伝説のマヨネーズ

    作者:空白革命

    ●端的にいうとマヨネーズが無限に降ってくる依頼
    『我が名は伝説のマヨネーズ。英語でいうとレジェンドオブマヨ!』
     ギュスターヴ・ベルトラン(救いたまえと僕は祈る・d13153)さん……いやさギュスたんが道を歩いていると、ンなこと言い始める奇っ怪なバケモンを目撃した。
     こう、全長3mくらいのマヨネーズボトルから手足が生えたようなヤツである。
     声をかけられたと思しきおっさんはぽかーんと口を開けるばかり。
     するとマヨネーズは自ら赤いキャップを外し、天に向けてマヨネーズを大量に発射し始めたではないか。
    『男なら、マヨに染まれ! 女でもな!』
    「う、うわあああああああ新鮮なマヨネーズがあああああああ!」
     たちまちおっさんはマヨネーズまみれのマヨッマヨになってしまったのだった。
    「…………」
     ギュスたんはその様子を暫く眺めた後、回れ右して帰ったという。
     
    ●マヨネーズがどこから補給されているのかは永遠の謎
    「……っていうことがあったんだけど」
    「それは『伝説のマヨネーズ』のしわざとみて間違いありませんね」
     学園に帰ったギュスたんのお話をもとにアレやらコレやらしたあと、エクスブレインは眼鏡をキラッキラさせてそう言った。
    「知ってるの?」
    「いえ、今知りました」
    「あ、そう……」
     ガタッと立ち上がりそうになったギュスたんだが、再び座ってペロキャン舐める作業に戻った。
    「どうやらこの実体化都市伝説は、道行く人にマヨネーズをかけまくりコレステロールまみれにしてしまうという恐ろしい化け物のようです。偽りのカロリーオフが蔓延する昨今ピュアに濃厚なマヨネーズを使用する男気はイイのですが、何事もほどほどが肝心。このままではマヨネーズを食べ過ぎて太ってしまう女性が現われる危険もある。あ、いや別にこのマヨネーズをいくら食べても栄養にならない気がしますけど、それはさておきです……」
     
     右から左に箱を移動するジェスチャーをして、エクスブレインはびしりと言い放った。
    「こんなものを放っておくことはできません! 皆さん、しきゅう伝説のマヨネーズを退治するのです!」


    参加者
    勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)
    獅之宮・くるり(暴君ネコ・d00583)
    柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)
    九条・有栖(中学生シャドウハンター・d03134)
    稀島・遙姫(Dust To Dust・d05420)
    下総・水無(少女魔境・d11060)
    紅月・故(透明な不透明・d12818)
    ギュスターヴ・ベルトラン(救いたまえと僕は祈る・d13153)

    ■リプレイ

    ●お酢と油を混ぜればマヨネーズになるんだから男女も混ぜときゃ仲良くなるでしょって理論をどこかで聞いた気がしませんか。
     前略、マヨネーズさま。
     空から一億のマヨが降りしきるなか、いかがお過ごしでしょうか。
     世間では巨大なマヨネーズボトルが中身を吹き出し続けるような輩がまことしやかに噂され、あげく実在してしまう始末です。
     『なんか名前が近いから』みたいな理由でこの場にいる私の気持ちなど、誰が理解できましょうか。
     柳・真夜(自覚なき逸般人・d00798)。
     草草。

     若干死んだ目でマヨネーズボトルを殴り続ける真夜(マヤでなくマヨと読む)にひたすらマヨネーズが降り注ぐという光景を、ギュスターヴ・ベルトラン(救いたまえと僕は祈る・d13153)はのほほんと眺めていた。
    「うん、やっぱり男が真夜まみ……いやマヨまみれになるより、女の子のそれを見ていたいよね。僕もさ、やっぱり男の子だから」
     と言いつつ紙コップにさしたキュウリとニンジンのスティックを抜き取り、空に翳してマヨをつけた。
     余談だが、今後マヨを真夜と誤表記した場合それは仕様として扱って頂きたい。
    「マヨネーズにそういう気持ちをもったことは、ないなあ……」
     彼のコップからキュウリを抜き取る九条・有栖(中学生シャドウハンター・d03134)。
     彼女もマヨまみってんのかと思いきや、大きいビニール傘を立てて自分だけ身を守っていた。体育座りして傘を肩に立てかけるさまはさながら雨の日の犬といった有様だったが、降ってるものがマヨだったのでその辺の悲壮感は相殺されたと言っていい。
    「おいしい……きゅうり……」
    「ともかく。マヨラーには色んな意味で美味しい空間なんだろうなあ、ここは」
     同じくニンジンのスティックを抜いて囓る勿忘・みをき(誓言の杭・d00125)。
    「しかし三体は多すぎる。まずは数を減らすぞ、ついてこい」
     ビハインドへ一度手招きすると、みをきはマヨボトルめがけて飛びかかった。
     おもむろにビハインドが体当たりを仕掛けてボトルを倒し、そこへシールドを纏ったみをきがスタンプアタックを仕掛けるという華麗なノックダウンコンボである!
     つまりどうなるのかというと!
    『らめぇ! 倒れてるところにハラパンしたらマヨ真横に出ちゃいまひゅうううう!』
    「「はぶっ!」」
     ギュスターヴはもちろん、傘を立てかけていた有栖もいっぺんにマヨまみれになってしまった。
     まあ、傘をさしたらマヨらんかといえばそうでもない気はしてたけど。
     それよりもだ。
     稀島・遙姫(Dust To Dust・d05420)だ。
    「…………」
     頭に金盥を被って全身をマヨまみれにするという、一見何を目的としたのか分からない彼女を見て欲しい。
     遙姫は指についたマヨネーズをなめ取ると、次に顔にべったりついたぶんをぬぐった。
     笑顔。
     からの。
     フリージングデス。
    「これ以上マヨまみれるつもりないから!」
    『らめえええマヨネーズを冷凍すると油とその他に分離しちゃうのおおおひぎいいいい!』
     アヘ顔(顔無いけど)晒してかちーんと凍り付くマヨボトル。
     口に指を当ててうなる紅月・故(透明な不透明・d12818)。
    「ん。確かにうっかりマヨネーズを凍らせると、ただの油みたいになっちゃうよね」
    「うーん、ツッコミどころはそこかなあ……」
     まあとりあえず、と言って獅之宮・くるり(暴君ネコ・d00583)は大きなロッドを槍のように構えた。
    「マヨのかけすぎ素の味を殺すことまかりならぬ。ちょっとでいいのだちょっとで! 具体的にはスプーン二杯分をお皿の端に添えるくらいでェー!」
     とあーっと言いながらマヨにロッドの杖先をマヨボトルに突き立てる。するとなんということか。螺旋のエネルギーでもってボトルがめぎょっと貫かれたではないか。
    「安心せい、峰打ちである」
    「貫通してますがな」
    「それはそれで……ん?」
     やべえと思ったのも一瞬のこと。すぐに故が張り付き、野球バットのように構えたロッドをボトルに思い切り叩き付けたのだった。
    『ぐあああああああマヨネーズボトルは大変壊れやすくなっており先端の尖ったものなどでつつかないようにしまモルスァ!?』
    「みゃん!?」
     さきほど開けたばかりの穴から大量のマヨネーズが吹き出し、くるりは見事に吹っ飛ばされた。
    「ぐぬぬ、ぬかった……しかしあと一息!」
    「つまり私の出番ですね!」
     それまでどこに居たのかは分からんが、下総・水無(少女魔境・d11060)が仁王立ちで現われた。
     片手に炊飯器。片手に保温鍋。もしかして下からせり上がってきたんじゃねえかと思うような見事な立ちっぷりである。
    「さあ、どっからでもかかってきなさい!(二つの意味で)」
     そしてこのどや顔である。
     もっと言うと紺色のスクール水着姿だった。
    「そう。濃厚な(意味深)白いのを(意味深)大量に浴びる(意味深)わけですからね! 紺なら、色も映えま――!」
     そんな水無に無慈悲なマヨシャワー。
     ひとしきり浴びた後、計算され尽くされた人魚座りで自らの指先を舐めてみせる水無である。
    「んんっ、こくておいしいです」
    「さすが武蔵坂の灼滅者。イロモノの都市伝説にぜんぜん負けてない」
     何か満足そうな顔をして、ギュスターブはエビフライを囓ったのだった。

    ●この世で一番マヨネーズをうまく発音できるのはたぶんミスター中井
    『ぐああああああマヨネーズはフランス料理の肉用ソースであったが野菜との親和性からドレッシングの代用としても使われ誕生当時は高級品だったとされていま――』
    「断末魔長っ」
     虫の息だったマヨネーズボトル二号をジェノサイドし、残る一体のみとなった。
     さあここからは囲んで殴ってジャンケンポンですよって展開……かと思いきや!
    「ゆで卵にマヨネーズって、僕だけ?」
    「まあ、トマトにケチャップをかけているようなものだしな。美味しいとは思うが……」
     殻をかりかり剥きながら、紙皿でうけとったマヨネーズにつけてゆで卵を食べるギュスターヴとみをき。
     っていうかこれ、空から大量にマヨが降ってる状態でやっているので見た目がとんでもなくシュールだということを、是非覚えて置いて欲しい。そしてよければイラストで見て欲しい。すごい図だから。
    「ああっ、それにしても服がマヨネーズまみれっていうのは思った以上に気持ち悪いな、くそっ」
    「まあ油と卵とお酢が大量に降りかかってるわけだしね。あ、ケチャップちょうだい」
    「ああ……」
     ケチャップとマヨネーズをまぜたオーロラソースっていうのはよく聞くけど、この場合どこまで頑張っても『ケチャップの混入したマヨネーズ』にしかならんのは、やはり環境のせいだと思われる。
     その横で唐揚げと千切りキャベツをもっさもっさ食い続けるくるり。
    「そもそももぐマヨなrあもぐマヨもぐらしくもぐおかずのもぐワンポイントもぐになっていれもぐばいいもぐものをもぐまき散らしもぐて使いもぐ物にならなもぐくなるほうもぐが勿体もぐないもぐもぐとは思わもぐぬか!」
    「食べるか喋るかどっちかにしなよ」
    「ごはんおかわり!」
    「はいはい」
     シャッと出したどんぶりに素早くご飯を盛る水無。
     彼女も彼女で自分の皿にご飯とカレールーを盛りつけると、その上にマヨネーズをぶっぱした。
    「ご飯とカレーの混ぜる派・混ぜない派があるように、カレーとマヨも両派閥があるものです。そこへくると私は断然混ぜない派。カレーとマヨとして白米それぞれの地層を保ち口に含んだ時初めて溶け合わせるのが最高の――」
    「ん……ねえ、マヨの層、すごく増えてるけどいいの?」
    「1:1:8くらいになってるね」
    「はうあ!?」
     これはいけませんと言ってマヨをはらう水無である。
     故はそんな彼女を横目に、茹でたエビをマヨにつけてもぐもぐしていた。
    「これ、マヨネーズ代浮くよね」
    「浮くことは浮きますけど……何事も限度が大事といいますか……」
     全身マヨまみれでの真夜なのかマヨなのかよくわからなくなってきた真夜が、ブロッコリーをもぐもぐしていた。いい加減嫌になったのか集気法でキュア。綺麗さっぱりマヨが取れた。
     なんか、マヨネーズのおばけがブロッコリーを吸収して完全体になったみたいなイメージだった。
    「そういえば、マヨネーズってトリートメント代わりにもなるんでしたっけ……?」
    「っていうか卵と油がだよね。臭いが大変なことになると思うけど」
     エビフライを吸収しながら喋るマヨ遙姫。
    「うーベタベタする。持ってきた食べ物までマヨまみれだよ」
    「うん……ツナマヨおにぎりが真夜に包まれて……マヨが中身なのかおにぎりが中身なのか……」
     有栖は死んだ目でおにぎりを見下ろし、深いため息をついた。
    「それに、楽しみにしてたシーザーサラダも……『マヨネーズに混入した野菜』になってて……う、く……」
     唇を噛んでうつむくと、有栖はおもむろにガトリングガンを顕現。本気のブレイジングバーストをぶっ放したのだった。
    「かよわき乙女をマヨネーズまみれにするとかどんな変態ですか! 誰得ですか! せっかくとっておいた好物をあなたわああああああああああ!」
    『イヤアアアアアアアマヨネーズの原料は油なので凝固剤を使えばキャンドルにすることもできまうわああああああああ!』
     炎にまみれてじたばたとあばれるマヨネーズボトル三号。
     皆はその光景を、なんだか背徳的なものを見るような目で眺めていたのだった。

    ●マヨネーズがまともに日本に普及しきったのは戦後からと言われているが日本で発売されたのは大正14年。アジノモトとだいたいいっしょ。
    「マヨ……なくなったね」
    「ん、まあ、そうだよね……」
     遙姫と故は、すっかり綺麗になった道を眺めてそんなことを呟いた。
     都市伝説マヨネーズの灼滅と同じくして、まき散らしていたマヨネーズも消滅した。お腹の中のやつはどうなったんだろうとふと思ったが、満腹感はほぼ持参した食材によるものだと思うし、言っても油だから消えてもあんま変わらないよなあと思ったりもした。まあこれが原因で明日顔がテッカテカになるということは無いだろう。無いと思う。たぶん。
    「ふむ、成敗……」
     ロッドをちゃきっと前後反転させるようにひねるくるり。ロッドなのでどこをどう入れ替えても一緒なのだが、そこは気分の問題というやつだろう。
     その一方で、真夜やみをきたちは一応気持ち悪いのでということで服や身体をESPクリーニングしていた。
    「脱ぐ必要が無いのは便利ですよね」
    「そうだな。ああ……甘い物が食べたい」
    「うん。暫くマヨは見たくないかも」
     うえーっとした顔をする有栖。
    「脱ぐところまで含めてマヨだと思っていたんですが……いや、それはいいでしょう。うん、いいです」
     水無は未だにスク水のまま仁王立ちしていた。
     ゆーても再封印してしまえば色々元通りになりそうなもんなので、仮にマヨが消えなかったとしても安心なのだが、それはまあ、やっぱり気持ちの問題だと思ってこう。
     そんな中、ギュスターヴがふと顔を上げた。
     手にはなんでかその場に残ったマヨネーズボトルが一本。
    「ねえ、ところで気になったことがあるんだけど」
    「なんです」
    「尺、余ってない?」
    「ああ……」
    「じゃあ今からさ、このマヨを使って、僕がひたすらニンジンやキュウリを官能的に食べるから、それを映しておいて貰える?」
    「なんでそうなる」
    「パフォったらしいよ」
    「ああ……」
    「ん、じゃあカメラ回すね」
    「右上に『●REC』出てる?」
    「ふむ、よきにはからえ」
    「それじゃあラストシーン。ギュスターヴの官能的なスティックシーン。よーい――アクション!」





     空の彼方で、マヨたちが笑った気がした。
    『濃厚なキュウリシーンがはじまると思ったか!?』
    『ざんねん俺だよ!』
     むろん、幻覚幻聴である。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2013年12月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 6/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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