「す、すいません。今日はプライベートなんで……仕方ありません、かくなる上は――」
閑静な住宅街にあるオープンカフェのテラスで、黒髪ワンピースの少女が手にエナジーを集めて目の前の水兵セーラ服の少年を力ずくで排除しようと――。
「だー! 待って待って! 違うから! ボクは」
慌てた少年が初花の手を強引につかむと有無を言わせず、自分の胸をさわらせる。
「ぁん、って、そんなに揉まなくても……」
「女の子だったんですね。なら撮られても大丈夫です。えっと……ファンの方ですか? すいません、今はプライベートなので――」
「だから違うって! ボクはセーラ、キミをスカウトに来たんだ。ラブリンスターの事務所なんてやめてスキュラ様の陣営においでよ」
淫魔セーラは持ってきた紅茶とケーキの差し入れをしつつ、スキュラがいかに素晴らしいかを語り出す。
曰く、スキュラは人脈も人徳もあり、仲間をとても大切にする人だと……。
そして最後に。
「だいたいキミの路線は『清純派』なんだろう? ラブリンスターのキャッチコピーを言ってみなよ?」
「え? それは『歌って踊ってエッチもでき――』」
「そこ! ほら、事務所一押しの先輩が『エッチもできる』だなんて、そんなイメージの事務所にいたら、キミのイメージなんてあったもんじゃないだろう?」
「……う、うう……そ、それは私も悩んでる所で……」
そしてラブリンスター配下の清純派アイドル淫魔・初花は、淫魔セーラの勧誘に乗りスキュラ派へと移籍契約を結ぶのだった。
「みんな、芸術発表会にラブリンスターがやってきたのは知ってる?」
エクスブレインの鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)がみなを見回しながら聞いてくる。
大淫魔ラブリンスター、彼女も武蔵坂学園の芸術発表会を楽しんでくれたようだが、珠希がいうには彼女は少しだけお願いを学園にしていったらしく……。
「ラブリンスター配下の淫魔に、スキュラ配下の淫魔が強引な勧誘をかけて寝返らせようとしているみたいなの」
それは風真・和弥(真冥途骸・d03497)が予想し懸念した案件とドンピシャだった。
「ダークネスの言うことを聞くのは正直納得いかないけど、スキュラ派は確実に武蔵坂学園と敵対しているし、そこの戦力が増強されるのは阻止するべきだと思うの」
それに……と珠希は真剣な表情で。
「みんなが望むなら勧誘とか無視して、即座に勧誘する淫真と勧誘される淫魔、両方を灼滅するよう動いても良いわ」
ラブリンスターからはスキュラ派に寝返った淫魔はかわいそうだけど灼滅されても仕方がない――との言質は取ってあるという。利用しない手は無い。
「まぁ、安全をとってもスキュラ派の淫魔を灼滅できれば十分ともいえるわね。無理をしてみんなが大変な事になるのは、おすすめしないわ」
そういうと珠希は今回の依頼の状況を説明する。
「場所は閑静な住宅街にあるオープンカフェよ、お客はテラスにいる初花っていうラブリンスター派の淫魔だけ。カフェに面した道路を人が通る事もなさそうだから、一般人の対処については考えないで大丈夫よ」
灼滅者が到着するのは、初花を勧誘しようとする淫魔セーラの誤解が解けた後らしい。つまりセーラが説得に入るタイミングで到着できる。
「セーラの勧誘の邪魔をして初花の味方になってあげられれば、初花は気分良く帰っちゃうから、その後で怒ってるセーラを倒すだけの任務になると思う。ただ、その勧誘の邪魔に失敗して初花がセーラの味方になると……」
2体のダークネスを相手にするハメになる。そうなったら何とか片方だけでも灼滅できれば御の字だろう。片方が灼滅されればもう片方は逃げ出すはずだと珠希は言う。
「一応、スキュラ派のセーラが言いそうな事の中で、一番決め手となるセリフだけは解ってるから教えておくわね」
珠希は初花を勧誘するセーラの台詞を説明する。
『エッチもできる』と豪語するラブリンスターと同じ事務所な事は、確かに清純派のていを守ろうとする初花自身にとって、常に悩んでいた事のようだ。
ちなみに戦闘になった際だが、セーラはサウンドソルジャーとウロボロスブレイドに似たサイキックを使用し、攻撃一辺倒な戦い方をするらしい。神秘攻撃は半端無い威力なので対策はした方が良いという。
ついでに言っておくと初花はサウンドソルジャーとWOKシールドに似たサイキックで支援役が得意との事だ。
「ああ。それとコレは初花っていう淫魔に限った事なんだけど……」
説明が終わろうかというタイミングで珠希が付け足す。
「清純派のイメージを大切にしてるみたいで、どうもプライベートで男性と一緒にいるのを嫌がるみたいなの。上手い理由でも無い限り、強引に排除してくる可能性もあるから気を付けて」
具体的に言うなら、男性と一緒にいると週刊誌に載る事を心配しているらしく(載らないのだが)、いなくなってくれない場合は遠慮なく攻撃して排除しようとするらしい。はた迷惑も甚だしい。
「えっと、そういうわけだから……行くみんなは、その辺も気をつけて! それじゃあ、よろしくね!」
参加者 | |
---|---|
龍宮・神奈(闘天緑龍・d00101) |
仙道・司(オウルバロン・d00813) |
墨沢・由希奈(墨染直路・d01252) |
若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426) |
風真・和弥(空斬烈破・d03497) |
斎藤・斎(夜の虹・d04820) |
焔城・虚雨(フリーダム少女・d15536) |
黒芭・うらり(中学生ご当地ヒーロー・d15602) |
●
閑静な住宅街にあるオープンカフェのテラスでは、淫魔初花の誤解を説いた淫魔セーラが事務所移籍の勧誘を始めていた。
「ちょっと待ったぁ、なのですっ!」
ガッ!
唐突に響いた声と飛び蹴りに、道路の電柱まで蹴り飛ばされるセーラ。
「何するのさ!」
起きあがったセーラが、飛び蹴りをかましてきた仙道・司(オウルバロン・d00813)を指差し非難する。
だが、司はくるりと初花を見て。
「事務所の先輩のことで悩んでるんですよね?」
「どうしてそれを」
「大丈夫、ラブリンスターさんはピュアにエッチを追求しています。その真っ直ぐな姿勢こそ『清純派』に相応しいのではないでしょうか?」
そこに割って入ってくるセーラ。
「キミたち何!? ボクの邪魔しないでよ!」
怒りながら指を突きつけてくるが、さらに3人の人影が立ち塞がる。
一瞬眉間に皺を寄せるセーラ、初花の方も困惑顔だ。
そんな3人のうち焔城・虚雨(フリーダム少女・d15536)が初花のほうを向くと。
「やっほー! 初花ちゃん! 毎度おなじみ灼滅者です♪」
笑顔で自己紹介。
「話は聞いたけど、自分のキャラを守る為に可愛がってくれたラブリンを裏切って移籍なんかしたら、皆から腹黒キャラって思われるわよ?」
「ええ!?」
「そしたら『失望しました。ファンやめます』とか言われちゃう!」
「こ、困ります!」
涙目で首を横に振る初花。
「それに彼女を見てください!」
司がセーラを指差す。視線を浴びて、とりあえず色っぽいポーズを取るセーラ。
「スキュラの配下になったら、あんな色気ない感じになっちゃうかもですよ!?」
「なっ!?」
真っ赤になってセーラが抗議するも、若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426)に「まーまー」と押さえられる。
しかし意外な一言が初花の口から発せられる!
「でも、けっこう有りましたよ、胸?」
「えー」
「ふんっ」
不満顔の司と、自慢げなセーラ。
「って、だいたい! キミは三つ編みなんてしてるけど、男の子なんじゃないの?」
「ち、違う違う! ボクも女の子ですので!?」
初花の手を掴んで胸を触って貰って誤解を解く司。
「あ、本当ですね」
「ボクの方が大きいけどね」
さらっと司の胸を触ったセーラが上から目線。
カチンと来た司が何か言い返そうとするが――。
「まぁ、それはともかく、移籍の話です」
ぶった切って話を戻すめぐみ。
「前の事務所を円満に辞めての移籍なら別ですけど、そうでないならスキャンダルですよ」
「スキャンダル!?」
「はい。めぐみとしては、それは清純派としては致命的になる気がします。ましてや黒い噂があるスキュラさんの所なんて論外です」
「ちょっと、うちに黒い噂があるってどういうことさ!」
セーラが食ってかかってくる。
「えっと、それは……」
二の句が続かないめぐみ。
「うちの評判を落とそうとか勘弁して欲しいよ。まぁ、こういうこともこの世界じゃ日常茶飯事かもしれないけどさ」
セーラの台詞に初花も「いろいろありますよねぇ」としみじみ。
「アイドル業界も大変なのね……」
黒芭・うらり(中学生ご当地ヒーロー・d15602)が、いつの間にか2人と仲良く井戸端会議。
そんなうらりがどっちの味方でも無い立場のまま。
「大事なのは初花さんがラブリンスターさんとスキュラさん、どっちが好きか、どっちの元でアイドルを続けたいか、ってことじゃないかな?」
結構まともにまとめた。
全員の視線が初花に集まり。
「えっと……好きなのはファンの皆様ですし、どっちのもとでと言うと……やっぱりエッチな先輩と同じというのは印象悪いですよね……」
正直、旗色の悪いくなってきた。
●
風真・和弥(空斬烈破・d03497)は1人ハーレム状態だった。
しかし……。
「(素直に喜べねぇ……)」
長いため息を吐く和弥。
「えっと、化粧道具とかカーラーとかヘアマニキュアとか、思いつく限りのものを持ってきてみたよっ」
「私も手伝います……えっと、でもお化粧ってあまりしたことなくて……」
「じゃあ教えてあげる! 今流行なのはこんな感じで……」
和弥の周りで騒ぐのは墨沢・由希奈(墨染直路・d01252)と斎藤・斎(夜の虹・d04820)。
2人は和弥をテキパキと女装させていく。
「(どうしてこうなった……)」
なされるがままの和弥。
頬にチークを入れながら目を輝かせた由希奈が。
「はい、口を結んで笑顔にしてねー、うん、そうそう。あ、爪もやっておかないとね!」
嬉しそうな由希奈に和弥が死んだ魚のような目で訴える。
「わ、私だって仕方なくやってるんだよ? 依頼のために」
和弥の視線から逃げるように目を泳がせ言い訳をする由希奈。
「これも必要だろう? 買ってきたぜ」
龍宮・神奈(闘天緑龍・d00101)が肉まんを2つ買ってくる。
ナイスアドヴァイス!
そして。
「これでメイクは完成ね。服は……」
「ああ、自前で持ってきた」
ズザッと3人が距離を取る。
「違げー! 性能が良いから捨てられずに持ってたんだよ!」
叫ぶ和弥だが、疑惑は一時棚置きで斎がコートを渡してくれる。
「体の線も隠せると思いますよ」
「あ、ああ」
メイド服の上にコートを羽織る和弥。
「……き、きれいだとおもいますよ?」
完全に笑いを我慢している斎。
そしてここに、和弥は冥途骸となったのだった。
●
灼滅者達が形勢不利なタイミングで、セーラがここぞとばかりに初花を勧誘してくる。
その時だった。
「あ、すみません。サイン下さいませんか?」
セーラと初花の間に割り込んで来たのは斎だった。
「はい、いいですよ」
初花が素直に差し出されたスマホカバーにすらすらとサインをし、逆に話の腰を折られたセーラは憮然とする。
「ありがとうございます。ところで、そのぉ……ちょっと聞こえてしまったのですが、まこと清純派ならば、丁寧にファン相手の対応をし、事務所の先輩は立て、『エッチって何ですか?』と流し、ついでにトイレにも行かないものです……って、前におばあちゃんが言っていました」
さらりと(?)話題に乗って捲し立てた斎だが、初花は斎の手を持ちうんうん頷く。
「素敵なお婆様をお持ちですね!」
「ちょっと、ちょっと、ちょっと!」
強引に斎と初花を両手で押しのけるようにセーラが言う。
「4人も何なの! それにそこの変態は何!」
ビシッとメイドな和弥を指差すセーラに、初花も「すいません、男の方とは……」と。
「いやいや、こんなに可愛い子が男の子の筈ないじゃないですかっ!」
「た、確かに……」
慌ててフォローした司の言葉をすんなり受け入れようとする初花。
「どう見ても男じゃないか!」
セーラはぎゃんぎゃん言っているが……。
「どこがですか!」
セーラに対抗して司が貼り合う。
しかし。
「いや、俺は男だ」
和弥本人が肯定。
「ええ!?」
「いや、だって女装癖があるとか思われたく無いしな」
もっともだ。
「それに、この格好なら写真を取られても問題無いだろ?」
そのセリフに対しセーラが。
「男のあんたは写真撮られて問題あるんじゃないの?」
と、ツッコミを入れて来たがスルー。だってそこは考えたく無いし。
戸惑う初花。
そこでさらに虚雨がフォロー。
「真偽はどうあれ、女の子に見えるなら写真に撮られても大丈夫じゃない? 逆に男の子の格好をしている人からは離れたほうがいいと思うよ?」
「そう言われてみれば……その通りですね」
司とセーラから距離を置く初花。そしてメイド服の和弥に向き直ると。
「それにしても、そこまでして私とお話したいファンの方がいるなんて……私、感激です」
うるうると感激する。
「いや、えっと……まぁいいや。兎に角、だ。俺も1つ言わせてくれ。事務所へ相談もせず移籍を決めたり尊敬している相手を見限ったりするのは、正直、清純派としてどうなんだって思うぜ?」
「そ、それは……確かにラブリンスター先輩には……」
「恩でも、あるのか?」
俯く初花に神奈が聞く。
「恩というか……良くしてくれてる先輩ですし……」
「なんだって良いさ。ただ、そういう気持ちを大事にできなきゃ、どこに行ってもやっていけはしねーぜ」
「うぅ……」
言葉を詰まらせる初花。
その初花の肩にポンと手が置かれる。振り向けば由希奈だった。
「花は冬の間は雪の中で過ごして、春になると自分の力で雪を溶かして出てくるの……清純派は、そういう忍耐力も求められるんだよっ」
「めぐみもそう思います」
司と共にセーラがチャチャを入れてくるのを妨害していためぐみが口を挟む。
「それに、別に同じ事務所にえっち路線な人がいても、清純派路線で売る事には何の障害にもならないと思いますよ?」
「え?」
めぐみの言葉に司と虚雨も。
「そうそう、事務所には色々な路線を歩むアイドルが居た方が対比として目立つ筈!」
「逆にエッチなお姉さんとは正反対の清純派妹キャラとして売っていくのも有りよね?」
そしてどちらに味方するでもなかったうらりが初花の前に出て言う。
「アイドル業界の事は良く判らないけど……事務所の先輩達には無い持ち味を出すことで存在感を出すと言うか……ナンバーワンよりオンリーワンというか」
「私に、世界にひとつだけの花になれ、と?」
「そうそう、そんな感じの売りを作れるんじゃないかな! かな!」
灼滅者達の言葉にフッと迷っていた心が軽くなった気がする初花は、どこかすっきりした顔で。
「ありがとう、ございます。私、もう少しラブリンスター先輩と同じ事務所で頑張ってみようと思います」
●
初花は8人に頭を下げてお礼を言うと、司からのマカロンを「先輩にプレゼントします、きっと喜ぶから」と笑いながら受け取り。
「いろいろお話できて良かったです」
お別れ前に微笑む初花。
「最後に一言、いいでしょうか?」
初花の去り際にめぐみが言う。
「清純派が騙されやすいのは演技で大丈夫ですよ? 本当にそれでは、今回みたいな事があった時に自分を守れないですから……そこは、改めた方がいいと思います」
アイドルの卵には言われたくないかもしれませんけど……そう、最後は小さく呟くめぐみ。
初花はスッと手を出し、めぐみが戸惑うとその手を掴んで強引に握手。
「私もまだまだです。お互い頑張りましょう」
初花はそう言うと、笑顔で別れを告げて去って行った。
そして。
「大人しかったな、初花が帰るって所で暴れるかと思ってたのによ」
神奈の言葉に、憮然としたままのセーラが答える。
「だって初花がそっちに付いたらボクの邪魔をされるかもしれないじゃないか……キミ達を……惨殺するね!」
言葉と共にセーラがスカーフをシュルリと取ると刃物独特の煌めきを放ち始める。
「まあ、アイドルの世界がどうとかはわからねーんだが……」
神奈がカードから槍を右手に出現させクルリと構える。
「一時的とはいえ、ラブリンスターは俺らの仲間みたいなもんだ。そいつの頼みを聞いてやらな、男が廃るってもんだぜ!」
右手の槍に炎を纏わせセーラに突っ込む神奈。
「遅いよ!」
セーラが長い布を振るうと前衛全員が叩きのめされる。それはまるで布自体が生きているようであった。
だがいつの間にか周囲に霧が立ち込め、前衛の姿を虚ろにしていく。
「お怪我はありませんか?」
仲間達を回復させた斎が呟く。
「それにしても……自称清純派な方ってなんで残念な方が多いのでしょう?」
「残念だと思ってるなら、なんで邪魔するのさ!」
「それはもちろん、明確な敵に戦力が移動するのは避けたいですし」
「打算だ!」
セーラに答えたのは由希奈だった。
「それはこっちの台詞よ! それに、ヘッドハンティングは事務所の方針でお断り、だよっ!」
その手を鬼化させ袈裟掛けに振るう由希奈。
回避しきれず左の二の腕を割かれるセーラだが、さらにハッとして大きく後ろへ跳躍。
同時。
「磯の香り、漁港ビーム!」
うらりのご当地ビームが大地を焼く。
さらに虚雨が持つ魔力を乗せた御神木の枝を伸ばしたスカーフで弾き相殺。
だが、灼滅者達の連携はそこで終わりでは無かった。
ザッ!
女装の冥途骸――じゃない和弥が風の如き剣閃にてセーラを斬り裂く。
「くっ」
セーラの胸元が僅かに裂かれる。
「浅かったか……だが、俺の予想は当たりだな」
「予想?」
「ああ、お前はなかなか胸があると、そう睨んでいた」
とカッコ良く決める和弥。
一方、セーラと他7人の灼滅者は……。
――ザザッ。
微妙に2歩、和弥から距離を置いたのだった。
セーラとの戦いは続き、双方ともにかなりのダメージが蓄積されていた。
「最初にボクを蹴った恨み、忘れてないよ!」
セーラの布が一気に伸びて司へ、そして並んでいた虚雨へも迫る。
ガッ!
しかし、布は司を庇っためぐみによって防がれ、さらにうらりがまぐろを……違う、まぐろ型の槍を振るい。
「清浄なる海の守り! パシフィックバリアー!」
前衛の仲間達を守る用に不可視のシールドを展開させる。
「ありがとね!」
うらりの霊犬・黒潮号に傷を癒してもらう虚雨がお礼を言う。
だが、セーラの狙いはこの後だ。今の攻撃でスカーフの威力が倍増された。この次の攻撃で……。
その瞬間、セーラの顔に影が落ちた。
ザシュ!
上空からの由希奈の剣が、スカーフに付与された力ごとセーラを切り裂く。
「悪いけど、エンチャントなんてさせないよっ」
自身への付与がブレイクされた事にセーラが。
「たかが! たかが出来損ないのくせに!」
「そっちこそどうなの? 同種族同士で争ってさ」
「キミたちには関係無い!」
「まあね……じゃあ私はラブリンのファンだからラブリンの味方しまーす♪」
虚雨の手から雷がほど走りセーラをうつ。
「くっ……」
服も焦げつつフラフラと後ずさるセーラ。しかし――。
目の前には二又の矛先がまるで龍の牙ような槍を構えた神奈がおり……。
「話は終わりだ。じゃあな!」
ドッ!
振り抜かれた龍牙に貫かれ、淫魔・セーラは灼滅されたのだった。
戦いは終わり閑静な住宅街は再び平和な昼下がりを取り戻す。
ふと司が初花の去って行った方向を見ながら。
「あの子の設定……悪い男に騙され堕ちてくアイドルフラグな気もします……」
「めぐみもソコは心配です」
コクリとめぐみも同意する、ダークネスなので敵ではあるのだが……。
「あ」
思わず声を出した斎に皆の視線が集まる。
「せっかくならお茶でもして帰りませんか?」
見れば初花がお茶をしていたオープンテラスのカフェは被害も受けずに無事である。
灼滅者の皆も「それは良い」と声を揃え……しかし、ハッとして1人に視線が集まる。
「いや……いいさ、お茶して帰ろうぜ」
女装メイドの和弥が呟き、カフェへと入って行く。
和弥の心情はただ一つ――。
「(色々と……疲れたよ……)」
作者:相原あきと |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 8
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