殲術病院の危機~迫るはプーレ大サーカス

    作者:J九郎

     そこは一見、どこにでもある普通の病院に見えた。
     だが今、病院の中を慌ただしく駆け回るのは、ガトリングガンを構えた白衣の男にマテリアルロッドを持ったナース服の女性、右腕が大きく膨れあがった入院患者など、どう見ても普通の病院関係者には見えない。
    「ハルファス軍の襲撃だと!? 警戒網はどうなっていたんだ!」
    「うろたえるんじゃあない! 我ら殲術病院はうろたえないっ!」
    「第1、第2隔壁閉鎖せよ! とにかく援軍が来るまで耐えきるんだ!」
     だが、ほどなくして彼らを絶望に突き落とす情報が入ってくる。
    「Dエリア、Fエリアの病院から通信! 『当病院に襲撃あり援軍を求む』……これは、近隣の病院、いえ、日本全国の病院が襲われているようです!」
    「なん……だと……」
    「落ち着け! 素数を数えるんだ! なに、病院の防衛能力は完璧だ。あのようなふざけた連中に突破されることなどありえんよ」
     恰幅の良い医師が断言する。彼が見つめるモニターに映るのは、道化師の格好をした、まるでサーカス団のような一団の姿だった。
    「あれが噂のソロモンの悪魔、プーレ大サーカスか……」
     医師がそう呟いたとき、いきなりモニターいっぱいにピエロの顔が映りこんだかと思うと、そのピエロの顔が突然爆発し、画面がブラックアウトした。
    「……ふざけた真似を」
     警戒システムを一つ潰された医師は、憮然とした顔で舌打ちした。
     
    「嗚呼、サイキックアブソーバーの声が聞こえる……。複数のダークネス組織が、私達とは別の灼滅者組織である『病院』の襲撃を目論んでいると」
     神堂・妖(中学生エクスブレイン・dn0137)の言葉に、集まった灼滅者達がざわめく。これまで接触の機会がほとんどなかった病院に、いきなり危機が迫っていると言われれば戸惑うのも当然だろう。
    「……病院を狙っているのはソロモンの悪魔・ハルファス、白の王セイメイ、そして淫魔スキュラの各軍勢。どこも、私達とも因縁のある相手。放ってはおけない」
     病院勢力は、殲術病院という拠点を全国に持っており、どこかの殲術病院が襲撃されても、籠城している間に他の病院から援軍を送って撃退するという戦いを得意としていたらしい。
    「……だけど今回は全国の病院が一斉に襲撃される。だから互いに援軍を出せずに孤立してしまってる。……このままでは、病院が壊滅してしまうかもしれない。同じ灼滅者組織として、なんとか病院を救いたい」
     それから妖は、地図を取り出して一点を指し示した。
    「……みんなに救援に行ってもらいたいのは、山間の地方都市にある病院。既に幾つかの殲術隔壁が破られ、白兵戦になってるところもあるから、多分長くは持たない」
     この事態を打開するには、殲術病院との戦闘の隙をついて、司令官であるダークネスを撃破するしかない。
    「……攻め寄せているのは、プーレと呼ばれるソロモンの悪魔。彼は、プーレ大サーカスと呼ばれる強化一般人を50人ほど引き連れてる。まともに戦ったら勝ち目はないけど、プーレ自身は病院に入らず、外から高見の見物を決め込んでいるから、そこを奇襲すれば、プーレとせいぜい2~3体の眷属を相手にするだけですむはず」
     プーレさえ倒してしまえば、外に出てきた病院の灼滅者達と協力して、残る眷属を撃破する事が出来るだろう。
     逆にプーレを倒すのに失敗し、眷属の中に逃げ込まれると手出しが難しくなるので、その状況になれば、撤退もやむをえないかもしれない。
    「プーレと眷属は全員ピエロみたいな格好してるけど、トリッキーな攻撃をしてくるみたいだから、見た目に惑わされないで」
     それから妖は、真剣な顔を灼滅者達に向けた。
    「……既に、幾つかの病院は陥落してしまってるみたい。……危険な任務だけど、これ以上病院の被害を増やさないよう、お願い、ソロモンの悪魔を食い止めて」


    参加者
    如月・縁樹(花笑み・d00354)
    古海・真琴(占術魔少女・d00740)
    天方・矜人(疾走する魂・d01499)
    有栖川・へる(歪みの国のアリス・d02923)
    リタ・エルシャラーナ(タンピン・d09755)
    雨海・柚月(迷走ヒーロー・d13271)
    船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)

    ■リプレイ

    ●プーレを探せ!
     山の麓にある殲術病院を見下ろせる高台で、船勝宮・亜綾(天然おとぼけミサイル娘・d19718)は望遠鏡を覗き込んでいた。すでに入手した病院周辺の地図で、プーレが病院の外から指揮を取れそうな位置を何箇所か割り出してある。ほどなく亜綾は、プーレとその取り巻きらしきピエロ達が、病院の駐車場にいるのを発見した。
    「高みの見物とはいい御身分ですねぇ。その舞台から引きずり落として見せますですぅ」
     亜綾は素早く携帯で、仲間達に連絡を取ったのだった。
     
    「相手が駐車場にいるとすると、奇襲するならこのルートだな」
     事前に周囲の地形を把握していた天方・矜人(疾走する魂・d01499)が、エクスブレインの予知とも合わせ、最適な奇襲ルートを導き出した。
    「では、全員が配置につき次第、一斉に奇襲でござるな」
     矜人の話を聞いていた雨海・柚月(迷走ヒーロー・d13271)が確認する。
    「それじゃあ、私と柚月さんは、先行してプーレを見張っておきます」
     古海・真琴(占術魔少女・d00740)は矜人に一礼をすると、ESPを使って猫に姿を変えた。慌てて柚月も、同じく猫に姿を変え。2匹の猫は山に茂る木々を縫うようにして駆けだしていった。
     
    「病院はまだ落ちないのですか? ワタクシ、そろそろ退屈してきましたよ」
    「ハルファスもつまらない仕事を押しつけてくれちゃうヨネ。薄暗い病院など、ボク達のショーの舞台としてはふさわしくないヨネ」
    「ケラケラケラ」
     病院の駐車場には、3人のピエロが陣取っていた。雪だるまから手足が生えたかのような丸々と太ったピエロ、手足が異常に細長い長身のピエロ、子供のような小柄のピエロの3人だ。
    (さて、3人のうちどれがプーレだろうね)
     駐車場に駐められた自動車の影に潜んでいたリタ・エルシャラーナ(タンピン・d09755)は、3人の様子をじっと観察していた。プーレも眷属も同じようにピエロの格好をしているので、一見しただけではどれがプーレなのか判別がつかないのだ。
    「ねえ、プーレさん。ボク達もそろそろ中に遊びに行きマショー?」
    (!)
     長身痩躯のピエロが、太ったピエロをプーレと呼んだ。確定だ。
     リタは別の車の影に隠れている亜綾に頷いてみせる。亜綾は頷き返すと、おもむろに傍らで待機していた霊犬の”団長代行猫”烈光さんをむんずと掴んで立ち上がった。
    「みなさーん、始めますよぉ! 名づけてぇ、烈光さん鏑矢ミサイルなのですぅ!」
     そして、烈光さんを思いっきりプーレ目掛けて投げつける。烈光さんが「またかよっ」と言いたげな顔をしている気がするが、亜綾は気にしない。
    「おおうっ!?」
     烈光さんは太ったピエロの腹に突き刺さり……まるで風船に突っ込んだかのように思いっきり弾かれた。プーレと2人のピエロが慌てたようにオーバーアクションで周囲を見回す。
    「はじめまして、ミスター・プーレ。ボクは有栖川へる。親しみを込めてアリスと呼んでいい」
     奇襲に態勢の整わないプーレに、有栖川・へる(歪みの国のアリス・d02923)は姿を現しざまに先制攻撃とばかり制約の弾丸をお見舞いした。
     さらに、
    「これ以上の非道、見過ごすわけにはいきません」
     飛び込んできたヴォルフガング・シュナイザー(Ewigkeit・d02890)が、トランプを構える長身のピエロをギターで殴りつけていた。残る小柄なピエロには、ヴォルフガングの相棒であるシュヴールが向かっていく。
    「さぁ、縁樹と一緒に遊びましょ!」
     如月・縁樹(花笑み・d00354)が解除コードを唱えつつ、踊りながら3人のピエロの間に飛び込んだ。縁樹は踊りつつ、実体化した依木の杖をピエロ達に叩きつけていく。
    「おやまあ。他の病院からの増援ですかねえ? まったく、どこのどなたですか。討ち漏らしちゃった無能君なのは」
     制約の弾丸と依木の杖の攻撃を受けながらも、プーレは平然としたまま、わざとらしく肩をすくめてみせる。
    「でもあなたたち、分かっておりませんね。自分たちが飛んで火に入る夏の虫だという事に!」
     言うやプーレは丸い腹が更に膨らむほど思いっきり息を吸い込み、
    「新手だよー、全員しゅーごーっ!」
     大気が震えるほどの大音声で、叫んだ。現在病院へ攻め込んでいる配下の強化一般人を呼んだのだ。
     だが、しばらく待ってもなんの反応もない。
    「……あれぇ?」
     プーレが首を傾げる。プーレには知り得ないことだが、すでにへる・ヴォルフガング・縁樹の3人が、サウンドシャッターで駐車場内の音が外部に漏れないように遮断していたのだ。
    「うーん、まあいいでしょう。どうせ暇でしたし、せっかくですからあなたたちに、プーレ大サーカスの最高のショーをお魅せしましょう!」
     プーレが宣言し、それが開戦の合図となった。
     
    ●プーレ大サーカス、ショータイム!
    「さあさあ皆様お立ち会い、プーレ大サーカスのショータイムです!」
     どこからともなくお手玉を取り出したプーレが、巧みにジャグリングを始めながら宣言する。
    「お前達のショータイム? 違うな。これからは、オレ達のヒーロータイムだ!」
     矜人はプーレに対抗するように、マテリアルロッドをジャグリングのように回して挑発してみせると、そのままプーレを守るように前に出た長身のピエロに突っ込んでいった。
    「ショーにお客様が飛び込んでくるのは非常識ダヨネ!」
     長身のピエロはトランプを飛ばして矜人を阻止しようとするが、回転するマテリアルロッドにトランプのことごとくを弾かれてしまう。
    「いくぜ、スカル・ブランディング!」
     回転するマテリアルロッドを叩きつけられ、長身のピエロが思わず膝をつく。
    「観客を楽しませるのがサーカスです。こんなサーカス、縁樹は絶対認めないのですよ!」
     すかさず縁樹が、連続して拳を長身のピエロに叩きつけた。
    「ケラケラケラ!」
     一方、小柄なピエロは懐から10本のナイフを取り出すと、そのナイフを次々と投げ始めた。
    「つっ……。これは、毒を塗ってあるのですか」
     避けきれずに二の腕に刺さったナイフを抜きながら、ヴォルフガングが顔をしかめる。
     と、その時。小柄なピエロに2匹の猫が飛びかかった……と見るや、猫はたちまち人の形に姿を変え、
    「何が目的で病院を襲撃してるかは判らぬでござるが、そこに助けられる命があるのなら、助けたいでござる!」
     猫変身を解除した柚月のクルセイドソードが、小柄なピエロの肩を切り裂く。そして、
    「殲滅者は私たちだけじゃ無かった……。それじゃますます見殺しにする理由はありませんね!」
     同じく猫変身を解除した真琴は、柚月の攻撃でひるんだピエロの額に、導眠符を貼り付け睡眠状態に陥れた。
    「さあさあ皆様、我がジャグリングの技の冴え、とくとご覧じろ」
     と、戦場にプーレの甲高い声が響き渡った。見ればいつの間にかプーレのお手玉が、球体に導火線の付いた、いかにもな爆弾に変化している。
    「奇しくも、ボクと似た戦術の使い手か。でもね、プーレ。キミはボクには勝てない。ボクはヒロイン、キミは道化。文字通り、役者が違うのさ」
     プーレに対抗するかのようにナイフでジャグリングを開始したへるが、そのうち何本かのナイフをプーレ目掛けて投じた。
    「おっとっと!」
     プーレは派手に飛び上がってその攻撃を回避する。だが、避けることに気を取られすぎたのか、ジャグリングに使っていた爆弾を取り落としてしまい……、
    「あ」
     ドカーンという大音響と共に、破裂した爆弾は紙吹雪を撒き散らした。その紙吹雪は宙に舞い上がると鳩に姿を変え、後方で眠たげに見守っていた亜綾の肩に止まった。
    「ウププ、ビックリしました? でも、ホントーに驚くのはこれからです」
     プーレが指をパチンと鳴らすと、亜綾の肩に止まっていた鳩が、大爆発を起こす。
    「きゃあ~!? なんですかこれぇ?」
     至近距離からの爆発に傷だらけになりながら、亜綾が目を白黒させる。
    「まずは回復役を潰すのが、我がプーレ大サーカスの基本演目なのヨネ」
     長身のピエロが、続けて亜綾目掛けてトランプを投げつける。だがそのトランプは、亜綾の前に素早く回り込んだビハインド“高崎”によって防がれた。額にトランプが突き刺さった高崎は、なぜか胸を押さえてうずくまる。
    「なんでやねん」
     高崎の相方であるリタが、マイク型のハンマーで全力のツッコミを入れる……と見せかけて、ハンマーで思いっきり地面を叩いた。たちまち発生した震動が、長身と小柄の、二人のピエロを襲う。
    「君達がサーカス団を気取るなら、こっちも芸で対抗するっきゃないね。漫才の掛け合いのような戦いと芸人魂を見せてあげるよ」
     それは、まさに芸と芸のぶつかり合いだった。
     
    ●プーレを逃がすな!
    「私はこの学園に来る前に対ヴァンパイア組織を指揮しておりました。ですが自らの弱さの為に護るべき者達を全て失い、肝心の私は生き残った。仲間を殺した相手に対し、体液の全てを垂れ流しながら生を懇願した忌まわしき昔……」
     影に飲み込まれた小柄なピエロに、ヴォルフガングは淡々と自らの過去を語る。
    「二度と……絶対に同じ過ちは繰り返さない。この手に掴める希望を二度と己の身可愛さで見捨てません」
     ヴォルフガングがそう宣言すると同時に、小柄なピエロを包み込んでいた影が消えた。
    「ガクガクブルブル……」
     影の中でヴォルフガングの過去を追体験させられた小柄なピエロは、そのまま白目を剥いて倒れ伏した。
    「も~う! うっとおしいのヨネ!」
     始めは回復役である亜綾を集中して狙っていた長身のピエロだったが、前衛からの集中砲火を浴び、それどころではなくなっていた。
     そして、
    「これでとどめでござる!!」
    「指し示せ! 真琴の誠!!」
     同時に放たれた、柚月のビームと真琴の斬撃の前に、とうとう長身のピエロも戦闘不能に陥ったのだった。
    「あれれ~? これはもしかして、ワタクシ大ピンチな展開?」
     プーレがおどけた口調とは裏腹な油断のないまなざしで周囲を見回す。病院へ駆け込めば中にいる眷属達と合流できるのだが……。
    「容易く逃げれると思わないで欲しいでござる」
     柚月の言うように、灼滅者達は病院を背にする形で展開していた。
    「逃げたきゃオレ達の屍を超えていけ、ってヤツさ、ピエロマン。サーカス名乗るなら精々オレ達を楽しませてくれよ?」
     矜人がプーレを挑発する。プーレはしばらく周囲を見回した後で、大きく溜め息をつく。
    「仕方ありませんねえ。こーなれば!」
     言うやプーレはポケットから風船を取り出し、力一杯膨らませた。たちまち直径1メートルはあろうかという球体に膨らんだ風船の口を慣れた手つきで縛ると、プーレは風船を地面に転がし、その上に飛び乗る。
    「さあ、このプーレの十八番、華麗な玉乗り芸をご覧じろ!」
     次の瞬間、風船が猛烈な勢いで転がり始めた。
    「強行突破する気ですか! 絶対通さないのですよ!」
     縁樹が素早くプーレの前に立ちはだかり、ヴォルフガングと霊犬・シュヴールがそれに並ぶ。だがプーレは、無人の野を行くがごとく突進してくる。
    「ウププ、今のワタクシは誰にも止められないのです!」
     速度と質量の乗った強烈な突進で強引に包囲網を突破するプーレ。
    「病院はヒロイックに守らせてもらう。ヒロインだけにね」
     そんなプーレを逃すまいと、へるが制約の弾丸でプーレを狙い撃つ。さらに、
    「観客を置き去りにするなんて芸人にあるまじき行為だね。……行くぞ、相方!」
     高速で走り去ろうとするプーレに対し、リタがダブルジャンプを駆使したトリッキーな動きで追いかけ、その脇を相方の高崎が追随しつつ霊撃でプーレを牽制する。
     その横を、天狗丸と名付けた箒にまたがった真琴が高速飛行で追い抜いていった。
    「逃がすわけにも仲間と合流させるわけにもいきませんよ!」
     プーレに追いついた真琴が、クルセイドソードでプーレの乗る風船を突き破る。
    「ぬわっと!」
     思わず前のめりに倒れたプーレに、リタがマイク型のハンマーで容赦ない追い打ちを加える。
    「グエーッ!」
     奇怪な叫びと共に、プーレの体が破裂した。同時に、白い煙が周囲に立ちこめる。
    「やったでござるか!」
     一足遅れて追いついた柚月が声を上げた。が、
    「まだです!」
     真琴は、破裂したプーレの体内から、何かが姿を現すのを見逃さなかった。先程までの丸々と太った姿とは違う、やせた体つきのその人影は、けれど確かにプーレと同じ顔を持っていた。
    「ウププ、種も仕掛けもありませーん! これがワタクシの真の姿!」
     今度はどこからともなく取り出した一輪車で病院を目指すプーレ。
    「おいおい、すっかり逃げ腰だな。デカいのは名前と態度だけか?」
     矜人が妖の槍を構えプーレに迫るが、プーレは大きく息を吸い込むと、口から火を吐き出し、矜人を炎に包む。
    「ウププ、今日のステージはここまで! それでは皆様、ごきげんよーう!」
     最早病院の敷地は目の前。プーレはバカにしたように灼滅者達に手を振ってみせた。が、
    「必殺、烈光さんミサイルですぅ!」
     そこへ飛び込んできたのは、一匹の霊犬。亜綾が再び、烈光さんを投げつけたのだ。
    「……へあ?」
     想定外の一撃に、一輪車から滑り落ちるプーレ。
    「ボクたちの芸の方が上手だったね♪ さあ、そろそろ舞台から降りてもらおうか」
     そんなプーレに接近したへるが素早くプーレの足を切り裂き、これ以上の逃走が出来ないようにする。そして、
    「病院の方々は、私どもが必ず助けます」
     ヴォルフガングの突き出したギターがプーレの胸に突き立ち、
    「お前のショータイムもこれで終わりだ!」
     電撃を放ちながら繰り出された矜人の拳が、プーレの顎を砕いた。
    「そんな……、ソロモンの悪魔たるこのワタクシが……こんな人間どもにーっ!?」
     それが、プーレの断末魔の叫びとなったのだった。
     
    ●そして病院へ
     プーレの灼滅には成功した。だが、戦いはこれで終わりではない。矜人は、喧噪渦巻く病院へ目を向けた。
    (今回の戦場は、前にオレが闇堕ちした鶴見岳の激突とダブって見えるぜ……)
     かつて闇墜ちした苦い記憶を噛みしめる矜人。
    (だがもうあの時とは違う……オレ達は、もっと強くなっている!)
     決意と自信を胸に、矜人は病院の中へ踏み出していく。
    「病院……ですか」
     1年前に大怪我をした真琴にとって、病院というのはあまり良い思い出のない場所だ。でも、そこに助けを求める人達がいるのなら、放っておくことなどできない。
    「あんなふざけた奴らに、大勢の命を奪わせてなるもんかでござる」
     柚月も続いて病院へ向かい歩みを進める。いくら敵が多くても、病院の灼滅者と協力すれば、きっと勝利を収められると、そう信じて。

     武蔵坂と殲術病院、双方の灼滅者の活躍により、プーレ大サーカスが壊滅したのは、それから数時間後のことだった。

    作者:J九郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月6日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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