「お疲れ様でしたー!」
スタジオに少女の元気な声が響く。彼女の名前は「まなみん」。
最近ラブリンスター配下となってアイドル活動を始めた新人淫魔だ。
デビュー目指して現在、絶賛営業中である。
その休憩室で事件は起きた。
「ちょっとそこのあなた」
不意の呼びかけに振り向くと、知らない女がそこにいた。
「あなた、何者? ただの人間……じゃない。淫魔ね」
「ふふふ、察しがいいわね。私はあなたをスキュラ様の配下に勧誘しに来たのよ」
「ド直球!? 本気なの? わたしはラブリンスター様の忠実な配下だよ。スキュラなんかになびくわけがないでしょ」
「私の話を聞いてもそう言えるかしら?」
「ふん、何を言ったって無駄だよ!」
まなみんの言葉に淫魔は笑みを浮べ、おもむろにポケットからそれを取り出した。
それは、糸に吊るした五円玉だった。
「ほ~ら、あなたはだんだんスキュラ様の配下になりたくなる~」
女が語りかけるのに合わせて、五円玉がゆっくりと左右に揺れる。
すると何故だろう。淫魔の言葉が頭から離れなくなる。
「ていうかラブリンスターって何よ(笑)。だいたい衣装も曲名もセンス古すぎ(笑)。人間なんかに媚びちゃってるくせに大淫魔って(笑)。マジ引くわー(笑)」
「ぐはっ! 台詞の随所に(笑)を入れてくる効果的なディスり!」
「それに比べてスキュラ様は素晴らしいお方よ。あの美しい唇、艶やかな尾、欲望を解き放つ歌。ああ、私もあのお方に撫でられたい。どう? あなたもスキュラ様に尽くしたくなったでしょう?」
「イヤ、よ……わ、わたしは……ラブリンスター様の……忠実な……」
「あんな淫魔のどこがいいの?」
「そんなことないもん、ラブリンスター様にだっていいところあるもん。えっと……えっと……」
「ほ~ら、ないじゃない」
「そん……な、こと……」
だんだんまなみんの目がぐるぐるしてきた。
「ほ~ら、あなたはだんだんスキュラ様の配下になりたくなる~」
「す、スキュラさまぁ~」
須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)は先日の出来事を思い出しながら、依頼の説明を始めた。
「芸術発表会にラブリンスターがやってきたのはびっくりしたよねぇ。それで、彼女から少しだけお願いをされちゃったんだよ」
どうやら、風真・和弥(真冥途骸・d03497)が予想していた事態が起こっているようなのだ。
その事態とは、「ラブリンスター配下の淫魔に、スキュラ配下の淫魔が強引な勧誘をかけて寝返らせようとしているらしい」というものだ。
スキュラ配下は怪しい技を使って、ラブリンスター配下を籠絡しているらしく、もしよければ、何とかしてほしいという事だった。
「ダークネスの頼みを聞く理由はないんだけど、スキュラ勢力の戦力が増強されるのも問題なんだ」
また、スキュラ配下の淫魔を灼滅する機会ともなるので、ある意味チャンスとも言える。
スキュラ側に寝返った淫魔についてはラブリンスターから、
『哀しいけど灼滅されてもしょうがないですよね』
という言葉をもらっているので、場合によっては、両方の淫魔を灼滅する作戦を取ることもできるだろう。
「一般人の被害者がいるわけでもないし、いろいろ慌ただしい中なんだけど、手を貸してくれないかな?」
スキュラ配下の淫魔「ミンコ」は、糸につるした五円玉を使った催眠暗示で、ラブリンスター配下の淫魔「まなみん」を強引に勧誘している。
「このままだと勧誘されたまなみんは、スキュラの配下になっちゃうよ」
それを阻止するためには、まなみんが勧誘されている状況で乱入し、ラブリンスター側にとどまるように説得する必要があるという。
「その説得方法なんだけどね……ラブリンスターを褒める! スキュラに負けないくらい、ラブリンスターの良い所を熱く語る! これしかないみたい」
まりんは真顔で言い放った。
君達にはラブリンスターがいかにスキュラよりも優れているか、まなみんに語り聞かせてアピールしてもらう。
ラブリンスターの魅力を思い出せば、きっと彼女も目を覚ますはずだ。
「みんなの言葉が彼女の心に響けば、まなみんは戦闘に加わらないでくれるよ。そうなれば敵はスキュラ配下のミンコだけ!」
しかし失敗した場合は、まなみんが寝返ってしまい、敵の淫魔が2体となってしまう。
ダークネス2体とまともに戦うのは、かなり厳しい。
だが、どちらか一方でも灼滅するか撤退させられれば、残りの1体も撤退していく。集中攻撃をすれば、撃退する事は不可能では無いだろう。
戦闘になった場合、「ミンコ」は、主にディーヴァズメロディでスキュラの素晴らしさを謳い、敵に催眠をかけようとする。
「スキュラ自慢を歌に乗せて聞かせた挙句に、催眠効果でスキュラ信者に引き込もうとするなんて……恐ろしい勧誘能力とスキュラ愛だね」
そしてまなみんは、エンジェリックボイスを主に使用して戦う。聞いたものを元気にさせる彼女の美声は、もし敵に回せばかなり厄介だろう。
「まさかみんなにこんなお願いをすることになるなんてね。なんていうかホント、いろんな意味で頑張って」
参加者 | |
---|---|
仰木・瞭(朔夜の月影・d00999) |
上條・和麻(社会的底辺の男・d03212) |
坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041) |
ンーバルバパヤ・モチモチムール(ニョホホランド固有種・d09511) |
志那都・達人(風日祈・d10457) |
物部・七星(一霊四魂・d11941) |
綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953) |
枝折・真昼(リヴァーブハウラー・d18616) |
●
「ほ~ら、あなたはだんだんスキュラ様の配下になりたくなる~」
ミンコがまなみんの前で五円玉を揺らす。
もう少し。そう思った時だった。
「ちょっと待てぇーっ!」
枝折・真昼(リヴァーブハウラー・d18616)の大声が休憩室にどーん!と響いた。
「ハッ!?」
その声にまなみんの催眠が中断される。
声のした方を振り向くミンコ。
そこには8人の少年少女が立っていた。約一名、身長差に「ぐぬぬ」しているが。
邪魔をしに来たと、仰木・瞭(朔夜の月影・d00999)と物部・七星(一霊四魂・d11941)が告げた。
綾町・鈴乃(無垢な純白・d15953)はビシッ!とミンコを指差す。
「さいみんじゅつでひとのこころをあやつるのはひきょうなのです!」
「何よ、私はただスキュラ様の素晴らしさを――」
「はいはい、一方的なスキュラ推しはそこまで」
と、扉の前で志那都・達人(風日祈・d10457)が手を叩く。
「貴方達には関係ないでしょ?」
「ラブリンスターの所の連中は嫌いじゃない。だから助けないと、な」
答えたのは坂村・未来(中学生サウンドソルジャー・d06041)だった。
「しかし、其処までするとは……スキュラの所も台所事情が厳しい様だ、な」
「関係ないわ。私はただスキュラ様の魅力を布教してるだけ」
さりげなく休憩室の扉を塞ぎ、達人は提案する。
「なら一つ勝負をしよう。僕らと君とどちらが褒めるのが上手いか、さ」
休憩室に一般人がやってくる気配はない。
サウンドシャッターと殺界形成が、上手く作用しているのだろう。
これなら存分にラブリンスターとスキュラの魅力を語ることが出来る。
「フッ、いいわ。スキュラ様は人生。それを教えてあげる!」
我が意を得たり。
ミンコはにやりと笑んだ。
まなみんはまだ催眠状態で、虚ろな目をしている。
彼女までこんなスキュラ信者にするわけにはいかない。
上條・和麻(社会的底辺の男・d03212)は内心で決意する。
「ラブリンスターの魅力を語り尽くす」と。
そう言うとンーバルバパヤ・モチモチムール(ニョホホランド固有種・d09511)は穴の開いた硬貨を取り出した。
「5クローネ硬貨で対抗するヨー」
●
口火を切ったのはミンコだった。
「ラブリンスター? スキュラ様の劣化版アイドル被れ淫魔の何がいいの?(笑) いいとこなんか一個もないって、その子もさっき認めたわよ(笑)」
勝ち誇った顔で、まなみんを指すミンコ。
得意げにラブリンスターをディスる彼女を制止したのは瞭だった。
「待ってください。スキュラさんには無く、ラブリンスターさんにあるものがありますよ」
「なんですって?」
「母性です。ラブリンスターさんは我々人間相手でも驕ることなく接し、配下の方々を助ける為にこうして依頼までします」
瞭の反論にミンコの眉がピクリと動く。
「母性ならスキュラ様にだってあるわよ! ほら、えと、お胸とかおっきいし! あれこそ大淫魔の貫禄よ!」
「お胸ならラブリンスターだって!」
「ごふっ」
画面端で未来が血を吐いた。
乾いた笑いを浮かべながら自分の胸板を撫でる。
ストン……。
「ハ、ハハハ……」
「ラブリンの良いトコロ。割と友好的なとことか、自分の定めたルール(アイドル的な云々)からはみ出した行動を取らない(と思う)ヨー」
ンーバルバパヤは5クローネ硬貨をまなみんの前で揺らす。
「お互いを高め合う集団の代表を務めている(ような印象を受ける)とか、夢とかやりたい事に向かって一直線だヨー」
「ちょっと、ズルいわよ! 私だって。ほ~ら、スキュラ様の配下になりなさ~い」
負けじと五円玉を揺らすミンコ。
「らぶりん……すきゅら……どっちを選べば……」
目をぐるぐるまわすまなみんに真昼が駆け寄った。
「断然ラブリンスターの方がいいって! バベルの鎖がある現代社会でアイドル活動出来てるのは、どのダークネス勢力探したってラブリンスターしかいねぇもん!」
終始ハイテンションで真昼はミンコを押し切る。
達人は同意するように、
「バベルの鎖の影響に負けず、アイドル活動頑張るところとか。制約がある中でも、妥協せず頑張れるのは凄いと思う」
微笑みまなみんに語りかける。
「今動ける中で最強クラスだけど、それを鼻にかけた言動しないっていうのも。僕らにもあくまで『友達』として接しようとする人柄は、そう真似できるものじゃないと思うよ」
「そんなこと言ったってぇ、売れてないじゃなぁい」
鼻で笑うミンコに和麻が言った。
「例えあまり人気が出なくても、彼女はめげずに活動している。その健気さは弱肉強食のアイドル業界では貴重な存在だ」
熱く語る和麻に七星が続く。
「ラブリンスターが大淫魔でありながらその力を使わず、地道にレッスンしたりCDの手売りとか正攻法で営業を行い、一途な努力で夢を追いかけている点が実に素敵です」
すかさず彼女は持参したCDプレイヤーをスイッチON!
流れ出した曲は、ラブリンスターの3rdシングル!
「ドキドキ☆ハートLOVE……!」
まなみんが呟いた。
アイドルソングが流れる中、七星は語る。
「そんな方でなければこの様な歌は歌えません。確かに売れてはいませんがその実、好きな人多いんですよ」
「確かに! この歌はスキュラ様には……キツイ!」
愕然とするミンコ。あくまで個人の感想である。
「まなみんさま、ラブリンスターさまのことおもいだすのですよ」
これまでのラブリンスターのライブや、アイドル活動。それらを胸の内に思い起こしながら、鈴乃はまなみんに語り聞かせる。
「ラブリン……スター、様……」
「ふふ、その子はラブリンスターの良い所なんか知らないってさ」
「そんなことないのです! アイドルとしてまっすぐにがんばってるところや、ファンのことをだいじにするところや、すずのたちともおともだちになってくれるやさしくてふところがひろいところ。ぜんぶラブリンスターさまのいいところなのです」
「スキュラ様はそんな底辺淫魔と違って人間に媚びたりしないし!」
「そのスキュなんとかはラブリンスターのついでにディスってる人間に! 二回も! 二回もボロ負けしてんじゃねーか!」
「ま、負けてないわよ!」
真昼の言葉がミンコにグサッと突き刺さった。
その反応を伺い彼はしみじみ関心したように、
「その点ラブリンスターってすげぇよな、スキュなんとかだってきっと敵じゃねぇって思ってるぜきっと!」
●
言い争いを続けるスキュラ信者と灼滅者。
両者に板ばさみになって困惑するまなみん。
ンーバルバパヤによるとつまり、
「まとめ。ラブリンは頑張り屋さんってことだヨー」
「フン、頑張ってるって、CDの手売りしてるだけじゃない」
「甘いぞ!」
和麻が声を張り上げた。
「ラブリンスターは握手会を開いた事がある。握手会という存在がファンにどれだけ至高の存在な事か」
ぐっと拳を振り上げる和麻の語りに熱が入る。
「他種族さえも包み込む様に魅了し友好的な関係を築くその姿はまさに大淫魔でしょう。武蔵坂と敵対しか出来ないスキュラさんとは格が違います」
瞭は柔らかい物腰で、しかし手痛く攻める。
「スキュラ様だって優しいし! ちょっと価値観がアレなだけだし!」
「忠誠だけで無く、憧れや尊敬で皆を纏めるラブリンスターの『人柄』は正直凄いと思う、な」
立ち直った未来が、口元の血を拭いつつミンコを遮った。
「まなみんのデビューが決まっても撫でてくれないかもしれないが、でも、「おめでとう」って、我が事のように一緒に喜んでくれる……そんなやさしさを持っているのがラブリンスター、だろ」
その一言にまなみんの感情が動いた。
(……その人を惹きつける人柄こそ、大淫魔の無差別篭絡術の一端かもしれない、な)
未来と瞭はラブリンスターの外交手腕に感嘆すら覚えた。
しかしあくまで言葉にはせず、彼女を褒める。
「ラブリンスターはとても皆のことを想ってますよ」
「そ、そうかな。えへへ……」
「スキュラ様だって配下の事を想ってるわよ! 犬士様が蘇った時には「寂しかった」とか言っちゃうくらい!」
ぐっと拳を握ってミンコはスキュラ愛を力説する。
それを和麻が否定した。
「スキュラは等しく周りに優しく接してくれるだろうか? 否! そんな夢も希望もなさそうなつまらない奴に寝返るのか?」
「ぐぬぬぬ……」
「スキュラの人、相当心許した存在以外は全て都合の良い友人兼捨て駒としか見てないと思うヨー? この前は捨て駒(友人?)集団をシオシオのパーにしてたヨ? そこのミン何とかさんも色々と考え直した方が良いと思うヨー?」
「そうよ! 私もその内シオシオのパーに……って、あれ?」
ミンコは惑わされている!
「ラブリンスターさまはとてもすてきだとおもうのです。ライブのときにおともだちになれて、すずのはすごくうれしいのですよ」
鈴乃はまなみんの瞳を覗き、問いかけた。
「まなみんさまもそうではありませんか?」
「わ、わたしは……」
「ラブリン愛を思い出せ、まなみーん!」
真昼の声が響き、まなみんはその目に光を取り戻した。
「そうだった、わたしはラブリンスター様の忠実な配下! ラブリンスター様最高!」
「そうだ!」「そうなのです!」
「ラブリンスター様最高!」
「そ、そんな! 私の勧誘を断る気!?」
「ね? ラブリンスターだって良い所結構あるでしょ?」
達人が笑いかける。
動揺するミンコに対しンーバルバパヤは、
「勧誘に必要なのはバナナンとコーヒー、後は楽しい語らいヨ! 五円玉は必要ない思うヨー?」
「う、うるさいわね!」
「大体、勧誘に催眠術……催眠……プッ、プハハハハハハ!!」
七星が爆笑した。
「……御免あそばせ、今時催眠術などTVでも御目にかかれませんのでつい」
笑をこらえて涙を拭う七星のディスりに、ミンコは涙目で自棄を起こす。
「こ、ここうなったら力ずくで全員信者にしてやるわ!」
●
ミンコのスキュラ賛歌が休憩室に響き渡った。
盲目的にスキュラを讃える歌がまなみんを襲う。
しかし達人がまなみんを庇った。
即座に彼はクルセイドソードを翻し、ミンコの歌を中断させる。
片膝をつく達人をすかさず真昼が癒す。
「あ、ありがとう」
礼を言うまなみんを下がらせ、達人は帽子をかぶり直した。
「出番だ、おいで」
ライドキャリバー「空我」に騎乗する彼を忌々しげにミンコは睨む。
巫女服をまとい、鈴乃は拳を構える。
淫魔に親しみの感情を抱く鈴乃は、かつてのライブでラブリンスターとも友達になった。しかし、全ての淫魔が彼女のように友好的でないことも理解している。
だから、
「わるいいんまには、すずののこぶしでおしおきなのですよ!」
未来の鏖殺領域がミンコを覆い尽くし、瞭が二刀の剣を振り降ろす。
狙うはミンコただ一人。
七星の衣装がより煌びやかなダイナマイト版に変化する。
それでは歌っていただきましょう。
「飛び出せ初恋ハンター!」
七星と共に、ラブリンスターが好きになる歌を歌うンーバルバパヤ。
「催眠を鬼盛りでお届けするヨー」
魅力的なラブリンスターの曲にミンコは惑わされる。
「ハッ! ま、負けないわ!」
負けずにいかにスキュラが素晴らしいのかを彼女は謳う。
繰り広げられる「らぶりん×すきゅら歌合戦」。
歌声が響く中、瞭が自らミンコの催眠攻撃を肩代わりした。
彼は二刀に構えたクルセイドソードを床に突き立て、なんとか踏みとどまる。
頭に声が響く。
「ほ~ら、スキュラ様にお仕えしたくなってきたでしょ?」
「お断りします」
大和撫子の如く、可憐で繊細。それでいて芯は強く。
瞭は心を強く持ってその誘惑を撥ね退ける。
その時、真昼の声が響いた。
彼の声がミンコのスキュラ賛歌を掻き消していく。
「ぐ、私のスキュラ様賛歌が……!?」
このスキュラ愛が伝わらないなんて。
愕然とするスキュラ信者を、七星が「飛び出せ初恋ハンター!」の振り付けで攻撃する。
曲に合わせて繰り出される攻撃をかわすミンコ。
彼女を和麻と鈴乃の拳撃が襲った。
閃光百裂拳と鋼鉄拳。
全力のパンチが淫魔を吹き飛ばす。
休憩室のテーブルを支えに、ミンコは立ち上がる。
ふらつく彼女に容赦なくキャリバーが突撃する。
転がるようにかわす淫魔だが、達人と未来の斬撃が、彼女の衣服を切り裂いた。
素肌を隠しながら、赤面してミンコは未来を睨む。
「……言っとくがあたしはノーマルだから、な」
「信じるもんですか! スキュラ様の魅力もわからないくせに!」
ミンコはめげることなく、スキュラの素晴らしさを謳い続けた。
信者怖い。
「飛び出せ初恋ハンター」を歌い続ける七星。
彼女は歌いながら、まなみんに手を差し伸べた。
一緒に歌おうと。
まなみんがその手を取る。
二人のデュオは、癒しの音色を響かせた。
「そんなにあのアイドル被れが良いって言うの!?」
「ラブリンスター達とは良い関係を保ってたいし、スキュラ側にはやれないね」
飄々と微笑む達人。
ガガガガガ!
「空我」の機銃がミンコの足元に弾痕を刻む。
足を止められた彼女を影が縛った。
ゆーらゆら。身動きを封じられたミンコの目の前に、ンーバルバパヤがかざしたのは5クローネ硬貨である。彼女は歌うようにミンコに、
「ミンコは何だかよく解らないケド、ラブリンが好きになーる……」
するとミンコの目がぐるぐるし始めた。
「あ、ああ……らぶりん……さま……」
「よし、あたしも」と、未来は息を吸い込み、歌う。
瞬間、空気を震わす歌声が休憩室を破壊した。
「いやああああああ!」
破壊的な音痴ぶりに、休憩室のイスをなぎ倒して悶絶するミンコ。
「……歌は苦手、だ」
「もう無理っ!」
逃げ出そうとするミンコに迫り、鈴乃はバトルオーラを全開に輝かせた。
オーラを拳に込め、隙だらけの腹におもいっきりパンチをぶつける。
倒れたミンコは、そのまま霧のように消滅した。
「Rest in peace,Hypnotist girl」
戦闘を終え、ぽつりと未来は呟いた。
無事にラブリンスターの曲を歌いきり、七星はほっと息を吐き出す。
「曲と振り、全部覚えるのに苦労しましたわ……」
「ありがとう。おかげでわたし、ラブリンスター様のことがもっと好きになったよ」
七星の手を握り、感謝を伝えるまなみん。
「ンーもラブリンの良いトコロを再発見できたヨー」
ニパッと笑うンーバルバパヤ。
こっそりミンコが落とした五円玉をありがたく回収したのは内緒である。
「まなみんさま、おともだちになりましょうです」
鈴乃はまなみんに握手を求める。
「ふふ、あなたとは良いラブリンスター様話ができそうだね!」
そう答え、差し伸べられたその手を、まなみんは迷わず握り返した。
作者:かなぶん |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 11
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