うちのビーチが一番ぺな~!

    作者:智葉謙治

    ●(呼び声が聞こえる……)
    「人間五十年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり……」
     滋賀県琵琶湖のほとりで、一体の強力なご当地怪人が復活を果たした。
    「我、目覚めたり。そしてスキュラよ、サイキックエナジーは受け取った。
     我はここに、『日本全国ペナントレース』の開催を宣言する!
     その身に大地と人の有り様を刻む怪人共よ、我、安土城怪人が元に参集せよ」
     琵琶湖から放たれた大量のサイキックエナジーは、様々なご当地へと降り注ぎ、新たなご当地怪人を生み出した。
     ご当地をその身に刻む者、すなわち『ペナント怪人』である。

    「安土城怪人様のお呼びである、いざ、琵琶湖っ!」

     日本各地に現れたペナント怪人達は、一斉に琵琶湖に向けて走り出したのだった。

    ●(聞こえちゃいましたか……)
     薄ら笑う黒部谷・伏吾(高校生エクスブレイン・dn0174)だが、その眉間には深いしわが刻まれていた。
    「すみません、こういう事件って慣れてなくて。実はマリィアンナさんの心配してた事が、実際に起きてしまったのです。これ、見た事あります?」
     伏吾の手には三角形のカラフルな刺繍。
    「ペナントって言うそうです。昔は観光地のお土産といえばコレだったみたいですよ。……もらって嬉しいですかね?」
     感想はともかく、頭部がペナントのご当地怪人が日本各地に一斉に出現してしまったらしい。
    「ペナントたちはその土地の一般人を強化してご当地黒子にし、数名を配下として引き連れてます。一応、殺さなくても、KOするか怪人を灼滅すれば元に戻るみたいですよ」
     ご当地黒子は全身黒タイツの姿で、頭部にご当地の名前が書かれた強化一般人である。地元に由来の攻撃を仕掛けるそうだ。
    「で、なんか滋賀県の琵琶湖に向かってるそうです」
     伏吾の眉間のしわがどんどん深くなる。
    「その移動の道中、他の地域の名物? とかを発見すると破壊します。放っておくと日本各地で様々な被害が出てしまう、という事です。なので、それを防ぐのが、今回の仕事となります」
     ペナント怪人を撃破し、名物を守ると同時に、ご当地黒子とされてしまった人を助けてあげてほしいのだ。
    「あなたたちにお願いしたいのは、江の島ペナント怪人です」
     この怪人は江の島から海岸線を南下していく途中、各地のマリンスポーツ施設を破壊していく。静岡のサーファーたちのためにも、何としても止めなくてはならない。
    「狙い目はここ。湯河原です。ここを逃すと伊豆半島をぐるっと回って行きますので、捕捉するのは正直面倒ですので」
     南下する怪人を、湯河原の吉浜海岸で待ちうけるという作戦だ。
    「怪人たちはサーファーの車やシャワー施設を次々に破壊するみたいです。できれば被害が出る前にコレを撃退してくださいね」
     何も知らないサーファーたちにも、被害が出ないようにしなければならない。戦う場所の考慮も必要だろう。
     敵対するのは、江の島ペナント怪人と、ご当地黒子4人。
    「怪人は江の島のご当地パワーを利用したサイキックを使ってきます。中でもご当地ダイナミックの『トンビ投げ』は強烈ですよ。あと、強化一般人は『しらすストーム』という列攻撃をしてきます」
     伏吾はペナントをしまうと、にこっと笑顔を向けた。
    「マリンスポーツは江の島でしか認めないという悪質な怪人ですね。あなたたちの力でねじ伏せて、ぜひ灼滅しちゃって下さい。では、お気を付けて」


    参加者
    外法院・ウツロギ(毒電波発信源・d01207)
    野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)
    柾・菊乃(退邪鬼・d12039)
    シャルロッテ・クラウン(残念な海賊きゃぷてんくらうん・d12345)
    片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)
    木元・明莉(楽天陽和・d14267)
    空本・朔羅(うぃず師匠・d17395)
    詩月・和泉(碧緑ニ捧グ鋼響詩・d21145)

    ■リプレイ

    ●ゲリラ開催
     ビュォオオー……。
     海岸沿いに設置された駐車場は、吹く海風で凍えそうなほど寒い。
     だが、ドライスーツに身を包む、本気サーファーたちの顔は、大きな波への期待で明るい。
     そこへ……、
    「今からヒーローショーをするんで、ご協力よろしくっす!」
     規制のテープを手に、空本・朔羅(うぃず師匠・d17395)が駐車場の中を駆けまわる。
     海岸をぐるりと囲むように張られた規制線から、詩月・和泉(碧緑ニ捧グ鋼響詩・d21145)がショースタッフを装って人々を追い出す。
    「皆さん、楽しみにしてて下さいねっ!」
    「危ないのでここから中には入らないで下さいねー」
     奇妙な動きで子供を追い回す全身黒タイツは外法院・ウツロギ(毒電波発信源・d01207)だ。
     ちょっと怯えているものの、家族連れで来ていた父親と共にイベントを待ってくれている。
     後は暗黒ご当地パワーにより生まれた敵が現れるだけだった。
    「か、各地の名産品を壊して廻るだなんて……赦しがたい所業ですよっ」
     駐車場にある、いろんな食べ物の並ぶ屋台を見回し、柾・菊乃(退邪鬼・d12039)が憤る。
    「絶対バチが当たるんですからね! いいえ神様が当てなくたって私が当てます! 今日ここで!」
     ほかほかのたい焼きを手に握りしめて。
     木元・明莉(楽天陽和・d14267)も、お持ち帰り用の焼き芋を抱えて同意する。
     ……海、海といえばサーフィン、サーフィンといえば江の島。
     そこの連想は確かに一番ポピュラーかもなんだけど。
    「そこしか認めないってのはご当地の愛が暴走していると言わざるをえない!」
    「それを止めるのがヒーローの役目だぜ!」
     コロッケパンをもそもそ齧る野々上・アキラ(レッサーイエロー・d05895)も頷く。
     ――そこへついに黒い影が登場。
    「出たな怪人っ! おめーみたいのが県境越えたら、神奈川の恥だ! 文句あるなら、この山下公園の方を守るレッサーイエローが相手になるぜっ!」
     そう言い、砂浜のほうへと走っていく。
     それは、たなびくペナント頭と細長い手足の異様な姿の怪人だった。
     全身タイツの戦闘員らしき4人と共に、海岸へ追っていくのを見送り、片桐・公平(二丁流殺人鬼・d12525)はざわめき出す観客たちに落ち着くよう伝えた。
    「悪の組織が湯河原に現れましたね。さぁ、危ないですので、この線から内側に入ってこないでください」
     誘導を終えて、新しい飴の袋を開け公平は口に運ぶ。
     海岸ではすでに怪人と仲間たちが睨み合っていた。
     まず、その前に歩み出たのはシャルロッテ・クラウン(残念な海賊きゃぷてんくらうん・d12345)。
     可愛らしい海賊コスプレに、観客も微笑みながら観ている。
    「いだいなうみのおんな、きゃぷてんくらうんたぁ、あたしのことだ!」
     叫びと同時に、最終決戦モードが炸裂する。
     ドーーーン!
     なんか派手な音と、ゴテゴテした厳つい装飾に、キラキラ電飾までが光る最強形態水着に見た目が変わるシャルロッテ。
     ぱちぱちぱち……。
     その演出にまばらな拍手が起こる。
     喜ぶ子供と、笑顔で見守る親の姿。
    「……デパートの屋上じゃないんですがね」
     思わず本音を呟いてしまった。

    ●開演
     観客の前に立つと、和泉は深々と頭を下げながら、
    「さーて、それでは皆さんお立会い。此れよりショーの始まりで御座~い~……なんてね♪」
     初めは半信半疑だった周囲の人も、本格的な演出に大人も混ざって目を輝かせていた。
    「うみはいーよなぁ……でっかくて、そんででっかくて……えーと、ともかくでっけぇ!」
     かっこよく決めたいシャルロッテだが、子供ならではの語彙の少なさが邪魔をする。
     首を、いや、ペナントを傾ける怪人。
     すかさずアキラがフォローに入る。
    「とにかくお前は小さい奴って事だ! 江の島ペナント怪人!」
     ドーーン! ぱちぱち……。
     なんか派手な感じで剣を構えるアキラ。
     次に飛び出したのは朔羅と、その霊犬、師匠だった。
     砕ける荒波を背にポーズを決める彼女たち。
     ドドーーン! ぱちぱちぱち……。
     だが、その応援は、きりりと決めた霊犬へと浴びせられているように見えた。
    「なんか師匠ばっか、ずりいっすよ……」
     ドーーン!
     次に菊乃がちょっとセクシーな羽衣衣装で派手な音を立てる。
    「……あれ……ちょっと反応が薄くなってきた気が……」
     魅惑的な衣装に鼻の下を伸ばす男たちには気付かず、心配する菊乃。
    「や、やむを得ませんっ、こうなれば、とっておきのたい焼き水着を……」
     赤い顔で体をこわばらせる彼女の肩を、明莉がぽんと叩く。
    「まあ、待て。水着は……俺に任せとけっ!」
     そう言い、彼女の前に立つ明莉に、男性の観客からは不満そうな声が漏れた。
     なぜなら、この寒空の下、彼は海パン一丁でいたからだ。
    「ふふふ、これだけじゃねえぞ。……いくぜ! ミラクルパワー、大・変・身!」
    「きゃあああっ!」
     突如、自分の水着をずり下ろす明莉。菊乃は思わず顔を手で隠し……おそるおそる指の間から覗く。
    「あっ!? もう一枚履いてる!」
    「はははははっ、これが俺の大胆な水着だっ!」
     メタル色にウサギの柄、なんかトロピカルなヤシの木とかも書かれてる悪趣味なきわどいパンツに、愛用の斬艦刀までカラフルに塗って、まるでサーフボードのように小脇に抱える。
     ……。
    「(……あれ、なんか寒い……? 視線が……でも、俺、負けない……)」
    『邪魔をする気だっていうのはわかったべな~。でもこっちも江の島のペナントとして生まれ……ふごっ!?』
     白波が弾けるバックの下、怪人がうずくまる。
     苦しむ視線の先では、マジックミサイルを撃ってポーズを決めるウツロギがいた。
    『お、お前たち、やってやるぺな~!』
     股間を押えながら怪人が指示を出すと、一斉に黒タイツの強化一般人が襲いかかった。
     観客の頑張れという歓声を受けながら両者は衝突する。
     和泉は手の甲からエネルギー障壁を仲間の元まで覆うよう展開させる。
    「オーライ、相棒……派手に行きましょうか!」
     援護を受けて、ビハインドの刀が敵の手刀を弾く。
     交錯する中、公平は両の瞳に魔力を集中させる。
     見開く目が輝き、両手のガンナイフを構えて、敵陣へ向け駆けた。
    「すぐに終わらせますから……覚悟して下さい」
     シャルロッテは巨大なマストで敵の突進を止めると、そのまま振り回して叩きつける。
     負けじと菊乃も聖剣で斬りつける。
     その迫力に観客の歓声が盛り上がっていく。
    「くらえ、怪人っ!」
    『ぺなっ!?』
     素早く身をかわすペナント怪人の横を、アキラの神霊剣が音を立てて斬り裂く。
    「いくっすよ!」
     更に朔羅が小柄な体で飛びかかり、盾の障壁をぶつけた。
    『こざかしいっ、江の島キックぺな~!』
    「きゃっ!」
     長い足が彼女を突き飛ばす。すぐに霊犬の癒しで、立ち上がる朔羅。
     わぁっ、とひときわ大きな歓声が上がった。

    ●美味しい海の幸
     相手の全身タイツを凍結させたウツロギは、更に拳の連打を嬉々として打ち込んでいく。
    「ふぉぉぉぉぉう! ぽぉぅ!」
    『こ、このっ!?』
     反撃にも微動だにせず、まるでタイツに選ばれたのは自分だと言わんばかりの雄弁な拳。
     『いか』のピンチに、他のご当地黒子がウツロギに迫った。
     その手から、大量のしらす干しが渦を巻いて襲うのを、ビハインドが止める。
    「ナイス相棒。次は私の番ね」
     息を軽く吸い、和泉は独特なメロディを歌いあげる。
    『ぐぅっ……まずいわっ!』
     後ろに下がろうとする相手を、菊乃が追う。
    「くっ、足元が不安定ですっ、皆さんもご注意を!」
     慣れているのか砂浜をすたたたっと駆ける敵に、なかなか追いつけない。
    「了解しました。ならば、足止めしますよ」
     遥か遠くから火花と銃声が上がる。
     公平の援護射撃はご当地黒子の足元を確実に捉え、その足が止まる。
    「助かりますっ! 行きますよ、鬼神変っ!」
     巨大な鬼の手の平での往復ビンタを食らい、『いか』は海まで吹き飛んだ。
    「やったっす! きゃっ!?」
     江の島ビームを両手で防ぐ朔羅。
     その強烈な攻撃を全て受け止め、彼女の体は限界に近い。
     だが、その背後にいる観客を想えば、一歩も下がる事は、彼女にはできない。
    「誰にも手出しはさせないっす!」
     闘志に溢れた目を輝かせて、そう怪人に言い放った。
    『いかの仇ぃ! 江の島名物、しらすストーム!』
     黒子たちから放たれた小魚の渦に、一人を除いて灼滅者たちの顔がゆがむ。
     そこから和泉が飛び出した。
     ビハインドの影に身を潜め温存した体力で、一気に敵との距離を詰める。
    「ご退場頂きます……なんてね♪」
     槍を振り回し、敵陣を蹴散らす。海へと飛んでいく『いわのり』。
    『え、江の島ペナント怪人様、た、助け……きゃあっ!』
     吹き荒れるしらすの嵐を貫通し、公平の魔力の弾丸が正確に敵の頭部を撃ち抜いた。
     頭のプレートを破壊された『はまぐり』は、海へと駆けていき、飛び込む。
    「…………」
     公平は、もう何も言わずに飴を舐めて続けた。
     残る黒子へと明莉が迫る。
    「お前の相手は俺だぁっ!」
     敵の攻撃を斬艦刀で受け止めながら駆け寄る彼に、黒子が飛びかかる。
     ずしりと重い感触に、明莉は動けなくなった。
    「何っ? 俺の刀をサーフボードに!?」
     相手の体重を受け止めて耐える明莉。だが、ふっと軽くなった。
     ビハインドに飛びかかられて、共に砂地に落下する黒子。そこへ明莉の指輪が光った。
    『あっ、あああっ!?』
     足元から石化していき、ついにはタイツ全体が石と化してしまった黒子。
     ビハインドの暗が海へと投げ入れると、『さざえ』だった全身タイツが壊れ、普通の一般水着ギャルが現れるのが見えた。
     黒子たち全員が居なくなり、ウツロギが全身タイツの下でにやりと笑ったように見えた。
     迫力に、観客のボルテージも最高潮に達していた。
     だが――、
    「くそっ、離せっ、うわあっ!」
    『江の島名物、トンビ投げぺな~!』
     上空から高速で舞い降りるペナント怪人に攫われたアキラは、そのまま砂地へと叩きつけられた。
     噴煙の中、震える膝でなんとか立ち上がるアキラ。
    「オレが知ってる江の島の人たちは、みんな心が広くて優しかったぜ……お前、そんな乱暴なことをして、弁天様が泣いてるぞ!」
     観客の拍手を受けて、彼のヒーロー心に火が付いた。

    ●そうだ江の島にいこう
     少しでも隙を見せると攫われる、その必殺技はまさにトンビそのもの。
     援護するため、両手で構えるガンナイフを連射する公平だが、弱そうな見た目とは違い、敵はなかなかの耐久力を誇っているようだ。
    「しかしまぁ、ダークネスにも色々あるみたいですが……ご当地怪人のやる事というのは、よくわかりませんね」
     琵琶湖に集結するペナント怪人の一人。
     企みはまだ見えなくとも、ここで止めるのは当然の事。
     がりっと飴を噛み砕く公平から、連続する炸裂音が次々に怪人を襲った。
    「ここであったが……あれ? えーと……、ともかくひさしぶりだなぁ、えのしまとんびぃ!」
     人差し指を向けるのはシャルロッテ。
     何かトンビに因縁があるらしく、その目は復讐に燃えていた。
     上空から襲いかかる怪人に、彼女は手を差し出す。
     ぴーひょろろ~。
    「はーっはっは! とんびのしゅーせーなんざ、おみとーしよ! ……あれぇ?」
     それはサンドイッチだ。
     だが、どこからか狙っていた鳶がそれをかっさらい、呆気にとられるシャルロッテ。
    「やっぱとんびはきらいだー!」
     砂浜に埋もれながら叫んだ。
    『し、しぶといぺな~』
     だが、やられてもすぐに立ち上がる灼滅者を前に、怪人もどこか疲れた様子。
     その隙に、背後からアキラが怪人を羽交い絞めにした。
    「トンビに攫われたコロッケパンの恨み、今こそ晴らす時。食らえ、カモメダイナミック!」
    『ぐわぁぺな~!』
     優雅に空へ飛び上り、怪人を地面に叩きつける。
     ペナントが砂地に埋まってしまった怪人へ、指を鳴らしながら明莉が歩み寄る。
    「愛するモノの為に他のモノも受け入れる、そんな懐の広さが『本物の愛』ってヤツだ!」
     きわどい水着で彼は本物の愛を語る。
     ずぼっと頭を抜いた怪人へ、抗雷撃をお見舞いする明莉。
     更にそこへ菊乃が砂地を滑るように駆け、手にした丸太みたいな木刀をフルスイングする。
    「その御首級、頂戴致しますっ!」
     唸りを上げて迫る丸太を、ペナントを折り曲げて避ける怪人。
     二度、三度と振り回されるのを、なんとかぎりぎり避け続ける。
    『江の島のサーファーのためにも、ここでやられるわけにはいかないぺな~!』
    「あ、ゴメン、私、内陸育ちだからマリンスポーツ良くわからないんですけど」
     そう言って、和泉の槍が背後から敵をえぐった。
     引き抜こうとする槍が、止まる。
    「あ……やば」
    『この海知らずがぺな~!』
     刺さる槍ごと、和泉の体が空へと運ばれる。そして、頭から地面へと急降下し、勢いよく衝突させられてしまった。
     すぐに駆け寄るビハインドと、霊犬の浄霊眼で、なんとか目を開ける事ができた。
    「うーしんどい。でも、諦めたくないもんね!」
     降り立つ怪人を待ち受けていたのは、背中を向けて首だけこっちに回しているウツロギだった。
    「ヒャッハー!」
     その体勢から繰り出す影による斬撃。
     アゲハ蝶の形の影は彼がポーズを変えるごとに敵の死角に飛び、その身を切り刻む。
    『ど、退くぺな~!』
     怪人のキックを尻に食らい、それでも嬉しそうに立ち上がるウツロギ。
    「……ハァハァ」
    『こ、こいつらは何者ぺな~!?』
    「私たちはただの灼滅者っす!」
     朔羅のご当地ビームがペナントに命中し、怪人は顔を押えて苦しむ。
    『うっ目が、目がぺな~!?』
    「はっさくの汁っす。目に入ると痛いっすよね?」
     そこに撃ち込まれる弾丸の楔。
    「予測不可能な事は苦手なので、もう動かないで下さい」
     公平の連射は怪人の手に、脚に穴を開けていった。
    「おめーはさめのえさな!」
     シャルロッテの影業が敵に食らいつき、ボキボキと折れる音が鳴る。
     気がつけば、ペナント怪人は空中にいた。
    「間違ったご当地愛……お前、次は良い怪人に生まれてこいよ……」
    『あ、安土城怪人様……っ!』
     地面へと投げられる怪人。
     海をバックに爆発音と、巨大な火柱が上がり、ペナント怪人は灼滅された。
    「あ……」
     江の島、と書かれたペナントが海風にそよぎ、北東の方角へ飛ばされていった。
     ――わあああっ! ぱちぱちぱち!
     歓声の前で、和泉は空元気を見せ、お辞儀を返す。
    「此れにてショーは無事閉幕、皆々様お楽しみ頂けたなら幸いかと……ってね♪」
     もう一度、割れんばかりの拍手が皆を包む。

     海に漂う、一般人たちを救出した灼滅者たち。
    「お疲れ様っした! お怪我は大丈夫っすか?」
     自分の怪我をよそに、朔羅は元気に走り回って仲間の傷を心配する。
     その後ろを霊犬が心配げについて走っていた。

    作者:智葉謙治 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月9日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 6/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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