「敵?」
「あぁ、おそらくはハルファス軍の襲撃だろう」
第一種戦闘配備と放送が同じ言葉を繰り返す中、白衣の青年が二人殲術兵器を抱えて廊下を駆けていた。流石にこの非常時で廊下を走ることに注意する者は居ない。
「っ、一体どこで嗅ぎ付けたって言うのよ」
「援軍は? 援軍は来るの?」
それどころか患者も看護士も大差なく、獲物を手に走り回っていたのだから。
「防護隔壁展開します、各自所定の位置で――」
「ちっ」
院内放送で指示が出される中、舌を鳴らしたのはその指示を出す部屋でモニターを眺めていた男の一人だった。
「日本中の病院が襲撃されてる、とかな。那須殲術病院襲撃から動きが無いと思っていれば、冗談きついわ、これはよ」
「ど、どうしましょう?」
強張った顔で指示を求める女性に、男は肩をすくめると再び口を開いた。
「籠城するしか無いね。まぁ、援軍が無かろうとここは殲術病院、簡単に陥落する程ヤワな造りはしてないだろ?」
ポリポリ頬をかきつつも、殲術兵器を持った男は部屋のドアノブに手をかける。迎撃に向かうのだろう。
「もっとも、高みの見物としゃれ込めるほどの余裕無い、ね。やれやれ……」
口調こそ差し迫った感を見せないものの、部屋を出た男の顔は苦かった。
「ゴメンねェ、これもボクらの為だからさァ」
そんな建物の内側を知ってか知らずか。口の端をつり上げた少年は、大鎌を肩に担いだまま周囲の骸に目をやると肩の重量物を無造作にふるって白い病院の建物を示す。
「ゆけよ、お前らッ! このボクがなり損ない相手にいつもでも時間をかけてる訳にはいかないだろ?」
叱咤する少年はどこにでもいそうなごく普通の少年だった。大人でも扱うのに苦労しそうなポールウェポンを軽々と扱っている点と顔の四分の一ほどが水晶になっている事を除けばの話だったが。
「お゛ぉぉぉぉ」
少年いや、ノーライフキングの指示にアンデッドの群れは動きだし、数分後戦端は開かれた。
「ハルファス、セイメイ、スキュラと複数のダークネス組織が武蔵坂学園とは別の灼滅者組織である『病院』の襲撃を目論んでいるらしい」
集まった灼滅者達を前に座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)はクリアファイルから一枚の地図を取り出して磁石で黒板へ貼り付けた。
「いずれも武蔵坂とも因縁のある相手、これだけでも放置する訳にはいかないが」
襲撃された病院は、窮地に陥っているという。
「『病院』は殲術病院という拠点を全国に持っており、拠点防御力は高い。よって、どこかが襲撃されても籠城しつつ他の病院から援軍を送って撃退すると言うことが出来た」
そも、病院はそう言った戦い方を得意としていたらしいが、殆どの拠点が同時に襲撃されると話は変わってくる。
「三勢力による同時襲撃によって殲術病院は互いに援軍を出すことが出来ず孤立無援の状態に陥っている」
このままでは病院勢力が壊滅してしまいかねない。
「故に同じ灼滅者として、救援に赴いて欲しい」
依頼しつつも直接触れない黒板の地図は説明用のものだったのだろう。
「君達に向かって貰いたい殲術病院はこの地図上、やや北西にあるそこだ。そして」
君達が首を縦に振るなり黒板まで歩み寄ったはるひは、説明を始めながらいくつかの赤いマグネットを地図の上に置き始める。
「この拠点を攻めているのが、ノーライフキング一体に率いられたアンデッドの群れ。群れの総数はだいたい四十前後、マグネット一つを十体と見てくれればいい」
実際はるひの置いたマグネットは赤が四つに黒が一つ。
「殲術病院は、殲術隔壁を閉鎖して籠城しているが、既にいくつかの障壁が破損し、そこは白兵戦に突入している。このままでは長くもたないだろう」
かといって敵の数を考えると君達だけで何とかなる数ではない。
「故にまずは指揮官であるダークネスを倒す必要がある」
部下のアンデッド達が殲術病院へ攻めかかっている隙をつけば、ノーライフキングと接触するのは難しくない、とはるひは語る。
「ノーライフキングとは言ったが、決して勝てない相手ではない。実力から察するに、最近闇堕ちしたばかりと見る」
もっとも、だからといってなめてかかれる相手でもないのだが。
「指揮官さえ倒せれば、病院の灼滅者達も籠城をやめて打って出てくる」
駆けつけたのは、他の病院の援軍ではなく君達だが、外の味方と協力して敵を撃退するのが彼らのやり方なのだから。
「後は彼らに協力して戦えばいい」
それでアンデッド達は壊滅させられるだろう。
「もっとも、指揮官の撃破に失敗してしまえば話は異なる」
もし、アンデッドの中にでも逃げ込まれようものなら手出しも難しくなる。
「数の優位が覆れば、指揮官を討つ術はほぼ無い。最悪、撤退もやむを得ないだろう」
ノーライフキングから最寄りのアンデッドは殲術病院を正面から攻めている二十体。数が多いこともあって、障壁を破壊し、既に白兵戦に移っているが、だからこそ急な命令変更にはもたつく可能性がある。
「病院側の健闘次第だが、戦いが長引いて増援が来るとしても一度に三体を超える事はないだろう」
ただし、左右を攻めているアンデッドは別だ。
「戦い始めて十五分、それがリミットになる」
十五分後の増援は、一度に二十体近い数になるだろうとはるひは告げる。
「だが、指揮官を倒すことが出来れば病院側からの加勢が見込める」
ギリギリまで粘るのも手ではあるが、リスクは大きい。
「尚、指揮官のノーライフキングはエクソシストのサイキックと咎人の大鎌のサイキックに似た攻撃手段をもつ」
アンデッド達は主に爪での引っ掻きや噛み付きなどで毒を与える近接攻撃で応戦してくると言う。
「とはいえ最初は護衛も居ない。殲術病院を攻める為に自分以外の全戦力を回したのが仇になったようだな」
一つだけ色の違う黒のマグネットは病院から見ると後方に位置し、更に後方には木々がまばらに生えているとのこと。
「その木々に隠れて近寄れば、奇襲も可能だ」
奇襲の勢いのまま一気に倒すことが出来れば、きっと。
「時間的な猶予もなく危険な任務になると思う。そんなことを依頼せねばならないのは心苦しくはあるが」
宜しく頼む、とはるひは頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176) |
東雲・由宇(脳筋シスター・d01218) |
茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930) |
祀火・大輔(迦具土神・d02337) |
九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795) |
高村・葵(ソニックソードダンサー・d04105) |
三条院・榛(兎角毒もない花の毒に当てられ・d14583) |
泉夜・星嘉(星降り・d17860) |
●急襲
「さて、病院を守るために、ひとつ頑張ることにしましょう」
まばらに生えた木の一つに隠れた茅薙・優衣(宵闇の鬼姫・d01930)の視線に、泉夜・星嘉(星降り・d17860)は頷いた。
「同じ灼滅者だ、このまま見過ごす訳にはいかないだろう」
なんとしても助けないとだな、とこれが奇襲でなければ口に出していたかも知れない。なるべく音を立てないよう気を配るが故に、語るのは口ではなく瞳。
(「武蔵坂以外の灼滅者組織の一つ『病院』か、話には聞いていたが――」)
丘の上に立つ白の建物を視界に入れれば、玄関口の辺りで何かが動いているのが見て取れたのは祀火・大輔(迦具土神・d02337)だけではないだろう。
(「感動の対面というには少々無粋な襲撃者共が居るようだし、それはもう少し後になりそうだな」)
そもそも、病院と灼滅者達の間には襲撃の指揮を執っているダークネスが居るのだ。
(「対屍王戦……久しぶりね」)
仲間達同様声にこそ出さないものの、東雲・由宇(脳筋シスター・d01218)はこちらに背を向けた少年の背中を見つめたまま殲術道具の柄を握りしめる。
(「貴方達ダークネスを灼滅する為に私はこの道を選んだ……全て倒す、我が主の名に誓って」)
声に出そうが出すまいが、誓いは誓い。
(「ほな、行くで」)
行動開始を申告する三条院・榛(兎角毒もない花の毒に当てられ・d14583)の仕草で、宣言を実行にすべく動き出した足がダークネスと由宇との距離を縮めだし。
(「三勢力で全国一斉襲撃とか奴さん方マジやる気! 『殲術病院』にはそれだけの価値があるってことか」)
蛇に姿を変え、榛の腕を登りながら九牙羅・獅央(誓いの左腕・d03795)は考える。
(「堕ちたてを使ってるあたりは人手不足?」)
灼滅者達さえ来ていなければ丘の上の病院は現在の敵戦力で充分落ちていた筈なのだ。推測が的中しているかは、先方に語る気がなければ謎のままだろうが、確認をするよりも今はせねばならないことがある。
(「こちらが仕掛ければ、その分あちらが楽になりますよね」)
仲間達の後ろで高村・葵(ソニックソードダンサー・d04105)はスレイヤーカードの感触を確かめながら襲撃を受けている殲術病院を一瞥すると、カードを掲げた。
「いきますっ!」
「な……ぐぁっ?!」
叫び声に驚愕を顔へ貼り付けた少年が振り返り、龍海・柊夜(牙ヲ折ル者・d01176)の影に斬られて仰け反る。
「うぐ、なん」
「何ややて?」
ざっくり裂けた衣服ごと傷を押さえて呻いたノーライフキングは言葉を最後まで発せない。無敵斬艦刀の刀身がもはや回避もままならない所まで迫っていたのだから。
「がぁっ」
「なぁに、ただの戦艦斬りや。……ただな」
発しかけた言葉を推測で補って答えながら顔の一部を水晶化させた少年の脇を通り抜けると、榛は振り返って言葉を続けた。
「戦艦斬りは一度で終いやないで?」
「な……ぐッ?」
声に気をとられた直後、屍王の身体に一撃を見舞ったのは、優衣の手にした殲術道具で。
「シェリー」
ライドキャリバーを突撃させながら葵が振り上げた殲術道具も分類場は同じ、ただ繰り出す一撃は別物だった。
「やぁっ」
「っ、この程」
叩き付けた無敵斬艦刀から宿していた炎が身体へ燃え移り、水晶になっていない側の顔を苦痛に歪めた屍王はライドキャリバーに跳ね飛ばされて宙に放り出される。
「ぁぁあっ」
「待ってたわよ」
短い浮遊の末、重力に引かれて墜ちる先は襲撃からの安全地帯ではなく、由宇の影が姿を変えた触手の群生地。
「く、放せ、放せよォ! くそっ、なんだ、何でなり損ないがこん」
「なり損ない相手に此処まで接近を許すか、お前も所詮半端者だな。その慢心が命取りになる」
とらわれの身となってもがく少年を大輔は視界に収め、巨大化させた片腕で殴りつけた。
「武蔵坂学園、これより武力介入及び『病院』の救援を開始する」
奇襲であるが故に、先んじて宣言することが能わなかった台詞と共に。
●未熟さ
「ッざけんなよ、畜生ッ!」
灼滅者達の奇襲をモロに受け、悪態をつきながらも即座に跳ね起きて見せたのは、流石ダークネスといったところか。だが、屍王の少年は気づいていなかった。
「それ死神の真似? 素人さんは形から入るからねー」
「な」
榛が飛び出した瞬間、蛇のマフラーから人の姿に戻った獅央が死角に回り込んでいたことを。
「うわぁっ」
足を払う様に腱を斬りつけられた少年は派手にすっ転んだ。
(「上手くいってるな。はやぶさ」)
木陰から様子を見ていた星嘉と霊犬のはやぶさが飛び出してきたのは、まさにその直後。
「ゆくぞ」
上半身を起こしただけの屍王目掛けて、振りかぶっていた縛霊手をはめた腕で殴打を繰り出し。
「がうっ」
挟みうつ形で斬魔刀をくわえたはやぶさが襲いかかる。
「うっ」
双方を避ける術など無かった。せいぜいがどちらかに当たることでもう一方をかわす事ぐらい。
「がっ」
インパクトの瞬間に放出した網状の霊力に絡み取られつつ殴り飛ばされた少年は地面で跳ね。
「何だってんだ、何だって言うんだよ」
地面に手を叩き付けた反動を利用して即座に起きあがる。
「お前ら戻れよ! コイツらを迎え撃て!」
身を守るように大鎌を構えての叫びは、屍王を味方と分断する形で布陣した灼滅者達の向こう、病院を攻めるアンデッドに向けたものだろう。
「はッ、好き勝手やってくれたけどな……これで暫く耐えればボクのターンだ」
「死者を手駒にする……最低の冒涜行為ね」
凶悪な笑みを作る屍王を由宇は軽蔑の目で見ながらTonitrusを握りしめ、地面を蹴る。
「何言ってんだ、ああ使うモンだろ、あれはぁッ!」
マテリアルロッドと大鎌がぶつかって火花が散り。
「動作が少し大きすぎますね」
「なん」
殴打を打ち払って出来た隙をつく形で仕掛けた優衣の鬼神斬艦刀が、少年の脳天に振り下ろされた。
「うぐっあああっ……くぅぅっ、ケドなアイツらさえ来れば」
「守りを固めて救援待ちですか? 私たちのことを成り損ないなどと言う割には臆病なことで」
空いた方の手で水晶化した顔の一部を押さえながらたたらを踏む屍王の死角に回り込み、あざ笑ったのは柊夜で、手にしたクルセイドソードの切っ先は寸分違わず少年の急所を狙い繰り出されている。
「っああぁぁ!」
「ゆくぞっ」
叫びながら身体を捻り回避行動へ移った屍王が傾ぐ視界に見つけたのは、足を狙うかの様に身体を低くし飛び出してくる星嘉の姿。
「舐めンなぁっ」
無理な体勢から大鎌を地面に叩き付け、反動で別方向へ身体を流した身体能力は、推定闇堕ちしたばかりとはいえ屍王と言うことか。
「甘い、ぞっ」
ただ、拳にオーラを宿して繰り出す星嘉の殴打は単発ではないのだ。まして、少年を狙うのも星嘉だけではない。
「はやぶさ」
奇襲で反撃もままならず身を守る戦い方に切り替えた屍王からの反撃はまだ無く、回復の必要が皆無だったからこそ。
「がっ」
「がうっ」
二度目の挟みうちはまず星嘉の拳が少年の身体に触れて、踊らされる屍王の二の腕を斬魔刀が切り裂き。
「今のお前は力を得て確かに強くなったんだろう、だが中身はそこらの子供と同じだな」
言い放ってニーズヘッグを手に大輔が間合いを詰めて、刃を非物質化させる。
「新しい玩具で遊ぶ事に夢中で、他の事に目がいかないからこういう事態になる」
「ぐっ」
透過した一撃は霊魂と霊的防護だけを傷つけた。いや、言葉を含めれば少年のプライドをもか。
「合流もさせん、生きても帰さん。お痛が過ぎたな、覚悟しろよ」
「なり損ないがぁぁっ!」
引き抜いた殲術道具を突きつける大輔を睨みながら激昂した屍王は大鎌を振り上げた。
●挟撃
「シェリー!」
「ちぃッ」
車体を滑り込ませたライドキャリバーの側面を切り裂いた斬撃は勢い余って地面にまで突き刺さり、狙いとは違うものを斬った屍王は舌打ちすると大鎌を引き抜いて飛ずさる。
「大丈夫? 今、直すから」
「逃がさへんでっ」
エンジンを吹かして自己修復しようとするシェリーに駆け寄った葵がオーラを癒しの力に変えながら注ぎ込む横を駆け抜けたのは、榛。
「この程度ッ、それはさっき見たんだよッ」
非物質化した斬艦刀・影打による刺突をサイドステップで屍王は回避し、他の灼滅者達に向き直って。
「守りたい仲間もいないのに防衛か……かわいそ……」
「っ、さっきからゴチャゴチャとォ」
自分を狙って繰り出された獅央のチェーンソー剣へ大鎌を叩き付ける。
「数に押され籠城、病院と同じ戦術と言う事はお前さんも押し切られ負けるわけやな?」
「ハッ、あっちのなり損ないと一緒にすんなッ!」
守りに重きを置いた戦い方をする狙いも灼滅者達にはわかっていた。だからこそ、榛達は挑発を繰り返すが、屍王の少年は苛立たしげに叫び返しつつも守りを完全に放棄するには至らない。
「うぐっ」
だが、激情に駆られて反撃に出たのは失策だったかも知れない。顔をしかめて屍王が押さえた顔には縦に走った小さくない亀裂。水晶化した場所に負ったそれを含め少年は既にいくつも傷を負っている。ただ、勝つことだけを重視するなら己の傷を癒しつつ防御に専念した方が賢いことに気づいていないのだ。
「どうした、さっきの大口は?」
「く、このッ!」
増える傷と倒せぬ灼滅者に焦りを覚えつつ迫り来る星嘉の縛霊手を大鎌で受け止め。
「こちらに脇を見せるとは、随分な余裕ですね」
「な」
生じた隙を狙っていたかのように白光を放つ強烈な斬撃が襲いかかる。
「ぐあああッ、この……この程度ぉ、ボクは屍王なんだ、なり損ない如きにぃっ」
増えた傷の痛みに顔を歪めながらも、追い打ちをかけようとする灼滅者達を牽制するように少年は大鎌で周囲を薙ぐ。
「どうだか、なっ!」
「はぁッ! 負けるはずが無いんだよッ! このボクがぁ」
力任せに大輔の雷閃篭手を打ち払いながら吼える声も灼滅者達に押されている今は、虚勢にしか見えなかった。
「自分が強くなったと勘違いしてるのね」
呟いた優衣は鬼神斬艦刀を一振りすると、前方へ飛んで。
「強くなったぁ? 違うんだよッ、ボクはぁッ」
「その狂気は慢心です。故に――」
大鎌を振りかぶった屍王と優衣が交差して、獲物同士のぶつかり合った瞬間に火花が咲く。
「故にあなたはまだ人間だということです」
「はッ、なにを言」
二者の立ち位置は入れ替わり少年は優衣の方を振り返ろうとし。
「ぐがっ」
「少なくとも言葉で気を散らされる程度に未熟なのは確かね」
肉薄していた由宇へTonitrusで殴り倒される。
「あーあ、ボコボコにされちゃって。セイメイに唆されたクチ?」
襲撃に参加している屍王という時点で所属は明らかなのだが、敢えて獅央は問うと、更に言葉を続けた。
「敵対なんかせずに可愛い子の味方になればいいのに」
「っ、ふざけん」
歪めかけた顔は獅央の言を挑発の一部ととったのだろう。ただ、少年の怒声は最後まで出ることなく途切れる。
「九牙羅さん、後ろから」
「こっち美人さん多くて羨ま……え?」
獅央がそれに気づいたのは、屍王より遅く葵の声に振り返ってから。
「お゛ぉぉぉぉ」
「うきゃー!? ゾンビはくんな!!」
「遅いんだよ、お前等ッ! コイツらを挟み撃ちにするぞ」
灼滅者達からすれば厄介な敵の増援、屍王からすれば待ち望んだ僕の登場だった。
●驕り
「うぼぁぁ」
「それなりに厄介ですね」
揺らぎ始めた優位の中、除霊結界 の影響で動きを止めたアンデッドを斬り捨てて柊夜は嘆息した。
「一体二体倒したぐらいでいい気になるなよ?」
満身創痍であるにもかかわらず屍王が自分の勝利を疑っても居ないのは、灼滅者達の後方に現れたアンデッドが攻撃を始めたからだろう。
「まぁ、確かに少々難しくはあるわな。やけど」
飛びかかってきた生ける屍を蛟拐ではたき落としながら榛は斬艦刀・影打を構え、地を蹴った。
「いくつか、忘れとるで? なぁ……獅央はん」
アンデッド達に背を向けた榛に後方の光景は見えない、ただ。
「ごあぁぁぁっ」
爆音とアンデッドの悲鳴が聞こえ。
「って、うにょぉぉぉ、やっぱり倒し切れてねーっ!!」
「はッ、たかだか範囲攻撃の一つや二つであいつ等が一掃出来るかよ」
獅央の禁呪に損傷を受けつつも、再び灼滅者に襲いかかる骸達の姿に屍王は口の端をつり上げた。そう、このまま時間が経てば立つほどこの場にやってくるアンデッドは増え形勢は完全に逆転するのだ、屍王の少年が健在ならば。
「でも、その手駒を使っても勝てないってのが貴方の力量。精々其処で粋がってれば? 喋れる内にね」
「この状況下でボクに勝てるとでも思ってんの? このボ」
そう、健在ならば。由宇の挑発に嘲弄で答えようとした屍王は、榛の手にした斬艦刀に大鎌を引っかけ、弾き散らそうとしたところで榛に頭を掴まれる。
「な、なぁッ?! がっ」
持ち上げて、叩き付けられた場所はヒビが入った顔の水晶部分。
「お前の敗因は……実戦経験が足らんかったな」
顔を砕かれ崩れ落ちた屍王はもう、動かなかった。
「後は、こっちを何とかするだけですね。シェリー」
葵が仲間の盾になっていたライドキャリバーの名を呼び。
「はやぶさ、そろそろゆくぞ」
星嘉もほぼ味方の回復に当たっていた霊犬に声をかけると指揮官の灼滅によって闇雲に攻撃しだしたアンデッドを見つめて魔導書を開く。
「わうっ」
「お゛ぉおぼっ」
禁呪によって起こる爆発の中、一声鳴いて応じたはやぶさの六文銭に撃ち抜かれ倒れた生ける屍が倒れ伏し。
「うぼぉぉぉ」
「え?」
隣にまだかろうじて立っていたアンデッドも何故か悲鳴を上げて崩れ落ちる。
「えーと、ありがとうございました。おかげさまで……そのー」
少し遅れて離れた場所から声をかけてきたのは、ガトリングガンを構えた看護師の女性。
「いえ、とりあえずは現場の判断ということで難しいことは抜きにして協力を」
「そ、そうですね」
柊夜の声に頷きを返した女性の向こうには飛びかかってきたアンデッドを投げ飛ばす白衣の男性が居て。
「おい、鈴木さん。話してないで援護を」
「す、すみません」
まだ、取り込み中ではある様だが灼滅者達が屍王を討ったことで病院の灼滅者が打って出てきたのは明らかだった。
(「さっさと終わらせて説明しないとな」)
まだ敵は残っているが、屍王も倒れ残るアンデッドも徐々に討ち減らされている。
「問題は、あれですが」
大輔は異形化した片腕で手負いの生ける屍を叩きつぶしながら一塊でこちらにやってくる敵の集団へ目を留めた。
「これなら、やれそうですね」
屍王が健在なら逃げるしかなかった数の敵だが、もはや烏合の衆にすぎない。病院の灼滅者の協力を得て戦いが終わったのは十分後のこと。むろん、灼滅者達の勝利でだった。
作者:聖山葵 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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