とある金ぴかペナント怪人のはた迷惑な破壊活動

    作者:ライ麦

    「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり……」
     滋賀県琵琶湖のほとりで、一体の強力なご当地怪人が復活を果たした。
    「我、目覚めたり。そしてスキュラよ、サイキックエナジーは受け取った。
     我はここに、『日本全国ペナントレース』の開催を宣言する!
     その身に大地と人の有り様を刻む怪人共よ、我、安土城怪人が元に参集せよ」
     琵琶湖から放たれた大量のサイキックエナジーは、様々なご当地へと降り注ぎ、新たなご当地怪人を生み出した。
     ご当地をその身に刻む者、すなわち『ペナント怪人』である。

    「安土城怪人様のお呼びである、いざ、琵琶湖っ!」

     日本各地に現れたペナント怪人達は、一斉に琵琶湖に向けて走り出したのだった。

    「マリィアンナ・ニソンテッタ(聖隷・d20808)さんが危惧していた事が、現実になってしまいました……」
     緊迫した面持ちで、桜田・美葉(小学生エクスブレイン・dn0148)が語る。
    「ペナント怪人が日本各地に一斉に出現してしまったんです!」
     そこまで言った後で、美葉は心配そうに、
    「……あの、ペナントって皆さん分かりますか? 私も今まで知らなかったんですが……」
     とおずおずと三角形の旗を差し出してきた。でかでかとどこかの観光地の名前と、その観光地にちなんだイラストが描かれている。
    「一昔前までは、観光地のお土産の定番だったみたいです。今ではすっかり廃れてしまったようで、どこに行っても見かけませんが……」
     正直、こんなのもらってもしょうがないですよね、とポツリと残酷な本音を漏らし、美葉は改めて顔を上げた。
    「ええと……話を戻すと、ペナント怪人は、頭部がこのペナントになったご当地怪人で、ペナントに書かれたご当地に由来するご当地攻撃をしてくるようです」
     更に、ペナント怪人は、その地に住む郷土愛豊かな一般人を強化して『ご当地黒子』とする力を持っているらしく、配下として引き連れている。
    「ペナント怪人は、滋賀県の琵琶湖を目指して移動しています。しかも、道すがら、他の地域の名物を発見すると、それを破壊するという、大変迷惑な事件を起こしているんです」
     つまり、このままではペナント怪人のご当地から滋賀県の琵琶湖に向かう地域の名物が、ペナント怪人に破壊されてしまう、と。
    「そんなことを許すわけにはいきません……! なんとかペナント怪人を撃破し、名物を守ると同時に、ご当地黒子とされてしまった人を助けてあげてください……!」
     帽子を押さえて、美葉は深々と頭を下げた。
    「ちなみに、ご当地黒子は……全身黒タイツで、頭部にご当地の名前が書かれた姿の強化一般人ですね」
     ……ペナント怪人もだが、ご当地黒子も割と微妙な姿だ。ペナント怪人に生み出された存在だからしょうがないんだろうけど。
    「ご当地黒子は、ご当地に由来する攻撃を仕掛けてきますが、KOするか、ペナント怪人を灼滅すれば元の姿に戻ります」
     ということなので、名物を守りつつ、ご当地黒子を黒タイツ姿から開放してあげよう。

     続いて、美葉は言う。
    「皆さんには、金沢のペナント怪人の退治をお願いしたいんです」
     琵琶湖に向かう道すがら、金沢ペナント怪人が目をつけるのは、福井の伝統工芸品である越前焼。非常に歴史が古く、素朴な味わいが人気の陶磁器……なのだが。
    「地味だ! って、越前焼を売っているお店に乗り込んでは、その場で割って回って、さらに金箔まみれにするんです」
     本当にはた迷惑な話です、とため息をつく。
    「気に入らないからといって割っていいのは、それを作った作者の方だけなのに……。こんな横暴を許すわけにはいけません。ペナント怪人を倒し、越前焼を守って下さい。お願いします……!」
     金沢ペナント怪人には、最初に襲われる店で遭遇できる。ただし、店の中で戦うわけにはいかないため、なんとかして外に連れ出す必要があるだろう。
    「戦うのは店のすぐそばにある駐車場が良いと思います……それなりに広さがある上に、その時は平日なので、車もあまり停まってはいませんし。ただ、人払いについては考えておく必要があるかと思います」
     戦闘になると、金沢ペナント怪人はご当地ヒーローに似たサイキックの他、金箔を雨あられと降らせる攻撃もしてくるようだ。
    「特に、金箔を降らせる攻撃にはご注意ください。あまりのまぶしさに、目がくらんで狙いが定まらないかもしれません……!」
     なんて無駄にゴージャスな攻撃だろう。しかし、この金箔は戦闘終了後には消えてしまうようだ。持ち帰ることはできないのであしからず。
    「そして、怪人が引き連れているご当地黒子の方々は3名。全員、ご当地ヒーローの方に似たサイキックのみを使うようです」
     一通りの説明を終えた後で、美葉はためらいがちに口を開く。
    「……最悪の場合、ペナント怪人は取り逃がしてしまっても構いません。最低、越前焼を守って、ご当地黒子とされてしまった方々を元に戻していただければ……」
     お願いします、と再び頭を下げたのだった。


    参加者
    斑目・立夏(双頭の烏・d01190)
    一條・華丸(琴富伎屋・d02101)
    鈴木・総一郎(鈴木さん家の・d03568)
    倉科・慎悟朗(昼行燈の体現者・d04007)
    大條・修太郎(メガネ大百科・d06271)
    丹羽・愛里(幸福を祈る紫の花・d15543)
    六文字・カイ(死を招く六面の刃・d18504)
    佐見島・允(タリスマン・d22179)

    ■リプレイ

    ●おだてよう
    「何度か行ったコトあるが、金沢っつったら金箔に九谷焼……確かに華やかでゴージャスな印象だな」
     土産屋に向かう道すがら、一條・華丸(琴富伎屋・d02101)が呟く。だが、派手なだけではなく、そこに誇りを持っているから長く愛されているのだと思う。だから。
    「怪人の所業を知ったら金沢……加賀百万石も泣くってもんだ」
     そう、力強く言う。その言葉に六文字・カイ(死を招く六面の刃・d18504)も頷き、憤りを露にした。
    「土地に根付いた文化を否定し、あまつさえ破壊しようとは――その行状、赦しがたし!」
    「ええ、越前焼は衰退に追い込まれた時期を乗り越えて今日に至っているんです。こんな形で台無しにはさせません!」
     丹羽・愛里(幸福を祈る紫の花・d15543)も、きゅっと拳を握り、決意を新たにする。
    「しっかしご当地怪人てのは、どうしてこう分かりやすく迷惑なんだろうな」
     仲間の話を聞きながら、大條・修太郎(メガネ大百科・d06271)はポツリと漏らした。それが彼らのダークネスたる所以なのだろうが。
    「つか確か越前って織田信長の先祖ゆかりの地じゃねーの? こんな事して元締めの安土城怪人に怒られねーんかな」
     佐見島・允(タリスマン・d22179)も肩をすくめる。しかしペナントレースの結果、どこにどんな被害が出ようと、安土城怪人はおそらく気にしないだろう。
    「ともかく、早うペナント怪人を見つけんとな」
     斑目・立夏(双頭の烏・d01190)が言う。灼滅者達は店の前まで来ていた。ここまで来る間に会わなかったいうことは、怪人は店内にいるのだろう。頭部がペナントになった怪人など、見落とすはずはないし。
     しかしペナント。多くの灼滅者にとって縁遠い存在だ。
    「ペナント……もしかしておじさんちにあったあれだろうか」
     修太郎が呟きながら、扉に手をかける。
    「ペナントってあの三角形の旗みたいのだよね……確かにちょっと古臭いイメージだなぁ」
     店の中へ足を踏み入れつつ、鈴木・総一郎(鈴木さん家の・d03568) も言った。
    「ペナントご当地怪人という存在ってどうなのでしょう」
     店内を見回しながら、倉科・慎悟朗(昼行燈の体現者・d04007)も素直な心情を吐露する。その時、灼滅者達の目が店内を闊歩する三角形の旗をとらえた。あの「金沢」という金文字、付き従う黒子、金沢ペナント怪人に間違いない。
     その金沢ペナント怪人達は、越前焼が並べてある棚の前で立ち止まり、
    「ふん、なんと地味な焼き物よ。この金沢ペナント怪人様が成敗してくれ……」
     などとぶつぶつ言っている。そこにさりげなく近づき……
    「わ! 自分ペナント怪人さんですよね! やばいわ、わいらめっちゃファンいうか!」
     まず立夏が、芸能人を見つけた時のように、嬉しそうに話しかける。
    「え?」
     突然話しかけられ、驚いた怪人がこっち見た。その隙に
    「まさか会えるとは思わなかった。すっげ噂通り金ぴかだ! ファンです! サイン下さい!」
    「おぉーっ! 金沢いいよな! 俺すげぇファンなんだ。是非一枚記念写真を撮ってもらいてぇ!」
    「ええ、ぜひとも。私達と外で記念写真撮っていただいてもよろしいですか?」
     などと口々に言いながら、灼滅者達は黒子共々怪人を取り囲む。これで越前焼に手は出せまい。後は記念写真撮影の話に乗って外に出てくれれば良いのだが……。
    「生み出されたばかりの我に何故ふぁんが……?」
     ペナント怪人は訝しげに首を傾げていた。バベルの鎖を纏っているわけだし、生み出されてから日も浅いゆえ、現実問題としてペナント怪人にファンはいないだろう。だが、ここはノリで押し切る!
    「うわあ、綺麗ですね! よければ皆さんと写真を撮らせていただけませんか?」
     笑顔を絶やさず、愛里がそう言った、その時。
    「綺麗……?」
     その言葉に、怪人がピクリと反応した。畳み掛けるように、允も
    「うわっアンタスゲー三角だな! 金沢とかマジゴージャスじゃん超イカス。この辺面白いモンなくて退屈してんだ、その頭もっと見せてくんねー?」
     とテンション高く話しかける。「金沢とかマジゴージャス」というワードに、怪人はさらにピクピク反応した。なお、そう言う允自身は内心
    (「金沢って金箔の名産地だったのか正直知らんかった……地名まんまなんだな……」)
     などと思っていた。ちなみに、金沢における金箔の製造は全国シェアの98%である。
     それはともかく、極めつけにカイが
    「なんと豪奢な金色……そしてその金色に負けぬ堂々たるお屋形様のご威光! 是非にあやかりたく――!」
     と盛大におだてる。内心業腹だったが、その一言で怪人は完全に陥落した。
    「仕方ない、そこまで言うならこれを割った後で撮ってやっても……」
     そう機嫌良さげに言う怪人の腕を、修太郎は掴む。
    「何するんだ! それを割るなら僕らを倒してからにしろ!」
     カイも、
    「おおお……ご無体な! お屋形様は我らよりもあのような地味な焼き物を優先されると仰せか! なりませぬ……なれば我らを倒してからにされませい!」
     と訴え、允も時計を見ながら
    「ヤベッもうすぐ集合時間じゃね? なー頼むぜ」
     と懇願する。
    「そうそう、もうすぐ集合時間だからタイムリミットなんだ! 早く早く!」
     華丸が急かし、
    「僕ら修学旅行生なんでもう行かないと。記念に写真お願いします! 広いところで皆で撮りましょう! 黒子さんも!」
     と修太郎は強引に背中を押していった。
    「え、でも撮るだけならここでも出来……」
     渋る怪人を、総一郎は
    「集団記念写真撮影は店内では出来ないよ!」
     と言って引っ張る。愛里も
    「店の中だと狭いですし、外の方がキラキラ光ってもっと綺麗に見えると思うんですよ!」
     と説得した。
    「そ、そうかキラキラか……」
     キラキラという言葉には弱く、怪人はおとなしく連行された。これで連れ出しも完了、と灼滅者達は胸を撫で下ろす。後は倒すだけ。
     駐車場に着いたところで、慎悟朗は殺気を放って一般人を遠ざけ、愛里もサウンドシャッターを展開した。その間に允は記念だし一応撮影しとくかー、とカメラを構える。
    「おーしお前ら寄れ寄れ。あっ右の黒子さんもうちょい中入ってくださーい。オッケーっすハイちーーず」
     パシャッと。シャッターが押されたそのタイミングで、慎悟朗は
    「……」
     小さく、声にならない溜息をついた。余分な感情を捨て、目的を果たすだけのモノになる為に。他の灼滅者達も封印を解除し、殲術道具を構えた。
    「じゃぁ……殺りあおうか?」
    「えっ」
     面食らう怪人の退路を絶つように灼滅者達は布陣する。戦いが始まった。

    ●黒タイツからの開放
    「くっ……灼滅者だったのか! 騙したな!」
     地団太を踏みつつ、怪人はこれでもくらえ! と金箔をこちらの前衛に雨あられと降らせてきた。
    「うわっ何だこれ眩しっ! 何という金の無駄遣い!」
     思わず腕で目をかばう修太郎。一方で、金目の物が好きな立夏は
    「金や……!」
     とガン見していた。そんな立夏に、黒子はキックを浴びせてくる。さらに別の黒子もビームを放ってきた。だが、こちらも負けてはいられない。修太郎は目を擦りつつ、クラッシャーと思われる黒子に狙いを定めた。
    「黒子、何その簡単な外見。怪人、お前の金箔わけてやれ」
     突っ込みつつ、魔法の矢を放つ。金箔の眩しさに目が眩みつつも、辛くも命中させることに成功した。続いて立夏が、怪人を牽制するためシールドバッシュで殴りかかる。金箔の効果でかすってしまったものの、立夏の目は生き生きと輝いていた。対して允は若干腰が引けていた。自分が灼滅者とかまだ信じきれねぇよ。ともかく後ろから防護符を投げる。さらに、カイが祝福の言葉を風に変換し、金箔を払い落とした。
    「ありがとうございます!」
     礼を述べて、愛里は怪人にかきつばたビームを放った。怪人を抑えている間に、総一郎は影で相手クラッシャーを絡めとる。総一郎のライドキャリバー 「壁を越えれなかった」 も主人に合わせ、同じ対象に突撃! だがそれは相手ディフェンダーに阻まれた!
    「名は体を表すって言うけど……本当に壁を越えれなかったな……」
     総一郎はポツリと呟いた。てゆうか「壁を越えれなかった」ってなんだ。ともかく、攻撃を阻んだ勢いのまま、相手ディフェンダーがキックを華丸にお見舞いする。その攻撃を受け止め、華丸は怪人に向き直った。
    「魅力じゃ敵わねぇから割るんだろ? そういう風にしか見えねぇぜ!」
     挑発しながら、シールドで殴りつける。さらに、金の帯を締めた彼のビハインド「住之江」が顔を晒して相手前衛にトラウマを植え付けた。その上から、慎悟朗が無数の拳を浴びせる。
     挑発された怪人は怒りを隠せない。
    「あんな地味な焼き物に、我が負ける筋合いはない!」
     華丸を高く持ち上げ、地面に叩きつける!
    「いいえ! 金箔も綺麗ですけど、越前焼にはそれと違った美しさがあるんです!」
     負けじと愛里もそう言いながら、螺穿槍で怪人を穿った。
    「ほざけ! 黒子!」
     怪人は黒子に命じて愛里を攻撃させる。その怪人に立夏が肉薄した。
    「すまんけど、ちょいと黙っといてもらえます?」
     影の触手が、怪人を縛り上げる。これで怪人の動きは阻害できた。そこで、灼滅者たちは改めて相手クラッシャーに攻撃を集中させる。允の鬼神変、慎悟朗のトラウナックル、総一郎のオーラキャノンなどが相手を確実に削っていき……。
     最後に華丸が
    「変な怪人の黒子になるぐらいなら歌舞伎座に来いよな! つーか目ぇ覚ませ!」
     と斬影刃で大きく切り裂いた。その一撃が、一人の黒子へのとどめとなった。

    ●ペナントの時代はおしまい
    「う……ま、まだだ! まだ終わらぬ!」
     黒子を一人失い、動揺しつつも、怪人はまたも金箔を降らせてくる。今度は後衛に向かって。
    「うおっまぶしっ!」
     允が目を覆った。
    「つかこれすげー貼り付くんスけど! 俺マジゴージャス」
    「くぅ、油断出来ないな……」
     総一郎も苦しげに目を細めた。てゆうかいつもかけてるゴーグルにべたべた金箔がくっついて視界不良だった。さらに残った黒子たちが揃ってビームを放ってくる。しかし一人救い出すことに成功した灼滅者達は止まらない。華丸が影で黒子の一人を飲み込み、住之江が霊障波で続き、立夏がフォースブレイクで追い討ちをかける!
     その間に允は清めの風を吹かせ、金箔を払い飛ばした。風に舞い、きらきらと光る金箔。
    「キレーダナー」
     ついそんな感想が漏れた。立夏も、
    「……やっぱ金目んもんてええわー」
     とうっとり舞う金箔を眺めていた。そんな二人に、慎悟朗は一応
    「目的を忘れないでくださいね?」
     と突っ込みを入れる。
    「あっサーセンちゃんとやります」
     允は頭をかいた。
     それは置いといて、灼滅者達は次々に黒子達に攻撃を仕掛けていった。集中砲火を受けては壁も持たない。ついには膝をついた黒子を、カイは黒死斬で正気に戻す。最後の一人も、慎悟朗の龍骨斬りで倒れた。
     残るは怪人のみ。
    「こ、こうなれば我だけでも安土城怪人様の元に……」
     逃げ出そうとする怪人だが、怪人の逃亡を警戒していた灼滅者は多い。
    「どこ行くんや、ペナント怪人さん?」
     立夏がその前に立ち、
    「逃がしませんよ!」
     と愛里も再びのかきつばたビームを放つ。
    「この先は通さぬ!」
     カイも右腕に妖刀『シヲマネキ』を取り込み、切り裂いた。
    「之以上進ませるわけには行かないのでね、之で仕舞いだ!」
     総一郎はトラウナックルで殴りつけ、「壁を越えれなかった」 も機銃掃射で主人をサポート。続けざまの攻撃に、怪人も悶絶。そこに、慎悟朗が閃光百裂拳で飛び掛った。
    「正直、金沢ペナント怪人ってご当地怪人ではなくてただのペナント怪人ですよね」
     と言いながら。その言葉に修太郎も頷く。
    「今風にデザインしなおせば?」
     ペナントを指差し、制約の弾丸を放つ。怪人はわなわなと震えた。
    「わ、我は単なるペナントではない……! ご当地金沢の誇りをこの身に刻むもの……! 金沢の誇り、見せてやる!」
     そして性懲りもなく金箔を降らせる。飽きたよ。
    「金沢の誇りは金箔だけじゃないだろ? それに、ただ派手ならいいってもんじゃないぜ!」
     華丸がシールドバッシュをぶつけ、住之江が霊撃で続く。さらに愛里が影縛りで怪人を捕縛した。
    「これで少しは眩しくなくなるでしょうか?」
     その捕縛のみならず、怪人の身には幾多のバッドステータスが積み重なっている。怪人も、もう思うようには動けないはずだ。
     先ほど降らされた金箔も、カイがセイクリッドウィンドでお掃除。もう阻むものはない、と允は怪人に向き直った。
    「俺は清楚な黒髪女子もキンパツギャルもどっちも好きだ」
    「……はい?」
     唐突に始まった熱弁に、怪人のみならず仲間達も怪訝な顔をした。
    「……だから何が言いたいかっつーと、地味も派手もそれぞれに美点を見出すのが日本男児だろーが!!」
     そう言い放ち、魔導書から魔力の光線を飛ばす! 允の例えはさておき、地味だからと越前焼を滅ぼそうとした怪人は許されるものではない。灼滅者達は一斉に怪人に攻撃を加えていく。
     最後に修太郎が、両手に集中させたオーラを、怪人目掛けて放出した。
    「ペナントの時代は終わってるよ、じゃあな」
     その言葉通り、時代遅れなペナント怪人の命と野望はここで潰えたのだった。

    ●ペナント以外の土産がいい
    「なんとか……守れた、かな」
     ほっとしたように息を吐き、総一郎は武器を下ろす。
    「あー目がちかちかする」
     修太郎は目をしばたかせながら、出来る範囲で片づけをしていった。あんなにばらまかれた金箔は、綺麗さっぱり消えていたけれど。
    「ちょいと惜しい気もするなー、あの金箔……」
     頭の裏で腕を組み、立夏が呟く。
    「何故かもやっとします……」
     慎悟朗はそう、独り言のように呟いて立ち去った。一方で、允は
    「騒がせついでに土産屋覗いてくか~」
     と土産屋の方に歩いていく。
    「俺も、折角だし観光していこうかな」
     総一郎もその後に続いた。まぁ、越前焼みたいな焼き物を愛でる感性は育ってないけどね。
    「焚書しかり……文化を否定したモノが滅ぶことは、歴史が既に証明済みだ。……仮に、それがこれまでダークネスの描いてきた今昔絵巻であったなら――皮肉なものだな」
     腕を組み、どこか遠くを見つめながらカイは言う。
    「それにしても、安土城怪人はご当地怪人……ペナント怪人を一ヶ所に集めて何を企んでいるんでしょうか……?」
     愛里もそう疑問を漏らした。それは分からないがしかし、この度の事件は無事に阻止できた。きっと、その企みの一端を打ち砕くことはできたはずだ。
     最後に華丸が、
    「おっ、一首出来た☆」
     と一つ詩を残し、この事件を締めくくる。
    『色なくし心は錦いふなかれ錦が心と仰ぎ掲げん』
     と。

    作者:ライ麦 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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