牛野・ショボリ(歌牛・d19503)は、こんな噂を耳にした。
『牛好きが高じすぎて何でも牛柄にしちゃう都市伝説が現れた』と……。
都市伝説が確認されたのは、過疎化が深刻化しつつある農村。
村に住んでいるのは、老人ばかり。
そのため、この村が地図から姿を消すのも、時間の問題になっていた。
そんな時に現れたのが、都市伝説であった。
都市伝説は何から何まで牛柄にして、己の心を満たしているらしく、村人達も『これを利用して、村興しじゃ! どんどん利用して、若いもんを呼び戻すんじゃ!』と躍起になっているようだ。
牛柄饅頭を手始めに、牛柄丼、牛柄弁当、牛柄おにぎり、牛柄ビキニ、牛柄おばーちゃんまでアピールしまくった。
その結果、何となく観光客が訪れ、村長に無理を言って送迎バスまで用意している始末。
この状況で都市伝説を倒してしまえば、絶望のどん底。
そのショックでポックリ逝ってしまう老人だっているかも知れない。
中には都市伝説に便乗して、『これが最後のチャンスになるかも知れん』とばかりに、全財産をつぎ込んだ者までいるようだ。
都市伝説は牛柄ビキニのおねーさん。
それ故に見つけ出す事は簡単だが、老人達と夢と希望と何かを奪う可能性もあるため、色々な意味で注意が必要である。
参加者 | |
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艶川・寵子(慾・d00025) |
不知火・読魅(永遠に幼き吸血姫・d04452) |
十束・御魂(天下七剣・d07693) |
成宮・杏里(ペトルーシュカ・d08273) |
イヴ・アメーティス(ナイトメアキャット・d11262) |
蓬莱・金糸雀(陽だまりマジカル・d17806) |
アイリ・フリード(紫紺の薔薇・d19204) |
前田・骨平(牛乳と牧場を愛する者・d20618) |
●牛柄村
「ここを牧場にしたら、気持ちいいだろうな……。乳牛の太郎が喜びそうだ」
前田・骨平(牛乳と牧場を愛する者・d20618)は、仲間達と共に都市伝説が確認された農村にやってきた。
都市伝説が現れてからと言うもの、農村は空前絶後の牛柄ブーム。
そのおかげで、死んだ魚のような目をしていた村人が、活き活きとした様子で牛柄グッズの普及に努めていた。
挙句の果てには、牛柄人気にあやかって宇田川村と言う名前を牛柄村に変え、『地図に乗っている名前は、誤植なんですよ。はっはっはっ!』と言った感じで、いい加減な事をしているようだ。
「牛キャラも悪くないわね。高確率でたわわなモノが実ってるし。牛キャラって響きだけで期待できちゃうわ。だって、色んなぷれいを妄想しまくっちゃうもの!」
楽しそうに鼻歌を歌いながら、艶川・寵子(慾・d00025)が辺りを見回した。
まわりには村人達が雇ったキャンペーンガールが立っており、興味本位でやって来た観光客達の相手をしていた。
「牛柄、可愛いですね、これなんてクッキー自体が牛柄で焼かれていて、地味にレベル高いですし」
村の広場にあった出店に立ち寄り、十束・御魂(天下七剣・d07693)が幸せそうにクッキーを食べる。
口の中にほんのりと広がる牛乳の味。
濃過ぎず、薄過ぎず、絶妙なバランス。
それだけ、村人達もこの村興しにすべてを懸けているのだろう。
決して譲らず、妥協せず、そんな思いが、そのクッキーから伝わってきた。
「みんな、「死ぃねぇぇぇっ――!!」
そんな中、不知火・読魅(永遠に幼き吸血姫・d04452)は殺る気満々であった。
あっちを見ても、こっちを見ても、おっぱい、おっぱい。
胸が大きくなければいけないのではないかと思うほどの巨乳率。
そのため、読魅にはキャンペーンガール達が、笑顔で『貧乳は死んで』と言っているように見えた。
例え口にはしていなかったとしても、心の中で残念な胸だと思っている。
きっと、そうに違いないのである!
「今回、厄介なのは都市伝説よりも、一般人ね。……というかこの都市伝説放っておいてもそこまで影響ないんじゃないかしら、牛柄にするだけみたいだし」
そう思いつつ、イヴ・アメーティス(ナイトメアキャット・d11262)が辺りを見回した。
結果的に廃村寸前であった村に活気を取り戻したのだから、村人達にとっては都市伝説様々である。
それが分かっていながら都市伝説を倒そうとしているのだから、村人達に恨まれても文句は言えない。
それこそ、夜な夜な藁人形に釘を打ち付けられても、仕方がないような事をしているのだから……。
「村興しをしてくれているとはいえ、都市伝説は倒さないといけないのよね。おじいさんおばあさんの夢を壊さないように頑張らないと……」
自分自身に言い聞かせながら、成宮・杏里(ペトルーシュカ・d08273)が気合を入れる。
だが、杏里達がここに来た時点で、ドリームクラッシャーになる運命。
それこそ、じいさんばあさんの心臓を鷲掴みにして、高笑いを響かせているような状態なのである。
「最悪の場合は、ショックを受けて、みんなポックリかぁ。ううっ、後味が悪過ぎる……」
ひどく困った様子で、アイリ・フリード(紫紺の薔薇・d19204)が牛柄のシャツ姿で頭を抱える。
場合によっては、それがキッカケで村が滅びてしまうかも知れない。
そんな事になれば、都市伝説よりも、タチが悪い。
「まあ、村人に悪いけれど……、仕事だもの仕方ないわね。その代わり、新しい生き甲斐でも与えて安心させないと、だわ」
そう言って蓬莱・金糸雀(陽だまりマジカル・d17806)が、都市伝説を捜して歩き出した。
●牛柄ビキニ
「悪い牛柄さんは居ませんかーっと……」
なるべく村人達に見つからないようにしながら、御魂が都市伝説を捜して村の中を歩いていた。
しかし、村人達は金魚のフンの如く、御魂達の後をゾロゾロとついてきた。
その上、村には何もない。
どんなにコソコソしようと、遠くにいようと、見えてしまうのである。
「実のところ、私としては牛柄ビキニの美少女を、観覧席から舐めるように鑑賞したい派閥だけれど、ご老人発奮の為に頑張っちゃおうかしら」
思わせぶりの態度を取りながら、寵子が牛ビキニ姿でラブフェロモンを使う。
その途端、村人達の視線が、寵子の胸元に集まった。
「これなら、グッズもすぐに売れ切れそうね」
もう少し在庫を多めにしておけば良かったと後悔しつつ、イヴが村人達に視線を送る。
村人達はすっかり寵子の胸元の虜。
胸の揺れに合わせて、頭を上下させている姿が滑稽だった。
「ううっ、いっそここにいる連中を纏めて……」
……デストロイ。
そんな気持ちが、読魅の脳裏に過ぎった。
もちろん、本気でそんな事をするつもりはない。ないはずなのだが、沸々と湧いてくる殺意を抑える事が出来なかった。
そもそも、なぜ男と言う生き物は、胸ばかり見るのか。
胸が大きい事が女性の証ではないのだから、ここまで有難がって見る必要などないのである。
別に、悔しいからではない。
瞳から溢れる何かは、涙などではないのである。
「あら、ひょっとして新人さん? ウチで働くんだったら、胸が大きくないと駄目よ。こんな風に、ね」
いつの間にか、現れた都市伝説が胸を揺らす。
読魅に見せつけるように、ぽよんぽよよんと元気よく。
「ううっ、やはりこの場で……」
それでも、読魅は怒りを堪えた。
あんなものは、脂肪の塊。別に悔しくないか、ないのである。
「ひょっとして、調子が悪いの? 駄目よ、健康管理はきちんとしないと」
都市伝説がこれみよがしに胸を揺らす。
読魅はその胸を千切っては投げ、千切っては投げて、自らの怒りを都市伝説に思い知らせてやりたくなった。
だが、ここでそんな事をすれば、村人達からも白い目で見られてしまい、都市伝説を倒す事が困難になってしまう。
それが分かっていたため、怒りをグッとこらえて、我慢をした。
「もしかして……、牛嫌い? それとも、牛乳が苦手とか?」
『苦手なのは、おぬしそのものじゃ!』。
読魅はそう言いたかった。叫びたかった。
そもそも、何故こうも胸を揺らすのか、意味が解らなかった。
「勘違いしないでもらいたいんだが、少なくとも俺は牛が好きだ。牛が生み出す牛乳は、もっと好きだ」
そこで骨平が断言をした。
そのおかげでピリピリしていた空気が途端にほんわかした。
少なくとも、村人達はホッとした。
元々、村人達は平和主義者。ちょっと、おっぱいが好きなだけなのである。
「とりあえず、村の人達には離れてもらっていた方が良さそうね」
そう言って杏里が仲間達にアイコンタクトを送る。
それに気づいたアイリが殺界形成を使い、骨平がサウンドシャッターを使う。
「あ、あれ? どうしたの? みんな、様子が変よ?」
その異変に気づいた都市伝説が目を丸くした。
明らかに村人達の様子がおかしい。
中には、酷く怯えた者もおり、『用事を思い出した』と言って、そそくさとその場を後にした。
「さすがにショックを受けて、大量に逝かれても困るから」
最悪の結果を脳裏に浮かべつつ、アイリが都市伝説に説明をした。
「いや、意味が分からないし!」
都市伝説は納得がいかなかった。
「ごめんなさいね、此れからあなたの役割……、あたし達が引き継ぐから」
金糸雀が申し訳なさそうに、スレイヤーカードを解除した。
それを見た都市伝説がすべてを理解し、『あ、あたしは村のためを思って、やっただけなのに!』と文句を言った。
●運命のイタズラ
都市伝説にとって、今日は最悪の日であった。
あれこれと難癖をつけられ、フルボッコ寸前。
これを不幸と言わずして、何を不幸と言えばいいのか。
特に、男の娘っぽい相手から、これでもかとばかりに攻撃を食らった、食らいまくった。
「この後の予定が詰まってるので、サクっと倒されてしまってくださいね」
都市伝説に語り掛けながら、御魂が鬼神変を炸裂させた。
それに合わせて骨平が、都市伝説めがけて、DMWセイバーを放つ。
「……って、ちょっと! 何よ、その理由!」
都市伝説は泣きたくなった。
自分の不幸を呪って呪って呪いまくった。
だが、そんな事をしたところで、状況が好転する事はない。むしろ、悪化。最悪の状況へと転がり落ちている。
「それじゃ、サクッと終わらせちゃおうか」
続いてアイリがヴァンパイアミストを使う。
すぐさま、都市伝説が反撃しようとしたが、アイリの恰好が牛柄になっただけ。
「……まるで魔法ね」
イヴはその力を素直に凄いと思ったが、それで考えが変わったわけではない。
そのまま都市伝説の懐に潜り込むようにして、トラウナックルを叩き込んだ。
「ちょっ、やめて! これ以上、やったら、えいっ! これであなた達の下着は牛柄よ! どう、恥ずかしいでしょ!?」
都市伝説は必死であった。
しかも、布面積が少なめ。
それを見たら、間違いなく、『きゃっ!』と悲鳴を上げるほどの際どさだった。
だが、都市伝説は気づかなかった。
それが見えない恥じらいである事を……。
服を着ている状態では、本人しか違和感には気づかない。
「死ぃねぇぇぇっ――!!」
次の瞬間、読魅が全身全霊の力を込めて、紅蓮斬を叩き込んだ。
その一撃を食らった都市伝説が、『なんで、あたしがこんな目に!』と叫んで、跡形もなく消滅した。
「これで悪い牛柄はいなくなったわね」
都市伝説が消滅した事を確認した後、寵子がホッとした様子で溜息を漏らす。
そのおかげで村人達の催眠状態も解けたのか、今まで何で牛柄にこだわっていたんだろうと、首を傾げている者までいた。
「もうお終いだあ~」
その途端、冷静になった村人達が、絶望のどん底に突き落とされた。
それもそのはず。中には、これにすべてを懸けて、全財産を投入した者までいるのだから……。
「何も落ち込む事はない。牛で儲けを出す事を見出したのだから。このまま牛ブームに乗ってしまえ!」
そう言って骨平が村人達を励ました。
このまま牛ブームに便乗して、萌えイラストをプリントした【牛野牧場特製萌え牛乳】を売る予定があるのだから、ここで引き下がる訳にはいかない。
そんな事をすれば、シャレにならないほどの赤字が出る。
「それに、萌牛コンテストを毎年開催すれば、生の萌牛女子がわんさか村に訪れて、萌牛女子目当てのおおきいお友達がリアルマネーを落としまくってくれるわ!」
そこで寵子が含みのある笑みを浮かべて、萌牛の里として萌牛コンテスト開催を提案した。
「もちろん、あたしも出るわよ」
黒基調のふわっとしたミニスカワンピース姿で、金糸雀が『うーん』と悩む村人達にウインクをした。
その途端、年寄り達のスケベ心が燃え上がり、『確かに、悪くない』、『ええのう、ええのう』と言って、ニンマリとしまりのない笑みを浮かべた。
「それじゃ、司会は私に任せてください」
牛柄ワンピース姿で、杏里が自分の胸をポンと叩く。
既にエントリーが始まっている。
中には、キャンペーンガールや、熟女、老婆なども含まれていたが、それを止める者は誰もいなかった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2013年12月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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