。
    「ええ、小さな子達のためにも、ですね」
     走りながら芥汰に同意するのは秋山・清美(お茶汲み委員長・d15451)だ。もっとも、その視線は芥汰でなく、そこそこ美形な霈町・刑一(本日の隔離枠 存在が論外・d02621)へ要注意人物を見るかのように注がれていた。
    「あの……私、あなたに何かしましたっけ?」
    「いいえ」
    「ええと、なら何で?」
    「何でも無いです。私は友達のお願いを叶えるために来ています。それだけですよ」
    「………………」
     清美は実は刑一をとある理由からライバル視しているのだが、それを知らない刑一からすればすごく居心地が悪い。
    「(でも何でしょう……何か、慣れ親しんだ感覚のような……)」
     もう少しで解りそうだなと思う刑一だったが。
    「もうすぐ着くわ、気を引き締めて」
     月雲・螢(線香花火の女王・d06312)の言葉に皆の間に緊張が走る。
    「忌わしき血よ、枯れ果てなさい……ッ」
     螢がカードを解放しバサリと衣装をひるがえす。
    「サラリーマンもだけど、犬猫も見捨てられないわね。もっとも、このメンバーなら何とかなると……思っているわ」
     螢の言葉に皆がうなずく。
    「見えた」
     視線の先には蒼い怪物とサラリーマンの男。
     瞬間、飛び出したのは三葉・林檎(三つ葉のクローバー・d15609)だった。
     走りながら瞳を閉じ、祈るようにカードを握りしめ。
    「……厳しい戦いになるけれど……守ってあげたいの。だからお願い!」
     目を開く。
    「力を貸してね!」
     林檎が完全装備で飛び込んだのは、まさに蒼い怪物デモノイドとサラリーマンの間だった。突然の乱入者に蒼い怪物の動きが止まる。
     だが、その気配に気がついたのはサラリーマンも同じだった。
     なんだ? と振り返り怪物の姿に言葉を失う。
    「な、な、な!?」
    「すいませーんッ! えーと、あれだ、逃げてくれ……下さい!」
     間髪言わずにサラリーマンの手を引くのはグロード・ディアー(火鷹の目・d06231)。
    「き、きみは? いや、それよりアレはなんだ!? どう見ても――」
    「悪いがあんまり説明してる時間が無いんだ!」
     そう言うと強引にサラリーマンを担ぎ上げるグロード。この状況で悠長なことはしてられない。
    「な、何をするんだきみは!?」
    「ああ、暴れるなよ!? あとで説明すっから!」
     サラリーマンを担いで走り出すグロード、仲間たちとすれ違うが振り返ることは無い。8人いてやっとの敵だ、自分がいない間のピンチは免れない……それでも、グロードは仲間を信じていた。
    「(救える可能性は全部救って、そんでもって全員無事で帰るんだ)」
     グロードとすれ違いつつ残りの灼滅者たちは殺界形成を使い、これ以上一般人がやってこないよう対処する。
     そして、シャッターの閉まったペットショップの前には蒼い怪物と7人の灼滅者。
     だが怪物は7人を無視してグロードを追いかけようと……。
    「おっと、ここは通しませんよ~? やられ遺伝子のない戦いでなら負けません!」
     そう今回RB団は関係ない。
    「食らいなさい! RB団で鍛えた嫉妬と殺気を!」
     ずんっと鏖殺領域を怪物に叩きつける刑一。
    「これがRB団幹部の力」
     なぜか味方の清美がワナワナと語る。
     ちなみにRB団は皆が同志なので幹部とかはいないと思います。
    「あの……だから今回、それ関係無いんで……」
     攻撃し終わった刑一が汗をかきながらツッコむが、その声は怪物の雄叫びによって打ち消された。
    「オオオオオオオッ!」
     同時に動き出す灼滅者達、ドレス姿の鴨宮・寛和(ステラマリス・d10573)がソニックビートを奏でると、その音と衝撃に乗るように七代・エニエ(吾輩は猫である・d17974)が白き破邪の光の尾を引く剣をもって、怪物の脇腹をすれ違いざまに切りつける。
     思わぬ反撃に驚くデモノイド。
    「吾輩は時代の先に生きる猫である。此度のことは義務では無い。できて当然……故に、吾輩は同胞を護る」
     破邪の白き光がエニエの気迫に呼応するように、その小さき体を覆うのだった。


     槍を持っての突撃を回避され、芥汰がその勢いを殺すために大地に槍を穿ち大きな音を立てながら再び怪物へと向かう。
     ペットショップに向かわぬよう気を引く考えだったが、その蒼い拳はいつの間にか巨大な剣と代わり、振るわれる度に風が巻き上がり、アスファルトが裂ける。
    「動くなと言ってるのに……! まぁ無理やり止めますけどね」
     刑一が体の支点となっている腰に向かって魔力の弾丸を飛ばすが、怪物は多少のマヒなど気にせず、逆に刑一に巨剣を振り降ろす。
    「サム!」
     ナノナノのサムワイズが頷き、刑一をかばうよう怪物の顔の前に飛び出す。
     ザシュッ!
     その白い体が蒼き巨剣によって切り、吹っ飛ばされる。
     だが即座にサムの周囲に死森の薔薇が展開され、その傷を癒されるではないか。
     それは螢による回復。
    「これでも防戦は結構得意なのよね」
     余裕の笑みを浮かべる螢。
     だが、1人分の戦力差は決して小さくは無く……――。

     デモノイドの攻撃は単調ではあったが連続で食らえば耐えられない威力だった。サーヴァント達の活躍がなければ、誰か1人ぐらいは即座に魂の力にお世話になっていたかもしれない。
    「誰かが傷つくのは……嫌、なの」
     前衛を薙ぎ払う怪物の巨剣に耐えつつ林檎が歯を食いしばる。
     林檎たちが耐えきった直後、怪物にできた隙を見逃さずにエニエが影を伸ばしその巨体を絡め取る。
     灼滅者達がチャンスとばかりに攻撃を叩き込むも。
    「ガアアアアアアアアッ!」
     叫びとともに強引に影をぶち切った怪物が、急に狙いを代え後衛に向かって巨剣を振りかぶる。
    「フロインデさん、少し痛いと思うけどお願い!」
     寛和のビハインドが割り込み螢の盾となる。
     だが、螢と同時に攻撃は寛和にも来ていたのだ、その一撃の重さに思わず膝を着きそうになる……だが。
    「螢さんは……前衛のみなさんの、回復を……」
     自分を回復させようとしていた螢に言い、寛和は自分に防御符を施す。
     さらにフロインデにも仲間たちを守るよう前線へと向かわせる寛和。
     灼滅者達はかなり防御寄りの布陣だった。
     それでも、デモノイドの攻撃力はその壁を上回る威力であり、少しずつだが押されていっていた……。
     僅かに焦りを浮かべる寛和。
     その時だ、目の前を雷がよぎって怪物に直撃する。
    「そんな顔するなよ……よっ、待たせたな!」
     それはサラリーマンを避難させたグロードだった。
     8人が揃った灼滅者たちの顔に、再び気力の笑みが浮かびあがる。


     蒼き怪物との戦いは続く。
     8人が揃った灼滅者達であったが、実質これで戦力は五分五分、決して余裕が出てくるわけではない。
     攻撃重視のデモノイドと防御と回復を優先した灼滅者の戦術。
     戦いは序盤の不利分だけ、怪物より灼滅者側がやや不利か……。
    「それぞれの命に、大きいも小さいもないですよ。それらを無慈悲に奪おうというのであれば……」
     林檎が構える龍頭の意匠が施されたバスターライフルの発射口に赤い光が収束していく。そして。
    「わたしたちが、必ず止めてみせます!」
     炎熱の閃光が一気にデモノイドの左腕を打ち焼いた。
     腕が痛いのか叫び、暴れ回ろうとする怪物だったが。
    「だから、あまり暴れないでくださいよ、まったく」
     刑一の影が強引に怪物を地へと縛り付ける。
     そこを、まるで最初から狙っていたかのように芥汰が足下へもぐり込むと。
    「猫や犬らが大事なのは俺も一緒……ホントは、立ち位置変わって防衛に入りたいトコだけど、俺まで揺らぐ訳にもいかねェよな」
     呟き、その想いを乗せた一撃は影で縛られた足をクリティカルにぶち貫いた。
     倒れそうになる怪物から急ぎ距離をとる芥汰だが、怪物は折れたままの足首で強引に大地を踏みしめると、巨剣である右手を振り回す。
     庇いに入ったビハインドとナノナノが吹き飛び戦闘不能となるが、怪物の暴走は止まらず連続で前衛達を吹き飛ばす。
    「流石に強い……!」
     手のつけられない怪物に、思わず刑一が漏らす。
     デモノイドは暴れつつも片足が不安定なせいか、バランスを保つためにソコに手をついた。
     だが、怪物の自重を支えられずにガギャガギャと嫌な金属音を立ててソレ……ペットショップのシャッターが破壊される。
     暗いペットショップの中でいくつかの僅かな光が瞬く。それは動物達の瞳、デモノイドという驚異を感じ取っていたからか、その目はどれも一様に怯えきっていた。
    「ちっ」
     思わず舌打ちがでるグロード。
     ぞわっ……。
     しかし、即座にその違和感に気がつく。
     それは闇墜ちの気配。
     仲間がそれを選択する時、グロードは決断を尊重してやるつもりだったのだが……。
     グロードは無言でエニエの肩に手を置く。
    「我輩は猫である。奴が同胞に牙を向くなら……絶対、決して、見過ごせぬ。意地を通してでも、吾輩は全てを護る」
    「ああ、わかってる。だけどよ、もう少し待っても良いんじゃないか?」
    「どういう……」
     ん、とばかりに顎で視線を誘導するグロード。
     エニエもつられて見れば、こちらにウィンクする清美がいた。
    「なにを……」
     エニエが疑問を口にすると同時、清美がポケットの中であるリモコのボタンを押した。
    『にゃーにゃーにゃーにゃー』
    『ううー、わわんっ! ぐるるるー』
     犬猫の声が響きわたり、ぞわりとしたデモノイドがそちらを振り向く。それはペットショップから少し離れた暗影にいた。
     数匹の犬と猫。
    「ガアアアアアアアッ!」
     雄叫びを上げて怪物が夜の空に跳躍した。
     そのまま犬猫の前に降り立つと、蒼き巨剣を振り下ろす。
     ガシャン……という機械が壊れる音とともに鳴き声はとぎれるが、怪物は何度もそこを攻撃する。
     それは清美が用意した犬猫のCDとぬいぐるみによる誘導だった。
    「皆さん、今のうちに立て直しましょう。長く持つは思えません」
     清美の声に即座に螢が夜霧隠れで前衛達をまとめて回復し、さらに各々が自己回復を施し、だめ押しとばかりに寛和がリヴァイブメロディで戦線を完全に回復させた。
    「グルルルルル……」
     時間にして1分程度だろうか、怪物は自らの殴る偽物に気がつき、再び灼滅者たちへと体を向ける。
     だが、そこに立つ8人は先ほどまでの8人とは違っていた。
    「さぁ、完全に立て直さえてもらったわ。それでは、クライマックスに入りましょうか」
     螢が嫣然と宣言し、灼滅者達が一斉動き出す。


     グロードの神霊剣が怪物の左胸を刺し貫く。
     外傷は何一つないが、魂を切りつけられた痛みだけが怪物を襲う。
     片手片足を負傷しても暴れ続ける怪物だったが、そろそろその命も尽きようとしていた。
     形勢は完全に逆転していた。特に防御と回復を優先した今回の作戦において、ジャマー含め序盤に行動阻害系を付与したのは長期戦の作戦と相性が良かったのが肝だっただろう。
    「ガ、ガアアアアアッ!」
     怪物が自らに暗示をかけるよう叫ぶとともに、その傷が急速に回復、さらに右手の巨剣が凶悪なオーラをまとう。
     だが。
     ――バチンっ!
     巨大な蒼き剣がまとっていたオーラが一瞬で霧散する。
    「残念。そのエンチャント効果は不許可」
     螢が笑みを浮かべる。
     その螢の横を眼光鋭く芥汰が駆ける。
     ――暫くご無沙汰だったが……ここに来て漸く役に立ちそうだ、この殺戮衝動とやらもな。
     マスクの下で手加減無しだ、と小さくつぶやくと同時。
     回復した怪物の左手を自らの手で握ると、至近距離からの妖冷弾を発動、凍結させると同時に力を入れて凍った怪物の左手を破壊する。
    「そろそろ行きますか」
    「うん」
     刑一のセリフに林檎が頷き、同時に地を蹴る2人。
     怪物の左に林檎、右に刑一が飛び込み。
    「炎よ!」
    「デストローイ!」
     林檎のレーヴァンテインと刑一のチェーンソーがデモノイドの両足を太股から断ち切る。
     ずずーん、と倒れるデモノイドだが、手首の無い左腕で体を起こすと右手の巨剣を振りかぶろうと……。
    「苦しい……ですよね。早く、楽にしてあげましょう」
     清美の声に皆も同意する、そして怪物の前に立つのは1人。
     それは自らを猫と称す少女。
     エニエはデモノイドの真っ正面に凛々しく立ち、まっすぐに蒼き怪物を見つめると殲術道具を捨てる。
    「吾輩の"これ"は壊す為の物じゃない――」
     メキメキとエニエの腕が刀へと変異していく。
     それは大きさこそ違え目の前のデモノイドと同種の力。
    「これは……」
     異形の剣をエニエが振るう。
    「――切り開く為の物だ」

     そして、蒼き怪物の命の炎は消えた。

     夜の大通り、激闘は終わり再び平穏が訪れる。
     ぐじゅぐじゅと消滅していく怪物の死体、清美はその傍に膝をつくと。
    「ごめんなさい。こんな方法でしか救えなくて」
     お祈りが終わると立ち上がり、今度は刑一を見つめ。
    「ちょっとは見直しました」
    「……は?」
    「何でもありません」
    「はぁ」
     結局最後まで解らずじまいだが、きっとクリスマス辺りで会う可能性もあるだろう。
     一方、シャッターの壊されたペットショップで犬猫の安否を確認していた寛和は安堵のため息を着く。
     まだ怯えている子もいるが、店のシャッターが壊された影響で怪我をしているような犬猫はいないようだ。
    「犬さんも猫さんも無事で良かったです。あとは……」
     つん、と近くの子の鼻をつつき。
    「素敵な飼い主さんに会えると良いね」
     安心させるように笑う寛和。
     そして、店の奥の方まで全員の安否を確認しに行ったエニエは、そこで思わず無言で立ち止まる。
     そこでは犬を抱っこしてゴロゴロしつつ、わしゃわしゃとその体をなで回す螢がいたからだ。
     さっきまでの戦闘での大人でクールな面影は無く……とてもだらしない。
    「けい?」
     エニエが呟き、螢がピクリと動きを止めエニエと目が合う。
    「中々に厳しい戦いだったわね。………………あら、後ろに」
     いつもの調子でエニエの後ろを指す螢、エニエが振り向いた瞬間。
     螢は犬変身でペット達に紛れる。
     とりあえず、今見たことは言わない方が良いのかな、となんとなく理解するエニエであった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年11月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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