慌しい足音、飛び交う怒号、その場は切迫した空気が張り詰めていた。
「ハルファス軍の襲撃だと?! とにかく援軍を呼べ」
殲術兵器を構えた医師の声に、誰かが答える。近隣、いや、日本中の病院が襲撃されていると。
「ピンクが、ピンクが迫ってきます!!」
「あのうねっとしたの、何か嫌だぁ。何か怪しくうごめいてるぅ」
悲鳴のような声があがる。
「落ち着け、これより籠城する。簡単には落とさせんよ」
那須殲術病院襲撃から動きのなかった敵が、今この機会に狙いを定めていたとでも言うのか。
迫る敵を目の前に、医師は一つ大きく息を吐き出した。
●依頼
教室に現れた五十嵐・姫子(高校生エクスブレイン・dn0001)は、いつになく厳しい表情で話を始めた。
「複数のダークネス組織が、この学園とは別の灼滅者組織である『病院』の襲撃を目論んでいるようなのです」
一つは、ソロモンの悪魔・ハルファスの軍勢。
一つは、白の王・セイメイの軍勢。
最後は、淫魔・スキュラの軍勢。
「それぞれが、武蔵坂とも因縁のある相手です。捨て置くわけにはいきません」
病院勢力は、殲術病院という拠点を全国に持っている。その防御力は高く、どこかの病院が襲撃されても、籠城している間に他の病院から援軍を送って撃退する、と言う戦いを得意としていたようだ。
「けれど、今回、ダークネス三勢力により、ほとんどの病院が一斉に襲撃されたため、援軍を出すことができずに孤立無援となってしまっています」
このままでは、病院勢力が壊滅してしまう。
「同じ灼滅者として、病院の危機を救っていただけませんか?」
一同を見回し、姫子は図面を取り出した。
「皆さんに向かって欲しい病院です。ここは、殲術隔壁を閉鎖して籠城していますが、すでに幾つか隔壁が破損し、白兵戦になっている箇所もあります」
つまり、長くは持たないと言うことだ。
「攻めてきている敵は、淫魔が一体と50体近いピンクハートちゃんです」
「そんな。そんな数、まともに戦っても、私達だけじゃあ……」
黙って話を聞いていた空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)が表情を曇らせた。姫子は小さく頷いた。正面からぶつかっても、勝てる相手ではない。
「はい。ですから、まず戦闘中の隙をついて、指揮官である淫魔を撃破する必要があります」
淫魔さえ倒してしまえば、病院の灼滅者達も籠城をやめて外に出てくる。そうなったら、協力して残る眷族を撃破することができるだろう。
「逆に、もし淫魔を倒すことに失敗しピンクハートちゃんの群れに逃げ込まれると、手出しが難しくなります。そうすれば、撤退もやむなしかもしれません」
厳しい表情を崩さず、姫子は説明を続ける。
ピンクハートちゃんは、各自病院の窓から廊下へ侵入し、進軍している。淫魔は優雅に病院の屋上に陣取り、指揮をとっているようだ。この作戦に成功した暁には、スキュラの配下に加えてもらえることが約束されており、味方を鼓舞するように上機嫌で歌い踊っている。 サウンドソルジャー相当のサイキックを使い、特に歌に力を入れた攻撃をしてくる。
「屋上へは、外壁に取り付けられた非常階段を使うのが良いと思います。貯水タンクの陰になり、気づかれ難いですね」
まさか病院内の階段を、眷属を相手にしながら昇ることはできない。もし非常階段を使わないとなると、闇にまぎれて飛んでいくしかないだろう。だが、その姿を淫魔に気取られるかもしれない。
屋上に陣取る淫魔を奇襲し、その後残る眷族を病院の灼滅者と協力して撃破する。文字にすれば簡単だが、実際はうまく対処できなければ失敗になってしまう。
「実は、すでに陥落している病院もあります。皆さんが向かう病院がそうならないためにも、よく話し合い気をつけて作戦にあたってください」
「ええと、屋上へ奇襲する方法、淫魔との戦闘、眷属の撃破だね」
紺子の言葉に、姫子は頷いた。
「それでは、皆さん。よろしくお願いします」
参加者 | |
---|---|
三日尻・ローランド(尻・d04391) |
木嶋・央(黄昏の執行者・d11342) |
王・苺龍(点心爛漫中華娘・d13356) |
鬼神楽・神羅(鬼祀りて鬼討つ・d14965) |
村上・椿姫(ボンクラーズモスキート・d15126) |
ジグバール・スィーラ(白光の環・d15196) |
神音・葎(月黄泉の姫君・d16902) |
ランジュ・アルディリアス(氷に閉ざされし歯車・d17693) |
●奇襲
破壊の音、戦いの音が聞こえる。聞いていた通り病院は戦場と化していた。
同じ灼滅者組織である病院の危機を見過ごすことはできない。
「朋友たる殲術病院、みんなで助け出そうね」
三日尻・ローランド(尻・d04391)は目の前の非常階段を見上げた。
「同じ灼滅者なら協力しあわないとな」
村上・椿姫(ボンクラーズモスキート・d15126)が頷く。
「……敵さんの数が多いですね……病院の灼滅者さん達は大丈夫でしょうか……」
非常階段が設置されている場所は病院の裏側であり、直接中の様子は伺えない。だが姫子の言葉通りならば、かなりの数の眷属が暴れまわっているはずだ。
ランジュ・アルディリアス(氷に閉ざされし歯車・d17693)は静かに病院を見やる。
「ここで病院に沈まれても面倒だし、頑張るとするか」
木嶋・央(黄昏の執行者・d11342)が言うと、神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)がキリとした表情でランジュと央を見比べた。
「決して負けられぬ戦ですね」
仲間達と病院の灼滅者と共に、勝利をと、思いを胸にする。
鬼神楽・神羅(鬼祀りて鬼討つ・d14965)は紺子に動きを説明していた。
「戦闘開始後は飛行し、可能なら非常階段の破壊をお願いしたい」
「オッケー。階段の件は何とかなるかな。支援してくれる皆もいるし、ね」
紺子の背後には、ずらり支援するメンバーも揃っている。
「淫魔と屋内への入り口の導線を経てるような位置取りができれバ良いアルね」
決して逃走を許さぬようにと、王・苺龍(点心爛漫中華娘・d13356)が確認の意味をこめて皆を見た。
「じゃあ、行こうか」
ジグバール・スィーラ(白光の環・d15196)の言葉に、灼滅者達が一斉に動いた。
屋上を目指し、螺旋の階段を駆け昇る。貯水タンクがすぐに見えてきた。
かなり大きなそれは、灼滅者達の姿を全て隠してくれている。
あと数歩で屋上。その時歌が聞こえてきた。
「進め手下ども~私のためにぃ♪ 潰せ病院~スキュラ様に捧げよ♪」
甘い歌声は、彼女がとても機嫌が良いことを思わせる。
「殲術病院……どのような所か興味も有るし可能ならば良き関係を築きたいが、全ては此処を乗り切ってからの話」
走りながら神羅が片腕を異形化させた。
続いて、ランジュもクルセイドソード・congélation brand-氷結剣-を生成する。
「淫魔は踊りに夢中アル!」
いち早くタンクにたどり着いた苺龍の言葉に、仲間達が一斉に飛び出した。
「何者?!」
腕を上げくるくると踊っていた淫魔が振り向く。長い髪の、成熟した女性の姿だった。
「……行きます」
淫魔が動く前にランジュが踏み込む。破邪の白光を放ちながら、有無を言わせず斬撃を繰り出した。
守る姿勢も取れぬまま淫魔が呻く。
「鬼の一手、馳走致そう!」
続けて、神羅が異形化した腕で薙ぎ払うように殴りつけた。
「ぐ、ぁ」
なすすべなく、淫魔が吹き飛ぶ。その身体はフェンスにぶつかり、ガシャンと乾いた音が響いた。
最後にクルセイドソード・月を詠む者☦Zerachiel☦を構えた葎が飛び込んでいった。その金の瞳は、妖しく瞬くような怜悧な光をたたえている。状況を確認するが、屋上に淫魔以外の敵の姿は見えなかった。月の光が降り注ぎ、視界も悪くない。
「ならば、お前を倒すだけ!」
まっすぐに、淫魔の霊魂を破壊する。
「一体、何だって言うのよ」
気持ち良く歌い踊っていただけなのに、突然攻撃された。淫魔は当惑の表情で灼滅者達を眺めた。
●屋上1
皆が屋上へ上がったことを確認し、紺子と透流、アヅマは非常階段を壊しにかかった。
「じゃ、こっちは何とかしとくんで、淫魔の方はヨロシク!」
アヅマが声をあげる。
「非常階段は大丈夫なようだな」
全て破壊できなくとも、逃走経路を塞ぐくらいはできるだろうと思う。ジグバールはその他の屋上の様子を確認した。
屋内へ通じる階段の手前にはアンカーやステラ、リア、燈の姿が見える。逃走経路の封鎖や増援の警戒など頼もしく感じる。
「くす。そんな大勢で何しに来たの? もしかして、私のファン、かな? 今夜は忙しいの。サインなら、またにしてくれない?」
ふいに、淫魔が艶やかな声を上げた。フェンスから優雅に身体を起こすと、にこやかに微笑んで見せたのだ。最初の攻撃を完全に命中させたとはいえ、それだけで崩れるほど甘くは無いということだろうか。
「よお、淫魔さんよ。随分と上機嫌に歌ってるじゃねえか。そんなにスキュラの配下になれるのが嬉しいのか?」
タイミングを見計らい、央が小馬鹿にしたような態度で話しかけた。
「ちっ、訳知りか。貴様ら、私をスキュラ様配下……予定の……淫魔・ティアニスと知っての狼藉、って事なのね?」
予定の、と言う言葉を小声で付け足し、淫魔・ティアニスは走り出した。
「っは、あんな淫魔の何がいいんだか。格下扱いしてる灼滅者にあしらわれてる無様な淫魔のよ。アレならラブリンスターのが全然マシじゃねえの? お前もスキュラとかほっといてラブリンスターの配下になれば?」
「何ですって?! とにかく、スキュラ様といえば、ネームバリューもばっちり!! そんな方が、声をかけてくださったんですもの!! これってラッキーじゃない? だ、か、ら。私の邪魔、しないでねぇ?」
流れるようなステップから繰り出される打撃は、思いの他強力だ。スピードはかなり速く、避けたと思った時には、死角から次の打撃が飛んでくる感覚に襲われる。
攻撃を受けながら、央は闘気を雷に変え、反撃のチャンスを伺う。
前衛が攻撃を受ける中、苺龍が仲間をかばい龍砕斧・苺龍華斧でティアニスの攻撃を受け止めた。
「仲間のことはぼくが護るッ!」
攻める力と守る力がぶつかり合い、敵の足が止まる。
苺龍は素早く拳に雷を集め、苺龍華斧でティアニスの身体を弾き飛ばした。
バランスを崩した敵に、抗雷撃を叩き込む。
「ぼくの拳はビリビリくるアルッ!」
「あぁぁん」
言葉通り、ティアニスが痺れる感覚に身悶えた。
「くらえ!」
央も雷を纏い敵を斬りつけた。
攻撃の手は休めない。
椿姫は手にしたウロボロスブレイドをしなやかに伸ばし、淫魔を巻き上げた。
「く……ぁ」
「……なかなかなものだろう?」
頬を染め苦しげな吐息を漏らす敵に、挑発するような言葉を投げかける。
「所詮、私たちを倒せないようじゃスキュラも喜ばないだろうな」
「なななな、そ、それは困るんだけど!!」
慌ててティアニスが体勢を立て直した。
「そうだよね。ボクも下僕愛好家だけれど、主は選びたいよねえ?」
そこへ、ローランドがつかつかと歩み出てきた。仲間を守るようにシールドを広げ、催眠対策を行う。
「え? まさか貴方もスキュラ様の配下を狙っているというの?」
困惑気味に尋ねるティアニスに対し、ローランドは美しい銀の髪をふさりとかき上げかぶりを振った。
「スキュラくんの露出っぷりも魅力的だけれど、ボクのえくすかりばーはもっと素敵さ! 見事な全裸だろう?」
海老反りよろしく身体を反らし、ふわふわと浮かんでいるナノナノ・えくすかりばーを称えるように熱い視線を送った。
一方、えくすかりばーは割と冷ややかな視線をローランドに送り返した後、彼の頭を蹴って勢いをつけ、竜巻を巻き起こして攻撃を仕掛けた。
「……」
ティアニスは具体的なコメントを避け、若干どんよりとした表情を浮かべそっと一歩後退した。
●屋上2
戦況は概ね灼滅者有利に進んだ。何より後方からの回復・攻撃支援があり、安心して戦える。イブや登が攻撃を仕掛け、その間にミルフィ、燐音、咲結、優歌が仲間を癒していく。
屋内への入り口へ近づけないティアニスは、眷属と合流できずイライラとしている様子だ。
「あーん。もう!! 何か、台無しなんだけど」
飛んできた攻撃を避け、淫魔が声を上げる。
そして、ぺろりと魅惑的に唇を舐め、とても甘い声で囁くように歌い始めた。
「ねぇ、沢山お話してくれたってことは、私のこと本当は気になってるんでしょう?」
「なっ……」
央が驚愕の声を上げる。違う、そんな事何一つ思っていない。そう思うのに、身体の芯が痺れるよな気がした。頭から警鐘が鳴るのに、これは淫魔の攻撃だと分かるのに。
身体が勝手に動き出す。
「くすくす。素直になりなさい? 貴方が向かうのは、私じゃなくて――」
「いけないアル!」
すぐに苺龍が二人の間に身を滑り込ませた。
大きな炎を練り上げ、苺龍華斧を構える。ちらりと仲間を見た。
央はふらふらとランジュに襲い掛かり、今にもその服を脱がしそうだ。ランジュは特に恥ずかしいそぶりも見せずされるがままのようだが――。
「キュアはこちらにまかせて。ボクのえくすかりばーも居るから大丈夫だよ」
ローランドとジグバールが頷きあう。
それならば回復は任せたと、苺龍はまっすぐ敵を見据えた。
「スキュラの軍勢に入れるのが、そんなに名誉なことアルかね? ぼくにはわかんないヨ」
気合を込めて、炎を纏った苺龍華斧で殴りつけた。
「ふふっ。強力な淫魔の配下になれば、注目されるでしょ? 素敵だわ~」
攻撃を受けたティアニスは、よろめきながら後ずさる。
だが、その動きを神羅と椿姫が許さなかった。
敵の背後にはフェンスがある。
屋内への入り口を灼滅者が押さえている今、ティアニスが逃げるとしたらそこから飛び降りるしかない。
「逃す訳にはいかぬな」
神羅が契約の指輪をティアニスに向けた。撃ち出す魔法弾で、制約を与える。
「少し前に失敗したばかりで落ち目のスキュラ……いや、それにすら加われていなさそうな半端者が相手か。外れであったな」
激しい攻撃を繰り返しながら、神羅は冷ややかな声色でそう語った。
「なに?! 半端者って、私のこと!!」
逃げの姿勢を見せていたティアニスが、むっとして足を止める。
それを見て、椿姫が踏み込んできた。
完全に背後に回り、大きくウロボロスブレイドをしならせる。
「逃げられるとでも? ……はっ、笑える」
大きく跳躍し、一気に距離を詰めた。気配を察知し振り向いたティアニスに、容赦なくブレイドを巻きつけ斬り裂いた。
「ぅ、あっ……」
ティアニスがよろめく。
「ランジュ、木嶋先輩、大丈夫ですか?」
淫魔の様子を確認しながら、葎が央に駆け寄る。
「えくすかりばーのふわふわハートは効いたかな?」
ぼんやりランジュにもたれかかっている央に、ローランドが手を差し伸べた。
「傷も回復しておいたが」
ジグバールが言うと、完全に我を取り戻した央が慌てふためいてランジュから飛び退いた。
「す、すまん! 体が勝手に動いてて……!」
「……はい」
お互い微妙な距離を保ち、言葉を交わす。
「よ、よし。敵も弱ってきているようだし、一気にいくぞっ」
何かを誤魔化すように、央がランジュと葎を促した。
三人は、一度だけ視線を交わし、走り出す。
最初に、央が仕掛けた。蹴り、殴り、同時に魔力を撃ち出す。
「な……に、を」
一つ二つと身体が爆ぜ、ティアニスが苦痛に顔をゆがめた。だが、まだ動く力があるのか、敵は腰を落とし何かを仕掛けるそぶりを見せた。
反撃をくらう前に、央はその場を飛び退く。同じタイミングでランジュが飛び込んできた。
「……あなたの心を砕きます」
剣を大きく一振りし、敵の霊魂を打ち砕く。
「ぁ……」
淫魔は小さく息を漏らした。
「これにて、幕だ、滅びよ!」
最後に、葎がランジュの背後から躍り出る。
マテリアルロッド・禍津月比女で勢い良く殴りつければ、ティアニスは眉をひそめ倒れこんだ。
そして、魔力を流し込む。
淫魔はその場に崩れ落ちた。
●病院内にて
「病院開放まであと少し。この余勢を駆って進むのみ!」
仲間の状態を確認し、神羅が声をかけた。
その時、上空から周囲を警戒していたローラが声を張り上げた。
「眷属が向かってきたよ!」
見ると、屋内へ続く階段から、今にもピンクハートちゃんがあふれてきそうだ。
「聞こえるか、病院の灼滅者っ!」
椿姫が声を張り上げた。
「淫魔は倒した。私達は屋上から階段で院内へ突入する!!」
その声は、病院内へ響いた。
「さあ、派手に暴れるよ!」
飛鳥が院内へ突入する仲間を支援するように攻撃を開始した。智寛もそれに続く。良太、薫もそれに加わり、階段入り口の眷属を掃討して行く。
「にゃあ~、気持ち悪いアル~!?」
ピンクハートちゃんのにゅるりとした触手を避けながら、苺龍がはわわと口を手で押さえる。
突入した廊下は、ピンクだらけだった。しかも、次から次へと襲い掛かってくる。
そんな苺龍を両側からかばうように佐和と夕月が鬼神変を放った。
「皆さんの後ろはお守りします」
「退路も確保しておきますから」
二人の言葉を聞いて、苺龍が気合を入れなおした。
「よーし、もう一踏ん張り、頑張るアル」
苺龍華斧を振り回し、進む。
その時、遠くから声が聞こえてきた。
「私達は、下の階の扉の内側に居ます。今から上階に向けて進みます!!」
しっかりとした声だった。
「皆来たよ!! これだけ居れば、下の階まで行けるよね!!」
紺子も、サポートの仲間と共に合流する。
仲間達は頷き合い、下の階を目指した。
真っ直ぐな廊下を、ピンクハートちゃんを倒しながら進む。お互いの傷をカバーし合い、固まっている敵はまとめて央が凍らせ打ち砕く。討ち漏らしが無いよう葎が止めを刺せば、ランジュもそれに続く。ジグバールは回復に専念し、皆で協力して院内を駆けた。
階段を駆け下り、灼滅者達が見たのは、眷族に囲まれる灼滅者達だった。
「だいじょうぶかい? すぐに回復してあげるからね」
怪我人を見つけ、ローランドが駆け寄る。
癒しのオーラを向けると、たちまち傷が回復した。更にえくすかりばーもふわふわハートを飛ばし、回復を手伝う。
「あ……」
病院の灼滅者は、緊張した面持ちでローランドを見た。
「もう少し頑張ろうね。後は眷属をやっつければおしまいだから」
ローランドはにこやかに笑い、胸を反らしてポーズを決めた。だが、あまりに反らしすぎて、海老反りと言うよりもブリッジになってしまっているけれども。大丈夫だろうか。大丈夫だろうか。えくすかりばーはローランドの上でキリキリとローランドの足を締め上げている。
「ぷっ」
その姿を見て、病院の灼滅者が笑った。
ずっと緊張で張り詰めていたのだろう。それが、少しでも和らいだようだ。
「助けていただいてありがとうございます。この下の階も、まだ眷属が……。私達だけでは、どうすることもできなくて。……一緒に、戦っていただけますか?」
是非とも。
学園の灼滅者達がしっかりと頷き返した。
そして真夜中を過ぎたころ、灼滅者達は病院内で暴れていたピンクハートちゃんを残らず灼滅しつくした。
作者:陵かなめ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月6日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 11/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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