古き良き『プロレス』をお見せしよう

    作者:波多野志郎

     地方のショッピングセンター、その駐車場こそがプロレス会場だった。小さな団体である、レスラーの人数も少なくファンも少ない。
    「だが、それが気に入った」
     そう答えたのは、一人の大男である。身長は一九十越え。鍛え上げた肉体はまさに鋼とも言うべき芸術品だ。飾り気のない黒いマスクをつけた男――ストロング・アームに対して、ケツァールマスクが言った。
    「観客を沸かせてこそ、プロレス――わかっているわね?」
    「わかっています、ケツァールマスク様。このストロング・アーム、正統派プロレスというものを彼等に見せて……いえ、魅せてやりましょう」
    「文章にしないと意味が通じないけれど、いい気概よ。やってやりなさい!」
     ハ! と応え、ストロング・アームが花道を駆け抜けた。それに、疎らな観客が驚きの声を上げる。この団体には珍しい演出だ、ぐらいにしか思っていないのだろう。
     駆けた勢いで、ストロング・アームはリングに駆け上がる。そして、ケツァールマスクが投げ込んだ拡声器を手にストロング・アームががなりたてた。
    『ピー、ガガッ――諸君、血沸き肉踊る、本物のプロレスが見たくないか!?』

    「……で、そのノリでプロレスラー達を薙ぎ払っちゃうんすよ」
    「ひどい話ですねぇ」
     しみじみと語る湾野・翠織(小学生エクスブレイン・dn0039)に、隠仁神・桃香(中学生神薙使い・dn0019)ものんびりと相槌を打った。
    「問題は、ケツァールマスクっていう幹部級のアンブレイカブルと配下のレスラーアンブレイカブルが小さなプロレス会場に乱入した事が発端っす」
     ケツァールマスクとその配下は、ギブアップした者を攻撃する事は無いので、死者は出ないのだが、アンブレイカブルに倒されたことで心が折れてしまうのだ。それはそうだろう、弱小団体にとって数少ないファンの前でこてんぱんにのされては立つ瀬がないのだ。結果、この弱小団体も潰れてしまう……それは、あまりと言えばあまりの結末だ。
     相手となるアンブレイカブルレスラーの名はストロング・アームである。ちなみに『腕』と『兵器』がかかっているらしい、これも文字にしないとわかりづらいネタである。
    「古き良きプロレスっていうんすかね? 打撃技と投げ技を多様してくるっす。戦い方は派手っすけど、基本はがっちり抑えてくるっすよ」
     戦闘そのものは、サイキックを使って行なう。せいぜい、派手にやってしまってもプロレスの範疇ならOKだろう。
     また、ケツァールマスクは戦闘に参加してこない。だが、観客に危害を与えたりギブアップしたものに攻撃を加えるなどのマナー違反ルール違反はもちろん、地味すぎて試合が面白くなくなった時には介入してくる。
    「こいつが馬鹿みたいに強いんで、そうなったら勝ち目はないっす。そうなる前にストロング・アームといいプロレスをやって欲しいんすよ」
     救いがあるのは、試合さえ盛り上がれば勝っても負けてもケツァールマスクと配下のアンブレイカブルは満足して去ってくれる点だ。なので、注意すべきは勝敗以上にプロレス的な試合の盛り上げ方法だろう。例えストロング・アームが負けてもケツァールマスクは勝者を称え、ストロング・アームを連れ帰るだけで事を荒立てる事はしないのだ。
    「九対一でも、いい勝負っすからね。昭和のころはハンデキャップマッチも結構あったらしいから、ノリでいけるっす」
     プロレスでは、そういうアクシデントもネタの一つになる。普通にストロング・アームの後に乱入して試合を始めてしまえば問題はない。
    「で、サポートのみんなには観客で盛り上げて欲しいんすよ」
     プロレスとはレスラーと観客が一つになって初めて盛り上がる格闘技だ。観客の盛り上がりもまた、試合を熱くしてくれるだろう。
    「とにかく、プロレスを頑張ればいいんですね~?」
    「そうっす、よろしく頼むっすよ」


    参加者
    鏡・剣(喧嘩上等・d00006)
    加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)
    獅之宮・くるり(暴君ネコ・d00583)
    犬神・夕(黑百合・d01568)
    ストレリチア・ミセリコルデ(銀華麗狼・d04238)
    斉藤・歩(炎の輝光子・d08996)
    深束・葵(ミスメイデン・d11424)

    ■リプレイ


     地方のショッピングセンター、その駐車場に低いどよめきが走った。
    『ピー、ガガッ――諸君、血沸き肉踊る、本物のプロレスが見たくないか!?』
     突然の乱入者、ストロング・アームのその声に突如としてスモークが巻き起こる。あれ? こんな演出いれました? と振り返るストロング・アームにケツァールマスクは首を横に振った。
    「ならば血沸き肉踊る、本物の相手が必要だろう!」
     スモークの中でライトによって作られた逆光、その中でシルエットが叫ぶ。
    「恒天! フェニックスアームズアルク! 人々の心に炎を灯すため、ここに降臨! さあ、凄さを比べあおうか!」
     スモークの中を駆け抜けた橙を基調としたリングコススチューム、斉藤・歩(炎の輝光子・d08996)が跳躍。三本のロープを一気に飛び越え、スタイリッシュにリングへと降り立った。
     それに沸く観客――だが、乱入者は一人ではない!
    『時は来た!』
     派手な入場曲が、鳴り響く。振り向いたストロング・アームが見たのは、二人の女子レスラーである。
    『本物のプロレスだと……? このホワイトキャットを差し置いて何が本物か! この私が! 真の! プロレスを! その身に刻み込んでやろう!!』
    『貴方のような極悪非道の輩が何を言うのです、ホワイトキャット! ……しかし、そうですわね。その考え自体は、このベビー・ウルフとて同感!』
     白猫マスクをつけた獅之宮・くるり(暴君ネコ・d00583)と狼尻尾が付いたエナメルホワイトのレオタード姿のストレリチア・ミセリコルデ(銀華麗狼・d04238)だ。マスクの下、くるりが低く唸り吐き捨てる。
    『口の減らない犬め、ならば私の踏み台となるが良い!』
    『犬じゃないですの狼ですのっ!』
     突如として始まる善と悪の仲間割れに、会場にドっと笑いが起こった。そして、続々と戦うためにリングへとレスラー達が駆け上がっていく!
    「魅せてくれるんだろ、本物のプロレスって奴を? ならば、私達が相手だ!!」
    「所詮、正統派レスラーさんでは九人相手は無理かな?」
     普通の女子っぽい格好からダイナマイトモードを使用、ダイナマイト版のリングコスチュームに変身した加藤・蝶胡蘭(ラヴファイター・d00151)と、ニヤリと不敵に笑い挑発するビッグボディ・マッスルマン(マ神・d04619)に、ストロング・アームは笑みを返す。
    (「他の格闘技の試合と違ってプロレスは年中無休らしいけど何も冬の青色の下でやらなくても……正直な話、『しょうわのぷろれす』はおこたでのんびりとテレビで見ていたいです」)
     ウェスタン調スタイルでカウガールを気取り、ライドキャリバーの我是丸に跨がって観客に投げキッスを振り撒く深束・葵(ミスメイデン・d11424)も、心中では色々と考える事があるらしい。
    「後続の乱入者たち、あれ灼滅者ですよね。ローゼ、依頼とは関係ないって言ってたわよね!?」
    「ハテ? コンナ演出は珍シイ?」
     観客席の方も、賑わってきた。何にせよ、盛り上がったと感じたのだろう、ストロング・アームは拡声器を放り投げ、言った。
    「よし、いいぞ。ゴングを鳴らせ!」
    『さあ、ついに今日という日がやって参りました。実況はわたくし倉持……じゃなくて高橋雛子がお送りするのだ』
    『え? あ? ど、どうも。ウチの団体の解説です……』
     そんな額を割られそうな実況者はいりませんよ、という表情の解説に実況者も迎え入れられた。この異常な熱気――というか、ノリと勢いに鏡・剣(喧嘩上等・d00006)が指をボキボキと鳴らしながら楽しげに笑った。
    「さーて、そいじゃあ楽しく喧嘩をはじめるとしようか」
     ゴングが鳴り響いた瞬間、剣は飛び出そうとする。しかし、その直前でその出来事は起きた。
    「よいしょっと……あれ?」
     ロープを潜ってリングに上がった隠仁神・桃香(中学生神薙使い・dn0019)が、突如として襲われたのだ。
    「だらっしゃー!」
     他でもない、灼滅者である犬神・夕(黑百合・d01568)の毒霧によって。


    『おーっと、いきなり序盤から波乱だぞ!?』
    『仲間割れですかねぇ』
    『あーと、夕選手、ストロング・アーム選手に近づいて……握手したー!?』
     実況と解説の説明に、カウガール風コスチュームを身にまとった夕はストロング・アーム側のリングサイドについた。期せずして、二対七+一の変則マッチの始まりだ。
    「あいたたた……プロレスって、厳しいです~」
    「ま、せいぜい派手に行こうぜ!」
     剣が、いの一番にストロング・アームへと駆け込んだ。駆け込む勢いそのままに、鍛え上げた拳でストロング・アームのマスクに包まれた顔面を殴打する。
    『火が吹くような、ナックルアローなのだ!』
    『一応、パンチは反則ですが――うまい!』
     解説が舌を巻いたのは、ストロング・アームの動きだ。よけずかわさず顔面への鋼鉄拳を受けたストロング・アームが剣の右腕を自身の右腕を絡め、軽々と投げ飛ばしたのだ――アームホイップ、単純ではあるが澱みのない素晴らしい投げ技だ。
    「ク、ハハハ!」
     剣が、笑う。白煙舞うマット、今の攻防でもわかる確かな技術、喧嘩大好きな剣のアドレナリンが滾らないはずがない!
    「ストロングスタイルというのも、悪くはないな!」
     ビッグボディがストロング・アームと真正面から組み合う。共に一八五を超える筋肉質な巨漢だ、手四つでリング中央で組み合う姿は絵になった。
    『おーと、パワーではストロング・アーム選手が一枚上か?』
    (「一枚二枚どころじゃないがな!」)
     ミシミシ、と軋む筋肉でビッグボディは、悟る。目の前のアンブレイカブルは、拮抗を作っていた。徐々に追い込まれるビックボディが、ブリッジでして堪えるのに観客が沸く。
     そのブリッジを、ストロング・アームは足を引っ掛け崩した。そこへ、歩が跳び込む!
    「雷光魔術! ライジングウィザード!」
     前かがみになったところを狙った膝が、顎を打ち抜く。手応えはあった、しかし、ストロング・アームはコキリと首を捻るだけで微動だにしない。
    「き、効かないだと!?」
    「いいリアクションだ」
     大袈裟に動揺して見せる歩を、ストロング・アームは無造作に放り投げた。そこへ、ビックボディがタックルをかます。
    「ここぉ!!」
     タックルを受け止めたストロング・アームの胸元へ、蝶胡蘭の左の水平チョップが叩き付けられた。それにグラリとよろめいたストロング・アームが一気にコーナーへと押し切られる。
     ここでストロング・アームは夕へとタッチを求めるが、夕は大袈裟に首を左右に振ってそれを拒否した。
    『おーっと、ここで夕選手、タッチを拒否した!?』
    『まだ、そこまで仲間として気を許していない、という事でしょう』
     ストロング・アームもわかったもので、身振り手振りで夕を批難する。その背中へとストレリチアが組み付いた。
    「隙あり、ですわ!」
     ストロング・アームの巨体が、ストレリチアによって肩車される。バックドロップ、そう呼ばれる技に、くるりがコーナーへと駆け上がりドロップキックを見舞った。
     会場が沸くツープラトン攻撃に、ストロング・アームはマットの上を転がる。その動きでダメージの大きさを観客が把握できる、素晴らしい反応であった……一緒に、後頭部を強打したストレリチアがもだえていたのは、ご愛嬌だ。
    「間近で見ると、大迫力ですねー」
    「これからじゃぞ? 激しいのは」
     剣へと防護符を投げる桃香に、葵は虹色に輝く戦輪をシールドに自身の護りを強化する。そして、我是丸は機銃を構え突貫した。
    『解説さん、あれはどういう技なのだ?』
    『さ、さぁ……?』
     機銃掃射が、ストロング・アームを襲った。


     ドッ! と沸いた観客席では、大きな掛け声が上がる。
     リング中央。そこでは、ビッグボディとストロング・アームの水平チョップ合戦だ。
    「……ッ!」
     肉の厚い胸板をたたかれているのに、体の芯まで衝撃が来る。しかし、ビッグボディは平然とした笑顔を崩さなかった。それに、ストロング・アームはマスクの下で笑う。一発につき二発、三発、とストロング・アームのチョップの回数が増えていき――最後にストロング・アームの手首を掴んだビッグボディが、ロープへと振った。
     そのまま投げようとするビッグボディに、ストロング・アームは口を開いた。
    「美味しいところはもらうぞ?」
     からかうような呟きと同時、ビッグボディをストロング・アームの太い右腕が薙ぎ払った――ラリアットだ。
    『一回転したぁ!?』
    『いやぁ、昭和のラリアットの名手達を思い出しますね。彼等のラリアット、受けた方が空中で一回転してから落ちたもんです』
     めまぐるしく入れ替わる視界。唐突に背中に衝撃を受けたビッグボディは、すぐさま立ち上がる。ストロング・アームはそれに喉を掻っ切るジャスチャーをして襲いかかろうとするが、その後頭部へと何とパイプ椅子が投げつけられた、くるりだ。
     それに、ストロング・アームが頭を振って大袈裟に片膝をつく。これには、観客席からもブーイングである。ストレリチア、ベビー・ウルフはすぐにホワイトキャットを蹴って注意した。
    「卑怯な! 己が身一つで戦いなさいな!」
    「く、お前その乳目障りなんじゃー! ばかー!」
    「ち、乳って……! せ、戦場で気にすることですのそれ!?」
    「うわぁん! お前なんかベビーウルフじゃなくてヘビーウルフだ! 筋肉おっぱいめ!」
    「筋肉おっぱ……!? ど、どんな罵倒語ですのよ! ていうか、別に重さのアピールなんてしてません……わぅー!?」
    『リングの上は遊び場ではないぞ、甘ちゃん達が!』
     言い合う二人が、夕によって同時に薙ぎ払われる。夕のマイクパフォーマンスとその姿に、会場が笑いとブーイングに包まれた。
    「お父さんは普段からのやたら理不尽な力を見せつけてやれー! スニ子ー! その歳で腹筋系女子の脅威を教えてやれ!」
     何か声援でないものが混じった気がするが、それにツッコミをいれる者もいない。ストロング・アームと夕がガッチリと握手するそこへ、葵がロープを足場に高くジャンプ、高角度ドロップキックでストロング・アームと夕を場外まで薙ぎ払った。
    「ラヴパワーダイナミック!」
     そして、リング下まで追いかけた蝶胡蘭は、地元群馬は恋愛の名所のご当地パワーを借りたボディスラムで、薄いマットの上にストロング・アームを叩き付けた。
    (「……最高だねぇ」)
     カウント十五までリングの周囲を回り、周囲にダメージをアピールするストロング・アームに、歩は小さくほくそ笑んだ。周囲を楽しませるための派手な動きや反応も、確かな実力に裏打ちされたものばかりだ。一投一打をこちらが反応できるように、計算して放ってくる。どこで技を繰り出せば観客に一番よく見えるのか? 攻防がリングの反対側で集中すれば、逆方向の観客にも見えるようにロープに振って、サービスする。
     そのどれもが、こちらの猛攻を凌がなくては成立しない事ばかりだ。目の前のアンブレイカブルが、狂える武人であると同時にプロレスラーなのだと心に響いた。
    「いいなぁ、プロレス……!」
     自身の血化粧で彩った剣の言葉に、ストロング・アームは笑って答えた。
    「いいだろう? プロレス!」
     ストロング・アームの大振りな裏拳が、空を切る。その見えた――差し出された背中に剣は、踏み込んだ。
    (「投げるぞ?」)
    (「投げろッ!」)
     言葉にならない意思の疎通があった、そう確かに思えた。剣の渾身のジャーマンスープレックスが、マットの上に虹を描く!
    「お……!」
     見事だ、と呟いたストロング・アームがカウント2で体を崩して立ち上がる。そこへ、我是丸が突っ込んだのをストロング・アームは太い両腕で受け止めた。
    「ヘイ! ストロング・アーム!!」
     夕の仕種に、その意図を察したストロング・アームが我是丸をバックドロップの体勢に持ち上げる。そこへ、トップロープからヘッドシザースを敢行した夕が、ツープラトンで我是丸を豪快にマットへと叩き付けた。
    「よくやった、いい働きだ」
     そう夕に囁くと、ストロング・アームは動けなくなった我是丸ごと夕をマット下へと転がした。その意図を気付いた夕は、小さく賞賛の声を漏らす。
    「……あなたもだ」
     笑いあい、二人の即席タッグは解消された。
    「仇は討たせてもらうのじゃ!」
     起き上がったストロング・アームへ、葵が飛び掛りその肩へと腰を落とす。そこからのフランケンシュタイナーが炸裂した。
     ド! と大技に、観客が盛り上がる。そこへ、ビッグボディが叫ぶ。
    「アレをやるぞ!」
    「ああ、アレだな! ビッグボディ先輩!」
     胸を揺らし、蝶胡蘭が回り込む。そして、二人は前後から襲い掛かった。
    「精々マスクが脱げないように気を付けな!」
     二人が左腕を上げて、同時にストロング・アームへとラリアットを敢行する! ドォ! という衝撃音に、ストロング・アームはふらつく――それを見て、くるりが言い放った。
    「ベビー・ウルフ! 貴様の力を見せてみろ!!」
    「貴女の力が必要ですわ! ホワイトキャット!」
     くるりとストレリチアが、同時にマットを蹴る。華麗に宙を舞う二人の延髄蹴りが、ストロング・アームを左右から襲った。それに、ストロング・アームがまたらずダウンすると、二人がガッと堅い握手をかわす。
    「翼は風を掴み、空を裂いて翔る鳳の腕! 文字通り焼付けな!」
     歩の合図を受けて、桃香が神薙刃で倒れたままのストロング・アームを切り裂いた。その風に、歩の背中に炎の翼がなびく――大きくマットの上空を舞った。
    「フェニックスドライバー!!」
     ダン! とムーンサルトボディプレスが、ストロング・アームの上に落下する。始まるカウント、歩は確かに見た。
    「……いい、試合だった」
     笑ったストロング・アームの、賞賛がそこにはあった。


    「これが! 真の! プロレスだぁああ!!」
    「これが! 真の! プロレスですわぁーー!!」
     くるりとストレリチアの絶叫に、拍手が巻き起こる。試合が終わっても鳴り止まない歓声と、足踏みによる地響きがそこにはあった。
    「またやろう。今度はサシでも負けないっすよ!」
    「ふ、期待しておこう」
     ふらつくように見せて、しっかりと立ち上がったストロング・アームと歩がしっかりと握手をかわす。互いに健闘を称える姿に、観客の歓声が跳ね上がった。
    『ヘイ! ルチャドーラ! いつかは君の華麗な技も見たいもんだ』
    『いつか貴方とも試合がしたい』
     ビッグボディと蝶胡蘭のマイクパフォーマンスに、ケツァールマスクは笑顔で答えない。ただ、満足のいく試合運びだった事はその笑顔で伝わった。
     プロレスラー達は、自らの足でリングを降りていく。最後まで強い勇姿を観客に見せ付ける――そこまでが、プロレスなのだ……。

    作者:波多野志郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年11月27日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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